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名探偵ピカチュウ ~新コンビ誕生~ - (2020/03/25 (水) 18:11:13) の編集履歴(バックアップ)


※注意:本記事の内容は2016年2月3日に配信されたバージョンについてです。


名探偵ピカチュウ ~新コンビ誕生~

【めいたんていぴかちゅう しんこんびたんじょう】

ジャンル シネマティックアドベンチャー
対応機種 ニンテンドー3DS
(ニンテンドー3DSダウンロードソフト)
発売元 ポケモン
販売元 任天堂
開発元 クリーチャーズ
配信開始日 2016年2月3日
定価 1,500円(税8%込)
備考 配信停止
判定 良作
ポイント ピカチュウ(CV:大川透)
とっつきやすい推理ゲーム
よく作り込まれた世界観
続編前提なため謎は消化不良気味
ポケットモンスターシリーズ関連リンク


概要

ポケットモンスターのスピンオフであり、ピカチュウを主人公にした推理アドベンチャー。
グラフィックは全て美麗な3DCGで構成されており、シネマティックアドベンチャーというジャンルに見合って様々な部分が作り込まれている。
本作に登場するピカチュウは、これまでのピカチュウと違い、人間的な表情モデリングを採用*1。細かい表情付けを可能とした。

中でも本作最大の特徴は、ピカチュウが人の言葉を喋ることにある。
さらにピカチュウ役の声優には、アニメやゲーム本編でお馴染みの大谷育江女史ではなく、渋いバリトンボイスが持ち味の男性声優・大川透氏を起用。
それ以外の声優に関しても、秋元羊介氏や田中敦子女史といった大ベテランを始め、男女を問わず外画の吹き替えを主に担当している人物が多く、本作の独特な空気感を作り出している。
推理モノ、という体裁なため、先のキャスティングの件を含めて雰囲気はハードボイルドテイストである。
一方ポケモン達の鳴き声は声優によって表現されており、路線としてはアニメ版に近い*2
実際のキャスティングにもアニメ版に携わっている音響監督の三間雅文氏に協力を要請しているという。
これらの要素は、ポケモンの世界観を崩さない程度にシックなイメージを演出しつつ、新たな作風を生み出している。

本作はサブタイトルが付いているように連作の予定であり、2018年3月24日に本作の内容も含んだ「本編」が発売された(後述)。

基本システム

主人公の少年・ティムと、何故かティムとだけ言葉が通じる相棒のピカチュウの特性を利用しつつ、周囲で起こった事件の解決を目指す。
この際、人間からの聞き込みはティム、ポケモンからの聞き込みをピカチュウが担当する。
そしてそれぞれが集めた証拠から、事件の真相に迫っていくという、推理ゲームとしてはスタンダードな作りである。

プレイヤーは事件の起こる3Dのマップをある程度自由に歩き回ることが出来る。
そこから証言や証拠物品を収集し、主人公ティムがピカチュウに提示することで推理が進行する。
推理などの捜査は下画面のタッチパネルで操作し、こちらにはメモなども表示される。
また、単に証言を聞くだけでなく、周囲のポケモンの習性・特徴・性格などを理解し、それらを分析して活かすことも求められる。

行動中はタイミングを問わずピカチュウに相談することも出来る。話しかければ今自分が何をすべきかも教えてくれる。
ただしこれは捜査の相談という目的もありきだが、ピカチュウのキャラクター性の掘り下げという感じの趣きも強い。

本作のピカチュウ

本作のピカチュウは、かつて主人公ティムの父親・ハリーのピカチュウだった。しかし何らかの理由で記憶を失くしている。
探偵帽を被り、アニメ版のニャースよろしく二本足で歩くのがデフォルト。口元も従来のピカチュウと異なり人間的になっているのも特徴。
ただし件のニャースのように人語を話せるわけでなく、何故かティムにだけこのピカチュウの言葉が分かるという設定である。

コーヒーと綺麗な女性が大好きというオッサン臭い設定で、実際中年をイメージしたキャラ作りがなされている。
何故か電撃技を始め、全般的な技を使うのが苦手で、二本足で歩いているせいか走るのも不得意。
「ピカッと閃いた!」が決め台詞。探偵であるハリーの相棒だったためか、彼もまた探偵としては優秀。

ストーリー

舞台は、人とポケモンが共存する街、ライムシティ。 
ある目的を果たすため、少年ティムはこの街にやって来た。 
そこで偶然の出会いを果たす、ティムとピカチュウ。 
新しい物語が、ここから始まる。(任天堂ソフト紹介より引用)

