シムシティ4 デラックス
【しむしてぃふぉー でらっくす】
ジャンル
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シミュレーション
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対応機種
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Windows 98~XP Mac OS X
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発売元
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エレクトロニック・アーツ
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開発元
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マクシス
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発売日
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2003年9月25日
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定価
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6,279円(パッケージ版・日本語) 1,980円(Steam・英語)
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判定
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良作
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シムシティシリーズ
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概要
シリーズ第4作『シムシティ4』と、拡張キット『シムシティ4 ラッシュアワー』を同梱したセット版。
『4』は緻密なグラフィックとそれまでになかったスケール感で好評を博したものの、2003年当時のPCでは通常の市販品で小都市をつくるのが精々、最高クラスのハイスペックPCをもってしても、大都市を造ると処理が重すぎて動作不良に陥るというバケモノゲームであった。
『ラッシュアワー』は『4』にシステム上の改善と、交通関連の大幅なアップデートを追加する拡張キット。プレイするには『4』が必要。
本作でのセット販売の他、『ラッシュアワー』単体でも販売している。
評価点
より緻密になった描写
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従来のシムシティのように一つの都市だけを発展させるのではなく、広大なエリアから区分けされた多くの都市を同時に運営出来るようになった。
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これによって、100万人都市からひなびた農村、高圧線と道路だけが存在する山地、大都市にくっついたベッドタウン他、いろいろな性格の町を同時に造ることができる。
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発電・水道・ゴミ処理等のライフラインを都市同士で相互補完することも可能。
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地図画像を取り込んで開発エリアとして使うことができる。
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神モードによって自由自在な地形造成が可能。非常にリアルな地形が作り出せる。
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今作ではある程度の傾斜の斜面にも建物を建てられるようになっており、地形を活かした景観づくりの自由度が増している。
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建物や自然のグラフィックは非常に緻密で、発売から7年経った現在でも見劣りしない。周辺の環境に応じた描写の変化も非常に細かい。
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交通渋滞の激しいところでは事故が頻繁に起こったり、治安の悪い場所では落書きが散乱し、殺人事件が発生したりする。
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BGMのクオリティはとても高く、長時間プレイしていても苦にならない。
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敷地が長方形の建物が追加され、建物に「向き」の概念もついた。従来のように「道路から一定の距離内の区画が発展」ではなく「道路に面した建物が発展」というシステムに変更されている。
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今作では多くの公共施設も道路に接していないと機能せず、アドバイザーから「出入りできないんですが」という旨のツッコミをされる。状況を考えるとちょっとシュール。
多数の要素が加わった経営システム
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所得に応じて住民の行動パターンが異なる。よって今までのように地価や環境を高めて区画を設定すればそれで良いというものではない。
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低・中所得者は好んで鉄道やバスを利用するが、高所得者は自家用車を好んで利用し渋滞の発生源となるので、区画毎にどんな住民を住まわせたいのかも考慮する必要がある。
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特に高密度区画を設定すると、都市の需要を一気に吸い上げ公共サービスの許容量を埋め尽くしてしまうので、慎重な整備が必要になる。
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所得層によって就職しやすい職業などの行動パターンも様々であり、それぞれの通勤ルートを確保することが重要になる。
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交通機関が非常に充実している。特に船舶輸送の追加で孤島マップでも開発がしやすくなった。
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高架の鉄道とモノレールが追加されており、地上の場所を節約しながら踏切の渋滞も緩和できる。
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地下鉄と高架の鉄道が相互乗り入れできるようになり、地上の鉄道には乗り入れできない。シカゴなどの鉄道を意識した仕様か。
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従来の鉄道には旅客列車と、工業地区に必要な貨物列車を共用できるという特徴が追加された。
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水上交通の「フェリー」が追加されており、フェリー港同士の乗客の移動もシミュレートされている。
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職場までの通勤と帰宅が、いかにスムーズにできるかが重要な要素になっている。
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あらゆる住民の通勤ルート(行きと帰りそれぞれ)を確認することができる。「フェリー」も含め、隣接する都市をまたいで通勤する人までシミュレートされている。
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過去作以上にはるかに長距離を通勤することもある。過去作のように単純に移動距離のみを計算しているのではなく内部的に通勤時間を計算するシステムになっており、渋滞状況や通過する交差点の数、電車やバスの待ち時間等も時間として加算されている。公共交通機関は種類によって速度が違うものとして計算される。
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工業地区の場合はそこへの労働者の移動の他に、製品の出荷ルートもシミュレートされる。港や高速道路、貨物列車へスムーズに接続できるという現実的な条件が求められる。
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今までのセオリーだった碁盤目状の区画造成は渋滞を引き起こしやすいため、必ずしも有効ではなくなった。
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代わりに道路に「一方通行」を指定できるようになったため、行きと帰り、上りと下りで道路利用を整理するという使い方が可能に。
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近隣都市の開発や交通網の見直しといった要素が加わったことで、都市経営が軌道に乗ってもただの作業になりにくくなっている。
