アルゴスの戦士 はちゃめちゃ大進撃
【あるごすのせんし はちゃめちゃだいしんげき】
ジャンル
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アクション
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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メディア
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1Mbit+64kRAMROMカートリッジ
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発売・開発元
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テクモ
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発売日
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1987年4月17日
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定価
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4,980円(税別)
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判定
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良作
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シリーズファンから不評
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ポイント
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移植…? ゲームの出来は良質 パッケージ詐欺な漢ゲー
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アルゴスの戦士シリーズ アルゴスの戦士 / はちゃめちゃ大進撃 / アルゴスの十字剣 / (PS2版) マッスルインパクト
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概要
テクモのアーケードの名作『アルゴスの戦士』(以後、AC版)をファミコンに移植したもの。
AC版は「ディスカーマー」と呼ばれる独特な軌道で動くヨーヨー型の武器を振り回し、様々なパワーアップアイテム及び隠しボーナスが用意された、アクション版『スターフォース』とも呼べる作品だったが、
本作はストーリーこそアーケード版と同じものの、様々な変更が加えられ、全くの別物と呼べる作品となってしまった。
変更点
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パッケージイラストが可愛らしくデフォルメされ、「はちゃめちゃ大進撃」なる副題がついた。
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同様の変更はナムコの『スプラッターハウス』でも行われており、低年齢層等への配慮と思われる。
AC版はマッチョで半裸な主人公が怪物の生首を持っているという漢臭いイラストだったため、そのままではウケが悪かったのかもしれない。
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しかしながら、いざゲームを始めてみると、そこには夕陽をバックにAC版と同様のマッチョな主人公が佇み、タイトル画面には「はちゃめちゃ大進撃」の「は」の字も出てこない。
つまりパッケージ上のタイトルとイラストのみデフォルメされただけで、実際のゲームの中身のグラフィックはほぼ原作そのまま。さすがにギャップが大きい。
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「即死制」から「体力制」へ
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AC版では残機制一発死だったが、FC版は体力制に変更された。体力はアイテムで回復する他、成長により最大値が上昇する。
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引き換えに残機制は廃止され、一度のミスで即ゲームオーバーになる。ただし、コンティニューは無制限。
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RPG要素の導入
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戦士は敵を倒す事で「腕力(攻撃力)」、「胸力(防御力)」といった漢臭い名前のパラメーターや体力の最大値が上昇する。
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アイテムを取得する事で「精神力」が上昇し、精神力を消費することで「パワーアップ(ディスカーマーの射程上昇)」「戦士の気合(全体攻撃)」「体力回復」といった潜在能力を使用できる。
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ステージクリア式ではなくなり、マップ探索型アクションに変更された。複数のマップを行き来しながらゲームは進行する。
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見下ろし型のトップビューのマップが追加された。複数のマップを繋ぐフィールド的な存在だが、敵が出現するのでトップビューアクションの要素が加わった。
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また、ステージには扉があり、入る事で別のマップに移動したり、中にいる
マッチョ爺仙人から情報を得る事が出来る。
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インドラの変更
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AC版では「インドラ(闘神)」と呼ばれるアイテムを取得する事でアクションが強化されていたが、本作では「インドラ」はアイテムをくれる額に印がついたマッチョ仙人になっている。
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もらえるアイテムも「移動用のアクションが追加されて、先に進めるようになるアイテム」と変更され、AC版のように既存のアクションが強化される事はない。