評価点

  • 作品の世界観が丁寧に作り込まれている。
    • 世界観は老若男女に通じるもので、あくまでもポケモンとしてではあるが、大人でも楽しめる雰囲気作りがなされている。
      • さりとて子供を置いてきぼりにしているわけではなく、任天堂らしく万人向けな雰囲気作りに成功している。
    • ポケモン図鑑の設定や生態の重視
      • ポケモン達は本編のポケモン図鑑に記されている設定や生態によって個性付けがされており、それが上手く人間社会に溶け込んでいる。
      • そしてそれらポケモンの設定が違和感なくかつ存在感のある形でシナリオに組み込まれているところも評価が高い。
      • 密かに「人間社会の中で生きるポケモンの生態」に焦点を当てた作品は珍しい。本編シリーズの主役はあくまでトレーナー達であるし、不思議のダンジョンを始めとするポケモンが主役の派生作品はポケモンだけが住む世界であったりするため。
      • 中には大半のプレイヤーが忘れているであろう設定で存在をほのめかすポケモンも存在する。
  • 声優のキャスティング
    • 本作の最大の目玉といえばこれだろう。散々候補を探した結果、満場一致で決まったという大川氏の演技は実に絶妙。冒頭、渋い声で「ピカピーカ!」と鳴き声を発するシーンはシュールそのもので、プレイヤーの笑いを誘う。
      • ピカチュウのイメージが崩れるという批判もあるが、そもそもポケモンは同一種でも個体差があり「大谷育江のピカチュウ」以外のピカチュウもたくさんいるのが当たり前*3なので、見当外れな意見と言えよう。
      • 一応男性が演じるのは初ではないのだが、大川氏のようにメインとして抜擢されたのは初めてである。
    • 大川氏以外の声優も先の通りTVアニメより外画で活躍している声優が多く、先の世界観に上手く色付けしていると言える。
  • とっつきやすいゲーム性
    • ポケモンの推理ゲー、というだけあって難易度はそれほど高いわけではなく、殺伐とした感じも薄い。
    • ピカチュウとコミュニケーションが取れる、という特徴を最大限に使っており、物証・証言集めは普通に楽しめるレベルに個性は出ている。
      • かといって極端にヌルいというわけでもなく、ミスなく推理パートを進めるためには相応の考察と情報集積能力を必要とする。
      • ただし、間違った推理をしても基本的にはピカチュウが釘を刺してくれるので、そういう意味で難易度は低い。
  • これまでにない斬新なストーリー
    • 探偵ものであるが、本作で何者かを殺害するような事件などは起きない。が、「誰かに殴り倒される」「ポケモンが凶暴化する薬を盛る」などといった、本家と比較するとやや物騒さが増したエピソードが多い。
      • 特に最終エピソードはミステリー定番のミスリードを狙った要素もあり、見る者を飽きさせない。
      • また、最初の事件では、弾けた赤いきのみが被害者のエイパムに付着しており、まるで流血しているように見えたりもする。
    • 消息不明の父を探すために危険を犯す主人公、という設定もシリーズとしては斬新である。
      • なお、主人公ティムは少年的なキャラクターであるが、少なくとも「車を運転出来る」「青年と呼ばれることもある」程度の年齢設定であり、声も男性声優が担当している。
  • 美麗なグラフィック
    • 本家とはまた違うモデリングが採用されており、どちらかと言えば据え置き版のポケモンに近い。これにアニメ版のイメージを足して2で割った、という感じ。
      • ピカチュウのモデリングは先の通り人間の表情をモチーフとしており、特に細かく作り込まれている。セリフを喋る際はそれが顕著。実際モーションキャプチャーが利用されているらしい。
    • また、人間達も本編とは違い実在に近いモデリングである。そのため、ポケモンと人間が共に生活していて、プレイヤーが本当にポケモンが実際に現れた世界を体験できる。

賛否両論点

  • 登場ポケモンが新作に偏り気味
    • 明らかに万人向けを狙っており、初代ポケモン直撃世代なども十分射程圏内に収めた作風なのだが、登場するポケモンの多くは第三世代以降からのポケモンが多い。
    • ただ、古い作品のポケモンばかり出せば良いというわけでもなく、やはり一番旬の作品から選んでいくのは当然ではある。
      • 新旧のバランスを意識した『ポッ拳』が近い時期に出た事が、賛否を拡大する要因か。
      • 続編の方では第七世代のポケモンを始め、出番が少ない世代のポケモンが気持ち多く増えた。

