シャーロック・ホームズ 伯爵令嬢誘拐事件
【しゃーろっく・ほーむず はくしゃくれいじょうゆうかいじけん】
| ジャンル | アクションアドベンチャー |  | 
| 対応機種 | ファミリーコンピュータ | 
| メディア | 1MbitROMカートリッジ | 
| 発売元 | トーワチキ | 
| 発売日 | 1986年12月11日 | 
| 定価 | 5,000円 | 
| 判定 | クソゲー | 
| ポイント | 暴力が支配するイギリス システム解説を平然と誤記(あるいは故意のミスリード)
 理不尽な難易度、自画自賛
 推理ADVだと思ったら、意味不明な『マッピー』だった
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| シャーロック・ホームズシリーズ | 
 
概要
言わずと知れたアーサー・コナン・ドイルの有名探偵小説『シャーロック・ホームズ』シリーズを題材としたアクション・アドベンチャー。トーワチキの処女作でもある。
『最後の事件』終了後の時系列をベースとし、令嬢を誘拐した犯罪組織に迫っていく本作独自のストーリーが展開される。
特徴
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横スクロールアクションではあるが見下ろし型と横方向型の二種類を用いている。
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市街や建物で一般市民と触れ合うが、触れるだけでダメージを受けるため、マップ上の市民は誰もが敵。
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倒した場合見下ろし画面ではお金が、横方向画面では世間話を含めた情報が入手できる。
 
 
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推理力ステータスの存在。
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虫眼鏡で情報を入手するために必要な値。街の人から情報を入手することで増加。情報そのものは横方向のスクロールマップの敵を倒す事で入手。
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セリフを聞いた後は「AB同時押し」で通常画面に戻る。
 面倒くさいがA・Bボタンをどちらも攻撃に使用するゲームなので、「攻撃を連打したらセリフを見る前に閉じてしまった」という問題は避けられる。
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情報屋という存在もありはするのだが、あまり役に立つとはいえない(後述)。
 
 
問題点
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ホームズを冠しているが探偵アドベンチャーものではなくアクションゲーム
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画面に現れる敵を倒しお金や情報を入手するならアクションゲームとして普遍。しかしこのゲームで該当する報酬は探偵としての調査とそのための資金である。
 すなわちいきなり襲ってくる一般市民を蹴り倒して情報を貰い、さらにお金を奪う探偵となり、ホームズを題材にしたゲームとしては失格。「足で稼ぐ」とはそういう意味ではない。
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それに飽き足らずアクションゲームとして難易度を上げるためか、銃弾が飛び交うこともざら。
 19世紀のイギリスだからってそこまで殺伐とはしていないだろう。
 
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これがホームズの冠を持たないアクションゲームならまだしも、シャーロック・ホームズを冠したのが問題。
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アドベンチャー形式が基本と思われる、捜査して情報を得て解決する探偵形式の作品を、謎解きを入れたアクション物として理解したのがすべての失敗なのだと思われる。その反省が続編(後述)だろう。
 
 
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シナリオが雑
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ゲームや説明書ではわからないが、歩いている市民、ひいては英国民全員が敵の構成員。
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敵組織の名前も「パパイヤ団」という余りにも子供じみたネーミングセンス。ホームズの世界観にも当然まるで合っていない。
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なんとその設定は攻略本に書かれている。
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だからといって市民を片っ端からひっぱたいたところでどうでもいい世間話に終始されることもあり完全に死に設定。
 
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「伯爵令嬢誘拐事件」というタイトルも、内容にほとんど関係ない。
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令嬢はオープニングで攫われたが最後、次に登場するのはエンディングである。依頼人であるアップル伯爵のことも、説明書のストーリーに任せきり。
 (ついでに言えば、アップル伯爵という名前も前述のパパイヤ団同様にどうも安易で世界観に合わない)
 とは言え、レトロゲームは説明書に容量の節約を担わせる事も多く、この部分はまだ理解できる。
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しかし結果的にはゲーム開始直後、何が起きているかもわからず、何をしていいのかもわからない。せめて令嬢を探すぐらいの初動はゲーム内で描いてほしい。
 
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推理要素はない。
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集めたキーワードで謎解きするギミックはあるのだが、それは単なる謎解きであって犯人や手口の推理部分ではない。
 
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イギリス全土が犯罪組織の構成員で埋め尽くされている言い訳か警察に協力を求める素振りも見せない。
 
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ゲーム内の情報がヒントにならない。
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情報を入手するための虫眼鏡の入手方法がノーヒント。
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情報がヒントと認識しづらい。
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日常会話の中にしれっとヒントとなるワードが入っているのが悪質。
 「音楽は心を和ます」というワードから下水道の何処かに隠されているヴァイオリンを探す、「街灯の下は居心地がいい」という言葉から街灯の前でしゃがんでエリアを切り替えるといった、ヒントとするにはあまりにも下手なのが目につく。
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「シャーロックホームズッテ オモシロイゲーム ナンダッテ」等のネタならヒントですらないと弾けるが、それはそれで存在が邪魔。
 
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特殊なメッセージの存在が意味が不明
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7人の幹部の撃破で手に入る7の合言葉と、横スクロールマップで得られる16のメッセージだが、これ自体は読んでも仕方のないものである。
 7人の幹部相手に手に入る合言葉は幹部のいた街の支部でヒントと交換出来る。このヒントの中で16のメッセージを使うものがあり、それを最後のエリアで使うのだが、この答えが正しいという自信が持てないものが出てくる。
 
