ジェリーボーイ
【じぇりーぼーい】
ジャンル
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アクション
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 高解像度で見る
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対応機種
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スーパーファミコン
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メディア
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8MbitROMカートリッジ
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発売元
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エピック・ソニーレコード
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開発元
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ゲームフリーク、システムサコム
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発売日
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1991年9月13日
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定価
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9,240円(税込)
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プレイ人数
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1人
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判定
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良作
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概要
ポケットモンスターシリーズで知られるゲーム開発会社、ゲームフリークが『クインティ』の次に製作したオリジナルのアクションゲーム。
ゲームフリークは企画とグラフィックを担当し、PC-9801版『ハイウェイスター』などを手掛けた株式会社システムサコム(現:システムサコム工業株式会社)がプログラムを担当するという分業方式で作られた。
ストーリー
平和な王国を収める王子ジェリー・ビーンは、エミー王女との結婚を控えていた。
だが、二人が婚約した夜、ジェリーの弟トム・ビーンの元に謎の魔法使いマジストが現れ、
「ジェリーを追い出せば、この国を独り占めできる」と唆す。
トムは、マジストの企みに乗り、その晩、エミーの部屋へと向かっていたジェリーに魔法をかけ、
彼を世界最弱の生き物『スライム』に変えてしまう。
そして、彼らはジェリーを下水道に流し捨て、国から追い出してしまった。
後に草原で老人によって助けられたジェリーはエミーに会う為、そして元の姿に戻る為、冒険に出るのだった。
ゲームシステム
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ステージクリア型の横スクロールアクションゲーム。全8ワールド16のステージ攻略に挑む。
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一度クリアしたステージはステージセレクト画面で選択する事で再プレイ可能。但し、探索要素も無いので基本は一本道。
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バッテリーバックアップによるセーブやパスワードコンティニューは実装されていない。
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各ワールドは1面が通常のアクションステージ、2面がステージ最後にボスとの戦闘が用意されたボス戦ステージと言った構成になっている。
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また、ワールドによっては1面クリア後に敵が一切登場しない街ステージが挟まれ、住民の会話を介しながらちょっとしたストーリーが描かれる。
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主人公のジェリーは「変形」、「貼りつき」、 「アイテムを体内に抱え込む」というスライムならではの特技を持っており、これらを場面に応じて使い分けながらステージの仕掛けを突破したり、敵をやっつけたりしていく。
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「変形」:十字キー上下を押すことで、 体を縦長にしたり、平らにして障害物を避けたり、 伸びた部分で敵にダメージを与える事ができる収縮アクション。
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「貼りつき」:壁、天井などに貼りつくアクション。高い壁を乗り越える、狭い通路をすり抜ける際などに活躍する。
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「体内に抱え込む」:ボール、鉄球、豆と言ったアイテムを体内に抱え込む事ができる。これを吐き出して敵を攻撃したり、新たな進路を作り出したりする事ができる。
評価点
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スライムの身体的特徴を違和感なく反映させた独特のアクション。
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身体を伸ばして敵にダメージを与えたり、下水管の中を高速ですり抜けたり、壁や天井に張り付いたりなど、スライムならではのオリジナリティ溢れるアクションを楽しめる。
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当たり判定も見た目よりも大きく設定されている都合でギリギリ攻撃が届くので、小さな身体だからこそのストレスを感じさせる所もなく、気持ちよくキャラクターを動かせる。
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スライムは移動が遅いなどの身体的ハンデを設けず、アクションゲームとしての純粋な気持ちよさにこだわった操作性。
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スライムだから移動速度は遅めとかそういうのもなく、Yボタン押しっぱなしにすればマリオと同じようにダッシュして軽快に動いてくれるので、全くストレスを感じさせない。
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ボタン配置も適切というか、マリオとほとんど変わらないので、やった事があるプレイヤーならば直に慣れる。
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多彩でぶっ飛んだワールドとステージが織り成す、バラエティに富んだ展開。
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草原、下水道、砂漠、海、雪原といったオーソドックスなものから、月面、小惑星、天国といったぶっ飛んだものまで色々なワールドとステージが用意されているので飽きさせない。
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ワールドごとの仕掛けも使い回しが少なく、個性が確立されている。