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基本的には各地に幽閉されているインドラを救い、行動範囲を伸ばして次の目的地に向かう流れとなっている。
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余談だが本作に登場する人間キャラは主人公を除けば仙人とインドラという劇画調のマッチョ老人二人だけである。
神話を元にしている様な要素も見られる世界観の作品なので、女神様が手助けをしてくれたり、救出すべきヒロインの様な役まわりで登場しても違和感のない様な内容なのだが、上述の様に登場人物は肉体派の主人公にマッチョな老人達とモンスターのみという
全く女性の気配の無い硬派なゲーム
となってしまっている。まさに漢ゲー。
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その他の変更
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AC版で登場していた隠しボーナスやアイテムはいずれも登場せず、敵を倒した際は、体力回復か精神力回復かのアイテムのみを落とすようになった。
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アクションの減少、上を攻撃するアクションや、ロープを揺らすといったアクションが削除された。
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代わりにボウガンを使ってロープを繋げたり、滑車でロープを滑るといった新アクションが追加されている。
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ステージ構成やBGMもAC版とは全く異なる。
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スコアや時間制限といった要素の削除。
…と、このようにAC版からは何から何まで変更されており、原型はあまり残っていない。
マリオ的なAC版を移植したら『リンクの冒険』になってしまったと言えるほどの変更である。
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ゲームオーバーになっても、STARTするとゲームオーバーになったエリアのエリアのスタート地点から再開。コンティニューは無限。ただし、ディスカーマーのパワーアップはリセットされ、ライフは最大値は維持されるが現在値は初期と同じ3つからのリスタートになる。
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ただし、仙人とインドラの部屋で転落死した場合は最初のスタート地点に戻される。
評価点
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グラフィック
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AC版ゆずりの緻密なグラフィックは健在。印象的な夕陽も多重スクロールもしっかり再現されている。
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戦士のアニメーションやザコ敵のグラフィックもほぼAC版同様。追加されたキャラも違和感なく溶け込んでおり、AC版の世界観を壊していない。
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グラフィックの面で言えばAC版をよく再現しており、「AC版仕様でも頑張れば移植できたのでは?」と思ってしまう。
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動きが良い
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非常にサクサク動き、ディスカーマーで次々と敵を蹴散らしていく爽快感は健在。ジャンプなどの挙動もAC版をよく再現している。
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敵の挙動などもAC版にわりと忠実で、潰れるアニメーションこそ無いものの、踏みつけなども健在。
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ハードルが低くなった
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体力制や回復手段の登場により、一発死せずにゲームが進むので初心者に対するハードルが下がった。
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アイテムは頻繁に出る上、任意で体力の回復まで出来るため本作の戦士は随分とタフである。
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また、コンティニューが無限に行える上に修行により強くなるため、根気よく続ければキャラの成長によって難所を突破できるようになるといった救済処置も。
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マップスケールの増加
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AC版は基本的に横スクロールのみだったが、通常マップでも上下に細かくスクロールするようになった為、ステージに奥行きが増した。
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鎖鎌を投げると思わぬ所に引っかかって、先に進めるようになるといった探索要素もある他、ゲームを進めると、だんだんと天空を目指しているといったマップ変化も見られる。
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新規ボスキャラの追加。
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ドラゴなどいずれもそれなりに手ごわく、しっかりとパラメーターを上げなければ苦戦するバランスになっている。逆に言うと、ちゃんと強化していれば楽勝になる。
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BGM
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変更されたBGMは印象的で全体的にアツい曲が多く、世界観にマッチしている。また、1種類だけだったステージBGMが多数増加したのでゲームにメリハリがついた。
ただ、ボスBGMのみ、ひたすらボスの鳴き声(?)が流れるだけの物になっているので微妙。
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作曲者は『ソロモンの鍵』の蓮谷通治氏。
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海外NES版ではさらに曲が変更されている。
