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テイルズ オブ ハーツ アニメムービーエディション/CGムービーエディション - (2017/05/06 (土) 00:39:53) のソース

*テイルズ オブ ハーツ
【ているず おぶ はーつ】

|ジャンル|ロールプレイングゲーム&br()(シリーズ内ジャンル名:心と出会うRPG)|&amazon(B001HBIPT4)※アニメムービーエディション|&amazon(B001HBIPTE)※CGムービーエディション|
|対応機種|ニンテンドーDS|~|~|
|メディア|2GbitDSカード|~|~|
|発売元|バンダイナムコゲームス|~|~|
|開発元|ナムコ・テイルズスタジオ|~|~|
|発売日|2008年12月18日|~|~|
|定価|6,650円|~|~|
|プレイ人数|1人|~|~|
|レーティング|CERO:B(12歳以上対象)|~|~|
|コンテンツアイコン|犯罪|~|~|
|判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~|~|
|>|>|>|CENTER:''[[テイルズ オブ シリーズ関連作品リンク>テイルズ オブ シリーズ]]''|
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#contents(fromhere)
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**概要
-テイルズ オブシリーズのマザーシップタイトル第11弾。テイルズスタジオ初の携帯機オリジナルタイトルである。キャラクターデザインはいのまたむつみ。
-OPテーマは『テイルズ オブ デスティニー』のDEENが再度担当。過去のOPのアーティストが担当するのは『[[テイルズ オブ シンフォニア]]』に次いで二度目で、同一タイトルでない作品では初めてである。((外伝作品も含めれば、テンペストとこの作品の半年前に発売されたラタトスクの騎士の主題歌を担当したmisonoが初である。しかも彼女にいたってはday after tomorrowとして本文中にもある『シンフォニア』の主題歌を歌っている。))
-本作以降、テイルズ オブ シリーズでは外伝及び派生作品を除いて2D作品が制作されておらず、本作が完全新作マザーシップタイトルにおける事実上の最後の2D作品となっている。

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**特徴
-『イノセンス』の倍の容量となる2Gbitカートリッジを採用。開発当初のコンセプト通り、据え置き機に迫るほどの大ボリュームが特徴。
--『イノセンス』までには無かった作中ムービーやイベント&スキットでのボイスも据え置き機程ではないが実装されている。シナリオ自体のボリュームも大幅に増加し、此処については据え置きシリーズ作品に比肩する程。
--システム面ではPS2版『デスティニー』のものを更に洗練させたアクション性の高い戦闘システムを搭載し、今迄のDS作品にあったボリュームの薄さを大幅に改善。ようやく「DSで本格的なテイルズが出来る!」と多くのファンを喜ばせた。
--以前のDS作品『テンペスト』はディンプス、『イノセンス』はアルファ・システムによる外注作品で、本家テイルズスタジオ製作の本作には相当な期待があったのである。そして、本作の完成度は概ねその期待に応えたと言えよう。

-行動のためのパワーソースをPS2版『デスティニー』の「CC(チェインキャパ)」というポイント制から「EG(エモーショナルゲージ)」というゲージ制に変更。
--EGは青と赤の2色のゲージで表現され、青ゲージでは特に問題ないが、EGが最大値の半分を超えゲージが赤くなると受けるダメージが増え、EGが最大値の状態でガードをするとEGが半減した上で必ずガードブレイクしてしまう。
---これにより、青ゲージのままでは技を長く連発できず、かといって赤ゲージでは敵の攻撃に注意しなければならないという駆け引きを生み出している。
--PS2版『デスティニー』では術技が便利すぎるために使用するメリットが全くなかった通常攻撃に、長押しで力を溜めて発動する「相手のガードを崩す『ガードブレイク』」や特定のアクセサリーを装備することで発動が可能な「敵のアイテムを盗む」「異常状態にさせる」など様々な効果を追加している。
---ちなみに溜め攻撃自体は初のDS作品である『テンペスト』で既に登場しているが、戦闘システムの都合上一種類しか出せなかった『テンペスト』に対して、4方向全ての攻撃に対応している点が異なり、同作で消化不良気味だったシステムを上手く昇化出来ているとも言えるだろう。
--戦闘中のアクションも二段ジャンプ可能な「エアリアルジャンプ」高速で後退出来る「バックステップ」、空中でもある程度行動可能な「エアステップ」等のスキルの搭載でよりスピーディかつ緻密な操作が可能となり、2Dの戦闘フィールドを縦横無尽に駆け回りながらの戦闘はDSテイルズとしてはかなり爽快感がある。

