本記事はファミコン版の記述となります。アーケード版は『究極タイガー』の記事を、メガドライブ版は『究極タイガー (MD)』の記事を参照してください。
究極タイガー
【きゅうきょくたいがー】
ジャンル
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縦シューティング
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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発売元
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CBS・ソニーグループ
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開発元
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マイクロニクス
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発売日
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1989年8月4日
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定価
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5,900円
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判定
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劣化ゲー
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ポイント
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処理落ち、残念なBGM ただしそれでも頑張ったほう 海外版及びPCエンジン版の折衷作
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東亜プランSTGシリーズ
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概要
東亜プラン開発・タイトー販売の同名アーケード作品のファミコン移植作で、『タイガーヘリ』の続編。(タイガーヘリもファミコン移植をマイクロニクスが担当した)
攻撃ヘリ「バトル・タイガー」が単身敵戦力の殲滅に向かう縦スクロールSTG。数種類の攻撃範囲、威力が異なるショット、画面の半分以上を覆い隠し、敵にダメージ&弾消し効果のあるボンバー、といった、縦スクロールシューティングのスタンダードなシステムが本作で完成され、業務用で高い人気を誇った。
「アーケードの人気作がファミコンで遊べる」ということは良かったのだが、蓋を開けてみると…
特徴
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十字ボタン+2ボタン(ショット、ボンバー)で操作。ファミコンに移植された本作は全10面、1周END(業務用はループゲーム)。
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特定の敵を破壊するとアイテムが出現し、ショットのパワーアップ、ショットの切り替え(横幅の広いレッドガン、前方に強力なレーザーを放つグリーンストーム、多方向WAY弾のブルーアイ、4方向に弾を放つイエロークロスの全4種)、ボム数の増加といった効果が得られる。
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イエロークロスは移植元とは異なり、発射後に前方の敵に向かって飛んでいく誘導弾に変更。これはPCエンジン版では裏技を用いる事で使用する事が出来た能力である。
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建物や艦橋を破壊するとステージクリア後に個数に応じてボーナス点となる勲章が出現、勲章の代わりにエクステンドが出現する事もある。
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加えて、FC版では地上物を破壊すると、AC同様の勲章とエクステンドの他に、取得した際に一定時間無敵状態になる白い勲章とアイテムキャリアーが落とす物と同様の性能を持つボンバーが出現する様になった。
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ミス後の復活方式は、移植元のアーケード版やPCエンジン版では、一定距離まで戻される「戻り復活」になっていたが、FC移植に伴い、ミスした地点から無敵状態になって復活する「その場復活」形式に変更。
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それに伴い、PCエンジン及びメガドライブではミス後の画面にて表示されていた残りプレイヤー数がアーケード同様にプレー画面に表示される様になった。
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加えて、所持ボンバー数の表示形式が数字形式に変更された。それに合わせて残機表示も数字で表示されるようになった。
問題点
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全体的に敵や地上物の数が減少してしまい、ACの醍醐味だった「撃ちまくりの爽快感」が減少してしまった。
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敵数の減少に伴い敵弾も減っていて、ステージ内の緊張感も感じられない。
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ちなみに、2面前半に出現する小型ボートはAC版から更に小さいデザインに変更させられる苦肉の策が取られている
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処理も酷く、敵弾が大量に出現した際にしょっちゅう処理が落ちる。
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処理が堕ちまくる関係で、画面上部のスコア表示もやたらと欠ける。
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グラフィック配色にも問題あり
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ファミコン版ではステージ内のカラーもほぼACの再現しているのだが、何故か5面ボス付近は緑で塗り固められていてやや不自然。
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また、ラスボス付近も5面との差別化を図りたかったのか紫というファンタジーカラーで塗り固められており、重厚かつ殺伐とした世界観から浮きまくっていて目に悪い。
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武器アイテムも赤ショットが黄色寄りの配色である関係で黄色ショットと勘違いされがち。また、黄色ショットもやたらと暗い色になっていて不自然。
同様にステージの要所で登場する黄戦車も何故か暗色なので、比較的近いカラーリングになっている灰色の地形と重なって出現した場合は見落としてしまう可能性がある。緑戦車はほぼそのままなのに、どうしてこうなったのか。
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BGMの出来の残念さ
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1989年前後のファミコンゲームの音楽といえば、『ロックマン2 Dr.ワイリーの謎』や『悪魔城伝説』等ノウハウの積み重ねにより高まった完成度が特徴的であるが、本作のBGMの音質はFC初期レベルでショボく評価も低い。
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また、楽曲のうちステージクリアBGMはアレンジしすぎてもはや原曲が行方不明。というより不協和音の域。
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他にも3,8面BGMは基本的にACに忠実だが一部だけ音の取り方が異なっていたり、4,9面BGMの方も特有の重厚感が再現されてなかったりと、AC版を知れば知るほど違和感のある楽曲構成。