全体的にFC版は悲壮的な一方、NES版は明るくヒロイック。どちらが良いかは完全に好みによる。
作曲者繋がりで、仙人の部屋では『ジーキル博士の彷魔が刻』のタイトルBGMが使用されている。
賛否両論点
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AC版を期待すると肩透かし
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ゲーム全体の出来は良いものの、ゲーム性の根本がAC版から変更されてしまい、移植を期待したユーザーからは不満が頻出した。
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AC版では、「一発死故にパワーアップをすべて失うリスクを承知で危険なボーナスにチャレンジ」「1度しかない100万点のチャンス」といった緊迫感に溢れたゲームだったが、
本作は難易度こそ下がったものの、パラメーターを上げればゴリ押しが効いてしまう。
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AC版は無限湧きする敵をいなしつつ、ひたすら前に進むテンポのよいゲームだったが、本作は探索要素や修行のためにその場で留まる事が多い。
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このようにAC版と本作のゲーム性は対極の位置にあり、賛否が分かれやすい。
問題点
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アクションゲームとしての淡白化
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隠しボーナスやアクションの強化といった要素が尽く無くなってしまい、アクションゲームとしては淡白になってしまった。
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「ディスカーマーを円状に振り回し上空の敵を攻撃」「ロープを揺らして敵の攻撃を避ける」といった、『アルゴスの戦士』ならではの独特なアクションが削除され、平凡なアクションゲームになってしまった。
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一部アイテムの操作性の悪さ
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風の滑車がやっかい。サイドビューマップや、トップビューでもまっすぐロープが張られているところは問題無いが、トップビューマップでななめにロープが張られている場所では、滑車を架ける場所がわかりづらく、過って崖から落ちてゲームオーバーになりやすい。滑車がはまった時の「カチッ」という音も小さいため、聞き逃す恐れあり。
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そもそも、滑車を架ける操作が説明書にも「十字ボタンを入れる」としか書かれておらず、失敗して転落する危険性が高い。
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鎖鎌を持った状態でしゃがみ攻撃をする時、足元が鎖鎌が引っかかる種類の足場だと、下に降りてしまうため、しゃがみ攻撃ができない。そのため、鎖鎌入手後に低い位置の敵と戦う時は足元に注意しないと、攻撃するつもりで逆にスキを作ってしまうことになる。
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回復アイテム。
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回復は仙人の回復及び体力回復剤、それ以外では精神力を消費しての「たいりょくかいふく」と、敵が落とす回復アイテム。しかし、仙人の回復や回復剤は(して)くれる人が決まっているし、回復剤がもらえるのはある神器を入手した後のみ。「たいりょくかいふく」は精神力を7つも消費するため、そっちを貯めるのが手間。さらに敵のアイテムはめったに落とさないうえに1つで1メモリなので、時間がかかる。回復手段が多いわりには、どれもこれも面倒が付きまとう。
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コンティニュー時はライフ最大値がいくら増えていてもが3つまでしか回復しないため、余計に回復が面倒。
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中断機能がない
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RPG的な成長要素や謎解き要素があるにもかかわらず、パスワードもセーブも存在しないため、一度にクリアしなければならない。こんな所まで漢仕様なのはどうかと。
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クリアまでのプレイ時間はわりと長めである。
総評
元が名作だっただけに、AC版の移植を期待したユーザーからは、この上なくガッカリされたというガッカリゲーである。
AC版ファンからはパッケージと「はちゃめちゃ大進撃」という副題だけでも拒絶反応が出るという声もある。
しかし、知らないユーザーにとっては、ほどよい難易度で爽快かつBGMやグラフィックも良いため、高評価を得ているという面を持ち、賛否両論を呼ぶゲームである。
移植作というよりは、文中でも触れた『スプラッターハウス』のファミコン版と同様に、「AC版の外伝的な作品」として楽しむのが良いのかもしれない。
余談
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同様にAC版を移植したセガ・マークIIIの『アルゴスの十字剣』では、AC版の仕様を再現しようとしたものの操作やグラフィック、一部仕様に難がある為に劣化ゲーという評価を受けている。
その後、『アルゴスの戦士』はシリーズ化することもなく、そのまま埋もれてしまった…と思いきや、15年後にPS2にて突然の復活を遂げる。
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2020年5月20日に『ファミリーコンピュータ Nintendo Switch Online』に収録された。
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本作最大の問題点である中断機能がないという点がどこでもセーブによって解消されている。
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現状では説明書を参照できないため、アイテムの使い方や効果、地名とマップの繋がりなど本来説明書に記載されている情報を得られないのが、RPG的要素も多い本作にとっては若干問題。
最終更新:2024年10月09日 18:56