アーシャのアトリエ ~黄昏の大地の錬金術士~
【あーしゃのあとりえ たそがれのだいちのれんきんじゅつし】
| ジャンル | 旧約錬金術RPG |  
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| 対応機種 | プレイステーション3 | 
| 発売・開発元 | ガスト(コーエーテクモゲームス) | 
| 発売日 | 2012年6月28日 | 
| 定価 | 通常版:7,140円 プレミアムボックス:10,290円
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| レーティング | CERO:B(12才以上対象) | 
| 廉価版 | Gust Best Price 2013年5月23日/3,800円
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| 判定 | なし | 
| ポイント | 新シリーズ1作目 火力の低いゲームバランス
 続編ありきのストーリー
 BGM・グラフィックは好評
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| アトリエシリーズ | 
 
あらすじ
幾度めかの黄昏の時代が始まり再び何度めかの慎ましやかな生活が取り戻されつつある世界の、とある一地方。
そこには、国家のような統治された組織はないものの、人々が手を取り合って暮らしていた。
その中に、人里離れたアトリエで薬を作って生計を立てている、ひとりの女の子がいた。
彼女の名前はアーシャ。
以前は祖父と妹と3人で暮らしていたが、数年前に祖父が他界した後、妹も行方不明となってしまい今はペットの“うし”がいるだけで、天涯孤独の身となっている。
妹がいなくなってからしばらくは失意の底にいたが、祖父の頃から取引している旅の商人の協力もあり新たな生きがいを見つけ、立ち直ることに成功するのだった。
そして、哀しみの記憶も少しずつ薄れ始めていたころ。
いつものように薬の材料を探して、アトリエ近くの遺跡に出掛けたアーシャはそこで、いなくなったはずの妹の姿を見かけることになる。
妹が生きていて、世界のどこかにいることを知ったアーシャはすぐさま妹を探すために旅立つことを決意する。
手がかりなんて何もないし、何をすればいいかもわからない。
ただ、
この世界のどこかで、妹と再会できることだけを信じて
(公式サイトより抜粋)
概要
アイテムを錬金して別のアイテムを作り出すゲーム「アトリエシリーズ」のシリーズ内シリーズ「黄昏シリーズ」の一作目にあたる作品。キャラクターデザインは左氏。
世界観を一新しただけでなく、システム周りにも今までにない大胆な変更が行われた。
また本作以降、シリーズ作品はサブタイトルに舞台となる地名を冠しないようになった。
新要素
戦闘面
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前作『メルルのアトリエ』のコストターン式を踏襲しつつ、位置と距離の概念が導入された。
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キャラクターには得意な距離が設定してあり、敵との距離によっては追加ダメージやノックバックなどの追加効果が発生する。
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敵を後ろから攻撃するとバックアタックとなり必ずクリティカルになる。なお、戦闘は必ずこちらが敵を囲むような形で行われるため、敵にバックアタックされることは無い。
 
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サポートシステムが一新された。
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前作ではサポートシステムは主人公を中心に仲間がアシスト攻撃、防御するというものだった。
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本作では誰に対してもアシストができるようになっているので、アーシャも仲間に対して「追撃」や「かばう」などもアシストを行うことができる。
 
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また、防御に代わり移動というコマンドが追加され、LPというステータスが削除されている。
調合面
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調合スキルと属性値の追加。
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素材の品質や特性が固定となってしまったが、素材を投入する順番を変えたり調合スキルを使うことで多様なアイテムが作れる。
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出現させたい特性をどうやって出すか頭を捻るのは前作までとの調合とはまた違った楽しさがある。
 
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調合の失敗という概念が廃止された。
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本作ではアイテムの指定レベルに達してないと、そもそもそのアイテムを調合できない。
 
評価点
BGM
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前作のアーランド編と雰囲気を変えようとしたのか、曲の方向性が結構変わっているものの、アトリエシリーズの例に漏れない良質なBGMが揃っている。
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必殺技のトドメ用BGMも前作は正統派のものが多かったが、本作は割とネタっぽい曲が増えている。
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採取地によって戦闘BGMが変わるなど、BGMの使い方も工夫がなされている。
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ただ、本作のボスを瀕死に追い込んだ時にBGMが変わる演出については賛否が分かれ気味である。
 
その他の評価点
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EDが選択できるようになったので優先順位を考える必要がなくなった。
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街中でスタートボタンを押すと一瞬で任意の場所へ移動できるショートカット機能が採取地でも使えるようになった。
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採取地からスタートボタン一つでフィールドに脱出できるのは地味ながら大きな利点と言える。
 
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チュートリアルは本作も丁寧。
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システムがシンプルになったのもあってアトリエ初心者にも取っつきやすい。
 
問題点
戦闘関連
前作の戦闘システムの評価が高かったため、何かと比較される傾向にある。
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前作と比べてキャラクターが没個性的である。
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全員が中範囲以上の範囲攻撃(全員円形型)を持っており、スキル構成も似たり寄ったりである。
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ステータスには上限値が設定されているが、装備を作り込むと簡単にカンストするパラメーターも多く、ステータスで差別化を付ける事も難しい。
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このため、誰を選んでも似たような戦法になる。
 
