マッハライダー
【まっはらいだー】
ジャンル
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レース・カーアクション
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対応機種
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アーケード(VS.システム) ファミリーコンピュータ
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発売元
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任天堂
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開発元
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任天堂 HAL研究所
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稼働開始日
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1985年8月
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発売日
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1985年11月21日
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定価
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4,900円
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プレイ人数
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1人
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レーティング
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CERO:A(全年齢対象) ※バーチャルコンソール版以降より付加
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配信
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バーチャルコンソール
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Wii
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2007年9月4日/500Wiiポイント(税5%込)
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3DS
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2013年7月17日/500円(税5%込)
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WiiU
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2014年10月1日/500円(税5%込)
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判定
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賛否両論
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ポイント
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『F1レース』を超える超スピードでの危険なバトル 超スピードに慣れてこそ味わえる醍醐味 任天堂ロムカセットの大トリ(のはずだった)
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概要
1985年11月に任天堂が発売したファミリーコンピュータ用ロムカセットのカーアクション。
『F1レース』同様、HAL研究所開発でフィールドビューであることなど左記作が踏襲された作りになっている。
ただし上記作はスピード一本のレースゲームだったが本作はシューティングの要素を一部兼ね備えたカーアクションに近いものになっている。
マッハライダー物語
西暦2112年、地球上では同盟軍と悪の軍団の戦いが最終段階を迎えようとしていた。黒い邪悪な力(ブラックフォース)のすさまじい侵攻の前に正義の光は消えかかり、今や生き残りの市民の存在さえわからない。
荒れ果てた大地に独り生き残ったキミが装備するのは、スーパーショット(マシンガン)搭載のマッハメカと再生可能なサバイバルスーツだ。
さあ悪の手先の執拗な妨害を排除し、悪の軍団の秘密基地を発見せよ!そして新天地を見出すのだ!
"マッハライダー"、人類を救うのはキミだ、キミだけが唯一の頼みなのだ!!
※「マッハライダー完全攻略本」(徳間書店)2~3頁より
内容
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『F1レース』同様に変速マシンを操って疾走するゲームだが、概要の通りでマシンガンを撃って敵を撃破する要素を兼ね備えている。『ライダー』とあるようにマシンは二輪のバイク。
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ギアの変速は4段階で下位ほど加速力があるが最高速は低く、上位はある程度のスピードで入れないと加速が鈍い。
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説明書では「ハンドル」と書かれているが、左右はバンクして曲がるような格好。
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Aボタンでアクセル、Bボタンでマシンガンを発射する(有限)。Bボタンでブレーキがかかった上記作品と違い、攻撃にあてられているためブレーキはAボタンを離すことによってかかる。
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画面上部にバックミラーに該当する小画面があり、ここで後方の状況が見られる。
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障害物
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水・オイル・鋲
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これらを踏むとスリップする。オイルや鋲は敵車がまき散らしていく。
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逆ハンドルを切ることでスリップから体勢を立て直せる。
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ドラム缶
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マシンガンで一発破壊できる。当然動かない。
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コース内にあるものは得点になるが、コース脇のラフに置いてあるものは破壊は出来てもスコアにはならない。どちらも同等にぶつかると破壊される。
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ボンバーボール
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ドラム缶同様一発破壊できるが高速で反対側からこちらに向かって突っ込んでくるので、こちらの方が得点が高い。もちろんぶつかると破壊される。色による性能差などはない。
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岩