-「コネクトパネル」
--戦闘中、下画面に設定したキャラクターの技が並んでおり、それをタッチする事でCGを消費し、そのキャラクターに術技を使わせる事が出来る。プレイヤーキャラの5,6番目の術技や戦闘参加中の仲間の術技をセットする事でいわゆる「ショートカット」の操作を行う事が出来る他、戦闘に参加していないキャラを「援護攻撃」という形で参加させることが可能。条件をそろえればシリーズキャラやナムコキャラを呼び出すことも可能。
---当初はセットできる術技は少ないが、使用していくにつれてどんどん増えてゆく。
--特定の援護攻撃と操作キャラクターの術技をタイミングよく合わせると「合技」という二心一体の技に昇華し、より強力な攻撃となる。一応これに近いシステムは過去作では『エターニア』の「協力技」が存在しているが、4種類のみだったあちらとは異なり21種類と大幅に増加している。

-武器「ソーマ」を進化させていくシステム「ソーマビルド」。
--敵を倒したりフィールドで手に入る「素材」を使用することで、能力を向上させる「パラメータスキル」、特殊アクションを発動する「アクションスキル」、特殊効果を付加する「サポートスキル」、術技を習得する「バトルスキル」を習得させることができる。
--「ソーマエボルブ」ではパラメータ・サポートスキル重視の「赤」、パラメータ・バトルスキル重視の「青」、サポート・バトルスキル重視の「緑」の内1つを選んで形態を変化させていく。
--ソーマ以外の装備品はアクセサリしか存在せず、武器防具の買い替えや装備変更の面倒さを取っ払っている。
---またこれらの育成システムがメインの為か、LVUPでのパラメーター上昇値はかなり低くなっている他、LVによって新しい術技やスキル等を習得する事も無い。

-キャラクター同士の結束を強め、様々な恩恵を与える「ソーマリンク」
--「ソーマを持つ者同士が結束を固めるとソーマ同士に特別な繋がりが生まれ、ソーマの威力が上がる」という設定で、ストーリー上中盤以降で大きく取り沙汰されるが、戦闘でも影響を及ぼすシステムとして扱われる。本編中のスキットでの選択肢や戦闘メンバーとして参加させる、合技を使うなどでキャラクター同士のソーマリンクの値が上昇していき、一定値以上になるとソーマビルドでは覚えられないサポートスキルやパラメータスキルを習得できる。
--要するに、『シンフォニア』の好感度や『イノセンス』の絆値の発展版とも言うべきシステムで、それらとは異なりスキル取得に関わるという関係で戦略に組み込みやすいのが特徴か。

-「治癒石」
--シリーズお馴染みの「料理」システムの本作版と言えるシステム。序盤で入手出来る治癒石に「発動条件」「HP回復量」「付加効果」を設定し、戦闘中に発動条件を満たした場合に味方のHPを回復したり、ステータスを上昇させたり敵のステータスを引き下げる事が出来る。あらかじめフィールドや町で使用し、全快した上で追加効果の恩恵を受けたまま戦闘する事も可能。
--最初は設定できる条件等は少ないが、各地にある「治癒石屋」にてそれらを購入する事でカスタマイズ項目を増やしていく事になる。
--治癒石には「ヒールエナジー」という値が設定されており、これが尽きると回復効果を発動できなくなってしまうが、フィールド上にある「治癒原石」や治癒石屋、スピルメイズでの宝箱等で容易に回復できるため、よほど無計画に使用しない限り枯渇するような事は少ない。
--戦闘中は最大5回まで治療石を発動させる事が可能で、初心者もガルドを貯めれば回復のゴリ押しで勝ち進める事が出来、敵の攻撃力やクリティカル率が尋常でない程に跳ね上がる高難易度でも欠かせない存在となる。