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シナリオモードがなくなった代わりに、ドライブミッションと呼ばれるミニゲームが加わり、臨時収入や特別建造物の報酬を受ける事ができる。
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自分が作った街の中を様々な乗り物で実際に走行・航行・飛行できる。フリーランも可能。
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兵器を撃つこともできるが、撃たれた建物が本当に倒壊してしまうので事前セーブ推奨。
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難易度は3段階に調節可能。自然災害は自動で起こらなくなったので、じっくりと都市開発に集中できる。
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従来通り手動で災害を発生させることは可能。なんと今回は災害も自在に操縦できる。
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難易度を高くすれば、序盤は節約に節約を重ね、都市が成長してからも一つの失敗で財政が傾く、歯ごたえのある経営が楽しめる。
BATとLOTを楽しむ
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自分の手でオリジナルの建物を創りだす「LOT」と「BAT」が使用可能。ただし、導入には海外のファンサイトから専用プログラムをダウンロードする必要がある。
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導入手順はシムシティフォースというサイトにて詳しく説明されているので、示されている手順通りに行えば英語がわからなくても大丈夫。
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既存の建物のパーツを利用するのが「LOT」、一から建物をデザインするのが「BAT」である。システム拡張のための特殊なものも存在する。日本人ユーザーによるレベルの高い作品も多数公開されている。
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通常の状態だとアメリカを参考にした都市となるが、これらを導入すれば完全に日本風の町を再現する事も可能になる。
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施設の機能がデフォルトの物よりも格段に低コストでハイリターンな物が多いので気になる人は導入には注意しよう。
問題点
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2023年現在、Steam版の日本語化ができない
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日本語データを持つパッケージ版を入手しデータを上書きすれば日本語化できるが、手間もコストもかかる。
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解像度がブラウン管時代仕様なので起動オプションを使わないと現代の画面ではとてもプレイできない
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システムが複雑で、開発を進めていく上で考慮しなければならない要素が非常に多いため、初心者はややとっつきにくい。
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例えば公共施設の予算を一軒ずつ設定できるなど。都市が発展途上のうちに設置するとデフォルトの予算ではだいたい処理能力が過剰になり予算も無駄に使ってしまうので、予算を削ることになる。しかし周辺地域が発展してくるとそのままでは当然処理能力が足りなくなるので予算を増やしていくことになる。都市の範囲を広げるごとにそれを一軒一軒やるとなかなか手間がかかる。
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地形の造成ツールはかなり大雑把であり、斜面や海岸線を直線に揃える等の人工的な造成は難易度が高い。また、水域の設定は自由度が低め。
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高層ビルが密集すると隙間や後ろの土地が見えづらく、操作しにくい。
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メイン画面の表示オプションが少なく、建物の種類ごとに表示を切り替えられた『シムシティ3000』よりも不便になっている。
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区画扱いだった港・空港が固定サイズの施設扱いになったことで設置の自由度が下がってしまった。
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港は半分海に突き出した埠頭を設置するのだが思った通りに設置できないこともあり、条件がわかりにくい。
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大都市圏には必須になる「国際空港」は15×35タイルという細長くて広い平地が必要。前作のように融通がきかず不便。
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一部ボーナス施設や公共施設の解禁条件がわかりにくい。
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発電所なども時間が経てば自動的に解禁された前作とは違い、今作では都市ごとに特定の条件を満たすことで解禁となる。
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しかし「富裕層の人口」「ハイテク産業の従事者数」「都市の総電力需要」など現在どれくらい満たしているかがわかりにくい条件がところどころある。
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住民の通勤ルートのシミュレーションがときどきおかしい。
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不可解な乗り継ぎ、モノレールを飛び降りたり、インターチェンジをショートカットしたり、といった不自然な通勤ルートがたまにある。ただし気にしなければプレイに支障はない程度。
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日本語訳の出来は良いとはいえず、誤訳や不自然な言い回しが散見される。
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日本向けローカライズの一環として道路が左側通行になっているが、信号や標識が右側通行仕様から修正されておらず、よく見ると不自然。
総評
「つくりたい都市がつくれる」というシリーズ最高の自由度が、最大の長所。
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具体的な目標は一切提示されずプレイヤーを縛る物は何もない。
長期間プレイしていても都市開発がただの作業にならないように配慮されており、まさに都市経営ゲームの決定版といえる作品である。
余談
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発売後4年経過したLOTやBAT制作による人気も落ち着いてきた頃に、ニコニコ動画に投稿された初心者講座から人気が再燃、ニコニコ市場での売上が大きく上昇した。
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発売後10年以上経た今もBAT/LOTは作られ続けており、現在もプレイ実況動画や他の作品とのコラボによる二次創作が多数投稿されていて、人気は衰えていない。
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Windows版はXPまでしか対応していないため、Vistaや7の場合動作保証がない。
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問題なく動作するという報告が大多数だが、PCによっては起動不能になったという事例も存在する。
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マルチコアにも最適化されておらず、現行のPCでも数十万規模の大都市になると動作や処理が重くなる事が多い。
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Windows側で、Simcity4に「1CPU」しか割り当てないように明示的に設定することで、動作が安定するという噂。
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2011年3月17日に発売されたEA BEST HITS版では、動作環境にVISTAと7が追加された。
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GOG版では動作OSの表示はXP、Vista、7、8、10となっている。
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Mac版は2017年現在でもAppStoreで販売されており、現行のMacでプレイできる。
最終更新:2024年07月15日 11:14