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ぶつかると破壊され、こちらは破壊する術がない障害物。
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スリップゾーン
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まるで雪道のように背景が白くなる区間で、カーブに減速せずに突っ込むとスリップする。
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敵(オート三輪)
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プレイヤーとともに走っている暴徒でマシンガンで破壊できる。他に体当りではじいて障害物にぶつけて破壊もできる(こちらの方が得点が高く、成功するとマシンガンも16発分補充される)。
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後方からぶつかられると、こちらのスピードが出ていない状態では破壊されてしまう。
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色によって耐久力や行動パターンが違う。
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ピンク(マシンガン1発で破壊)
耐久力・ブロック力ともまったくないがオイルを頻繁に撒き散らす点にだけは注意。
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緑(マシンガン2発で破壊)
多少ぶつけてくるがピンクに毛の生えた程度で執拗さはない。オイルを撒かない分ピンクより楽な相手。
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赤(マシンガン3発で破壊)
ピンクほどではないがオイルを撒いてくる。時としてブロックしてくる程度。
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青(マシンガン4発で破壊)
鋲を頻繁にバラ撒いてくる。こちらが追い付くとブロックに加え、フェイントを織り交ぜてくる。
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紫(マシンガン2発で破壊)
ブロックはしてこないが後方からプレイヤーのマシン最高速を凌ぐ猛スピードで体当たりしてくる。そのままの勢いで走り去るので、マシンガン2発で破壊可能とはいえ当てることそのものが難しい。
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黒(マシンガン10発で破壊)
しつこく並走しタフさを利かせて執拗なブロックをしてくる。
ゲームモード
ファイティングコース
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出現する敵の妨害をかいくぐりながらゴールまで走ることを目的とし、開始時にAとB2つのコースからどちらを選択できる。
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このモードでは最初の1ステージ目だけがエネルギー制でエネルギー切れになる前にゴールに到達することでクリアとなるが、2ステージ目以降から残機制に変わり、クラッシュする毎にプレイヤーストックが減っていく。ストックがない状態でクラッシュするとゲームオーバー。
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ただし、ステージ1クリア時の残りエネルギー量で残機の数が決定されるのに加え、クラッシュするたびにエネルギーが減らされるため、実質的にステージ1から残機制と言ってもいい。
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20ステージ構成でステージ20をクリアすると再びステージ1にループする。
エンデュランスコース
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レースゲームのように既定の時間内に、決められた距離を走ることでステージクリアーとなるモード。
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あくまでも時間のみが基準であるため、いくらクラッシュしてもゲームオーバーにはならないが、その都度爆散の演出が挟まれて進行が完全にストップしてしまうため、『F1レース』同様に大きなタイムロスになる。
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決められた距離に達するとクリアーが確定するが、タイムが尽きるまで走って更にスコアを伸ばすことができる。
ソロコース
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エンデュランスコースの敵がいないバージョンだが、障害物はあるので『F1レース』のように走ることに専念できるわけではない。
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また敵がいないとはいえ、スリップでコース外に出てしまった時に路肩のドラム缶を破壊するなどマシンガンの使い道がある。
デザイン
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コースを自分で作ることができる。
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作成後は上記3モードに乗っ取ってプレイできるが「ファイティングコース」の場合は多少異なり1本のコースしか作ることができない。
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作成したコースは『エキサイトバイク』同様、データレコーダを利用してカセットテープに保存することができる。また同じ方法で既に保存したコースを読み出すことも可能。
評価点
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あの『F1レース』の「ハイパーターボ(497km/h)」すら凌駕するスピード感。
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設定によると、本作のマシンは1kmをわずか3秒で走る性能を持つらしい。
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つまり時速に直すと単純計算で1,200km/hということになる。因みにマッハ1は時速1,225km/hなのでわずかに足りないが誤差の範囲内なので「マッハライダー」に間違いない。
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障害物に衝突しようものなら、あのようにバラバラになるのも納得。
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コーナリングでバンクして曲がるアクションも非常にダイナミック。
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そのスピードに乗って敵車にぶつけて弾き飛ばし障害物にぶつけて破壊するブロッキングの爽快感。
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そのスピードも相まって成功した時は非常に快感を味わえる。スコア面でもマシンガンで破壊した時より高く、更に弾丸数まで補充されるなどそれに見合った報酬まである。
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当時にしては幅広いゲームモード。
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一人でレースゲームのように走ることもできるし、シューティングのように敵を撃破していくゲームもできるなど、様々なモード選択が可能なゲームは当時では希少なものだった。
