装甲騎兵ボトムズ ウド・クメン編
【そうこうきへいぼとむず うど・くめんへん】
| ジャンル | STG |  
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| 対応機種 | プレイステーション | 
| 発売元 | タカラ | 
| 開発元 | ジャパンヴィステック | 
| 発売日 | 1998年4月2日 | 
| 定価 | 5,800円 | 
| 判定 | なし | 
 
概要
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アニメ『装甲騎兵ボトムズ』を原作とするロボットSTG。
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オリジナル主人公による外伝ばかりだったボトムズのゲームとしては初めて原作に準えたゲーム。ただし題名の通り内容は原作第2部まで。
 
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ATの特徴の高機動性は、いろいろ不自由なものに。原作の軽快さはどこへ…?
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ボトムズのゲームとしては何か違っているが、ゲーム自体は慣れればそれなり。
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デモはなかなかいい。
システム
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背後視点からのロボットSTG。プレイヤーはキリコとなってATを操作し、ミッションをクリアしていく。全10ミッション。
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原作のロボット、AT(アーマード・トルーパー)は高機動性を生かした陸戦兵器。本作でもそれは当然同じで、ジャンプなど飛ぶ事はできないが、前後進、平行移動など地上移動は一通りできる。
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ただし基本的に歩きは遅い。
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ATの特徴の一つ、ローラーダッシュは当然できる。しかし原作のように縦横無尽には走れない。曲がるにしてもゆったりとしかできない。さらにローラーダッシュには限界があり、いつまでも走り続けるという事はできず、また急停止も急反転もできない。停止するには何かにぶつかるか、だんだんと減速していく事となる。
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この一見原作とはズレた仕様のローラーダッシュだが、実は原作初期案がこれに近いものだった。そちらではローラーダッシュはかなり不自由なもので、補助レベルのものだったのだ。
 
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ターンピックも装備。使用すると瞬時に180度回頭する。
 
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武装はほぼマシンガンだけ。ただ一部ミッションで、複数の武装が使える。オートロックは基本的にできない。狙いは上下左右につけられる。射程はかなり長い。
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アームパンチによる打撃もあるが、ほぼ密着しないと当たらない。ただ破壊力は抜群。
 
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ポリマーリンゲル液(以後PR液)システム。
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原作のATは人工筋肉で動くロボット。この筋肉を動かしているのがPR液。人間で言えば血液に当たる。本作はこの設定を強く意識している。
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ATの機動性を支える要素となっており、特にローラーダッシュで使われる。使っていくとだんだんと劣化し、限界を超えるとオーバーヒート。劣化は行動を抑えると回復していく。
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ただし本来の設定では、PR液は上記の通り人工筋肉の血液でしかなく、車輪であるローラーダッシュを動かしているのは電力(コアレスモーター)なので、実は原作無視の設定である。
 
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これらはミッション前に、腕部、脚部への配分比率を決める。配分量が多いほど各部位の性能が上がるのだが、逆にPR液の回復力が落ちていく。また劣化からの回復力も設定できる。これらと装甲の厚みを設定する事で、ATの全体的な性能が決まるのだ。
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戦闘中も上記とは別に、射撃用とローラーダッシュ用の二系統のPR液配分があり、それを変更できる。
 
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ミッションディスク。
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ATの特徴の一つだが、ミッションディスク(以後MD)という外部プログラムにより様々な事ができるシステム。本作でもこれは取入れられている。ミッションをクリアしていくとだんだんと増え、ミッション前にどのMDを使うか選択する事となる。中にはオートロックができるようになるMDもある。
 
