北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ
【ほっかいどうれんささつじん おほーつくにきゆ】
ジャンル
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社会派推理アドベンチャー
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対応機種
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PC-6001 PC-8801 PC-9801 FM-7 MSX
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発売元
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アスキー
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発売日
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【PC60/PC88】1984年12月21日
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定価
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【FD版】6,800円 【テープ版】3,800円
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判定
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良作
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堀井ミステリー三部作 ポートピア連続殺人事件 (FC / AI TP) / 北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ (FC / リメイク) / 軽井沢誘拐案内
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概要
堀井雄二が手掛けたパソコン向けアドベンチャーゲーム『ポートピア連続殺人事件』に続く、堀井ミステリー3部作の第2弾。
前作同様、現代を舞台にした推理ものミステリーであり、主人公の刑事となって北海道を舞台に発生する連続殺人事件の犯人を追う
はじめてコマンド選択式を導入したADVである。
初期PC版とファミコン版はストーリーが異なっており、後期版PC-9801(ムック形式)や携帯アプリ以降の作品はファミコン版をベースにしている。
ストーリー
東京湾の晴海埠頭で身元不明の男性の遺体が発見される。
刑事である主人公は、部下の黒木刑事と共に捜査を開始した。
聞き込みの結果、被害者は北海道出身である事が判明。
さっそく事件の真相を追い、北海道へと飛んだ。
そして、事件は連鎖していく・・・。
特徴
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コマンド選択式を初めて導入したADV。
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それまでのADVはキーボードを用いて直接コマンドを入力していたが、本作では予め用意された複数のコマンドの中から行動を選択して進めていく。
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一部の機種でOPやEDに曲が流れるものの、基本的にBGMはない。代わりに効果音が多用されている。
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音源が貧弱だった事も考えられるが全てのシーンでBGMを流すようなADVはこの時期にはなく、流すとしても重要なシーンのみ演奏する手法が多い。
評価点
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コマンド選択式の採用
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従来のコマンド入力型では、プレイヤー自身が膨大な言葉の中から正解となる単語を見つけ出さなければならなかったため、やりたい事は分かってもゲーム進行に反映させ辛くクリアまでに長大な時間を要する点が大きな欠点であり、非常に難易度の高いものだった。
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コマンド選択性を採用する事でプレイテンポは格段に良くなると共に難易度もコマンド入力型に比べて低下し、プレイヤーはよりストーリーや謎解きに集中する事ができるようになった。
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シナリオが非常に良く練りこまれている。
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所々無駄な情報があるかのようで、実はそれが後への伏線だったりと、なかなか考えさせられる。さらには一連の事件に潜む暗い物語。昭和という雰囲気がよく出ている。
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前作『ポートピア連続殺人事件』同様、今作も部下と2人組での捜査。勿論前作同様に「ボス」と呼んでプレイヤーの命令に忠実に従い、時にはプレイヤーにツッコミを入れたり、クスリと笑わせてくれたりする。
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グラフィックは当時としては平均以上。
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前作『ポートピア連続殺人事件』から格段に向上している。
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ただし当然各々の機種のグラフィック性能に左右される。PC-6001版とMSX版はポートピアと同等。PC-9801版はフェアリテールのグラフィッカーがアナログ16色にレタッチしたため更に綺麗になっている。
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溢れる旅情感
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さすがに取材旅行をしただけあって、舞台となる北海道の観光名所や建物は、シンプルながらも見事に表現されている。ちょっとした旅行気分に浸れる作品だった。
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なにげに名物紹介もストーリー中に組み込まれたりしており、北海道の観光紹介的な趣もある。
賛否両論点
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無駄な選択が多い。
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フラグを全て回収した後、方針がなくなってウロウロしてると、その内次のフラグが立つ場所にたどり着く、という展開が多く無駄な選択もせざるを得ないような作りになっている。
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当時はプレイ時間の長さも大事であり、サクサク進められて遊びやすくするとプレイ時間が非常に短くなってしまうので仕方ない面もある。
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一応これが事件を足で探索をしてるという空気を作り出してる面もあった。
問題点
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一部の手詰まり要素
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事前に手詰まりと分かるような要素も少なくハマッた事を教えてくれるようなヒントすらない。これに気づかないと、いつまでも堂々巡りを繰り返すばかりである。そしてこのトラップは複数ある。