-「スピルリンク」
--ソーマの持つ機能の一つで、「悩みのある人間の心((作中では、「心」はほぼ「スピリア」と呼称されている))の中に入り込んで、その原因を探る」という設定で、「スピルメイズ」と呼ばれるダンジョンを進んでゆく。本編では勿論、サブイベントや話しかけたモブキャラに特定のアイコンが付く事があり、そのキャラクターに話しかけるとスピルリンクする事が出来る。
--スピルリンク出来るキャラクター、クリアしたキャラクターは別個の項目にまとめられ、一度クリアしたキャラクターのスピルメイズには記憶陣の上に限って何度でも挑戦できる。
---スピルメイズはランダムダンジョンであり、「リンクカウンター」と呼ばれる所謂歩数制限がかかっている。徘徊するモンスターとの戦闘に勝利したり、所々にある赤色の宝箱から補給するなどしてリンクカウンターが尽きないようにしながら最奥地に進んでゆく。
---…しかし、色々と調整不足な点が見られる。詳しくは後述。

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**評価点
-『眠り姫』の御伽噺をモチーフにしたストーリー
--複雑でダーク寄りだった昨今の作風から一転して王道路線になっている。これといった斬新さやインパクトにこそ乏しいが、安定しながらも適度な起伏や見せ場も多く好評。

-キャラグラフィック面も『イノセンス』迄のポリゴンではなくドット絵に変化しているが、中々の造詣。
--DSはスペック上人物の精密なポリゴンを描ききるのは難しく、「テンペスト」「イノセンス」ではその造詣の粗さも問題となっていたが、ドット絵になった事でキャラクターの造詣がデフォルメこそ利いているが充分整ったものになった。
---フィールドや町、ダンジョン等でのドット絵は小さめだが、戦闘中のドットは些細な表情の変化やリアクション、アクション時の躍動感等をしっかりと表現している。

-戦闘以外の上下画面を生かした演出・システム
--前作までのムービーでは上画面のみを使用した物になっていたが、本作のオープニングでは上画面のみならず下画面にもムービーが表示される仕様になっていて、当時のニンテンドーDS作品では当たり前になりつつあった上下ぶち抜きの大迫力のシーンはともかく、上下画面それぞれ別の場面が映るシーンの存在もあってか演出面もグレードアップ。
--また、本作では街道やダンジョンでも下画面にマップが表示される様になった為、前2作と比較してダンジョン内での迷いやすさも大幅に軽減されていると言える。

-個性的なキャラクターたち。
--一見華麗なのに『[[エターニア>テイルズ オブ エターニア]]』のファラも顔負けな格闘少女っぷりを見せ、故郷では訛りがすごいコハク、普段は粗雑な態度で、作中で『シスコン』と称されるほどに妹想いだがいざという時には頼れる兄貴のヒスイなど、魅力のあるキャラクターは本作でも健在。中でも18歳で身長148cm、一人称は「ボク」で舌足らずで童顔な女性・ベリルの特異さが際立っている。
---性格もまた、見た目に似つかない俗物ぶりでメンバーのムードメーカーとして存在を発揮する。
--主人公のシングはありがちな主人公の見本のような性格だが、逆にそれが「無個性が個性」というネタになっている。
---だが決して没個性的な訳ではなく、シナリオの随所で幾度も身を挺してヒロインや仲間を救い、時に理屈でなく自分の身体を盾にして相手の荒んだ心に訴えかける等、正統派熱血主人公の鑑とも言える活躍を見せ、シリーズでもトップクラスに色恋沙汰に敏感な主人公でもある。そしてこれまでテイルズ主人公の初期技として登場してきた「魔神剣」「蒼破刃」をどちらも覚えない(「蒼破刃」は仲間との合技でなら使える)。
---また、近年シリーズ作品でよく見られる拒絶や賛否両論を引き起こすような尖った性格付けや極端な描写が少ないのも評価点。それ故に、それらの作品から本作に入ったプレイヤーの中からは『''久々に安心してキャラ達を見れる''』等の意見も。パーティー全体の雰囲気も最初こそとある事件によって若干ギスギスしているが、それでもさほど刺々しいものではなく、全体で見れば安定した結束力と明るさを見せてくれる。
//他作品のことは細かく書く必要はない
//別に細かくないしいいだろ
--メインキャラ勢だけでなく、敵勢力やサブキャラクター達の性格や描写も作り込まれており、シナリオを盛り上げ、時に掘り下げてくれる等存在感が大きい。歴代シリーズにおける漆黒の翼に当たるカルセドニーら十三小隊もNPCキャラながらそれぞれ性格や描写が作りこまれており、序盤こそ立場上敵対しているが中盤の大きなイベントを境にシング達と共闘関係を築き上げ、かけがえの無い「仲間」としてストーリーに大きく関わることとなる。
---特に隊長であるカルセドニーは、敵キャラで数少ない専用BGMと秘奥義とカットインが与えられており、PTメンバー以外で唯一スキットで参加し、ED中で他のPTメンバーと同じ一枚絵が表示される、終盤でも彼絡みのサブイベントが幾つか用意されている事などから、元々はパーティメンバーとして加入する事が想定されていたと思われる箇所がある。

