A列車で行こうIII
【えーれっしゃでいこうすりー】
ジャンル
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SLG
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対応機種
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PC-9801、FM TOWNS、X68000、 PCエンジン、Windows 95/98
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発売・開発元
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アートディンク
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発売日
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1990年12月
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定価
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9,800円
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判定
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良作
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A列車で行こうシリーズ
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概要
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A列車で行こうシリーズの三作目。本作より大幅にシステムを変更、本格派箱庭ゲームとして以降のシリーズの基盤を作り上げた。
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鉄道会社の経営者となり、自社と地域の発展を目指す。事業内容は鉄道だけではなく、他の業種もあり、それらを合わせ経営していく事となる。
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登場する車両は実在したものを採用している(一部例外あり)。
特徴・評価点
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クォータービューの箱庭ゲーム。箱庭要素は前作までもあったが、どちらかと言えばパズル的な色合いが強かった。本作ではそれらを一新。箱庭要素の重点を置いた経営ゲームとなっている。一方で鉄道運営の路線構築やダイヤ構成など、前作にあったパズル的な面も残ってはいる。
ステージはあらかじめ用意され、全部で6つある。全て外部からの路線が引かれており、発展のための起点となる。
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「目的地に専用列車を到着させる」というクリア条件があった過去2作と異なり、クリア条件や(破産以外の)ゲームオーバー条件は存在しない。巨大都市を作り上げるもよし、人口・資金の限界に挑戦するもよし、好き勝手に鉄道を引くもよし、都市育成・会社経営そっちのけで株トレードに没頭するもよし、思い通りに楽しめる。
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鉄道会社経営。
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他業種はあるものの、やはりメインは鉄道事業。本作の鉄道事業は、比較的安定した利益を生み出す事ができる。
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路線の建設と、車両の選択、ダイヤやポイントなどの運行の決定などが中心の業務。これらを効率的に組み合わせ利益を上げていく。
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まずはベースとなる路線をどう引くかが重要なポイント。さらに路線が伸び、車両も増え鉄道運行が複雑化すると、ダイヤ構成やポイント設定などをうまく考えないといけない。これが失敗すると、車両が所定の駅に到着しなかったり等、思うように利益が出せなくなる。この点はややパズル的で、前作からの流れを組んでいる。
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登場する車両はJRと私鉄にて現存したもの。さすがに今となっては廃止された車両も一部あるが、当時としては代表的な車両ばかり。ただ一種だけ架空の車両がある(後述)。
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幸い今作(以降)では列車が正面衝突するような事態になっても緊急停止で済んだり、脱線事故も起きなくなっている。(前作以前は衝突・脱線事故を起こすとゲームオーバーだった)
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貨物車両の運行も重要。何を建設するにせよ物資が必要である。この物資は外部からの路線から運ばれ集積場に溜められるのだが、使える範囲はそれほど広くない。そのため貨物車両で各地へ物資を運搬する必要がある。
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この貨物車、空の時は物資を受け取り、物資がある時は物資を荷降ろしするが、積み下ろしが機械的で融通が利かない。このため上手くダイヤ構成やポイント設定をしないと、物資が必要な場所から物資を持ち去ったり、特定箇所に過剰に荷降ろししていくハメに。また旅客線との関係も考えないといけない。
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物資に関しては工場を建設し、そこで製造するという手段もある。都市が発展すると外部からの物資の量では足りなくなるため、工場建設は必要不可欠となってくる。工場から物資をどう回すかで、また頭を捻る事になるのだが。
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これら、路線構築のパズル的な部分も、面白みの一つ。
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マップによっては最初から都市・鉄道網が充実していることもあり、そういったマップでは都市の現状を把握した上で、どのように改造させていくかがポイントになってくる。
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新幹線は本作から登場するが、残念ながら本作では都市の発展状況に応じて自動的に着工・開通されるものであり、新幹線の線路や駅を自社で建設したりすることはできない。
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新幹線が開通するとマップ上の地価がすべて上昇する。
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その他の事業。
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不動産、小売業、遊戯施設運営などがある。
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全て子会社設立という形で行われ、業務は子会社任せ。業務に直接タッチする訳ではない。
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ただこれらから利益を上げるよりも、むしろ評価額を上げて転売する方が効率がいい。本作では評価額が上りやすく、プレイヤーが鉄道会社なため、駅を中心とした一等地を入手しやすいからだ。
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決算。
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年度末には決算がある。それに基づき6月に税金が取られる。決算までに資産をある程度処分してしまうのが、テクニックの一つ。
