クインティ
【くいんてぃ】
| ジャンル | アクション |  | 
| 対応機種 | ファミリーコンピュータ | 
| メディア | 2MbitROMカートリッジ | 
| 発売元 | ナムコ | 
| 開発元 | ゲームフリーク キッド
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| 発売日 | 1989年6月27日 | 
| 定価 | 5,145円(税込) | 
| 配信 | バーチャルコンソール 【WiiU】2014年7月2日/514円(税8%込)
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| レーティング | CERO:A(全年齢対象) ※バーチャルコンソール版より付加
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| プレイ人数 | 1~2人(同時プレイ) | 
| 判定 | 良作 | 
 
概要
後に『ポケットモンスター』を制作することとなるゲーム系同人サークル、ゲームフリークが3年かけて作り上げた処女作品。
ゲームフリークがゲーム制作集団としてアマチュア時代に開発機材が無いところから開発を始め、ほとんど完成品の状態でナムコに持ち込み、商品化が決まった後、ナムコからの要請で当時ナムコの下請け開発もやっていたキッドとゲームフリークで手直しを行った上で発売されることとなった。
当時のゲーム業界で唯一、商業ベースで発売されたインディーズ作品として知られている。
ストーリー
ここは不思議な人形の国。ボクの名前はカートン。ボクは3人の兄ちゃんと、かわいい妹の5人で楽しく暮らしていたんだ。
ところが!ある日、ボクのガールフレンドのジェニーが、妹のクインティと3人の兄ちゃんたちに、さらわれていってしまったんだ。
ボクがジェニーとばかり仲良くしているのが、くやしかったらしい。よーし、ジェニー、いま助けに行くぞ。待ってろよ!
特徴
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パネルを「めくる」という斬新なシステム。
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「新しいアクションゲームとは、新たな動詞を考えること」という田尻智氏の思想を元に考えられたアクションである。
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パズルをめくって敵を滑らせ、すべての敵を壁にぶつければ面クリア。
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ステージは画面上に配置された横7縦5マスある画面固定型のゲーム。
 
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多種多様なパネルたち。
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スターパネル:100枚取ると1UP、さらに主人公のスピードが1段階上昇する。
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スペシャルスターパネル:ラウンド内のスターパネルが残り一枚になった時これに変化する。取るとスターパネル10枚分。得点は10000点(普通のスターパネルは100点)と高い。
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ムーンパネル:取ると画面が暗くなりノーマルパネルがスターパネルになる。画面の暗さはサンパネルを取ると元に戻る。
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タイムパネル:制限時間を5秒延長するパネル。得点も2000点と高め。
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クロスパネル:そのパネルを中心に上下左右のパネルがめくられる。
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アタックパネル:中心に触れると主人公の向いている方向に飛ばされ敵にぶつかると敵を倒すことが出来る。滑走中は方向転換が出来る。これを応用するステージもある。
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スペシャルボーナスパネル:光るアタックパネルで、乗るとボーナスステージへ行ける。
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ルーレットパネル:4種類の絵柄が周期で次々と変化し、中心を通過した時の絵柄の効果が表れる。
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サンパネル:自分以外のパネルをすべてめくる強力なパネル。
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エネミーパネル:敵が復活するマイナスパネル。配置してあるステージも多い。
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クロック&タイムパネル:4方向の矢印の内一つが点灯して時計回りにぐるぐる回る。踏むと点灯方向にパネルがめくられる。
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メタルパネル:配置してあるパネルには進入できない、いわゆる防壁。アタックパネルで壊すか、破壊する敵を通過させることで壊せる。壁代わりなので敵をぶつけることもできる。
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ガレキパネル:メタルパネルの残骸で通過できるようになったもの。
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ロックパネル:ネジ止めされたパネル。これが出現するとそれ以上めくれなくなる妨害系パネルだが、全面ロックパネルになると敵全滅+大ボーナス得点獲得。
 
