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ジーキル博士の彷魔が刻
【じーきるはかせのほうまがとき】
ジャンル
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リバース・スクロールRPG (アクション)
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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発売元
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東宝
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開発元
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アドバンスコミュニケーション
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発売日
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1988年4月8日
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定価
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5,300円(税抜)
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プレイ人数
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1人
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判定
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クソゲー
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ポイント
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何故ゲームにした? 超屈強な市民からの執拗な妨害 無抵抗同然なジーキル博士 攻撃範囲狭すぎ 非常に遅い移動速度 理解しがたいゲームオーバー条件 プレイヤーがハイド氏に変貌必至
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概要
二重人格を題材にした代表的な古典文学として知られる『ジキル博士とハイド氏』をモチーフとした、アクションゲーム…と思われるよく解らないゲーム。システムそのものを抜き出せば斬新で、面白そうとすら思えるが、説明不足のため投げ出したプレイヤーが多い。
原作は心理学を題材にした作品である。人工知能ですら人の心を可視化するのは現在でも困難を極めるものでそもそもゲームに向いていないことが火を見るより明らかなのだが…『タッチ』を強引に解釈してゲーム化した東宝がまた強引にやらかす結果となってしまった。
ストーリー
古き良き時代のイギリスに住む医学博士ヘンリー・ジーキルは、研究を続けるうちに人間の精神は善と悪とで構成されているという結論に達しました。
ジーキル博士は自説を証明するために、善と悪を分離する薬品を発明し、自ら人体実験のモルモットとなって研究を続けるのでした。
善と悪を分離する薬を飲むことは、温厚で理知的なジーキル博士(善の心)が残虐で野蛮な人格のハイド氏(悪の心)に変身してしまうことを意味し、ハイド氏に変身した博士の眼と心に映るすべてのものが、醜くおぞましい姿に変わり、身も心も悪魔に売り渡したかのように悪徳の限りつくしてしまうのです。
そして、長きにわたる人体実験の副作用は、博士の精神と肉体をも蝕み、遂には自らの意志とは別に薬を服用しなくても街の様々な出来事が博士に与えるストレスとなり、変身してしまうのです。
自分の肉体と心をコントロールできなくなったジーキル=ハイドは、婚約者ミリセントとの結婚をも忘れて無意識に残虐行為を繰り返し、破滅の道を歩みはじめます。
果たしてジーキル=ハイドの行く手には、いかなる運命が待ち構えてるのでしょうか?
(説明書より引用)
特徴
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主人公・ジーキル博士が、結婚式のために教会へと向かうのが目的の横スクロールアクション。
だが、道中では、市民や虫・動物・爆弾魔の妨害を避けなければならない。
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これといい、FCゲームのロンドン市民は暴徒か何かなのだろうか?
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博士はライフゲージとストレスメーターの2つがあり、妨害を受けるたびにどちらかが少しずつ減っていく。
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妨害によってストレスメーターが一定以上減ると、黄色いパーカーを着たハイドモードに移行する。
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ハイドモードではマップが左右反転し、左方向に進む強制スクロールとなる。つまり、ハイドモードでは原則ジーキル博士が歩む道の裏を進むことになる。
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説明書に「ハイド氏に変身した博士の眼と心に映るすべてのものが、醜くおぞましい姿に変わり」とあるように、ハイドモードではグラフィックが荒廃したものになり、現れる敵もロンドン市民ではなくモンスター軍団となる。ハイド氏の主観では自身は魔界の超人であり、世界は魔界の怪物が跋扈する魔界空間に映っている設定。
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ハイドモードでは敵を倒すとストレスが発散される。ストレスゲージを0に戻すことによってジーキルモードに戻ることが目的。
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ハイドモードから復帰する際にライフが全快する。このため、「ライフが減ったらわざとストレスを溜めてハイド氏になる」というテクニックも可能。
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扉の前で十字ボタンの上を押すと扉の中に入ることが出来る。
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たいていの扉はしばらくすると出てくるだけで何も起こらない。
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一見無駄な要素だが、爆弾の回避に使うことが出来る。最終面あたりでは必須のテクニックとなる。
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ミセス・レイチェル(窓から顔を出している婦人)がいる建物の場合はランダムで以下のどちらかが起こる。つまり賭けである。
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1(当たり):HP回復、ストレス減少、コイン取得。
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2(はずれ):ストレス増大、コイン減少。
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HPの回復手段はこの扉かハイドモードからの復帰の2つだけである。
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コインはハイドモードでも入手でき、サイコウェーブでも落ちているコインが回収できる。
しかし、その効果は後述の音痴な婦人を黙らせるぐらいである。
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ゲームオーバーの条件は以下の3つ。
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1:ライフが0になる。
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2:水の中へ落ちる、もしくは屋根の上から落ちる。
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3:ハイドモードでジーキルモードよりも進む。
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エンディングは2種類あり、ハイドモードへの移行を極力避けるとバッドエンドになる。
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早い話が、グッドエンディングのほうが簡単に到達できる。
問題点
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歩行が非常に遅い。英国紳士は走らないとでもいうのだろうか?
