ミニ4ボーイII
【みによんぼーい つー】
ジャンル
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ミニ四駆風ADV
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対応機種
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ゲームボーイ
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発売元
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J・ウイング
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開発元
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不明(オカリナシステム?)
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発売日
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1997年9月27日
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定価
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5,229円
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書換
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ニンテンドウパワー 2000年6月1日/1,000円 F×4・B×1
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判定
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バカゲー
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ポイント
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前作よりはマシなミニ4レースになった ただし斜め上方向にコースアウトしている
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ミニ4ボーイシリーズ - I / II
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略歴
1980~90年代に何度もブームを巻き起こしたタミヤ(当時:田宮模型)のミニ四駆に便乗して制作・販売されたGBソフト第2弾。
あまりにひどすぎた前作『ミニ4ボーイ』を反省してか、シナリオ・レース画面に大幅な改良が施されたため、ミニ四駆風レーシングゲームとしての最低限度の体裁は整っている。
前作からの変更点
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シナリオパートが追加された。全10章仕立てになっていて、各章のボスにレースで勝つと次の章に進める形式になった。
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前作のストーリーはあってないが如き代物だったので、この程度でも画期的な変更点といえる。
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レース画面中央の謎視点が削除され、代わりに俯瞰視点が追加された。これでようやく自分のマシンが走っている姿を見ることが出来るようになった。
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ただし、相変わらずレース中のマシンの動きがカクカクである。コーナリングの直角走行もしっかり継承されている。
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コースのデザインは相変わらず簡素なものである。直線・90度コーナー×4・芝生・上下坂・クロスレーンと基本的なパーツはそろっているが、各々一種類しかデザインが存在しないので、見た目の多彩さはない。
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何故か○×アイコンのミニマップはそのまま残っている。
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スーパーゲームボーイに対応しているため、SFCでプレイするとカラー画面になる。
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相変わらず「32分の1のスケールのマシン」なので、中身は灰色のままであるが。
だが、それらを覆い隠すほどの斜め上な追加要素の数々を搭載していることが、本作をバカゲーたらしめている。
追加要素(というかおバカな点)
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主人公をはじめ、ゲーム開始時に1人を選ぶことになる4人のパートナー、各章の敵レーサーなど、キャラクターが大量に増えているのだが…
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各章のボスレーサーには「お花畑の電波少女」「ぬいぐるみ少女」「魔法少女♂」といったような、ミニ4ボーイ(ガール)らしさを微塵も感じさせない設定の連中が多い。
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レーサーらしいキャラであっても「ハヤブサエース(外見は中年メタボ)」「シャドウマスク(いい年こいた子持ちオヤジのコスプレ)」といった曲者揃いである。
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ただでさえ、ライバルレーサー達のキャラが濃いのにパートナーキャラも濃い。(特に男性パートナー)
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そんなクレイジーな面々も含め、登場キャラには妙に気合いの入った一枚絵がゲーム中に全員分用意されている。また、イベントシーン専用の一枚絵も多数用意されている。
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レース画面のマシンのグラフィックは1種類しかないのに、である。
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制作スタッフや当時流行っていたアニメのキャラ及びその声優をもじって名付けられたキャラが何人かいる。名前だけならまだしも、キャラの外見までどこかでみたことのある奴もいる。
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その内の1人が「きみどりかわ ひかる」である。名前もさることながら、キャラグラ・口調までもが、ガンダムWのヒイロ・ユイ(CV:緑川光)に似ている。
というかヒイロそのまんまじゃねーか!
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ついでに言うと使うマシンの名前が「ゼロハチ・システム」。
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尚、ガンダムWからはトロワのそっくりさんもピットインしている。
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それ以外にも、キャラの設定や台詞などにアニメやゲームのパロディが大量に仕込まれている。
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たとえばパートナーの一人である「くれない アキラ」は、見た目こそ似せてはいなものの、完全にGガンダムのドモンのパロディキャラとなっており、行方不明になった兄…ではなく師匠を探しているという設定。
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アキラのレース中の掛け声時に表示される絵はまんまシャイニングフィンガー。終盤の掛け声時のセリフに至っては「おれのマシンがうなりをあげるっ! きさまのマシンをぶちぬきはしるっ! げきそうっ、ダイナミック、ハイパーァァァドゥアアアアアアアアアシュッ!!!」とあのセリフを絶妙にパロっている。
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そして、最後の敵を倒すと、選んだパートナー毎の個別エンディングが待っている。
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エンディングネタバレ注意
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まさかのマルチエンド方式であり、最後のパートナーとのやりとりで選択肢をどう選ぶかによってのみ分岐する。
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選択次第ではバッドエンドになり、中にはパートナーが病死するものもある。レースのことばかりに気を取られた結果がごらんの有様だよ!
