機動戦士ガンダム 連邦VS.ジオン
【きどうせんしがんだむ れんぽうばーさすじおん】
| ジャンル | チームバトルアクション |  | 
| 対応機種 | アーケード(NAOMI) | 
| 販売元 | バンプレスト | 
| 開発元 | カプコン | 
| 判定 | 良作 | 
| 稼働開始日 | 2001年3月14日 | 
| ガンダムVS.シリーズリンク | 
 
概要
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これ以降長く続くことになるガンダムの"VSシリーズ"の始祖の作品。通称『連ジ』。
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TVシリーズ初代『機動戦士ガンダム』に登場したモビルスーツ(戦闘ロボット)を操縦し、相手チームのモビルスーツと戦うというシンプルなルールだが、原作のイメージを損なわない様に生み出されたゲーム独自のシステムが高い戦略性を生み出している。
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本作稼働当時は、これまでアーケード業界を支えてきた対戦格闘ゲームのムーブが下火になりつつあり、閉店に追い込まれる店が続出するなど業界全体が危機に晒されていた時代だったのだが、本作の登場によりアーケード業界は再び息を吹き返す事になる。当時の月刊アルカディアでの紹介記事によると、何と本作のお陰で閉店の危機を免れた店もあったとの事。
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しかしゲームバランスの面では決してほめられたものではなく、真に良作と呼ぶには少々難のある作品であった。
特徴
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「戦力」と「コスト」の概念。
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このゲームでは各機体に「コスト」という数値が設定されており、機体が破壊される際に自軍の「戦力ゲージ」からコスト分の数値が引かれていき、先に「戦力ゲージ」が0になった側が負けとなる。
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「戦力ゲージ」が0になるまでは何回撃破されても復活して戦えるということであり、単純に性能の高い低いだけでなく、性能×復活回数で機体の強弱を考えなければならないのが特徴である。
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当然のことではあるが、ガンダムやゲルググといった高性能な機体ほどコストが高く、逆にジムやザクなどの低性能な機体はコストが低いという傾向がある。
 
 
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シンプルな操作性。
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MSの操作がわかりやすく、射撃、格闘、ブースト(ジャンプ)、ロックオンの4ボタンのみ。
 
評価点
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当時としては画期的な2on2のチームバトル。
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対戦格闘ゲームに代表されるような1on1の戦いよりさらに奥の深い駆け引きが生まれることとなった。
 
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シンプルな操作性により初心者も入りやすい
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格闘ゲームにありがちな「コマンド入力の難しさでやりたい事ができない」といった事が起きにくい。
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また、操作部分での腕前の差も出にくく、純粋に2on2による戦略での勝負となっている。
 
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高い原作再現度。
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BGMから足音にいたるまで、音回りに細かい気配りとネタがちりばめられている。
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通常BGMは打ち込み音源だが再現度が非常に高く、騒音に囲まれたゲーセン内ではまず気付かないレベル。
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ヴォーカル曲は原曲をそのままPCM音源で再生。
 
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アニメの再現度をそのままに、当時としては非常にリアリティあふれるグラフィックを実現。
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程よく彩度の低い色調、テクスチャに書き込まれた「汚し」など、近年のVS作品と違う路線の作風である。
 
 
問題点
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筺体格差
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計四台のうち片方の二台は連邦側、もう片方がジオン側と完全に区別されており、それぞれの陣営のMSしか使うことができない。
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筺体によって使える機体に差があるだけでも通常では考えられないことなのだが、後述のバランスの悪さと相まって激しい格差を生むことに。
 