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**賛否両論点
-序盤のパーティの険悪な雰囲気には、賛否が多く集まっている。
--序盤にシングがコハクの感情の源となる「スピルーン」を砕いてしまった事でコハクが殆どの感情を失ってしまう。それを知ったヒスイはシングを激しく憎悪し、シングの必死の申し出でコハクのスピルーンの欠片探しの旅に同行を許しはするものの、事あるごとに(特にコハクが絡むと)シングを殴打したり露骨に邪険に扱ったりと暴力的なシーンが多い。
--「妹の感情を砕かれた身」という事でヒスイの怒りは最もなのだが、シングの方も深い贖罪と誠意を見せて罪を償おうとしており、そんな彼に対して過剰な暴力や暴言をかける場面も多く、ヒスイの振る舞いに対し不快を抱くプレイヤーも多い。
---後にこの出来事の真相が明かされ、シングに非が無い事が判明した事を境に両者の関係は大きく改善し、中盤以降はヒスイの兄貴分としての見せ場も多くなるのだが、ヒスイがシングに対する今までの仕打ちを顧みたり彼に謝罪したりといった場面が殆ど無い為、人によっては釈然としないことも。
---ただし、シング側も一方的にされるがままな訳ではなく、コハクが絡まない事柄だと反論したり反撃したりしており、逆にヒスイにケンカを売ったりヒスイを殴って無茶を咎めている場面もあり、作中の扱いから2人は「ケンカ友達」としての間柄としている節がある。

-ラスボス本人やその思想について
--本作のラスボスは、大まかに言うと「故郷を復活させるため」に動いており、それ以前から故郷の平和を祈っており、幼馴染の女性と共にある計画を実行するという、『[[ファンタジア>テイルズ オブ ファンタジア]]』のダオスを彷彿させるタイプのラスボスである。
--しかし、ラスボスの故郷が滅んだ理由は彼の想い人(幼馴染の姉)の反対を押し切った強引な手段が原因である上、その手段も多くの人間(女子供含む)を実験素材のように犠牲にした上のものである。案の定それは失敗に終わり、故郷が滅んだ上想い人も巻き込む結果となり、故郷の復活を巡ってもう1人の計画推進者である幼馴染と対立、精神体となった2人は人間の心に寄生しながら永きに渡って争っている。
---その間、ラスボスは多くの人間の心に寄生して崩壊させ、シングやコハクの家族、エストレーガ帝国の先代皇帝もこの争いによって悲惨な末路を迎えている。この事実に、シングでさえ怒りを露にし幼馴染を批判している。
--ラスボス本人も人間の事を見下しており、コハクを甚振りシングを瀕死に追い込み、人間が苦しみ市に行く様を笑って見物したり、彼を何より想っている部下の死を受けても「あの役立たずめ」と忌々しげに一蹴するなど、「平和を望んでいた人物」と言うには納得しがたい悪辣ぶりが随所で目立つ。
--それでいて、最期は自身の内に秘めた欲求が満たされて救われた上で想い人と共に安らかに心中するという、清々しい程の悪役ぶりを見たプレイヤーとしては、どうにも釈然としない。
--一方の幼馴染も同罪ではあるが、自身がラスボスと進めた計画を心から悔いており、自身の行いをヒスイや一般庶民から非難され、一度は協力を拒まれ、ラスボスの差し金とはいえ幾度も人間に命を狙われ、故郷の崩壊する瞬間を一時とはいえ精神が崩壊するまで繰り返し強制的に見せつけられるなどの仕打ちを受け、それを巡る本人の心理描写もされている為、批判は少ない。

-後半からストーリーに回りくどい箇所が出始め、主人公よりもあるNPCに焦点が傾く展開になりがち。
--無駄に広大なダンジョンが出てきたり、短いダンジョンでもちょっとしたイベントを律儀に解決する為何度も同じところを往復させられたり…と、明らかに水増し感の漂っている。
--複雑なダンジョンやイベントを経てようやく手に入れた手段等が悉く無駄に終わる展開もあり、ダンジョンの仕掛け等に苦労した身としてはやるせない気分になる場合も。ただその中でも見せ場と言えるイベントも多く、決して退屈なだけではない。

