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Windows95、Macintoshで発売された『新世紀エヴァンゲリオン 鋼鉄のガールフレンド』(クソゲー)と、
プレイステーション2、Windows 2000/XP、プレイステーション・ポータブルで発売された『新世紀エヴァンゲリオン 鋼鉄のガールフレンド 特別編』(判定なし)について紹介する。
新世紀エヴァンゲリオン 鋼鉄のガールフレンド
【しんせいきえう゛ぁんげりおん こうてつのがーるふれんど】
ジャンル
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アドベンチャー
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 裏を見る
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対応機種
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Windows 95 Macintosh
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発売元
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ガイナックス
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発売日
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【Win】1997年7月11日 【Mac】1998年2月13日
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定価
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14,800円
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判定
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クソゲー
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ポイント
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割高なデジタル紙芝居 異常な要求スペック ファンからは賛否両論
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新世紀エヴァンゲリオンゲームリンク
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特徴
TVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』原作のソフト。アニメ製作をしたガイナックスが自ら作るオリジナルストーリーの作品。なお後に発売された『鋼鉄のガールフレンド2nd』との繋がりはない。
Windows版は当時エヴァ完結作として作られた劇場版『THE END OF EVANGELION(通称「EoE」)』と同時期に発売された。しかしその出来は…。
問題点
値段設定
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一般的なPCソフトより高い割には物足りない内容
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当時のPCゲームソフトの相場が7,800~9,800円あたりの中、定価14,800円。
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そしてプレイ時間は非常に短い。特に行き詰まることも無く1時間30分程度でゲームは終わってしまう。割高どころの話ではない。
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選択肢は行き先を指定する程度で全く意味はなく、シナリオはほぼ一本道。最後に登場する選択肢のどれを選んだかによって、3つある結末のどれかを迎える。
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セーブは特定のポイントでしかできないのだが、最後のセーブポイントから結末を決める選択肢まで20分ほどドラマパートが続く(シーンスキップは出来ない)。そのため結末全てを見るには長いドラマパートを3回も垂れ流しにしなければならない。
要求スペックの問題
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発売当時の最新鋭機級のスペックが推奨され、多くのユーザーがスペック不足に悩まされた。
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標準的なHDDの容量が4GB程度だった頃にフルインストールで2GB以上を必要とするわがままスペック。
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しかもこれだけの高スペックを要求する原因は恐らく未圧縮・未暗号化ファイルを直接使用していた為。実際に、音声・映像データがそのまま再生出来た。
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搭載メモリも少なかったWin95時代のパソコンで何十メガバイトもあるファイルをそのまま何度も再生していたわけだから、挙動もおかしくなるのも当然である。
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加えてインターフェイスも良くなかった。
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表示のタイミング合わせを全くしておらず、逆にハイスペックPCでプレイするとアニメーション表示が速過ぎ音が遅れて聞こえる。
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要するに推奨スペックを満たせばまともに見れるのではなく、ソフト開発環境と同じスペックのPCでなければ正常なものを見ることが出来ない。
シナリオ面
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ストーリーに突っ込み所満載。
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暴走ロボットに乗ったマナの友人を捕獲すべくマナを餌にしておびき出そうとする作戦。
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国家機密なのに敵対組織のシンジ達にあっさり侵入され、これまた機密を見られて逃げ出される政府施設。
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謎の転校生の身辺調査もしないネルフの人たち。
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あげくあっさりとマナの侵入を許してしまう。映画とリンクしてると言えなくもないが…。
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焚き火に騙されて見張りも残さずおびき出される戦自の面々。
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さんざんシンジ達を引っ張り回し命の危機にまでさらしておいて、『ずっと速い』で有名なお姫様っぽい言葉と共にシンジではなくムサシを選ぶマナ。
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生死不明になったマナを探して電車に乗り、そこで会ったネルフ本部職員から逃げた直後に過程をすっ飛ばして病院のマナと再会する。
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マナの内面。実はかなりのナルシストであり、PC版パッケージに書かれている、実の親を『あの人』呼ばわりする設定などドン引きすること間違いなしである。
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N2爆弾が投下されたとき「シンジはどうなってもいいから初号機を確保しろ」と命令するゲンドウ。補完計画の為に初号機も大事だけど、それ以上にシンジが必要なのでは?