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簡単過ぎず難し過ぎずの絶妙なゲームバランス。
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ゲーム進行と同時に無理の無い範囲での上達を求められてくる適切な難易度設定。初心者から中級者まで幅広く楽しめる。
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ボス戦を始め、力押しできる場面も少なく、適切な立ち振る舞いが求められてくるので攻略し甲斐がある。
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暖かみのある音楽。パステル調のグラフィックにマッチした曲が満載で、ステージクリア後も再び聴きたくなるほどの出来。
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中でもワールド5「海」の曲はグラフィックの美しさとシチュエーションと絶妙にマッチしており、プレイヤーに強烈な印象を残す。
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可愛いけどどこかおかしな敵キャラクター。雪原のワールドだけに登場するランニング姿でマラソンをしている長身の男性、ハリボテのサメ、二足歩行するマンボウ、
全裸で松明を振る原始人
など変なキャラクターが多数登場。
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念の為、ネズミや鳥、ウサギ、動く岩、王国兵と言った普通の敵も登場する。しかし、変な敵キャラクター達と比較するとインパクトに欠ける。(言うまでもないが)
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ちなみに鉄球を振り回しながらプレイヤー目掛けて突撃してくる人間の敵がいるのだが、このキャラの名前が
ムロフシ
となっている。色々と大丈夫か、このゲーム。
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スライムの主人公がジェリーと言うのは「名は体を表す」という事かも知れないが、敵役がトムで、「トムのせいでジェリーが酷い目に遭い、ジェリーがトムに逆襲する」筋書きというのもどこかで聞いたような……。
問題点
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ボタン配置に難がある。
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貼りつく場合、Yボタンを押しっぱなしにしてダッシュする必要があるのだが、この際、ボールが一発発射されて無駄な消費になってしまう。
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後に発売された海外版では、ボールの発射がLRボタンに振り分けられている。
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一応、上にボールを投げて再び回収するというテクニックが存在する。ただし、天井の低いところではできない。
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収縮アクションが万能であるが故に空気になってしまっているボール攻撃。有限式で最大9発までしか発射できないだけでなく、先の操作性の問題もあって使い勝手が悪い。
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ちなみにこのボール攻撃でないとラスボスは倒せないようになっている。とは言え、戦闘中に補充が利くので、別にかなりの腕利きでないと勝てないというほど難しい訳ではない。
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実は、ダッシュジャンプの最高到達地点で上方向に体を伸ばすとラスボスに届いてしまう。慣れればボール無しのゴリ押し勝利も可能。
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台詞やメッセージが画面に直接表示される都合上、やや読み難い。
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会話ウィンドウもなく、台詞自体がそのまま表示されるので、背景によっては更に読み難くなる。
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概要の通り、バッテリーバックアップによるセーブやパスワードコンティニューが無いので、ゲームクリアするには一日で一気に終わらせなければならない。
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一応、ステージはそこまで長くないので、慣れれば2時間以内でクリアできる。
総評
スーパーファミコン初期のゲームなだけに技術面、演出面は地味だが、万人が楽しめる良質なアクションゲームに仕上げられている。
処女作『クインティ』よりも知名度的にはややマイナーだが、バラエティに富んだステージや絶妙なゲームバランス、個性の強いキャラクター達など完成度は高い。ゲームフリークの黎明期を代表する作品の一つである。
余談
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海外版ではボールの発射操作が変更されているほか、街ステージが削除されているなどの違いがある。それに伴い住民の会話なども見られないためゲーム単体だとストーリーがほぼ把握不可能である。
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徳間書店の『ファミリーコンピュータMagazine』で1991年17号から1992年1・2合併号にかけて漫画が連載されていた。作者は今作のキャラクターデザイン、ゲームデザインを担当したゲームフリークの杉森健氏。製作者自らによる漫画化である。(杉森氏は当時、漫画家としても活動していた。)
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連載終了後に単行本も発売された。こちらには描き下ろしの新作『ジェリーガール』なる作品が収録されているほか、ゲームの開発資料やゲームデザインを担当した田尻智氏、杉森健氏、とみさわ昭仁氏のインタビューが掲載されており、資料的価値の高いものになっている。
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1994年には続編『ジェリーボーイ2 ちょっとあぶない遊園地』が発表されたが、最終的に発売中止となっている。音楽に当時電気グルーヴのメンバーでもあった砂原良徳がメインコンポーザーとして参加していることも話題になった。
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ファミコン20周年の際、雑誌に掲載された田尻智氏へのインタビューによると「99%完成していた」とのこと。その事実を裏付けるようにβ版のROMがインターネット上に流出しており、かなり遊べる段階まで作られていたことが分かる。
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本作とは関係ないが、1995年にはヨーロッパで類似タイトルのSNES用ゲーム『Jelly Boy』がプローブソフトウェアよりリリースされている。
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因みに本項のゲームの方は『Jerry Boy』(北米版は『Smart Ball』)であり、「rr」と「ll」で微妙に綴りが違う。
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『Jelly Boy』の方はスライム状の主人公を操作する横スクロールアクションという点は共通しているが、通常時は人型で状況に応じてモーフィングするという内容。
最終更新:2024年03月30日 19:10