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ただ、5,10面BGMは東亜プラン開発ゲーム特有の曲調である「東亜節」をファミコンというハードで上手く再現していて、音質の悪さはともかく割と評価されている部類ではある。
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しょぼいエンディング
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FC版への移植に伴い周回制が廃止(後述)され、新たに専用のエンディングとスタッフロールが追加されたのだが、「真っ黒な背景に英文のメッセージが表示される」だけで非常に簡素。
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BGM自体は他機種版と同じ曲を使っているのだが、非常にアレなアレンジが施されている為か戦場の哀愁すらも感じられない。
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他機種でも同様に周回制の廃止や専用エンディングが追加されているのだが、これらは良好な評価を受けているのに対してFC版は見劣りする出来と言わざるを得ないだろう。
賛否両論点
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周回の変更
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AC版は1周目をクリアするとそのまま次の周に移行していたのだが、FCへの移植に伴い周回制が廃止され、1周目をクリアするとゲーム終了になる。
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この事については、AC版からのコアなファンは周回ループが削除された点への不満が出た。一方、周回を好まないライトプレイヤーからは、むしろ1周エンドに変更された事により気軽にプレー出来る様になった事から歓迎されていた模様。
評価点
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グラフィックはファミコンとしてはまずまず良好。
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流石にAC版と比較すると酷だが、ファミコンというハードが円熟に達し始めてた時期に発売された為か、見た目だけは割と頑張っている部類と言えよう。
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原作に忠実なステージ構成
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2、7面冒頭で登場する海上での小型艦地帯は、先に発売されたPCエンジン版では前者は先の中型艦地帯と統合され後者は新規の敵が配置されていたりと、エリアの内容が大幅に変更されている事から、ほぼPCエンジンオリジナルステージの様な形になっていた。
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しかし、後発となる今作の同地帯は、敵の数こそ減少しているものの原作同様の内容を再現。それにより、今作はステージ構成についてはPCエンジン版よりも原作に忠実と言っても良いだろう。
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PCエンジン版に準じた一部仕様
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自機のショットについて、レッドガン及びグリーンストームについて、特に変更点は無いのだが、ブルーアイは画面比率に合わせてショットの幅が狭まれている事から、問題点にもあるように劣化しているものの、PCエンジン版同様に撃ちまくりの爽快感自体は健在。イエロークロスもPCエンジン版同様にホーミング機能が使えるが、今作では更にデフォルトでホーミング機能が搭載されている。(後述)
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AC版から以下の改善点が存在し、クリアまでの難易度が格段に下がった。
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横画面での移植の関係で自機の移動速度が上昇し、アイテムを避けやくすなったor目当てのアイテムを取得しやすくなった。
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自機の移動速度が速くなってるのは横画面の都合というよりは海外版『TWIN COBRA』の仕様をそのまま持ってきたからであろう。
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イエロークロスにホーミング機能がデフォルトで追加され、更に連射も可能になったので実質的に性能が改善された為、罠装備が無いのも同然。
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海外版『TWIN COBRA』からの仕様として、ミスからの復活が戻り復活からその場復活に変更されゴリ押しが効きやすくなりステージの先にも進みやすくなった。
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なお、他機種におけるミスの際には戻り復活の処理によってプレーが一時中断されてしまうのだが、PCエンジン及びメガドライブ版では更にプレイヤー数の減少画面が挟まれる様になり、結果的にアーケードよりミス時のテンポが下がる事になってしまった。一方、FC版はその場復活が採用されている事から、結果的にゲームテンポも当時の移植作の中では良い部類になっている。
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ボンバー以外の回避アイテムとして、自機が一定時間無敵になるアイテムが追加された。また、地上物からボンバーが出現する様になった事から、ごく一部ではあるものの、入手の際にテクニックが必要だった空中敵からのドロップよりも確実に空中と同様のアイテムが入手できる様になっている。
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挙げた敵や地上物、及び敵弾の数の減少について、確かに問題点ではあるのだが、その一方で覚えるべき部分が減少した事によって、初見でもある程度アドリブで抜けやすくなったという利点もある。
総評
ゲーム内容だけを見るならば、それなりに頑張って移植された形跡があるものの、やはりマイクロニクスやファミコンの限界である。
スペックの劣るファミコンに無理矢理移植すればこういう出来になることは予測できたであろう。
とはいえ、今作は移植の際に簡略化や改善点も多く見られる作品。
演出面の劣化に関しては眼をつむるとして、全体的な難易度が下がっている分、究極タイガーの入門編的タイトルとして初心者シューターにもお勧めできる一作になったと言えよう。
余談
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海外のNESでは海外アーケード同様に『TWIN COBRA』名義での発売。発売元はサミー。
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今作の内容はファミコンへの移植に伴い、『TWIN COBRA』を踏襲した部分が見られているのだが、海外でも発売した事によって、より純粋な『TWIN COBRA』としての移植になったと言える。
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今作は後にカップリングタイトル『究極タイガーヘリ』にもMD版共々収録。パッケージ版ではあらかじめソフトに収録されているが、DL版はDLC扱いなのでソフト本体と共に追加のダウンロードが必要。
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今作は発売当時は移植内容が内容だけに散々こき下ろされてきた過去があるが、収録タイトルの多くの難易度が高めに設定されている点に対して今作の難易度は低い事から、同作の入門編として向いていると言えなくもない。そういう意味では一周回って再評価されるべき一作かも知れない。
最終更新:2025年02月15日 09:44