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ゲーム制作スタッフがアニメの設定を良く把握しないまま作成したのか、アニメと異なり冬月が「シンジ君」と名前で呼ぶなどの違いがあるほか、ネルフ関係者のみが持つはずだった艦船名をマナや他の登場人物が持つなどしている。
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赤木だったり赤城だったりと安定しない人物名の誤字。
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ゲームシステムについても問題多し。
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選択肢であまり物語に関与する事が出来ない。最後の選択肢でルートが変わるといった程度。
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エヴァに乗るシーンはあるが直接操縦するACT要素などは一切ない。
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EDは3種類(特別編は4種類)あるが、マナED、アスカED、加持ED(加持が手助けしてくれるED)の3つ。レイEDは無い。
評価点
本編とはまた違う独特の面白みを持つ内容
明らかに本編や旧映画に繋がらないエンドもあるため、別物・パラレルワールドと割り切ることは可能。
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ヒロインの霧島マナというキャラクターそのものは愛され、二次創作作家などに重宝されている。
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これは外伝漫画「新世紀エヴァンゲリオン 碇シンジ育成計画」において彼女が第三のヒロインとして抜擢されたことからも窺える。
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『新世紀エヴァンゲリオン 2nd Impression』に登場する山岸マユミは長い黒髪にメガネをかけた(見た目は)内気でおとなしい少女であるため、ゲーム版限定のヒロインとしても差別化に成功している。
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アスカが新劇場版的な(特に破)分かりやすいツンデレキャラとして描かれている。本編とは完全に別人だがマナと並ぶ本作のヒロイン的扱いでその可愛さや健気さは、一見の価値があり好評が多い。シンジに近づく異性への嫉妬(本編ではレイに対して抱えていたがより分かりやすい)もあれど、マナの正体を当初から見抜きシンジを諌める姿は本編ではあまり発揮されなかったエリート経歴に見合う賢さもある。
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ストーリーそのものも、粗に目をつぶれば本編がかなり暗くなる以前の中盤での外伝的OVA的に楽しめる内容に仕上がっている。
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本編で旧劇場版まで存在感がほぼ皆無な戦自がエヴァに対抗する人体搭乗兵器を開発し、少年少女を用いて実験。その暴走から来る事故、そして脱走。戦自のスパイであるマナがシンジに接近し、嫉妬しながら正体を疑うアスカとの三角関係。シンジとマナのささやかな交流と暴かれる真実。マナを助けにシンジが彼なりに尽力。エヴァと戦自巨大兵器の対決。少年が出会った「鋼鉄のガールフレンド」とのひと夏のほのかな恋という王道の展開は悪くない。
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気さくなマナを交えた恋愛描写、旧劇場版でもフィーチャーされていた戦略自衛隊の解釈、加持が渋い大人キャラとしての存在感を発揮、アニメ本編ではあまり見られなかったアスカとシンジの恋愛関係を匂わせる描写(旧劇場版は二人の男女的愛憎関係に焦点を当てている)など、本作ならではの描写も多い。
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EDテーマとして流れる高橋洋子氏の「予感」は恋の始まりを歌った名曲。
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本編いずれのルートにもマッチした切ないメロディが心地よい余韻に浸らせてくれる。
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山下いくと氏がデザインしたトライデント級陸上軽巡洋艦。
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オリジナルのロボットである戦自の秘密兵器『雷電』『震電』のデザインがゾイドやメタルギアを彷彿させる。モデルはティラノサウルスとのこと。
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エヴァやジェットアローンともまた違ったリアルロボットめいたフォルムで、実に「戦自らしい」といえる。
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怪獣映画を思わせるオープニングと全裸で回し蹴りするアスカのギャグ描写。
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サービスシーン的なエッチな画像がある。
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冒頭でアスカの生尻、途中のイベントでマナの全裸(乳首あり)の画像が観られる。
残念ながら
PS版ではカットされた。
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…しかし現実は非情でマナの方は頭から足まで一瞬でスクロールするため、並の動体視力では大事な部分はほぼ見えない。本作にはCG閲覧モードも無いのでじっくり見るには録画ソフト等で一瞬のタイミングを切り取って保存するか、ソフトを解析してCGを抜き出すしかない。
総評
初期PC版の色々な暴利、エロゲー以下と言われたダメシステム、細部の設定やストーリーはアニメ本編と比べて粗がある。
ゲーム内容、シナリオ、システム共にクソゲーという評価は揺るがないが、上記評価点の部分もあり根強い支持もある作品でもある。
移植
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当初プラットフォームはWindowsのみとしていたが、「Macintosh版も要望が1万を超えたら作る」と言う話が浮上。ネットで署名が集められて実際に作られた。価格は同じく14,800円。
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後に発売される本作のセガサターン・プレイステーション移植版は、CSソフト相当の6,800円で発売された。
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マシンスペックが固定なのでPC版で起きていたマシンパワーに依存するアニメ遅延が無い。安定したプレイが可能でケタ違いの快適なプレイ環境を確保。
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しかしPS版は読み込みが遅い、アニメーションがスムーズでないなど、やや劣化移植。SS版は概ね良好。
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これらの問題点は後年発売されたPS2用の特別編で改善されている。
余談
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高過ぎる要求スペックは前述したとおりだが、初期ロットには存在さえしないスペックのハードを推奨した記述も見られた。
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その内容はインストール容量2MB、要CD-ROMドライブ 100倍速というもの。
