タクトオブマジック
【たくとおぶまじっく】
| ジャンル | 戦略シミュレーション |  
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| 対応機種 | Wii | 
| 発売元 | 任天堂 | 
| 開発元 | タイトー | 
| 発売日 | 2009年5月21日 | 
| 定価 | 5,800円 | 
| 判定 | 良作 | 
 
概要
リアルタイムで進行する(非ターン制)戦略シミュレーションゲーム(リアルタイムストラテジー)。
ストーリー上の繋がりはないが、DSで発売された『ロストマジック』の続編にあたる。
プレイヤー本人である主人公のみが魔法を使うことができ、大きく戦況を変えることができる。
光の神を信仰するエルフ族、闇の神を信仰するウルフ族、そしてどちらにも属さないヒト族・・・
その三者の間で始まった光と闇の戦いは、陰の存在によって操作され、やがて王国全土を巻き込んだ大きな戦乱へと発展する。
そのストーリーは、プレイヤーに対して、平和とは何か、善悪とは何か、幸福とは何かを問いかける。
ゲームシステム
ストーリーに沿って戦略ミッションマップをクリアしていく。
ミッションマップでは、リアルタイムで仲間に指示を出しつつ自分も魔法を使ってクリアを目指す。
全ての仲間を失おうが勝利条件(全拠点占領・全敵部隊撃破・敵リーダー撃破・目的地到達など)さえ満たせばクリアで、倒れた仲間も次のミッションでは再び参戦可能である。
ストーリーを進めていくことで、仲間や使える魔法が増えて戦略が広がっていく。
キャラの移動はアイコンを掴んで目的地に置く、魔法の詠唱は魔法文字(ルーン)を画面に描くといったように、全体的にリモコンで直感的に操作できる。
ステージごとにクリア得点が出され、得点に応じて評価メダル(金、銀、銅)を得られるため、全てを金メダルにするなどのやり込み要素もある。
Wi-Fiに繋ぐことで対戦・協力プレイもできる(対戦11ステージ・協力3ステージ)。
評価点
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ルーンを描くことで発動する多彩な魔法
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魔法を使えるのが主人公だけで、発動には詠唱操作が必要になる。そのため、プレイヤー自身が主人公になったような感覚を味わうことができる。この点は従来の戦略シミュレーションにはない新しさである。
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魔法の種類が非常に多く(最終的には70種以上が通常使用可能で総魔法数は100種以上)、その効果も多岐に渡る(攻撃・状態変化・回復・召喚・地形変化など)。その多数の魔法の中から、プレイヤーが好みの魔法を選択しながらゲームを進められる。人によって主力魔法が異なるのも面白い。
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全体的にルーンの認識が良好で、多少崩れても認識される。一方で、ルーンを綺麗に描けば魔法に効果が上乗せされる。
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慣れないうちや焦って描いたときは認識されにくいことが多く、その辺りも妙にリアルである。
 
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MPの概念がなく、好きなだけ魔法を連発できる。
 
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豊富なキャラクター
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ストーリーを進めていくことで様々な個性を持った仲間(ガーディアン・モンスター)が次々と入ってくる。
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出撃可能数に限りはあるものの、遠距離攻撃で遠くから削ったり、足の速い部隊で敵陣をかき回したり、体力のある部隊で強引に拠点を占領したり、どのように進めるかは全てプレイヤーの自由である。
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プレイヤーが操作可能な魔法使い(キャスター)の数も、各種ストーリーをクリアすることで増えていき、それぞれのキャスターが独自の強みを持っている。
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世界観に合うかどうかは別として、自分のMiiもキャスターとして使えるようになる。
 
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仕掛けに満ちたステージ
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拠点・障害物・罠・スイッチ・溶岩・水流・流砂など、ステージ毎に様々な仕掛けが施されており、どの魔法や部隊でそれを切り抜けるかといった謎解き的な楽しさがある。
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「魔法チャレンジ」という特に謎解き要素が高いエキストラミッションもある。
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ミッション数は100を軽く超え、ボリュームも十分にある(メインストーリークリア20~30時間、全ストーリークリア40~50時間、全ミッションクリア50時間~といったところ)。
 
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快適なゲームスピード
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いわゆるターン制ではないため、プレイヤーが何もせず見ているだけという時間ができにくい。
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敵も味方も全部隊が同時に動くため、非常に現実感のある戦いができる。
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移動はやや遅めであるが、魔法詠唱の時間を考えると全体的にはバランスの取れたスピードとなっている。
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1つのミッションは10~15分程度の制限時間となっており、まとまった時間を取れなくても問題なくプレイできる。
 
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丁寧なチュートリアル
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リモコン操作の斬新なシステムが取り入れられているが、チュートリアルが丁寧なためゲーム初心者でも戸惑うことなくプレイできる。
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2周目以降はやや煩わしく感じられるかもしれない(スキップ不可)。
 