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しかも、デザインしたコースでもそれぞれのモードに対応して遊べる。
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スピードやマシンガンに慣れるために一直線のコースを作って、それを対応したゲームモードで練習用にしたりなどもできる。
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ギアは4段変速仕様。
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『F1レース』では「LOW」「HI」の2段変速しかなかったが、4段変速にすることで状況に応じての切り替えがしやすくなった。
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デザインモードはデバッグ機能までバッチリ。
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まず、配置できないマップチップは自動で使えないようになる。
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この当時のエディット機能は詰みになるようなものでもそのままスルーしてしまうのがほとんどだったが、ちゃんと細かい所までチェックしてくれるのは気が利いている。
賛否両論点
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「ファイティングコース」が高難度。
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2面から破壊不能の岩、4面からボンバーボールが登場するなど、難易度曲線は序盤から高い。
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特定の条件を満たしてステージクリアするとライダーの色が変化し、一部の障害物から無敵化・マシンガンの連射化・無限化・威力強化といったパワーアップが発生する裏技があり、これを使うことを前提としている節がある。
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路肩のドラム缶に当たらない2速状態で走行し続け、敵車を避けるテクニックがあるが、急カーブのイン側では追突されるため完全な安地ではない。
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コンティニューの裏技もあるが、5ステージ毎にしかできないため、そこまで進めないプレイヤーも多かったと思われる。
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もっとも、エンディングの無いループゲーで先のステージを見るのが一種のやり込みだった時代のゲームだったので仕方のない一面もある。
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「エンデュランスコース」「ソロコース」は既定の距離を走った後も、タイムの続く限り走ってスコアを伸ばすことができる。
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これは『F1レース』の「何秒残そうがスコアに反映されない」という欠点をしっかり克服している。
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ただ、その一方でタイムが尽きるまで走るのは冗長に感じられ易い。
スコアならタイムをスコア還元の方が進行がスムーズだったであろう。
後述の通り元々かなりのハイテクニックやスピードへの慣れを必要とするため、敢えて走る機会を与えているのかもしれないが。
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BGMが全体的に暗い
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BGMそのものは荒廃した近未来というSF的な世界観とマッチしており、聞く機会の一番多いメインBGMは軽快なテンポとメロディが特徴なのだがメロディラインに独特な暗さがある。
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特に、ステージ後半から流れるメインBGMの別バージョンは、1ループ到達直後に唐突に不協和音のサイレンのようなメロディラインで音が下降していくという変化がつけられており、その後のメロディラインも緊迫感と緊張感を煽るような、独特な怖さを醸し出す展開になっている。
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難易度が高いため、BGMの変化については知らなかったという人多かったりするが、とにかく長時間聞くことになる音楽としては癖が強い。
問題点
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特定の手順と規定数のオブジェクトを破壊すると装備されるパワーアップ要素がノーヒント過ぎる。
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パワーアップ要素には「岩に当たってもミスにならない」「マシンガンが無限になる」「マシンガン1発で敵車を破壊できるようになる」「敵車への体当たりが強くなる」等の要素があるが完全ノーヒント。無論これを知っているか否かで難易度は大きく変わる。
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スピード感こそすごいものの裏を返せば速すぎる上、ブレーキはエンジンブレーキのみのため急減速がしにくい。
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設定上の通り、まさしくマッハ速度でぶっ飛ぶほどの速いバイクを乗りこなすのは難しく、そのうえ攻撃まで行うのは容易ではない。
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止まっているドラム缶や岩でさえ、フルスピード状態でかわすのは容易ではない。特に向こうから猛スピードで突っ込んでくるボンバーボールはそれこそ気付いた時にはもう衝突して爆散していることが当たり前。
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4段変速を活かしてシフトダウンすることで強いエンジンブレーキが得られるとはいえ、やはりブレーキそのものがないとゲームとしては直感性に欠ける。
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ただ『F1レース』ほどスピード編重ではないのが幸いではあるが、かといってゆっくり走っていてはその魅力も半減。
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ブロッキングはもちろんのことマシンガンもコーナーでバンクしながら撃つにはコツが必要。
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そのためスピードのみならず、こういった部分でも慣れが必要でそうそう使いこなせるものではない。
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常に右上にコースマップが表示されていた『F1レース』と違い、コースマップの確認はステージ開始時のみ。
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「エンデュランスコース」「ソロコース」ではコースマップを確認すらできない。
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そのため、いくらクラッシュを気にせず時間内に走り切ればOKとはいえ事前にどのようなコースか大まかな把握すらできないのはさすがに不親切。
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デザインモードで作成したコースをプレイする際、タイムなどはその長さを考慮してくれない。