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どんな市民も恐れおののく爆弾を目の前にしても、
チンタラ優雅に歩く。いいのかそれで?
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他の紳士・貴婦人は爆弾を見るとものすごいスピードで走り回ることができるのだが。
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何故か最終面では少し速くなる。
結婚式の時間が近くて焦ってる?
実は敵や仕掛けのスピードも速くなっており、どうやらバグにより歩行スピードが上がっているようだ。ちなみにハイドモードに突入してから戻ってくると元の速度になっている。
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市民の妨害(敵の攻撃)はまるでジーキル博士=ハイド氏であることが分かって町ぐるみで殺人鬼の結婚式を妨害しているとしか思えないほどに凶悪且つ執拗。
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特に最終ステージの猛攻は鬼・被害妄想と言う表現がぴったり。プレイヤー自身がハイドモードに突入してしまうことうけあいである。
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なお設定的には、ジーキル博士=ハイド氏であることを知っているのは謎の爆弾魔だけ。
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以下に敵の一部を紹介する。キャラクター名は取扱説明書に記載されている。
まさに「疑心暗鬼を生ず」である。
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市民と紳士と貴婦人:普段は歩いているだけだが、爆弾を見かけるとその場から逃げようと恐ろしいスピードで突っ込んでくる。
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ビリー・ボーンズ(パチンコを持った少年):触ってもダメージは受けないが、突然博士に向かって高速のパチンコを放ってくる。婚約者ミリセントの家の隣に住んでおり、ミリセントに淡い恋心を持っているので結婚相手であるジーキルに嫌がらせをしている。設定的にはジーキル博士個人に悪意を向けているのは爆弾魔以外ではパチンコ少年だけなのである。なおパチンコ玉はジャンプよりもしゃがんだ方が安全に避けられる。
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マーフィ(犬):博士を目指してまっしぐらに突撃。飛び越えてもわざわざ方向転換して再突撃してくる。眠りを邪魔された怒りで襲ってくるとのこと。爆弾魔を襲って欲しい…。
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カラス:ふらふらと左右に飛び、ジーキル博士の頭上にうんこでじゅうたん爆撃。
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蜂:不規則にふらふらと飛び回る。ステッキで倒すことができる唯一の敵。
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蜘蛛:糸でぶら下がっており、ランダムに上下する。下にいれば通れないし上がったと思ったら突然降りてきたりする。
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謎の爆弾魔:後述するようにすれ違いざまに爆弾を置いて逃げていき、市民を博士にけしかける。今作最凶の敵。ジーキル博士がハイド氏になることを知った上でストレスを与えに来ている設定。
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ルナ(猫):普段はただの背景だが、爆弾が爆発するとその音に驚いて全身の毛を逆立てて飛びかかってくる。爆弾魔を(ry
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エレーナ・マッコウェン(音痴なオペラ歌手):錯乱して無数の音符を飛ばしてくる。コインを渡すと歌うのをやめてくれる。
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ロゼッタ・エンライト(友人の一人娘):窓からハートを飛ばしてくる。
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樽:高速で間断なく転がってくる。爆弾魔と並ぶ本作の最大のストレス要素である。
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アーノルド・エベッツ(狩人):現れると鳥(カラスでないもの)を次々と撃ち墜落させてくる。もちろん当たるとダメージ。
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マンションの住人:お互い物を投げ合ってケンカをしており、窓から障害物を落としてくる。
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もちろん、これら(やその攻撃)に博士が触れるとダメージを受け、ストレスがたまる。
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一方で、英国紳士であるジーキル博士の攻撃手段はステッキを突き出すのみ。おまけにステッキで倒せるのは蜂のみである。なおステッキの効かない市民らに突き出すと博士がダメージを受ける。
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腰ぐらいの高さで突き出すだけなので蜂が腰の高さまで降りてきてくれないことには当たらない。しかも出も遅い。
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蜘蛛が倒せればかなり楽になるのだが…蜂が倒せて何故蜘蛛が倒せない?