-通信要素の削除
--前作、前々作ではワイヤレス通信を行う事で協力プレーを行う事が出来たが、本作ではその要素がバッサリと削除され一人用ゲームになってしまった。

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**問題点
-PS2版『デスティニー』と同じくボタン連打のみで簡単にコンボがつながってしまうため、戦闘は依然として作業的。
--「星塵絶破」「スラッシュからぁず」といった一部の超強力な技の存在により、他の技を使用するメリットが少ないという批判点もあげられる。下に記すような対策はされているが、多くが容易に解決出来てしまう。
--ハメ技のレシピ量はシリーズ随一。主人公のシングはコンボパーツに最適かつ強力な特技が目白押しで、初心者でも重い相手でない限り「翔星刃」を連発していれば大抵の敵大抵の敵を空中に押し上げた上で無双できる。
---空中戦を重視しているシステムの為か、地上でハメ続けると敵に無敵判定が出てコンボを抜けられてしまう反面、空中ではそのような制約が一切無い為、余計に空中でのハメ戦法に拍車をかける結果となった。その都合上、浮きやすい敵と浮かない敵とで体感的な強さの差が激しい。だがそれも中盤以降手に入る状態異常を与えるアクセサリー等である程度解決可能。(ある程度工夫は必要だが)
--グレードに関しても地上コンボではほとんど上がらないのに対して空中コンボだと飛躍的に上昇するため、意図的に空中コンボ優遇のバランスにしたのだと思われるが、そのせいでワンパターン化や敵の強さに関する歪みが出来てしまっている。
---なお、今作はラスボスも隠しボスもよく浮く。よって浮かない雑魚よりも倒しやすい。特にイネスの「マーメイドジュヌ」やシングの「翔星刃」でのハメが決まれば、ラスボスも隠しボスも簡単に倒せてしまう。((但し両者とも鋼体が強力かつ動きも俊敏で戦闘フィールドを縦横無尽に駆け回り、更に多くの攻撃に一瞬無敵判定が付くのでハメられる状態に持ち込むのは決して容易ではない))
--ただ中には''地上空中問わずハメている最中に問答無用で無敵判定が出て脱出、反撃する''というとんでもない仕様のボスも存在する。
---逆に、このボス相手には秘奥義以外でコンボを繋ぐ事がほぼ不可能なためまとまったダメージが与えられず、今度は不毛な長期戦を強いられてしまう。
--作戦等でCPをその場に固定させる事が出来ない。仮に魔法使い系キャラを隊列の一番後ろに設定し、攻撃等をしないよう作戦で指示しても敵が迫ったりすると勝手にそこら中を動き始めてしまう。これによって従来の2Dテイルズ作品のように「後衛1~2人を動かさず魔法やアイテム使いして、残りの前衛だけで敵の足止めをする」という戦法が困難になってしまった。
---キャラが勝手に動き回ることで勝手に敵陣のド真ん中に来てダメージを受け続け、彼等分の回復にまで常に気を配らなければならなくなる為、従来作品のような戦法をメインにしようとするなら結構なストレスになりかねない。
--ボス戦だとこちらの''秘奥義の威力が3割にまで減る''という仕様があり、ボス戦で秘奥義をダメージソースにしづらい。

-『リメイク版デスティニー』から殆ど変化の無い戦闘画面。
--戦闘時の雑魚敵のモデルも相変わらず『D2』『リバース』からの流用が大半を占めていて新鮮味が無く、戦闘システムの特徴も相まって『リメイク版デスティニー』からあまり写り映えが無い。
---おまけに『リメD』では新規グラフィックが用意されていた中ボス達にも「グラシャラボラス」や「ヴェパール」等、まんま過去作から持ってきた流用が目立つ始末である。