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新たに導入された位置と距離の概念も作り込みは甘い。
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終盤の敵は散開してても容赦なく全員に攻撃を当ててくるし、こちらの回復アイテムも全範囲なので位置に気を遣う必要があまり無い。
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そのため「移動」コマンドが死にコマンドと化している。前作では「防御」は戦略的に非常に優秀だったので不満に感じたプレイヤーは多い。
 
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火力の低さ。
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こちらの火力は全体的に不足気味なのに、終盤はボス、雑魚問わず攻撃回数で押してくる敵や回復持ちの敵ばかりなのでテンポが悪い。
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攻撃アイテムの火力が低すぎて終盤では使い物にならないので、アーシャはひたすら回復や補助アイテムを投げ続けるしかない。
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作り込み次第でラスボス級の敵ですら瞬殺できた前作の爽快感は全く感じられない。
 
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新シリーズ一作目ということを考慮しても敵の種類が少ない。
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雑魚敵のグラフィックは9種類しかない。色違いが大抵4体以上いるので余計に使い回しが目立ってしまう。
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有料、無料DLCの追加ボスキャラクターも本シナリオの使いまわしなのは、少しさびしい。
 
ストーリー
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伏線を投げっぱなしにしたままで終わる。
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イベントの随所に話を広げるだけ広げて回収は続編でする、という魂胆が見てとれる。
 
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また、黄昏の荒廃した世界という設定を活かせてない。
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作中の雰囲気は明るい。たまにある世界に関する会話でようやく荒廃設定を思い出すくらい。
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インタビューによると、アトリエファンが混乱しないように敢えていつも通りの雰囲気にしたようだが、やはり設定との乖離は気になるところである。
 
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前作でも指摘されたが、キャラクターを掘り下げるためにあるサブイベントが薄い。
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その割にサブイベントの数自体は多く、街に入ろうとしたらイベント、アトリエに入ろうとしたらイベント、という風にゲームの進行を阻害されることが多々有り、
 特に大体のイベント内容を理解している二周目以降では人によってはストレスを感じるだろう。
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一応、2周目プレイ時ならば既に見たイベントは高速スキップが出来る。
 
その他の問題点
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仲間にできるキャラクターが女性に偏っている。
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男が2人しかいないのに対して女は5人もいる。有料DLCでさらに女性キャラが2人増えたのでバランスがさらに悪くなった。
 
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依頼のユーザーインターフェースが劣化している。
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前作では受けた依頼はメニュー画面からいつでも確認できたが、本作ではそれができず、非常に面倒。
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また、依頼で要求されるアイテムは固定の上、依頼を受けた段階では明らかに作成不能なアイテムを要求するなど調整不足が目立つ。
 
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EDまでの期間が3年に縮んでしまった。期間の延長も全くない。
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前々作、前作の期間が5年なので、シリーズ経験者はよりボリューム不足を感じやすい。
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発売前の情報ではゲーム期限が無いとされていた事も、ユーザー側の期待との齟齬を生んだ。
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武器作製やフィールド移動にそれほど日数がかからなくなったので、見た目の数値ほど大幅にボリュームダウンしてないのが救いか。
 
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バグ及びパッチの問題
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初期バージョンにおいては、リンカというキャラ関連で強制終了及び進行停止となるバグ、また装備に重複する効果を付けられるバランス面の不備があった。
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その修正としてパッチ1.01が配布されたのだが、その結果として図鑑の内容を未記載状態にされてしまうバグが発生する。
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その後DLC用の追加データを含む1.02が配布された…が、今度はナナカと初めて出会うイベントで進行停止するバグが。メインシナリオ上のイベントの為ゲームを進められないという事態に。
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さすがにこの致命的なバグに対する対応は比較的早かったが、一連の流れは品質管理に大きな問題を抱えていることを示した。
 
 
賛否両論点
立ち絵の廃止
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アトリエをキャラゲーとして楽しんでるユーザーからは豪華絵師によるイラストも大きな魅力であったので、立ち絵の廃止を惜しむ声は多い。
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演出面にも弊害が出ており、本シリーズの3Dモデルは徐々に進化しているが、目線や口パクが合ってないことも多く、イベントシーンを全て網羅できるほどの出来とは言えない。
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また、立ち絵と3Dモデルを併用していた前作と比べると表情も少ない。
 
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これらの理由から、本作はキャラクターの描写が不十分で魅力を伝えきれてないと批判されている。
素材の品質・特性の固定化
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これにより有用なアイテムを作るために素材の選別をする必要がなくなった。
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さらに言うと、大半の素材を量販店に登録できるため、そもそも自主的に採取する必要が殆どない。
 
