魔女になる。
【まじょになる】
| ジャンル | アドベンチャー |  
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| 対応機種 | ニンテンドーDS | 
| メディア | 512MbitDSカード | 
| 発売元 | トライファースト | 
| 開発元 | タムソフト | 
| 発売日 | 2009年6月11日 | 
| 定価 | 5,040円(税込) | 
| 判定 | なし | 
| ポイント | 大友向け…と思いきや中身は完全に女児向け どこの層狙いなのか謎な作品
 全体のボリュームは少なめ
 第5話のみ第13話クリアで解放される謎仕様
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概要
王道的な魔法少女アニメ的世界観をテーマとした、低年齢の女の子向けのアドベンチャーゲーム。
魔女に憧れる女の子・ビッテがある日手に入れた「マホイタ」をきっかけに少しずつ魔法を使えるようになり、魔法を使っていろいろな問題を解決していくお話。
特徴
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マホイタという黒板のような道具に魔法陣を描いて魔法を発動させる。
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最初は覚えた魔法も少なくやれる事も少ないが、話を進めると新しい魔法を覚えてできる事も増えていく。
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覚えた魔法陣は「まほうメモ」に記録される。魔法を使う時にお手本として表示する事もできる。
 
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豪華なスタッフ・キャスト
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キャラクターデザインはイラストレーターの七尾奈留氏が務めている。
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パッケージ裏には「七尾奈留DSに初登場。」(原文ママ)の一文も。
 
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主人公ビッテの声優には能登麻美子氏、他のキャラにも井上麻里奈氏や沢城みゆき氏など人気声優陣が並ぶ。
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テーマ曲を歌っているのは歌手の霜月はるか氏とこちらも豪華。
 
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スタッフ・キャストを見ると明らかに大きなお友達向けに見えるが、内容は完全に女児向け。
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基本的な物語は「魔法を使えるようになった主人公が魔法で身近な人の手伝いをしたり事件の解決をする」と言う実に王道な物。ダーニャと言う少女もライバル的ポジションとして王道の立ち回りを見せる。
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それでも「格差社会」や「人の魔法への欲」など、シリアスかつシビアな設定も存在する。
 
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ゲームシステムも女児向けらしくとてもシンプル。また、ゲームオーバーも存在しないなど優しい設計が目立つ。物語が一本道な事も良く言えば複雑さを省いた結果だと言えるだろう。
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お色気シーンのようなものは一切存在しない。冗談ではなく完全皆無なので女児も安心して楽しめる。
 
問題点
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全13話だが、1話あたり30分程で終わるので全体のボリュームは少なめ。
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その割には次に向かう場所の指示やヒントを与えられず探し回る展開も多いので、本来のプレイ層である子供にとっては「不親切」に映るかもしれない。
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また、第5話のみ第13話クリアで解放されるという謎過ぎる仕様。
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その第5話はビッテとダーニャを中心に展開される非常に短いストーリー。短くはあるものの物語の鍵を握るダーニャが絡む話であり、クリア後まで後回しになるせいで本編中の彼女の出番や印象を薄めてしまっている印象は否めない。
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クリア後に前日譚として第4話と第6話の間の時系列に挿入したかったのだろうとは察せるが、この調整が適切だったかは疑わしい。不自然に第5話が解放されないまま進む事に違和感を感じる人は少数ではなく、やるとしても第4.5話や番外編と銘打った方が良かっただろう。
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第4話では物語に小さな分岐を起こす部分があるので、それが原因と誤解しやり直した人もいる事だろう。やはり関係は無く第13話クリアまで解放されない。
 
 
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ギャラリーを開放するために本編中でアイテムを集めなければならない。
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アイテムは各話の街中で見つける、「まじょわんグランプリ」で勝利するなどが必要。
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街中で見つける物は基本的にノーヒント。さらに特定の話で訪れた場合でなければ手に入れる事ができないので、コンプリートはかなりの手間が掛かる。
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探し回るには後述のセーブシステム、メッセージスピードと言った問題点が厄介。
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「まじょわんグランプリ」はサブイベントとして開催されるランキング制のバトル大会。開催されるのは第7話から第9話の間だが、まともに戦えるのは必要な魔法が全て揃う第9話だけと不親切。
 
 
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セーブは章の区切り目か話をクリアしたタイミングでしかできない。
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気軽に中断できないと言うのは大きな欠点。最終話には極端に長いシーンがあるのでセーブがしたかったとの声もある。
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ギャラリーアイテムに関するセーブもこの時に行われるため、アイテム回収目的で訪れた時にも物語を進めなければならない。
 
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メッセージスピードが遅く、スキップ機能も無い。
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速度はオプションで変更できるが最大にしても遅い。メッセージが流れている時にボタンを押せば一気にメッセージを表示させられるが次のメッセージまで2連打必要でテンポが悪い。
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ギャラリーアイテム回収の際にはこの仕様に悩まされる事になる。各話冒頭は会話が続くので探索まで数分掛かる事がざら。
 