-全体的に一本道で、以前に通過した町や村に引き返したりするのが非常に手間。
--本作のフィールド移動は従来シリーズの中でも特殊で、他の街やダンジョンに行く為にはそれらを繋ぐ『街道』という別のフィールドを移動しなければならない。街1つ分の移動でもそれなりの距離があり、序盤の終わり以降シナリオの大半を占める中央大陸で多くの街を訪れる事となり、サブイベント等の関係で離れた街やダンジョンに行くとなると相当時間がかかってしまう。
--一見すればまだ行った事の無い街等にも行けそうでもあるが、シナリオ上行くことが決まってる場所以外には『この先は○○で危ない』『ここは違うだろう』等の理由で行くことが出来ず自由度が低い。中央大陸は様々な方角に道が分かれており、行く先々でこれらのメッセージが出て辟易する事も。
--街道の風景や構造も基本的に似たり寄ったりで、見栄えにも乏しく行き来にあたっての作業感が強い。((雪国や砂漠等ではそれに準じた地形にはなるが、変わり映えが無い点は同じ))~
もっとも、本作では街道のマップも下画面に表示される為か「前2作よりはマシ」なレベルになっているのが救い。
---加えて、街道はダンジョン扱いになっているのか、従来のシリーズ作品のようにメニューを開いて自由にセーブをする事が行えず、フィールド画面なのにいちいち記憶陣を探す必要があり面倒。
---一応現在居る大陸(中央大陸は段階ごとに)にある街やダンジョンを全て巡って『踏破』すると、ようやくフィールドマップ上を歩ける様になる。本作でのフィールドマップは従来作よりもサイズが小さく設定されていてモンスターとのエンカウントも無い為、移動の手間を大幅に短縮出来るようになり、またここでシリーズお馴染みの「フィールドマップ上での自由なセーブ」もようやく可能になる。

-「スピルメイズ」に難がありすぎる。
--ランダムダンジョンでリンクカウンターの消費ペースも早めなため、簡単に進める事もあるが複雑な構造の場合、迷ってしまうとリンクカウンターがかなり簡単に尽きてしまう。
--一部の宝箱や、戦闘によってリンクカウンターを回復する事が出来る。というよりほぼ必須であるため、シンボルエンカウントにも関わらず戦闘を事実上強制される。そして、戦闘をきちんとこなしていても、ダンジョンの構造と運によってはリンクカウンターが尽きる事も……。積極的に敵と戦ってリンクカウンターに余裕を持たせようにも、敵の配置がかなりまばらな為それもままならない。
---宝箱による3段階の回復効果も低めで、一番大きい「大回復」でようやく多少余裕がもてる程度で、一番低い「小回復」に至っては連続して取らない限り焼け石に水程度しか回復しない。もう少し増やしても良かったのでは?
---また中盤以降のスピルメイズでは、『''リンクカウンターの消費が早まる''』というデメリット効果の宝箱も多く配置されるようになる。持続時間は10秒なのでその間立ち止まっていれば良いが、この効果の宝箱の割合が多めで、またリンクカウンターを回復させる効果の宝箱と外見が同じなので事前に察知する事も出来ない。連続してこの効果が出てきていちいち立ち止まらなければならない為ストレスになる。そのまま行動すると怒涛の如く勢いでリンクカウンターを消費する。
--ではストーリー攻略の為に最低限必要なもの以外は放置すれば良い…とも言いたいが、これをクリアする事でしか入手出来ないアイテムや称号等も多く存在し、コンプリートを狙うならば必然的にかなりの数のスピルメイズに挑戦しなければならない。
---そもそもスピルメイズの中でだけ歩数制限がある事についての理由付けは、本編では全くされていない。
--リンクカウンターが尽きた場合は'その場でゲームオーバー''で、リスクが非常に重い。本編中でも事前にセーブしておくようアナウンスされてはいるが。
--そして、本作の隠しダンジョンはこのスピルメイズ形式となっている。さらにやり込み要素として、この隠しダンジョンの中にランダム(低出現率)で出現する生物を30匹(うち3匹はイベントで登場するため実質27匹)保護すると言うものがある。隠しダンジョンの強力な敵との作業戦闘を強制されながら、なかなか出現しない生物を延々探し出す作業はかなりの苦痛。しかもこのダンジョン、それなりの設定があり専用BGMも流れるのにマップは汎用のスピルメイズの流用というお粗末なものとなっている。
---救済策として、一定の階層までたどり着くとそこから再開出来るようになる為、一度その層まで行ってしまえば徐々に探索も楽にはなってくる。
--とどめに、下画面のダンジョンマップも街道や通常ダンジョンとは異なり明確な分岐点等が記載されず大雑把で、フロア出口の方向確認くらいしか役に立たない。
---一応メインシナリオで必ず入る事になるスピルメイズでは初期リンクカウンターが多く設定されているので、サブイベントや裏ダンジョンでのそれと違い『スピルメイズがクリア出来なくてシナリオが進まない』という事態にはさほどならないのが救い。