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そのため、長いコースを作ると固定のタイムでは絶対に間に合わない詰み面になってしまう。コース構成のデバッグ機能はバッチリでも「タイムとの整合性」には手が届いていない。
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とはいえ、エンデュランス・ソロコースは走った「距離」でクリアとなるので、コースを最後まで走る必要はないので詰みになることはなく、問題となるのはファイティングコースのみである。
総評
超スピードの疾走感は爽快なものに違いなく、バックミラーまで付いたことで後方確認もできるようになったり、システムそのものの出来は悪くはなく、幅広いモードで楽しめるなどやはり任天堂ソフトらしく根本的なゲームの質は良い。
「マッハ」という言葉に嘘偽りはなく、そのスピード感はあの『F1レース』の「ハイパーターボ(497km/h)」を凌駕するものであり、その疾走感は爽快だが良くも悪くもそのスピードに慣れなければ始まらない。
大抵の人は、初見では敵と戦う以前に自分のマシンに振り回されることが日常茶飯事で、走ることに集中できる「ソロコース」のモードでも障害物を避けて走ることすらままならず投げ出してしまい、任天堂ソフトながらクソゲーの認識になってしまう人も珍しくない。
また操作性でも、そのスピードに対してブレーキがなく、アクセル(Aボタン)を離す事実上のエンジンブレーキしかないことには不満を感じる声もある。
そのため、かなり賛否が分かれやすい作品になっている。
余談
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自機がやられると木っ端微塵に爆裂した後、まるで時間が巻き戻ったかのように爆裂したライダーやバイクの破片が元の位置に戻ってゲームが再開する。残機が0の時に死んでゲームオーバーになったら「爆散したまま再集合しない」ではなく「破片が再集合するが合体できずにそのまま逆方向へ飛び散っていく」という形で終わる。
この非常にシュールな演出は『光神話 パルテナの鏡』の「ヤラレチャッタ」や『月風魔伝』の落下死亡と並んでネタにされる。
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上記の攻略本のストーリーには「再生可能なサバイバルスーツ」とあるので、このストーリー通りに解釈したならば、この復活は演出上の事だけではなく本当にくっついて再生するということになる。
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元々ゲーム都合の演出でしかないことに攻略書籍等が独自の設定を付け足すようなことは当時ならば珍しくもない話だったが、ただでさえシュールなのにそれに拍車をかけておりツッコまずにはいられない。
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本作の発売以前に、任天堂から同名の玩具が発売されているが、特に本作と関係はない。
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年が明けて1986年2月21日に任天堂は周辺機器『ディスクシステム』を発売し、それ以降ロムカセットでのソフト供給を一切なくしディスクカードでのソフト供給に専念することになる。
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それから2年後の『マイクタイソン・パンチアウト!!』(1987年11月21日発売)まで任天堂によるロムカセットソフトは発売されなかった。
任天堂が再びロムカセット主体の供給に戻していくのは1988年8月の『ファミコンウォーズ』からとなる。
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当初任天堂は完全にディスクカードによる供給に切り替える予定であったが1986年後期頃からメガロムが、1988年にはバッテリーバックアップ機能が定着したことでディスクカードは当初の強みだった「大容量」「ゲームデータのセーブ」という優位性を失い、またハドソン、ナムコ、エニックスといった一部の有力サードは参入せず引き続きロムカセットで話題作を送り出していったことも衰退を早め、結果的に1989年からは再びロムカセットに取って代わられることとなる(奇しくも昭和の終わりと重なった時期でもある)。
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上記の通りディスクシステムによりゲームデータの保存ができるようになり再びロムカセット路線が主流となった頃にはバッテリーバックアップが定着していたため、データレコーダによるセーブ方式を採用したカセットソフトは任天堂では本作が最後となった。
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任天堂以外ならば『ARKANOID II』(タイトー・1988年3月発売)などが存在する。
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ちなみにVC版では本体メモリにセーブするよう変更されている。
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任天堂はディスクシステム発売を翌年に見据え9月に発売された『スーパーマリオブラザーズ』を任天堂ロムカセットの大トリと考えていたようだが、結果として本作を発売したのでマリオは大トリにはならなかった。
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本作自身ファミコン草創期のソフトなだけに、売り上げはかなりのものだが歴史的特大ヒットとなった上記作品の陰に隠れてしまったところもあり、それまでミリオン連発だったことを考えると見劣りする。
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FC版発売の前に任天堂VS.システムを使用したAC版が先行で稼働している。
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AC版は内容違いによる2種類のバージョンが有り、FC版でいうファイティングコース仕様になっているものとエンデュランスコース仕様になっているものが確認されている。後者は「決められた距離に達するとそのままステージクリアとなり、強制的に次の面へ移る」点がFC版と異なる。
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難易度はACに合わせて多少難し目の調整がされている。
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またステージ進行毎にライダーの1枚絵が表示され「進行と同時に徐々にライダーの絵が変化してやがてその正体が女性と判明する」という独自の演出が存在している。
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『ファミコンリミックス』シリーズなどファミコンリバイバル系の作品での出演に恵まれていない本作ではあるが、WiiUで無料配信された『タッチ!amiibo いきなりファミコン名シーン』にてamiiboをかざすことで遊べるタイトルのうちの一つとして選出されている。
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本作発売から16年後に発売された大乱闘スマッシュブラザーズDXにおいて本作のアレンジメドレー曲・フィギュアが収録されている。その後のシリーズにもBGMが収録された。
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シール・スピリットとしても登場。スピリットはキャプテン・ファルコンで再現している。
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マリオカートシリーズの一部作品に、本作の主人公が乗るバイクをモチーフにしたバイクが登場している(『Wii』の「マッハ・バイク」、『8』『8DX』の「マッハGP」)。
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コロコロコミックで連載されていた「ファミコンロッキー」でも本作は取り上げられている。
最終更新:2025年05月28日 19:04