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かたや女性パートナーとのグッドエンドでは主人公とパートナーが恋人関係になったりする。挙句、結婚ENDまである。
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本作をギャルゲーと認識する人がいるのは、およそマシンと関係ないこれらのエンディングのせいである。
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かけ声システムが搭載された。レース終盤の周回になると、敵味方共に自動でカットインが入ってキャラが叫ぶ(テキストだが)。するとマシンのスピードが上がる。要するに…。
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豪「いっけぇぇ! マグナァァム!」→加速。
だからそのままはやめろって。
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主人公のかけ声はゲーム開始時に自分で好きに入力できる。本家のアニメ風にするのは勿論のこと、「らめぇぇぇぇ」とか「くやしぃっ でも(ry」とかにしても律儀に加速してくれる。何にするかは紳士淑女としての教養が試されるところでもある。
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ラスボス戦のみ自作のかけ声は使われない。代わりに主人公は専用のかけ声を叫ぶ。そういうところは手を抜かないのがJ・ウイングクオリティ。
評価点
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数値化されて分かりやすいマシンの性能。
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前作同様、比較対象の本家に比べてチューニングが分かりやすい点は評価できる
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マシンのスピードやコーナリングの性能などは、マシンごとに設定されている数値やセッティングしたパーツによって決まる。これらは全て数値化されているので、どれくらい強いマシンになったのか分かりやすい。
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パーツの組み合わせによって、本来のパーツが持っている性能以外にも加点される。例えば、ローラーを全て同じサイズにすれば、スピードがより上がるし、マシンにパーツを大量につけて重くすれば、スピードが下がる代わりにグリップが上がるなど、セッティングした結果が割と理にかなった形で数値へ反映される。
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(一応)王道のホビーマンガのようなシナリオ
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クレイジーな面々ばかり注目されるが、本作で展開されるシナリオは、まさに王道のホビーマンガのような流れとなっている。
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色々な地区の優勝者と勝負し、ときには大人の因縁に巻き込まれ、主人公の前に立ちはだかる四天王と勝負する……という流れ。
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途中、謎のレーサーにマシンを壊されて、新たにマシンを作り出し、さらにそれが前よりパワーアップするというベタな展開ももちろんある。
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美麗なキャラグラフィック
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主人公やパートナー、対戦相手にはそれぞれ通常時、掛け声発動時、敗北時の3つのCGが用意されており、いずれも当時のゲームボーイのソフトとしては、頭一つ抜けているクオリティとなっている。
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四天王たちは二つ名として四神(青龍、朱雀、白虎、玄武)の名を持っており、彼らのかけ声時のグラフィックは四神が背景にそれぞれ描かれているというこだわりっぷり。
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そしてスーパーゲームボーイで遊ぶと、ハイレベルなカラーのグラフィックになり、製作スタッフの妙な熱意がよくわかる。
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その無駄にクオリティの高いグラフィックはこちらを参照のこと。
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意外とBGMが良い。
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四天王戦の曲などは熱い曲調となっていて盛り上がる。隠しネームでゲームを始めるとサウンドテストが行えるので、気が済むまで聴いてみるのもいいかもしれない。
問題点
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相変わらず作業感が強い
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レースに勝てない場合はおこづかいを貰って、とにかく強いパーツを買うしかない。強いパーツで固めても勝てない場合は、模型店で何度もレースしてポイントを貯め、チューニングによりマシンの性能を上げるしかない。
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レース場でのレースはかけ声や、最終ラップでは音楽が変わるなど、レースを何とか盛り上げようとしてはいるが、模型店のレースではそれがないので、おこづかいやポイントを貯めるにはひたすら地味なレースを見続けなければならないので、なかなか辛いものがある。
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パートナーシステムの存在理由
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レギュレーション変更により、今作では2人1組でミニ4ボーイレースに挑むことになるのだが、選んだパートナーが主人公に変わって対戦相手と話すだけで、シナリオ的にもシステム的にも2人で挑まねばならない理由がイマイチ乏しい。なにせ、終盤の四天王戦はタイマンでの勝負となるのだから。
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対戦相手にもパートナーがいるはずだが、グラフィックはなく、マシンも出てこなければ、名前すら出てこない。レース前の会話を見ると、対戦相手は1人しかいないとしか思えないセリフもチラホラ。
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キャラ以外のグラフィックが簡素すぎる