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最初に選べるステージは全部で8つで、それぞれ決まった敵が登場する。自由に選ぶ事ができ、自分の好きなように攻略できる。敵も後半になると挙動が変わってくる。
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レストラン/ウォークマン:ただ歩いてくるだけの初心者向けの敵。プレイヤーに近づくが逃げる。そのまま体当たりしてくるもの、めくると小さな二体に分裂するものも現れる。
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ピラミッド/ジャンパー:飛び跳ねながら移動し、空中にいる時はカートンのめくりを避ける。追跡してくるタイプ、近寄ると逃げて腕組みして棒立ちするタイプ、滞空時間が長いタイプもいる。また、裸のレアキャラもいる。
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ミュージアム/アーティスト:パネルに絵を描き、めくれなくしてカートンを妨害する。移動速度も速め。イラストマンというヒト型の絵を描いて実体化させてくるものも現れる。
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コテージ/プランプ:体重が重く、パネルをめくってもあまりふきとばないうえ、四股を踏んで反撃してくる。めくると即座にジャンプして反撃するタイプもいる。
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タワー/アクロバット:近づいたりパネルをめくろうとすると高く飛び上がり、カートンのめくりを避ける。遠距離でめくっても回避するタイプも現れる。
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シアター/バレリーナ:踊りながら移動し、壁や障害物に反射すると移動速度が上がる。斜めに動ける珍しい敵。中盤はメタルパネルを壊すタイプ、後半はホーミング追跡してくるタイプになる。
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クラブ/スイマー:泳ぐように後ろのパネルをめくりながら移動してくる。外壁に上ると、カートンめがけて飛び込んでくる。泳ぎつつプレイヤーに直に追ってくるタイプもいる。
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マッシュルーム/ミミー:カートンの動作を真似し、動きに合わせて止まったりパネルをめくったりする。前半はワンテンポ遅れた動作、後半は同時に真似る動作をする。
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天空の城/コサック:転ばされるとコサックダンスのような動きでパネルを二回めくり反撃してくる。上記8つと中央のキャッスルステージをクリアした先にある最終ステージに登場する。後半は距離が近づくだけでめくり行動をするタイプが現れる。
 
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アクションゲームではあるが、パズル要素が強めである。
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コミカルな世界観とは裏腹に昼ドラのようなストーリーも印象的。
評価点
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シンプルだが奥深いシステム
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簡単なようでいて、頭を使う必要のある場面が多い。
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ただひたすらめくって倒そうとすると痛い目を見る。スターパネルを集めなければ敵に追いつかれてしまいすばやい行動もできず、一見有用なサンパネルも取ったら取ったでエネミーパネルだらけになったり、という罠配置も多くなってくる。
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敵の特性を生かす戦略もある。パネルをめくるミミーやプランプを利用して同士討ちさせて倒したり、ひたすら追いかけてくる敵をアタックパネル二重でひきよせて倒したり、ジャンプする間一方向にしか進めないジャンパーを隅に手繰り寄せてまとめて殲滅…といった多種多様な方法がある。
 
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パネルをめくる時に爽快感がある。
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意図しないところで敵が敵によってパネルをめくられて妨害されたり、倒されたりというシュールな場面が拝める。
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サンパネルを取ったときの豪快なめくりは必見もの。これがたくさんあると何度も取りたくなる。
 
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アタックパネルの滑走の爽快感も売り。中にはサンパネルと連続で併用しつつ敵を薙ぎ払うといういった凝った設計がされたステージも用意されている。
 
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難易度は面が進むにつれ絶妙に上がる。しかしランダム要素はそれほど多くないため、パターンを練りこんでいけば安定してくるようになっている。
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難易度が高くともステージによっては「スペシャルステージパネル」が隠されている。これに乗れば敵を倒さなくともステージクリアは確約されるという救済措置もある。
 
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ステージ数は全100面ありなかなかのボリュームがある。
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クリアしたプレイヤー向けには、隠しコマンドを入力することで難易度の高いEXTRAが用意されている。こちらも全100面だが、ステージセレクトがない。
 
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単純に面クリアするだけではなく、高得点パネル探しや高得点を得られるクリア方法を目指すやり込み要素もある。
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敵を全滅させるのが一般的なクリア方法だが、全部のパネルがめくれなくなった場合にもステージクリアとなりボーナス点までもらえる。
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パネルアイテムを無視すれば、10秒以内に速攻できる面もあり、展開のメリハリは効いている。
 