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ハイドモードからジーキルモードに復帰した際、周囲の住人が消滅する。商店街ステージの樽+マンション住人などはこれ無しでは突破できないレベルである。
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ハイドモードでは攻撃手段が増え、Bで目の前にパンチを繰り出し、「上+B」でサイコウェーブという飛び道具を撃つことができる。
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飛び道具がある以上パンチの使い道はなさそうだが、飛び道具の性能が悪いので使わざるをえない。パンチは敵の弾も消せるため防御面でも活躍する。
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サイコウェーブは連射が全く効かず、画面内に1発しか出せないうえ、斜め下に打ち出して、蛇行しながら帰ってくるという妙な軌道のためとても当てづらい。
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弾道上、直線状の敵が一番当てにくいのだが、ほとんどの敵は直線状に現れるため、弾が全く当たらずこちらのストレスがさらにたまる
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ある程度敵を追尾するが、弾速が超高速なうえ追尾精度が悪いため、やっぱり当たらない。ジャンプ中に足元まで敵に迫られてしまった場合以外では狙った敵に当てるのはまず不可能。
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戻ってくるので出した後でジャンプすると軌道を変えられる。
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今まで敵に苦しめられたのと反対に敵をぶち殺す快感はないといっていい。
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サイコウェーブは憎悪を放射している設定。「憎しみで人が殺せたら」というのを妄想の中で実践しているのである。
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説明書に「ハイド氏でいることが面白い!闘うことが痛快だ!というプレーヤーの方は神の怒りである運命の落雷を覚悟して下さい。」と書かれていることから、回避しかできないジーキルモードで溜まったプレイヤーのストレスをハイドモードで発散するというのは誤った道である事が示唆されている。だからと言って、さらにストレスが溜まるゲーム内容であるのは意図的な調整と言えるのだろうか……。
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最凶の敵「爆弾魔」。ピンク色の服に山高帽をかぶった、見た目だけはジーキル博士と同じ英国紳士のなりなのだが…。
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やけに出現頻度が高く、博士の目の前まで来ると爆弾を放って逃げていく。この爆弾が異常なまでに高威力・広範囲。
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爆風の見た目はショボいのだが、なぜか当たり判定は数倍広く、表示画面全域の1/3ほどにもなる。
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おまけにジーキル博士の数歩手前で爆弾を置くため、回避は非常に困難で強行突破は無謀。
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距離が近いと連続ヒットしてストレス0の状態から一気にハイドモードに突入することも
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威力が高すぎるため、ハイドモードに突入した瞬間に死んでしまうことすらある…
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おそらくこのゲームを前提知識なしでプレイした人の大半はスタート直後の爆弾魔でハイドモードになり、その後すぐに進んでしまいゲームオーバーになるハメになると思われる。
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ステージごとに設置から爆発までの時間が異なるのだが、一面が速く、次第に遅くなっていく。
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このせいで一面では前に歩き続けても回避できないが、二面では出来る。そのため一面より二面以降の方が回避は楽である。
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ただし、遅くなっていくのは途中までで、最終面付近ではまた爆発が速くなる。
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こいつの出現で人々はパニックになるという設定らしく、こいつが現れることで貴婦人や猫などもジーキル博士に牙を向いてくる。
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単体でも十分に厄介なのに…。
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なおこの爆弾、たとえ近くに置かれようが市民はおろかクモさえ殺せない。ええい、イギリスの生き物(ジーキル博士でないものを指す)は化け物か!?