 
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説明書に誤りが含まれる。
 同社の次の作品、エルナークの財宝ではデモ画面に誤りがありプレイヤーを困らせたが、こちらは説明書の仕様がゲームの仕様と違えている。
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説明書で「使用しない」とされている2Pコントローラーが攻略に必須。
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ラスボス戦手前のエリアで、2Pコントローラー側でコマンドを入力しないと通過出来ない部屋がある。重要な要素で間違いを犯さないでほしい。
 
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説明書に書かれている2P側のコントローラーのコンテニューの事が、「使用しない」と記された3ページ後ろに書かれている。気づかなかったのだろうか。
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パスワードの入手方法は説明書に載っておらず裏技扱いになっている。ただ、説明書の他に「取扱説明追加文」という紙が同封されていて、そこに書かれていた(画像)。
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コンテニューやパスワード以外で使わないなら百歩譲るとしても、ゲーム上で必ず用いるのだから明確に誤りである。
 
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アクションゲームとして高難易度
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被ダメの無敵時間無し。複数の敵に重なられたらあっという間に死ぬ。
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銃弾はしゃがんでも躱せない。梯子がない場合ジャンプキックの頂点でようやく躱せる。
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ナイフを繰り出すと処理落ちする。これは敵側も同じでタイミングが狂う上無敵時間がないため連打を浴びる事も。
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公園や民家の中にも穴が空いている、落ちれば即死……かと思えば道が続いていることもありヒントとして不適格。
 
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仕様のおかしいショップ
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携行回復薬の薬瓶は所持数1個制限。しかしその状態でも薬屋で購入が可能。
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購入すると「既に持っている薬を捨ててくれないか?」と聞かれるが、「いいえ」を選んでも購入キャンセルではなく代金を取られた上に新しい方の薬が処分される。
 重複購入を止めるように組めばいいのに出来なかったのは技術力不足か。
 
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何も持っていない状態で弾を買うと銃が撃てる。
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明確な不具合で、銃を持っていないと弾が買えないというヒントがもらえるにもかかわらず実際は弾を買うと銃が撃てる。
 民家に隠されているピストルを入手するのが正しいフラグ。
 
 
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利用価値のない情報屋
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聞けることといえば「鍵が無いと行けない場所がある」「よろず屋には便利なものが売っている」といったゲームとしての基礎。ふざけるな
 はたまた「この手帳スゲーだろ!ニューカッスルで買ったんだ!」といった情報屋の情報。いい加減にしろ
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既に聞いたことのある情報やパパイヤ団の事を載せるだけでメモとしての役割も果たせただろうが、そうすると今度は自分の手帳とバッティングするため存在する意味がない。
 
評価点
褒められた部分は全くないといいたいが、あえて上げるなら以下の三点。
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比較的原作のホームズに忠実。
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派生作品のホームズは頭脳担当が専らだが、こちらは格闘技に精通しており、犯人逮捕において肉弾戦を行う描写が多く結果生命を危険に晒すことが多い原作スタイル。
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だからといって銃を乱射する国民を片っ端から蹴飛ばすのは違うだろう。
 
 
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BGMに関しては、メロディとベースの2音しか使っていないが、1ループがそこそこあるメロディ直球勝負の曲が多い。
 おどろおどろしいイメージの下水道の曲や、敵さえ襲ってこなければゆったりできる癒し系イメージの公園の曲など、場面にあったBGMが用意されている。
 それらを迷宮入りのゲームの中で延々とエンドレスに聞かされるためか、『ミシシッピー殺人事件』同様、耳と記憶に残る印象的なものである。
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ゲームが詰みになる不具合はない
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金がなくなれば民間人を殴ればよい。ヒントが取れないバグもない。アクションが出来れば詰まることはない。
 肝心のボスの城のギミックも、説明書が嘘をついているだけでコマンド入力での突破は可能。
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これを評価点として付け加えないと評価点が限りなく少ないのがこのゲームである。仕様通りのストロングスタイルと言えよう。
 
 
総評
まずホームズという題材を謎解きアクションと認識し、ゲームとして成立すると考えてしまったのが失敗の根底といえる。
推理する要素はなく治安があまりに終わっている世界で、住民を殴りながらヒントという名のキーワードを手に入れるだけのアクションゲームと成り果てた結果がこれだ。
あまつさえホームズで無かったとしてもヒントならざるヒントや難易度があまりに高いアクションを要求されることで、ゲーム単体でも非常に遊びづらい代物が完成してしまったことがうかがえる。
その後の展開
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説明書の最後に「第2弾(PART2)企画中」と記されていたが、同じくホームズ物の『霧のロンドン殺人事件』『Mからの挑戦状』が後に発売されているため、これは嘘ではなかったようだ。
 ゲームとして低レベルな今作とは一線を画した推理物アドベンチャーであり、こちらは比較的まともな内容であった。今作もそのテイストならどれだけ良かったか
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本作は「ホームズの宿敵である「M」失脚後の英国裏社会を支配しようとするパパイヤ団」との戦いだったが、続編2作の黒幕はいずれも「M」であり、時系列的には本作より過去の事。今回の黒幕はやられ際に「SEE YOU AGAIN NEXT GAME」と言うが、結果的に存在が抹消されることとなる。
最終更新:2025年04月09日 00:13