 
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ゲームバランス
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初めは易しく終盤は難しいバランスになっているため、プレイヤーが腕の上達を感じられる。
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後半は敗北の確率も上がるが、すぐにリトライ可能で、その際に攻略のヒントを見ることもできる。
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仲間部隊にレベルの概念がないため、レベル上げや経験値の割り振り等に頭を悩ませることもない。ゲームバランスも崩れにくい。
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逆に言うと、レベルやステータスを上げてゴリ押しでクリアするといったことができないようになっている。
 
 
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独特なマルチストーリー
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メインストーリーでのストーリー分岐や本編クリア後のサイドストーリー・パラレルストーリーといったマルチストーリー制が取り入れられており、ネタ的なものも含めて様々なストーリーを楽しめる。
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ストーリー分岐点での演出はかなり凝っており、運命の選択を感じさせられる。
 
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ストーリー部とゲーム部の割合がちょうど良く、延々とムービーや文章を見せられるといったこともない。
 
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BGM
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元ZUNTATA・古川典祐によるオーケストラ調の壮大なBGMの数々は、どれもゲームの世界観・ストーリー・ステージと良くマッチしており、非常に質が高い。
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残念ながら、戦闘中はゲームの操作が忙しいため、しばしばBGMを悠長に聞いている余裕はない。
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曲単体でも十分な価値があるため、サウンドトラックの発売を求める声も多い。
 
 
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Wi-Fi
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協力・対戦共にバランスが良く、対戦前提で魔法バランス調整したとさえ感じられる。
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協力ステージは少ないので、協力プレイが好きな人にとってはいまいち。
 
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オフラインでは見向きもされないような魔法が生きてきたり、オフライン以上に多彩な戦略を楽しめる。
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自分と他人の使う魔法の違いを生で感じることができる。
 
賛否両論点
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ダークなストーリー
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選択可能なストーリーの一部がバッドエンドのような感じになっている。
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作られたようなハッピーエンドと対になっているため、むしろ高く評価している人もいる。
 
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一部ステージの難易度
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終盤ステージやエキストラステージに極端に難易度の高いステージがあり、ゲーム初心者にはかなりきつい。
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ゲームに慣れた人にとってはやりがいのあるステージになるので一概に悪いとも言えない。
 
問題点
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グラフィック
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グラフィック自体が悪いわけではないが、派手な演出が少ないため、地味に見られがち。
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リアルグラフィックでもいわゆるアニメ絵でもないため、購入対象が分かりにくい。
 
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一本道のストーリー
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後半に分岐やサイドストーリーがあるとはいえ、それまでは一本道で寄り道などはできない。
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王道的ストーリーなため安定感はあるが、人によっては飽きてしまう。
 
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CPUのAI
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CPUの思考が単調で全体的に待ちが多い。そのため、遠くから魔法で攻撃すると敵が何もせずに倒れていったりする。
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CPUの思考が単調なため、中盤以降のステージ進行も単調になる部分がある。
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複雑な攻防の駆け引きをしたければ、Wi-Fiで対戦するしかない。
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仲間部隊は敵が近くに寄ってくると自動で動いて攻撃を開始するが、これも慣れないうちは制御が難しい。
 
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詠唱操作
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魔法陣を開く操作は、ヌンチャク振り上げまたはZボタン押しで行えるが、人によってはデフォルトの振り上げ操作が煩わしく感じられる。
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Wi-Fiランキング上位5人の中では、振り上げ:Z押し=3:2で振り上げの方が多く、振り上げが極端に不評・不利とも言い切れない。
 
 
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視認性
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部隊のアイコン表示などの工夫によって視認性は上げられているが、敵味方が入り乱れているときは、それでも状況把握に苦労することがある。
 
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頻繁なオートセーブ
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自動でセーブしてくれるのは手間が省けて良いが、セーブ頻度が高いので、少し待たされることもあって気になる人は気になる。
 
総評
Wiiのリモコン直感操作を存分に生かし切った良作である。
戦略ゲームとして見ても、非常に臨場感があり、これ以上のものはないほどの出来である。
残念ながら、一般層にもゲームマニア層にもあまり売れず、隠れた名作となってしまった。
余談
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宣伝・販売数
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無名のタイトルで大々的宣伝もなかったため販売数が伸びず、結果的に値崩れやWi-Fiの過疎を招いてしまった。
 
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Wi-Fiの過疎
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Wi-Fi自体の出来は良いが、販売数の関係で発売当初から人が少なく、誰とも当たらない、当たっても同じ人との連戦ばかりになるなどの問題が生じた。
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対戦・協力はWi-Fiのみにしか対応していないため、オフラインで友達同士で楽しむということができない。
 
最終更新:2020年07月08日 01:33