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「法人税は経常利益の50%だが、資産税は総資産評価額の5%」であるところがポイント。敢えて赤字ぎりぎりに利益を圧縮するのも一つの手。
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町の発展。
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やがて人口が増えてくると、町が発展しはじめる。象徴的なのが、建てたビルがニョキニョキ伸びる点。現実ではありえないが、分かりやすいビジュアルである。
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人口の増加には、居住人口を持つマンション等の住居(要は「住む場所」)の増加と、雇用機会提供数を持つ各種施設(要は「働く場所」)の増加が必要。双方を効果的に増やしていけば、町はどんどん発展していく。
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また道路も作られていく。プレイヤーは鉄道会社であるため、道路の敷設はできない。町が発展してくと自然と駅から道路が延びていくのだ。道路沿線は良物件となるため、道路の発展をある程度考慮にいれた駅の設置を考える必要がある。
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さらに他社も参入し、プレイヤーと同様ビルを建てていく。こうして、発展していく町の経過を味わうのが楽しみの一つ。
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もっとも、他社が貸しビルの増築をガンガン行うのにプレイヤーの貸しビル増築不可なのは不満点だが(他社に売って後で買い戻すか、撤去して望みの高さで建設するしか手立てはない)。
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日々変わる景色。
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一日は1時間単位の時間の流れがある。そしてそれと共に景色も変わる。早朝から日中、夕方から夜間へと。特に夜景は、町が発展するほど見ごたえのあるものに。さらに季節でも景色が変わる。
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もちろん乗客数や施設の稼動状況は時間・曜日・季節に左右される。スキー場は冬場以外は稼動せず、逆にゴルフ場は冬場には稼動しない。
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クリスマスにはマップのどこかにサンタクロースが、そしてある時期にはUFOも登場する。
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銀行。
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一応、銀行から融資を受ける事ができる。バブル期のゲームらしく高金利。
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倒産。
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資金が赤字(その日の24:00の時点で資金がマイナス)になってしまうと、とたんにゲームオーバー。このゲームには会社更生法など存在しない。
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一応、そうなる前に売却や融資により延命を図ることができるが、売却は必ずしもできるとは限らず、融資には限度がある。もっとも、容易に資金を確保する方法がいくつかあるため、慣れれば資金難には陥らなくなるだろう。
問題点
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架空車両が優秀すぎる
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本作で唯一の架空車両AR-3。これは購入費用こそ高いが、他の追随を許さない高コストパフォーマンスの車両である。しかも初めから買えてしまう。
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そのため旅客車両は、これ一択となる事に。これでは車両選びの面白みも半減してしまう。
総評
会社と地域の発展と共に広がっていく鉄道網。横へ上へと伸びていくビル街。さらに遊園地やスタジアムは町のアクセント。それらが作り上げる夜景は、本作の見ごたえあるものの一つだ。正に成長する鉄道模型とでもいうべきか。そんな光景を作り上げるのが、本作の醍醐味である。
本作を基本ベースとしたA列車で行こうシリーズは、現在まで続いている。
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追加オプションとして、名鉄車両ディスクやマップコンストラクションが、発売された。
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本作はFD2枚組で2ドライブ運用だったが、後にハードディスクにインストールして運用するハードディスク版も発売された(要MS-DOS)。
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ハードディスク版はマップコンストラクションがセットになっており、MAPが全て差し替えられている(初心者への配慮か一番簡単かつ単純なMAP「ニュータウン構想」は「明るい農村」にコンセプトが受け継がれている)が、FD版のマップ・データもそのままプレイ可能。
家庭用移植
シリーズ一作目はFC版(1991年8月21日発売、ポニーキャニオン)とMD版(1991年12月5日発売、セガ・エンタープライゼス)が存在したのだが、両者とも他社がライセンスを受けて移植したものであった。
本作よりアートディンク自身が家庭用ゲーム機市場に参入し、ソフト展開することとなった。
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PCE(SCD)版(1993年6月11日発売)
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専用マウスにも対応し、かなり再現度の高い移植となっている。しかし「メモリーベース128」という大容量記録ユニットが必須(なくても遊ぶことは出来るが)だったこともあり、少々ハードルの高いゲームとなってしまった。
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SFC版『AIII S.V.(A列車で行こう3 スーパーバージョン)』(1995年9月29日発売、パック・イン・ビデオ)
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大きな変更点はクォータービューからトップビューに変更されているため敷設が楽になっている。クォータービューへの変更も可能だがメニューを開けない為、鑑賞モードとなっている。
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ゲームの進行スピードは高めで処理落ちも少ない。そのため快適なプレイが可能である。
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SFC版オリジナルの要素もあるが少々微妙な所。
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一部の建築物を建てるためには「誘致」活動をしないといけないが誘致条件がかなり厳しい。街の人口をある一定まで増やせば半分の確率で誘致できるがそこまで人口を増やすのも難しい。
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オリジナル車両を作れる「車両開発」も理想の車両を作ろうとすると費用がかかり過ぎる、開発に失敗すると完成が遅れ車両の性能が落ちる。車体数もカラーも少なく開発できる数も少ない。
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本作はPS版『A.IV.EVOLUTION』(1994年12月3日発売)が発売された後に発売された他社開発作品であり、アートディンクは一切関わっていない。
最終更新:2024年08月10日 17:03