問題点

  • 続編前提+DL専用故にボリュームが薄い
    • 良質な世界観だけに、「もっと浸りたい」と思わされるだけあって、ダウンロード専用故の内容量の物足りなさが噛み合っていない感はある。
      • はっきり言って、普通にプレイすれば大体半日もかからない程度のボリュームしかない。「もっと味わいたい」と思える内容故に、DL専用という点は弱点となっていると言える。
      • 1,500円という価格は、ゲームの作り込みを考えれば妥当なのだが、ストーリーのボリュームだけを考えるとどうしても物足りなさは否めない。
    • さらにピカチュウの謎を初め、伏線なども肝心なことはほとんど明かされていないため、モヤモヤしたというプレイヤーは多い。
      • 続編が出るまでに2年の期間が空いてしまった。詳しくは後述するが、次回作は続編というより本編*4であった。当初は小分けにリリースされるものと予想した人も多く、その通りになっていたらリリースの空白期間は短くなっていた可能性もある(完結までの期間は長くなった可能性も高いが)。
    • ヒントはいくらか作中に転がっているため、推理ゲームなだけに「リリースまでに推理せよ」という意図もあったのかもしれないが。
    • つまり本作は事実上の有料体験版なのだが、事前にそういった告知は一切なかった。
  • セーブデータが一つのみ+オートセーブ
    • サブイベントを見逃した場合、戻ってやり直すことは不可能。
      • 一応、はじめからやり直すことは可能。
    • 所謂ギャラリーモードのようなものもないので、イベントを回想して見ることも不可能。
    • 2周目としてクリア状態を維持したまま最初から始められる機能もあるが、その機能中はセーブ不可能。
      • なので2周目途中でプレイを中断したい場合は、そのままスリープモードにするしかない。
      • ただし上記の通りボリューム自体は薄い為、2周目をセーブなしでプレイ仕切ること自体はそれほど難しくはない。

総評

「大川透が演じるピカチュウを聞きたい」という動機だけでも1,500円を払う価値があるくらいには楽しめる作品。
一見シュールな内容に見えるが、世界観作りが丁寧であり、引き込まれるだけの魅力は持っている。

今後のストーリー面も期待できそうな展開ではあるが、惜しむらくはやはり続編リリースの遅さだろうか。
あるいは携帯機のダウンロード専用という、ボリュームをコンパクトにせざるを得ない販売形態にあったと言えるかもしれない。
税込1,500円という値段を考えれば十分すぎる面白さなのだが面白いが故に更なる展開を求め、そして物足りなさを感じてしまうのが惜しい一作である。


続編

  • 2018年3月23日、3DSで『名探偵ピカチュウ』が発売。
    • 本作の内容は同梱されており、シナリオが大幅に追加されている。
    • 「続編」や「完全版」と言うよりも、どちらかと言えば「本編」と言った趣の作品である。
      • このことから、本作『~新コンビ誕生~』は『MGSVGZ』のような、プロローグ編に当たる作品になったと言える。なお、『名探偵ピカチュウ』の発表に合わせて本作の方のDL販売は停止された。
    • 発売直後の期間限定で、本作を購入していた場合はDL版を1,500円引きで購入可能だった。
    • また同日には、名探偵ピカチュウのamiiboも発売された。

余談

  • 2013年に、NHKのテレビ番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』でポケモンシリーズプロデューサーの石原恒和氏が特集された際、「開発中の新しいポケモン」として本作のタイトルと映像が少しだけ紹介されていた。
    • このため存在だけはかなり早い段階からファンの間で周知されていたが、正式に発表されたのは番組の放送から約2年半が経ってからだった。番外編ながらかなりの難産タイトルであったようだ。
  • ゲーム中に大谷ピカチュウとの共演シーンが存在する。
    • その時に大川ピカチュウが発する「夢はいつか叶う」という台詞はプレイヤーを大いに沸かせた。
    • なお、このシーンでは大川ピカチュウと普通のピカチュウの体型を比較することが可能。
      • しかもこれは単なる夢の共演というだけではなく、「ティムはハリーのピカチュウとしか会話することが出来ない」という事実を示す重要なシーンだったりもする。
  • ゲームをクリアするとピカチュウとの会話シーンをランダムで見続けられるオマケ機能がある。
    • ただし、背景は全て研究所中庭で固定な為、行動と噛み合わないシーンも見られる。
  • ハリウッドで実写映画化されるポケモンの映画は、この名探偵ピカチュウと同じ世界観で作られることが発表され、2019年に日本先行で上映された。
    • ゲーム版ではピカチュウの鳴き声としての声も大川氏が演じているが、映画ではおなじみ大谷育江氏の声になっているなどの違いがある。
    • 最初ティザーででたピカチュウのモフモフ具合から出来が危惧されだのだが、公開されるやキャラクターから世界観から外国人が演じる人間達を含めポケモンが見事に描かれていた。これほどゲームの映像化で好評となったのは今作と、監督が原作オタクで再現度半端なかった「Silent Hill」位。
      • この作品が全ての理由ではないのだが、同時期予定だったソニック・ザ・ヘッジホッグのキャラクターデザインが1から仕切り直しをする羽目になり公開も延期になった。日本人ではなく米国人がソニックの造形を名探偵ピカチュウを例に出して糾弾していた程。
  • 海外版は未発売である。しかし、このPVを見たプレイヤー達は「自国にローカライズされるなら是非○○を声優に!」として名俳優を推薦するなど、署名運動まで起きているという。
    • なお、前述の「本編」は各国でローカライズされている。