評価点
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愛のこもった演出。
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とにかくデモに気合が入っている。OPはもちろん本編再現のフルCGで作られた動画。各ミッションに挿入されるボリューム十分なデモも、まるでアニメのシーンを再現したかのよう。ミッションデモは基本的にゲームで使われているモデルを使っているのだが、アップ時にはデモ用のモデルをわざわざ用意しているこだわり様。さらにフルCG動画デモも、ミッションデモで一部使われている。
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クメン編では、ミッション中に全く出てこないのに、デモのためにわざわざダイビングビートルとベルゼルガのモデルまで作られている。さらに同じくニイタンの町もある。
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ゲーム内のモデルもなかなかいい。テクスチャーの塗りがよく、原作の雰囲気がよく出ている。
 
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慣れると独特の味のあるゲーム。
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難易度が高いが、クリアできないというほどではない。雰囲気がよく出てるのもあり、ボトムズらしい戦闘とは言いがたいが、妙な面白みのあるゲームといえる。
 
問題点
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原作でのATとの性能違いから、キャラゲーとしてのゲーム性がズレている。
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先述したように原作でのATは機動力を生かした戦闘がウリ。しかし本作ではローラーダッシュに制限があり、自由に機動するという訳にはいかない。またオートロックがない状態での狙いをつけるのは難しく、歩かざるを得ない面が多い。そして射程の長さも戦闘に大きく影響する。結果、遠距離でゆっくりと歩きながら、敵の射線を避けつつ、撃っていくという戦闘になりやすい。原作での機動力を生かした中間距離での戦闘とは、まるで違ったものになってしまっている。
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また遠距離間の戦闘のため、撃破の爽快感が今一つ。破壊しても彼方で火が上るのが見えるという具合なので、どうにも煮え切らない。
 
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慣れるまでが厳しい。
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PR液配分は、前述の通りミッション開始前とミッション中で変更できる。その組み合わせは多岐に渡る。良い設定を見つけ出すのは一苦労。デフォルト設定では、普通のプレイもままならないという有様。
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敵の狙いが正確で、真正面から戦うのはかなり厳しい。移動し続けながら戦うにしても、ローラーダッシュしながらでは効果的な攻撃はまず無理。歩きながらでも遠距離間での戦闘になりやすい本作では、旋回角度の粗さもあって狙いをつけづらい。この動きの癖に対応できないと、まともにダメージを与えられない。
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コツを掴むまでは最初のミッションすら突破できない。原作のノリでプレイしようとすると酷い目に会う。
 
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あまり役に立たないMD。
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オートトラッキング(オートロックができる)とダブルアームパンチ以外のMDはあまり役に立たない。MDが増えてもあまりうれしくない。
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一度クリアすると手に入れたMDが一つを除いてすべて手に入った状態で好きなステージをプレイすることができるが、それでも上記ふたつのMD以外は使い物にならない。
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手に入らないMDはミッション5でのみ強制使用になる「ミッションパック」。このステージのみ使用する自機「レッドショルダーカスタム」のウェポンセレクターであり、他の機体に積んでもRSCに他のMDを積んでも無意味なので当然の処置と言える。
 
 
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ウド・クメン編なのに、クメン編がほとんどない。
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ウド編はほぼ原作をなぞっているが、クメン編は一部のみ。イプシロンとの最初の戦闘で終わってしまう。まるで打ち切りにあったかのよう。
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そもそも全10ミッションでは、ボリュームが少なすぎる。
 
総評
 本編を初めてゲーム化した本作だが、ファンが求めていたものとは違ったものになっていた。特にローラーダッシュの不自由さは、落胆を呼ぶもの。また狙いをつけるのが難しい点も合わせ、人によってはクソゲー扱いの有様。
 一方で、演出面のこだわりは半端なく、特にデモは秀逸。そしてゲーム性自体もボトムズのキャラゲーとしては微妙ながらも独自のものがあり、そこに面白さを感じる事もできる。ただボリュームの薄さは言い訳できない。ウド・クメン編と名乗りながら、クメン編のミッションがあまりないとはどういう事か。
 慣れるまでが大変だが、ボトムズの退廃的な世界観を味わうには、そう悪くないゲーム。
最終更新:2021年07月02日 19:31