-BGMの音質が全体的に粗い。
--音割れが目立ち、それを抜きにしても他のDS作品の中では粗が目立つ部類。特に戦闘終了後のリザルト画面でのBGMは聞くに堪えない程。スピーカーの音質が改善されたDSiや3DS(LLは除く)、もしくはイヤホンで聴けばそれなりに聴けるようになる。
---また曲自体のクオリティは悪くはなく、機械人戦の「誰がために戦うか」、カルセドニー戦の「飛翔!対空!!」、ラスボス戦のBGMは評価が高い。

-称号コンプリートが不可能
--というのも、称号の中には特定の街にいる住民と会話する事でプレイヤーキャラの戦歴に応じて入手出来る物が存在するのだが、称号獲得済みのキャラの記録が他のキャラに抜かれてしまった場合は称号が剥奪されてしまう事から、全キャラでの戦歴称号獲得は事実上不可能とされている。
---この為か本作での称号コンプリートは通常称号+戦歴称号とややこしく、シリーズにおけるやり込みの醍醐味が潰されてしまっている。

-一部ミニゲームの規模の小ささ
--本作にもシリーズお馴染みの闘技場やカジノがあるが、そのどちらも従来シリーズ作品と比べると規模の小ささが否めない。
--闘技場は個人戦しか出来ず、勝利ごとのキャラの掛け合いのバリエーションも基本使い回しで、優勝した際のやり取りも全員同じ会話…と、ボリュームに欠ける。((一番上のランクで優勝すると受付嬢に惚れられるというイベントがあるが、会話が同じな為男女問わず全キャラが惚れられる形になってしまう))
---一応『[[アビス>テイルズ オブ ジ アビス]]』のガイ・セシルと対戦できるサプライズはあるが、戦闘中のボイスどころか会話も無く終始無言な為味気が薄い。
---加えて、コネクトパネルで召喚可能な歴代キャラクターも、シナリオで戦闘可能なカルセドニーにしかボイスが無い。
--カジノもスロットしか出来ず、しかも大当たりを出してメダルを入手するより、純粋にガルドをはたいてメダルと換えた方がずっとコスパが良い。終盤のスピルメイズを巡っていると高価な素材が大量入手出来、それを換金すればさほど難しくない。
---また、カジノの景品交換のシステムも拙い。普通のショップと違い、一度につき1つずつしか入手出来ない上、所持限界数以上の場合にその景品を入手すると「持ちきれませんでした」というメッセージと共に''入手した景品が無駄になってしまい、その分のメダルも返却されない''という重大な欠陥がある。~
恐らく普通の宝箱などでアイテムを入手した際の処理を使いまわしていると思われるが、結果として景品交換のシステムが非常に不便かつ億劫なものになってしまった。シリーズでは数少ないドーピング用の薬草を比較的安価に扱っている場所なだけに尚更惜しいところである。

-重大なバグの存在
--ひとつは、序盤の町のスピルメイズクリア後に使えるようになるアヒルボートの選択肢で「アヒルボートNO!」の選択肢を選んでから町から「フィールド」に出ると画面が孤島に切り替わり、そこから脱出できなくなる現象。
--もうひとつは、クリア後にラスボスをもう一度倒すと裏ダンジョンでイーロイを集めた数、および町の発展状況がリセットされてしまうというもの。
---どちらもゲームの進行や攻略に大きな支障を与え(前者に至っては「ハマり」)、その条件も通常プレイで充分ありうる範疇のものであり、これらに泣かされたプレイヤーも居るだろう。

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**総評
シナリオ、システム面共に若干の粗こそあるが総合的にはしっかり作り込まれており、携帯機のRPGとしては十分良作と呼べる作品である。~
昨今のハイスペック据置機のシリーズ作と比べればボリューム面で物足りない部分もあるが、ハードの性能を考えればそれは仕方の無いものであり、実際に携帯機でこのボリュームを実現した事を評価する声は多い。~
まして極薄ボリュームとしてファンのDSテイルズへの期待を失墜させた「テンペスト」から、これほどボリューミーな長編RPGにまで昇華させたというのは非常に大きいだろう。