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キャラグラは丁寧に作られている反面、メインであるはずのマシンやレース画面のグラフィックは相変わらずのやっつけ仕事。
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マシンはスーパーゲームボーイで遊んでも白黒で描写されるし、レース中のマシンのグラフィックは1つしかない、コースが妙に角ばっていて鉄パイプを曲げただけのように見える、などなど。
総評
90年代のミニ四駆ブームは本作発売前年の1996年頃をピークに衰退を始めており、本作の発売当時の世間的な評価は「クソパクリゲーの続編」「今更なパチモン」で、殆どのミニ四駆ボーイズ見向きもされなかった。
少数のボーイズがレースゲームを期待して買ったものの、
GBクソゲーグランプリのトップレーサーである前作に比べればマシな程度の作業ゲー
の色合いが強い本作に、好評が寄せられることは少なかった。
しかし、本家タミヤ公認の「ミニ四駆」ゲームがレースゲームとしての王道的な面白さを追求していくのに対し、それとは違った独自の方向性を打ち出そうとしたことは評価出来るかも知れない。
無論、それは
斜め上方向にコースアウトしたバカゲー
としてである。
突っ込みどころの多いキャラ達や多彩なパロディは人を選ぶものの、ADVゲームと割り切れば見ていて楽しめる要素ともいえるので、
90年代のアニメやミニ四駆を懐かしく思える元ミニ四駆ボーイズなら、当時とは違う観点で本作を楽しめるかもしれない。
余談
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隠しネームでゲームを始めると開発スタッフのメッセージを見ることができる。それによると、「ミニ4ボーイ3に乞うご期待!」ということだったのだが、幸か不幸か続編は出ていない。
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本作のチーフグラフィックとグラフィック、パッケージイラストに「はせみ さき」という人物が関わっている(ちなみに2人目の対戦相手のモデル)。
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実はかつて週刊少年ジャンプで連載された漫画『ToLOVEる -とらぶる-』の原作者などで有名な長谷見沙貴氏であり、過去に存在していた氏のWebサイト「MISORA堂」で当作品に関して触れていた。参考URL
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1の製作にも関わっていてキャラデザインとしてクレジットされている他、企画にも関わっている。1に関しては本人もクソゲーであることを認めており、開発期間の問題やプログラマーの逃亡などいろいろな事情があったようだ。しかしミニ四駆ブームの為に売れたという。
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2ではクレジットされている役職の他にも本名の小滝佳治として総監督・シナリオも勤めている。既にミニ四駆のブームが去っていた為に売り上げは芳しくなかったものの本人は満足していると語っている。
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また、氏の証言によると一応このシリーズはタミヤの許可は取っていたのだが、『レッツ&ゴー!!』のゲーム版の製作をしていたアスキーから訴えられたとのことである。
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長谷見氏のコメントにある通りメーカー側の売り上げは芳しくなかったようだが、小売店の被害も相当なものと思われる。ミニ四駆ブームは衰退の兆しを見せていたとはいえ、当時は未だ本家の積極的な商品展開は健在であり、その人気の余波を当て込んで本作を仕入れた店もそれなりにあったものと思われる。
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売り場に並んだ本作を見たミニ四駆ボーイズの反応は総評に記載した通り。
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かくして、ゲームボーイの売り場が消滅するまで新品が残り続けたり、ガラクタ同然に投げ売りされる光景が各地のゲームショップで散見されることになった。近年でも酷いときには新品55円で売られていたこともあった。
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レトロゲーム再評価路線が強まっている2020年代においては、本作も数千円台にまで値上がりしている。
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カートリッジのデザインが異常にショボイ。こんな感じ
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赤と青の市松模様にタイトルと発売会社が載っているだけ。ファミコンカセットにすら劣る…というか少なくともマシンの画像は載ってた前作より劣化している。
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ページトップを見ればわかるが、パッケージのデザインもズレていると言わざるを得ない。肝心のマシンがタイトルロゴに真っ二つにされている時点でゲームの方向性が窺える、とも言えるが。
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新声社より本作の攻略本が発売されている。
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パートナーの4人の設定などもあり、それによると、外見やセリフから小学生くらいだと思われていた彼ら彼女らは実は12~15歳で、中学生くらいである。
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文庫サイズで薄く、中身は全面白黒でカバーも付いていないので、雑誌の付録のような体裁になっている。
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ただでさえ薄い本なのに、半分近くは何の役にも立たない「32分の1のスケールのマシン」の紹介である。
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対戦相手の紹介には「いぐち ゆかな」をパートナーにした際のセリフしか載っておらず、他のキャラをパートナーにしたときのセリフが一切載っていない。ライターは「いぐち ゆかな」でしかクリアしなかったのだろうか。
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などなど、この攻略本にも色々と突っ込みどころは多い。本作が気に入ったのならばぜひ読んでもらいたいが、元々攻略本のいるようなゲームではないことや、本作の知名度の問題もあるためか、2020年代においてゲームボーイのソフトの攻略本としては屈指のプレミアを誇っている。
最終更新:2024年08月01日 17:24