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ちなみに、ステージによっては直接爆弾で攻撃せず、猫などの敵を凶暴化させるだけの爆弾魔が出てくる。理不尽な判定且つ超威力の爆弾と比べると遥かに楽である。
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一応、爆弾の範囲は縦方向に狭いため、タイミングよくジャンプすることで強行突破も可能。
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だがタイミングは恐ろしくシビア。しかも強行突破に失敗した場合はほぼ確実に即死する
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ハイドモードでは橋が崩れている箇所があり、当然のように落下すると即死してしまう。
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ジーキルより足が速く、屋根まで届くほど高く飛べるが操作性は劣悪のままなので、結局飛び越しにくい。
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これらの要素が絡み合い「一面が高難易度で後の方が楽」という理不尽な難易度曲線になっている。
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RPGなどでは「何もない序盤よりレベルも上がりフル装備の終盤が楽」ということもしばしばあるが、一切成長や装備要素の無いアクションゲームでこれは異例。
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地面から頭しか出ていない扉がやたらにあるが、入ることはできない。
評価点
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グラフィック、特に背景はそこそこ書き込まれており、見た目にはいい。
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ステージの種類も商店街や公園、墓地とバラエティ豊か。ハイドモードでの変貌した街並みも雰囲気が出ている。
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上品ながらどことなく不穏な様子のOPなど演出面は良好。
このOPから想像もつかないほどの珍道中が繰り広げられる訳だが。
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BGMは曲数が少ないもの雰囲気は良い。
一部妨害するキャラクターやモンスターたちにもテーマ曲がありこちらもそれぞれの場面にあった雰囲気を出している。
総評
キャラゲー(?)としては色々と凝った作りであり、バランスはともかく「システムが手抜き」という訳ではない。
凝ったシステムが尽く裏目に出ているという割と珍しいタイプのクソゲーである。
これならひ弱なジーキルが薬でハイドに変身し市民に復讐し回る…といった方がまだゲームとしてやり易かったかもしれない。
もっとも、それでは『ジキル博士とハイド氏』というより『突然! マッチョマン』のようなゲームになってしまうが…
とにかく一番大きいのは「当時としては全く遊べないレベルであった」という一点であろう。
これさえなければ後年ここまで話題になることはなかったことは間違いない。
海外版
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『Dr. Jekyll and Mr. Hyde』のタイトルでバンダイから発売された。
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何故か海外版ではステージ数が減り、その分同じステージを何回かやらされる。
日本語版と一面が違うのはそのため。使用基板とそれに伴うチップの変更によりグラフィックデータ搭載側の容量が削減されてしまったのが理由のようである(参考リンク)。
余談
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原作小説だけではなく映画や演劇などの派生作品にも題をとっている
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そもそも目的地にいる婚約者ミリセントは1920年の映画版のオリジナルキャラクターが初出で原作には出てこない。
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エンディングについて解説(ネタバレ注意)
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普通にジーキル博士でクリアしてもエンドマークが出るだけのバッドエンディング扱い。
だが、ハイドモードで最後まで到達するとグッドエンディングを見ることが出来る。
ただし一度もハイドになっていない場合、たとえジーキルが最終面にいてもハイドは1面からとなる。面倒くさい。
グッドエンドではラスボスの魔界王レテュール(道中にもいた緑の仮面のような敵の本体)との戦闘終了後、何者かが教会の十字架の上に絞首され、その後ジーキルに戻って無事結婚式を挙げるというめでたそうなデモが追加される。
そしてエンドマークが出てからしばらく待っていると、反転した「END」の文字とともに十字架に貫かれたハイド氏の姿が映し出される。「ジーキル博士の持つ本来の心がハイド氏の邪悪な心に打ち勝った」ことで「いつハイド氏に変身してしまうかわからない状態」が解消されたというのがグッドエンディングの趣旨と思われる。
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取説に「最終ステージでジーキル博士の持つ本来の心がハイド氏の邪悪な心に打ち勝った時、爆弾魔にも神の制裁が下るのです。」とあるので、絞首になっているのは爆弾魔と思われる。また魔界王レテュールの現実での正体が謎の爆弾魔であることも説明書で示唆されている。
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タイトルはパッケージとカセットそのものには「ジーキル博士の彷魔が刻」という表記がされているが、取扱説明書とゲーム本編では「彷魔が刻」と表記されている。
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原作では「薬の作用によりジキル博士とハイド氏が入れ替わる」「やがて薬抜きでハイド氏が現れるようになる」という設定になっており、説明書によると既に後者の段階に達している設定。
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ステージセレクトの裏技あり。
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なお裏技を使うとバッドエンディングを見ることはできない。
最終更新:2023年10月10日 08:08