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機体バランスの悪さ
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ジオン側が圧倒的に有利。使えるMSの種類、質ともに優遇されており、連邦側の筺体はガラガラでもジオン側は長蛇の列、といったことも。
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逆に連邦側は悲惨の一言。使えるMSの数からして四種類しかなく(ガンダム、ガンキャノン、ガンタンク、ジム)、性能もジオン側の同コスト帯と比べると一回りも二回りも劣るという有様。
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もっとも性能はともかく、種類に関しては原作準拠だから仕方が無いとも言える。続編では種類が増やされる等、対応はされた。
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水中では水陸両用機以外は(僅かだが)動きが遅くなる仕様があるが、連邦軍には水陸両用機は無い。同シリーズとは言えないが『戦場の絆』にはアクアジムと言う機体が追加されることとなる。
 
 
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永久、ハメの存在。
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システム面での調整不足が原因。
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特にゲルググは、格闘攻撃→特殊格闘を繰り返すだけで簡単に永久ができてしまう。この問題はDXにおいて特殊格闘の攻撃判定を消すことで解消された。
 
 
総評
対戦ツールとして見た場合、連邦とジオンの戦力の決定的な差によってお世辞にも優れているとは言い難い。
しかし、2on2バトルという斬新なシステムやロボットゲームの難解な操作性というイメージを払拭するかのようなとっつきやすい操作性、そして原作ファンも納得の豊富な原作愛によって幅広い層の客を引き付け、文字通りアーケード業界を「生き残らせた」。
これ以降他者のアーケードゲームでも2on2バトルを導入した作品が登場したことからも、今作の功績は大きいと言わざるを得ないだろう。
余談
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開発に際しガンダムの権利を持つバンダイに話を通さず、原作者・富野由悠季氏の了解のみを得たという経緯がある。
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この件に関して、当時カプコンの常務取締役開発本部長でAC開発部門のトップでもあった岡本吉起氏が自身のYoutubeチャンネルである「世界の岡本吉起Ch」にて裏話を語っている。
    
    
        | + | 岡本吉起氏による『連邦VS.ジオン』開発裏話 |  |  
 
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この動画にもあるが、(本人の無知とミスに起因するところとは言え)岡本氏の機転と判断がなければ本作は
永久お蔵入りのボツ作品
になってしまうところだったのである。
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ただし岡本氏と富野氏の交渉に同席していたあきまん氏が異論を提示しており、実は富野氏の方がゲーム開発に興味を持っていてゲーム作品の相談のためにカプコンへ交渉を持ちかけたところ、そこで岡田氏が本作の許可を求めることで婉曲に富野氏の要望を断りつつそこからバンダイ側に許諾を取る足がかりにしたのではないかという仮説を出している。
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ガンダムの権利の主導側が富野由悠季氏にあったことは一度もなく、もちろんガンダムのゲームを作って販売を試みる上位社員がそれをわからないはずがないので先に富野氏だけに許可を取りに行くという流れそのものが不自然と言えば不自然。
 
 
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2on2によるユーザー間の確執
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これはこのシリーズに限った話ではないが、2on2というゲームシステムは互いの連携が非常に重要となるため、初心者と上級者との差が露骨に出る。それを良しとしない上級者が初心者を排斥しようとする事態も少なからず発生していたようで、この問題は対人戦において今後のシリーズの問題点ともなった。
 
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本作は基本的にファーストガンダム放映前後の設定に準拠し、後付け設定をなるべく廃している珍しい作品である。
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このことについて企画担当のトミー朕氏が一連のツイートで裏話を語っている。
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ざっくりと言えば本家バンダイがOVAやMSVなどをひっくるめた作品を多く作っていたため、その差別化としてあえて放映時の設定に絞ったとのこと。
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また、次回作『DX』で陸戦型ガンダム・ジムがゲスト参戦したのは、知名度と主役機(RX-78ガンダム)との食い合わせを考慮した末のチョイス(意訳)だと述べられている。
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こうしてモダンなガンダムでなく昭和レトロ路線で売り出したのも、当時アニメ直撃世代だったサラリーマン層にもウケた秘訣なのかもしれない。
 
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BGMが打ち込みなのは原曲版権料が割高だった為ということが、上記トミー朕氏から語られている。
最終更新:2025年02月21日 20:57