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面倒な作業をする必要がなくなったと歓迎するプレイヤーもいる反面、システムを単純化しすぎてアトリエの核である調合の面白みがなくなったと主にヘビーゲーマー層からは不評である。
総評
前作で好評だった戦闘や調合などの部分を軒並み単調化してしまったため、アーランドシリーズの方向性を期待して購入したファンからはかなり不評である。
前々作『トトリ』、前作『メルル』が良作であっただけに、方向性が変わった今作は不評が目立つように見えるが、『ロロナ』のようなフリーズや重大なバグなども大体修正され(小さなバグは、やはり多々存在しているが)普通に遊べるので、今作から始めた新規プレイヤーからはある程度評価を得ている。
また作品全体を通した雰囲気自体は良く、キャラクターに世界観と賑やかだった前作と比べ、どちらかと言うと静かで濃すぎない素朴なキャラクターも荒廃した世界観では合っているという意見もあるため、今作に何を期待していたかで評価が大きく分かれる作品だと言えるだろう。
しかし、ボリュームの減少や露骨に続編を匂わせるストーリーなど、手抜きと言わざるを得ない部分もある。
アーシャのアトリエ Plus ~黄昏の大地の錬金術士~
【あーしゃのあとりえぷらす たそがれのだいちのれんきんじゅつし】
| ジャンル | 旧約錬金術RPG |  
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| 対応機種 | プレイステーション・ヴィータ | 
| 発売・開発元 | ガスト(コーエーテクモゲームス) | 
| 発売日 | 2014年3月27日 | 
| 定価(税抜) | 通常版:5,800円 プレミアムボックス:7,800円
 ダウンロード版:5,143円
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| レーティング | CERO:B(12才以上対象) | 
| 判定 | なし | 
| アトリエシリーズ | 
 
概要(Plus)
アーシャのアトリエをプレイステーション・ヴィータに移植したゲーム。
シナリオ面での追加はないが、いくつかの新システムが搭載されている。
主な追加・改良点(Plus)
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「アルバムミッション」と呼ばれるシステムの追加。
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用意された課題をクリアすることで、パネルがオープンされ、様々なボーナスが取得できる。
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パネルは9枚あり、設定された課題すべてをクリアすると「パネル全開放特典」ボーナスがもらえる。
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コスチュームのほかにも「戦闘演出早送り」「どこでもパーティー入れ替え」「フリーバトルモード」など、ゲーム内に様々な要素が追加されていく。
 
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ハードモードが追加された。
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NEWゲーム限定でプレイ中には変更できない。
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クリアデータで周回プレイする際は強制でノーマルモードになる。
 
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新規にコスチューム・アクセサリーが追加された。
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コスチューム機能が使えるキャラはアーシャ、ウィルベル、リンカの3人。多くは上記のアルバムミッションで手に入る。
 
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他にもUIが便利になっている。
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「ノート」のメニューに「納品」という項目が追加。
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これにより、PS3版の問題だった「受けた依頼がメニューで見れない」が解決された。
 
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転移の翼での移動先に「弐番館・エントランス」が追加。
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「ノート表示」「マップ移動」「メッセージログ」のショートカットが追加。
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採取地での移動ショートカット機能が追加された。
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イベントスキップ機能が追加された。
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これにより、PS3版よりも効率的に2周目のプレイが可能になった。
 
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イベントの発生場所が分かる、イベントサポート機能が追加された。
 
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クリア後の引き継ぎに「量販店で登録した品」「アルバムの解放状況」が追加された。
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ショップLvは引き継がれない仕様なので、2段目以降に登録した品はショップLvを上げないと購入できないので注意。
 
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PS3版ではDLCだった採取地「うしの楽園」「隠された楽園」、パーティキャラ「マリオン」「オディーリア」、水着衣装が最初から入っている。
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水着は最初から使用できるが、採取地やパーティキャラはゲーム内の条件を満たせば使える。
 
問題点(Plus)
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PSVで出たアトリエのいくつかに搭載されてた「C2エラーでの強制終了」は残念ながら本作でも存在する。
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PS3のDLCだった切り変え用BGMセットは未収録。
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このDLCはPlus版では無料だが、容量がゲーム本体(2258MB)よりも大きい3841MB。ちなみにPS3版ではアンロックDLCとすることで対処していた。
 
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戦闘以外のロードはPS3よりも長くなっている。逆に戦闘突入時はかなり早い。
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「アルバムミッション」における「(指定の潜在能力)のついた装備を作成する」という類の課題は、防具や装飾品はノーカウントで武器のみ達成可、といった具合にまたプログラムミスが散見する。
総評(Plus)
バランス調整・新規要素があったアーランドシリーズよりは極力バランスに手を加えることなく、UIの改良や新規要素追加をメインとした移植。
だが、根本的な問題(味方の火力が低いバランス、投げっぱなしのストーリー等)はあまり治っておらず、PS3版をプレイしていたユーザーにとってはやる価値が薄いと思われる。
逆にUIはPS3よりもよくなっているので、新規ユーザーにうってつけといえる。
最終更新:2024年07月15日 09:00