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参考までに当時の最速は24倍速。2014年時点では52倍速までが実用化されているが、これ以上の速度でぶん回すと時速200km/h超と言う回転速度と遠心力でディスクとハードが壊れてしまう上、等倍での読み込み速度を向上させたDVDが程なく登場した為とうとう100倍速のドライブは発売される事は無かった。結局エヴァの舞台の2015年までに現れる事もなかったのである。
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街の看板などに実在の企業名、ロゴなどをそのまま書いて登場させている。
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こんな内容となった本作だが、ちゃんとしたゲームになっているセガサターンの『1stImpression』『2ndImpression』よりも、売り上げそのものは多い。
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発売直前に発売されたLOGIN1997年7月号誌上で制作者インタビューなど十数ページに渡って特集が組まれた。
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漫画家の島本和彦氏など多くの人のイラストが載った力の入った特集だったのだが、色々不安を感じさせる内容だった。
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橋本立郎氏のアニメとは別物、オリジナル要素多数、アニメキャラクターの性格や名前、そもそもエヴァの物語自体よく知らない、本編を見るつもりがない発言など。
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そもそもエヴァの物語自体が深い裏設定など多数なので、「よく知らない」というのもわからなくもないのだが…。
新世紀エヴァンゲリオン 鋼鉄のガールフレンド 特別編
【しんせいきえう゛ぁんげりおん こうてつのがーるふれんど とくべつへん】
対応機種
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プレイステーション2 Windows 2000/XP プレイステーション・ポータブル
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発売元
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ガイナックス
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発売日
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【PS2】2006年3月30日 【Win】2006年9月15日 【PSP】2009年4月9日
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定価
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【PS2】8,190円 【Win】オープンプライス 【PSP】通常版:3,990円 / 限定版:6,090円 (各税5%込)
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廉価版
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【PS2】BEST HIT セレクション 2007年3月15日/2,940円(税5%込)
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判定
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なし
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概要(特別編)
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初代PC版にあったシステム問題の改善とシナリオ追加した移植版。
評価点(特別編)
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セーブポイントの大量製作やオートセーブの搭載、アルバム(回想)モードの追加など。
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オリジナルのサブキャラである徳さんのCVが立木文彦氏(ゲンドウと二役)になった。ちなみに無印版は清川元夢氏(冬月と二役)
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どちらかというとナディアの無人島編にでも出てきそうなギャグキャラである。
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ムサシとケイタにセリフが増えた。
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もうちょっと増やしてやれよ……と言いたくなる程度とはいえ、追加された事は歓迎された。
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メインキャラにもセリフが増えた。
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マナに胸の小ささを気にするセリフが追加されたり、どちらかというとギャグ寄りのセリフが増えている。
賛否両論点(特別編)
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本編と全く繋がらない、はっちゃけた追加エンディング
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ここに辿り着く選択肢が「僕はもうダメだ…」。
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何もかもから逃げ出したシンジが徳さんのバーの珈琲を13杯以上呑みまくって酔っぱらい(?)、ゴミ捨て場で寝込んでいる所をマナと再会。その後に結ばれるという流れ。
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アスカは加持の元に転がり込んで押しかけ女房として生活。「日々の暮らしに精一杯」「(エヴァに)再び乗る事があったら幸せかもね」とか言い出す。
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日向がシンジとマナにネルフを離れて生きていくためのサポートをしながら、ミサトが一人暮らしになった事を良い事に「ミサトさんが欲しい」とカミングアウトする。
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無印のマナルートではシンジとマナが分かれる余韻の残るオチだったが、このEDではシンジとマナが駆け落ちする。
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一応、使徒の戦いは続いている世界であるはずだが、シンジもアスカもエヴァパイロットを辞める結末。レイについては語られないため、すべては彼女に委ねられることになる……のだろうか。
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もっとも選ばれた子供であるシンジがさっさとエヴァを降り、なぜかゲンドウ達もほったらかしにしているこの世界では人類補完計画は失敗に終わっているので、エヴァ世界的にはこれでよかったと思えるかもしれない…。
総評(特別編)
システムが改善したのが何より大きい。これから買うならこちらが良いだろう。
最終更新:2024年07月21日 12:00