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**CG版について
-本作は、収録ムービー''だけ''が異なるという異例のバージョン分け商法が取られている。
-一つは従来通りのアニメーションムービーを収録したもの。もう一つは、シリーズ初の3DCGキャラクターによるムービーを採用。CGムービーはリメイク版デスティニ―でCGムービーパートを担当した白組。
--が、このCGキャラがいのまたイラストとは大きくかけ離れたアレンジであり、シリーズファンから満場一致で「キモい」「''[[モッコス>ゼノサーガ エピソードII 善悪の彼岸]]の再来''」「コレジャナイ」の烙印を押されてしまった([[参考動画>http://dic.nicovideo.jp/v/sm5725304]] アニメVer.とCGVer.OPの比較)。

#region(登場キャラの簡易比較、画像サイズが大きいのでクリックしてご覧頂きたい)
#image(TOHhikaku.jpg,title=もはや別人…。)
#endregion

-結論から言えば「公式『実写版○○』ネタ」状態。「元々アニメ調のいのまたデザインを、CG化すること自体が無茶」との声は発売前からあったが、その不安が的中してしまった。
--どんな感じかというと、兎に角リアルさが悪目立ちをしてしまっている。いのまたデザインの西洋ファンタジー風の凝った服を世界観に合わないアジア系の薄い顔な顔立ちのキャラ達が着ている為、ただのコスプレ集団にしか見えない。グラフィックの元絵とのギャップの凄まじさ故に相当叩かれてしまった。
--そもそも、アニメ風のキャラクターデザインや漫画的表現がこのシリーズの特徴でもあり、それをわざわざリアルなCG化をしようという発想自体が間違っている。
--CG版は「[[同じ路線で行くとマンネリ化が進むため、あえてユーザーの想像しなかったであろうCGでの表現に踏み込んだ>http://www.famitsu.com/interview/article/1216801_1493.html]]」という考えから開発されたが、裏目に出ることとなった。
--なお、テイルズキャラがリアルな3DCG姿で登場したのは『ソウルキャリバーレジェンズ』でゲスト参戦した『シンフォニア』の[[ロイド>http://www.soularchive.jp/SCL/contents/character/lloyd.html]]が最初である。こちらはそれほどギャップは激しくない。~
とは言え違和感自体はどうしても出てきてしまうため、否寄りの評価となっている。ネタ的に「8頭身ロイド」・「きれいなロイド」などという呼ばれ方をされることはある。

-また、CG版の他の部分でのキャラグラフィックは''アニメエディションと共通''であり、''ゲーム内容にも一切差は無い''(公式でもそう説明されている)。
--ゲーム中でのキャラの立ち絵やスキットでの顔グラフィック、秘奥義発動時のカットインも全てアニメムービーエディションと同じな為、CG部分とアニメ部分のちぐはぐな混在によって視覚的にも違和感が大きい。
--そのため、内容に差がある『ポケモン』や『ドラクエモンスターズ』とは異なり、CG不人気も相まって完全に誰得となった。
-エディション毎に違う特典を付けた商法も相まって早々にワゴン送りとなり、セールスもアニメムービー版の1/6程度という散々な結果になってしまった。

-しかし、CGのクオリティ自体は最高峰で、DSでここまで出来るのかと思うほど精巧。
--また、「リアル過ぎる」との批判は、リアルを追求するCG製作会社にとっては最大の褒め言葉とも言える。白組の技術が伺い知れるであろう。元絵とのギャップは凄まじいが''見ないまま放っておくのも勿体無い''ものである。
--CG版は中古価格が大抵3桁になっている為、いけるクチならば十分満足できうるだろう 。内容は同じなんだし

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**その後
-いのまたテイルズの次回作『グレイセス』では『イノセンス』同様の3Dグラフィックとしての発売となった。
--そして同作が転機になったのかは定かでは無いが、以降の作品ではキャラデザ問わず3Dが基準になり、2Dテイルズは衰退への道を歩む事になってしまった。
-『テイルズ オブ バーサス』では、主人公シングとヒロインのコハクが出演している。また、『テイルズ オブ グレイセス』にはコハクが、『テイルズ オブ イノセンスR』にはコハクとヒスイが出演した。
-PS vitaで今作のリ・イマジネーションとして『[[テイルズ オブ ハーツ R]]』が発売。本作でNPCだったカルセドニー、新規キャラのガラドがパーティに追加されている。
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