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敵も味方もとても可愛らしくキャラクターの動きや表情が細かい。敵キャラにはそれぞれ味のある個性があり、プレイヤーへの印象づけに成功している。
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2人同時プレイをして協力したり邪魔したりできる。ちなみにプレイヤーキャラの2Pはカートンの親友の「パートン」。
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ステージを同時、別々に攻略することが可能。ミスをするかステージ制覇することで交代になる。
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同じステージを選ぶと「PAIR PLAY」になる。同時攻略が可能でどちらかが囮として利用し敵を倒すという方法や、味方同士をめくること(いわゆるアタックパネル状態)で敵を倒すなどという戦術ができたりと多種多様。難しいラウンドを攻略するにはもってこいである。
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めくりアタックをしたつもりが敵に当たり判定が発生してしまったり、敵をめくってプレイヤーにわざと当てたりするというバトルロイヤルに発展することもあり、下手をすればリアルファイトになりかねないことも。この点は『バルーンファイト』や『アイスクライマー』と同様である。
 
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万が一どちらかがゲームオーバーになっても片方の残機が1以上残っていれば、復活は可能。
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パートンがいる状態でクインティを倒すと少しだけエンディングの演出が違ったりと、細かい点にも気が配られている。
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BGMも聴き応えのある良曲揃い。時間切れになるとスーパーマリオシリーズのようにテンポが速くなるのも特徴。
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レストランステージ&タワーステージのような高揚感あるBGMが特に人気がある。他にもシアターステージやクラブステージといった専門分野にぴったりなBGMも存在する。
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マッシュルームステージではマネをする間だけBGMが流れ、コテージステージのBGMでは時間切れになると「コォン!」とゴングと共に繋ぎがあるという遊び心あるBGMも存在する。制限時間制があるのと敵の挙動もあって最後までゆっくり聞けないものがあるのが残念な点。
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作曲はポケットモンスターシリーズの音楽を手がけている増田順一氏。
 
問題点
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エンディングまで行くにはかなり時間がかかる。
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パスワードやバッテリーバックアップが無いため、一度にぶっ続けで攻略する必要があるのが難点か。
 
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プレイヤーのスピードが遅い。スターパネルを100枚集めることにより解消はされるが、このスピードの上がり方に癖があり、段階によってはスピードが一時的に遅くなることもある。
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どことなくアーケードを意識した作りになっており、クリアのためにはある程度の稼ぎが必須。特に後半は敵のスピードが速いため、それなりにスピードアップしていないとノーミスでいくのはまず無理。
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スピードアップしていてもギリギリ逃げられるか、というくらいのレベルのこともあり、集団で追われると逃げるのはかなり困難になる。さらに、敵の方が速いこともある。やり過ぎ。
 
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パネルで敵を倒しまくる爽快感やリアルタイムパズル的な思考ゲームを目指したのだろうが、どちらとしても中途半端。どちらかを期待してプレイすると裏切られる。結構力押しプレイが必要。
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アイテムパネルの効果は、ちゃんとパネルの真ん中に載らないと発動しないため、敵から逃げ回っている時はなかなか発動できず、歯がゆい思いをさせられることもある。
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めくり系パネルは当パネル以外のマスをめくる挙動になっている。敵が同時に乗っているとめくられず逆にやられてしまう可能性もある。
 
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エネミーパネルは明滅する波紋状になっている。これが多くを占めているステージもあるので目が疲れやすい。
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アーティストについて。ロックパネルが市松模様状に配置されているステージでは、元々めくれるパネルが限られるうえに絵を描かれてさらに減らされるのはかなりやっかい。だが逆に、パネルを全てめくれなくしてクリア&ボーナスを狙いやすい面でもある。
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ミュージアムステージのボス戦では、6人が一斉にエネミーパネルを描き、増えた敵もまた描く、の繰り返しのため、倒すより増えるペースの方が早くなりがち。めくれるパネルもどんどん減り、さすがにやり過ぎ感がある。
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スタートはアーティストが描かれた状態→実体化というパターン。しょっぱな6枚がめくれない状態となる。
 
 
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中には、ほぼ全面にエネミーパネルが敷き詰められているステージもあるが、その場合、隠れているサンパネルなどを発見できないと、クリアは不可能に近い。初見殺しにも程がある。
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ボス戦だが、主人公カートンの兄達(特に三男のトライ)が極端に弱く、壁際に飛ばせて1回めくるだけであっさり勝ててしまうことが多い。
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パネルをめくる動作もするが距離を置かなければほとんどはジャンプの反復なので誘導も容易い。かえって、スピードの速いザコの集団と戦うパターンの方が難しいくらいである。
 