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グラフィックに関する問題点。
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メインキャラのグラフィックとモブキャラのグラフィックに差がありすぎる。
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具体例を挙げると、メインキャラは七尾奈留らしさのある目や、全体的に鮮やかなグラデーション使いがされていて、とにかく可愛く丁寧にデザインされている。
 一方、モブキャラは目が白と黒の図形で描かれており、塗りもグラデーションが殆ど使われていないいわゆるアニメ塗り、輪郭線も浮き出るように目立つなど、メインキャラとは比べ物にならない低クオリティ感が感じ取れてしまう。
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可愛さや格好良さが目立つデザインでないことはモブキャラだからとまだ理解できても、絵のクオリティの大きな差は引っ掛かる点である。
 
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意図的な物かは不明だが、多くの男性キャラのデザインが評価し難い、割と気持ち悪いデザインに偏り気味。3Dグラフィックでも男性キャラはやたらと頭が大きく違和感を覚える。
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一応、補足しておくと七尾奈留が男性キャラを描けないと言う事はない。
 
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3Dグラフィックは端的に言うと人形っぽい作り。ただ、正面を向いた時に画面の方を向かせるためか、常に顎を突き出して斜め上を向いており、不自然な印象を受ける。移動する時はそのまま走るので尚更。
 
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魔法陣の判定が少しシビア。
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描写失敗と見なされたり別の魔法陣と誤って認識されてしまったりと、正しく認識されない事がそれなりに起きる。
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失敗によって即ゲームオーバーになったりはしない。だが何度も失敗が続くと煩わしいほか、まじょわんグランプリで敗戦する原因にもなるので気になる人は気になる点だろう。
 
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火Lv3の魔法陣だけは別格の高難度。まほうメモで表示したお手本をなぞっても失敗が多発する。
 
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ハッキリしないターゲット層
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前述のように内容自体は低年齢層を意識した作りになっている一方、有名な声優やイラストレータ起用を推していたりと、ターゲット層がハッキリしない。
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そのため、絵や声優に惹かれて遊んだ人にとっては、薄めのボリュームにガッカリさせられてしまうだろう。
 せめてもう少し内容をしっかり充実させてくれていればよかったのだが。
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また、秋葉原で発売記念イベントが行われたり(余談参照)、コミックマーケットで公式グッズが販売されたりと、尚更どちらが本来のターゲット層なのかよくわからない展開も行われた。
 
評価点
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魔法陣を描くゲームシステムは面白い。このゲームの世界観と見事にマッチしており、ハードの特性を活かせている。
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キャラ目掛けて魔法を使うと怒られたり反撃されたりする。その反応を見るのも中々面白い。
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活かされる場面が少ないのは残念だが、ゲーム後半で使用できる「合体魔法」のアイデアも良い。
 
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キャラの可愛らしさ。
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七尾奈留の起用を売りの一つにしているだけあって、メインキャラ達は非常に可愛らしい。
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特に主人公ビッテは表情豊か。少女らしい満面の笑顔などとても可愛らしい。
 
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ボイス付きなのもポイント。パートボイスなのは残念だが、キャラデザインに合ったボイスによって可愛さにより深みを与えている。
 
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音楽も悪くない。
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「けっせん~つよいきもち~」など、地味ながらも心に残る曲もある。
 
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ストーリー自体も基本は子供向けながら「魔法を使う事」の意味を問いかけたり、前述のような「金持ちのみが魔法を使える街」など、考えさせられる部分も多い。
総評
とにかくターゲット層を絞り込まなかった事が裏目に出た、味付けを間違えたよくわからない作品。
女児向けとしては力の入れ所がおかしく、ある程度以上の年齢の人が楽しむにはかなりの薄味。昨今の女児向け朝アニメのような作風を目指したかは定かではないが、大失敗だったと言わざるを得ない。
それでもマホイタを用いた魔法や、王道な展開かつシビアな物語・世界設計は悪くなく、大人でも一回遊ぶ分にはまずまず楽しめる。
女児向けとして見ても、七尾奈留による可愛らしいキャラクターが浮いていると言う事は無く、声優に関しても女児層からしてみれば大物でも無名でも関係ないので別に問題は無かろう。内容は完全に女児向けなので楽しめるはずである。
練り込み不足、テストプレイ不足と見られる問題点は散見されるが、致命的なバグは無く、ちゃんとゲームになっている事も一抹の救い。
余談
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発売元のトライファーストはユークスの子会社だったが、2010年1月に親会社に吸収合併された。
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2000年代初頭のエロゲーバブルの牽引者の一人でもあった七尾奈留氏の人気は当作発売時でも根強く残っていた為か、発売当日には秋葉原のソフマップで購入客を対象にしたスピードくじによる抽選会イベントが開催されていた。
 特賞が七尾奈留直筆イラストとサイン入りの色紙だったせいかソフトを数本買って抽選に挑むファンも多く、中には一人で50本も購入して色紙を当てた猛者もいた模様。
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2023年現在、プレミアが付き中古価格1万~2万円程度で取引されている。
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ゲームの内容は上記の通りあまり優れているとは言えず、かつてはワンコイン程度で売られている事も珍しくなかったのだが、2020年頃から価格が暴騰。
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特に本作のような女主人公のマイナーなDSゲームは一部の転売ヤーやYouTuberによって買い占め・つり上げの標的にされ、このような事になったと言われている。
 
最終更新:2023年04月30日 16:14