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各ステージのザコ出現のボス戦のソロプレイが難しく場合によっては却って二人プレイの方が有利になる場合もある。
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ミュージアム、シアター、タワー、アーティストのボス戦は兄弟と一対一ではなくザコ自体が6体現れる。ボス戦はミスすると頭数から仕切り直しに。二人プレイはどちらかの自機が無くなるまでゲームは続行されるので有利に立ちやすくなってしまう面もある。上記にあるアーティストなら尚更である。
 
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アクロバットの茶色と赤色の得点はどちらも480点だが、これは同じ数値を参照するようになっているため。要は設定ミス。
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茶色の得点である「0048」の後方に「0095」という数値があるため、赤色は本来なら950点になるはずだったと思われる。
 
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得点の問題だとミミーは弱い黄色の方が650点と高く、強い赤色は560点と黄色よりも低くなっている。仮に数値が逆だとしても90点差と性能差に対して割に合ってるとは言い難い。
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説明書の途中参加プレイの項目には『マップ画面でセレクトボタンを押すと、途中参加ができます。』とあるが誤り。実際はスタート+セレクトボタンの同時押し。
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スイマーは正面(画面の下方向)を向きながら歩いてくる時、よく見ると腕が千切れて表示されている。表示すべき絵が間違っているのが原因。『杉森建の仕事』にもその絵が掲載されている。
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スイマーは他にも横向きの飛び込み姿勢の時に変な位置に1ドット浮いていたり、ステージセレクト画面のものは顔が長かったりと細々としたミスがある。
 
総評
「めくる」という斬新な発想やシンプルだが奥深い操作性等、ゲームフリークの処女作として相応しいゲームである。
その後、田尻智やゲームフリークがめざましい躍進を遂げるにもかかわらず、長らく続編、リメイク、バーチャルコンソール配信はされていなかった。
現在は気軽にプレイできる環境が整っているので、これを機にゲームフリークの原点に触れてみるのもいいだろう。
余談
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クインティは任天堂がFCのインディーズ作品で唯一ライセンス販売したソフトでもあり、本作が20万本のスマッシュヒットになった際、ゲームフリーク側には多額の印税収入が入り、これらを元手に法人である「株式会社ゲームフリーク」を立ち上げた。
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なお人気作品にもかかわらずVC配信が2014年までずれ込んだ理由の一つに、本作がインディーズ作品だったことがあるとされている。
 
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北米では1990年12月に『MENDEL PALACE』(メンデルパレス)というタイトルでハドソンから発売された。
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ストーリーと各キャラクターの名称が一新されており、主人公のボンボン(日本版のカートン)とノンノン(パートン)が、自身の悪夢の世界に囚われたキャンディ姫(ジェニー)を救い出すという内容になった。それに合わせ、各敵キャラクターも「キャンディ姫の目覚めを妨害する人形達」という設定になっている。
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ステージの構成も日本版と一部異なっている。
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(画像検索すればすぐ出てくるが)某MEGAMANよろしくやたらと濃いパッケージ絵となっているが、これは杉森建が先に原画及びドット絵を描き、これを元に別のイラストレーターがパッケージ絵を描いた模様。おまけにCMはとてもおどろおどろしい。どうしてこうなった。
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ところで『メンデル
宮殿
』とはそもそも何なのだろう。ゲーム内にあるのは城(キャッスル)だし、メンデルがどこ由来なのかは本当に謎。
 
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ユーゲー(ユーズドゲームズ)2005年3月号にこのゲームのサウンドトラックが付録として付いてきた。
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当時発売されていた食玩『ゲームサウンドミュージアム ナムコット編』と同じ仕様で、通し番号は『UG』(ユーゲーの略)となっていた。
 
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ゲーム雑誌『ファミコン必勝本』誌上でキャラデザの杉森建氏本人による漫画が連載されていた。単行本化されず長い期間お蔵入りとなっていたが、2014年に発売された作品集『杉森建の仕事』に収録された。
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2014年7月2日にWii Uのバーチャルコンソールに配信された(2020年6月25日配信終了)。
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2020年6月18日に発売されたNintendo Switch『ナムコットコレクション』の第1弾販売タイトルとして本作が配信されている。
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また、同日にPS4/Xbox One/Steamおよび海外版Switchで配信された『NAMCO MUSEUM ARCHIVES Vol 2』には本作の海外版『MENDEL PALACE』が収録されている。
 
最終更新:2023年11月20日 14:23