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「推理せずにコマンド総当りで解けてしまっては推理ゲームではない」という考えから、コマンド総当たりでは解けないようにしたため。
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名前を当てるシーンがあるのだが、そのヒントが誤解を招きやすい。
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謎解きのネタバレあり
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一部が欠けた落書きの抜けた部分を当てるのだが、一文字欠けたように見えて実際は二文字欠けている。
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ストーリーをしっかり覚えていれば、確かに挿入できそうな言葉は二文字のものしかないのだが、ひっかかりやすい。
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ひらがなとカタカナのみで文章がやや読みづらい。
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カタカナのみのADVも多い時代で、それに比べれば遥かに読みやすいが、やはり漢字のない文章は読みづらい。
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空白を開けたり色を変えたりと、なんとか読みやすくなるように工夫はされている。
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フォントはPC-6001の内蔵フォントと同じものが使用されている(おそらく無断使用)。このフォントは7×8ドットに修正されてファミコンのドラクエシリーズでも使用されることになる。
総評
コマンド選択方式は、ADVをコマンド入力方式の言葉探しのわずらわしさから開放した画期的な発明であり、本作をきっかけに、ADVのシステムはがらりと変わっていくこととなる。
ADVとしては無駄な選択肢が多いため中盤以降ややウロウロさせられる場面が多いものの、序盤はコマンド選択式の強みを生かし、従来のものに比べずっとテンポがよく進む。ストーリーも非常に秀逸な仕上がり。関連性の見えない事件が次々と起こりそれらがやがて一つへと収束していく様は、プレイしていて事件の盛り上がりを十分堪能できるものだ。また舞台となった北海道もしっかり描写され、各地の情緒が感じられるものとなっており、本作の色合いを濃くしている。
ADVシステムの転換点としても、ゲーム単体としても評価の高いゲームである。
余談
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なぜ舞台がオホーツクかというと、当時カニを食べたいと思った堀井雄二たちが、ゲーム開発にかこつけて会社の金でカニを食べにオホーツクへ行こうとしたためである。
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『軽井沢誘拐案内』と同時進行していた企画として『北海道誘拐地図』もあったため本当にカニを食べに行ってからゲームの構想を練ったわけではない模様。
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当時、NTTが運用していたキャプテンシステム(文字情報通信)にて序盤部分のみ収録されていた。本来は続きを配信する予定だったが、キャプテンシステムが一般家庭向けには広まらなかったため、実現していない。
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ウトロ港の船員の写真を撮ろうとすると、気が立っているのか急に手を出してきてカメラを壊されてしまう。
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以後カメラは使わないのでハマリにはならないがやらかしたかのように思えるので心臓に悪い。
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まだカメラが必要ある段階でここにきて船員の写真を撮ろうとしても俊介に「この人の写真を撮る意味があるんですか?」と言われるだけで済むので、ちゃんとハマりにならないよう配慮されている。
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当時、週刊ファミ通にて漫画家の桜玉吉氏が連載していたゲームパロディ漫画『しあわせのかたち』にて本作が題材に選ばれたことがある。この話はOVA化もされた。
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PC8801、MSX2で発売された『アドベンチャーツクール』にはサンプルゲームとして、初期PC版の序盤部分(ただし、絵が一切入っていない)が収録されている。
北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ(FC)
ジャンル
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アドベンチャー
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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開発元
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パックスソフトニカ
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発売元
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アスキー (ログインソフト)
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発売日
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1987年6月27日
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定価
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5,800円
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判定
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良作
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特徴(FC)
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前述の通り、初期PC版とはストーリーが異なっている。
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PC版のようなハマリポイントは無く、どのような状況のパスワードからでもクリアは可能になっている。
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ファミ通クロスレビューのイラストや漫画『べーしっ君』でお馴染みの荒井清和氏がキャラクターデザインと原画を担当しており『べーしっ君』のキャラ達も特別出演している。
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パスワード制を導入。
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「そうさメモ」コマンドを選び、その後の確認の選択肢で「はい」を選ぶと20文字のパスワードが表示されてゲームが終了する。
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行き詰まってしまっても、パスワードを聞いてからそのパスワードで再開すると新たな手がかりが現れることがある。
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スタート時にひらがな4文字以内で主人公の名前を入力する。この名前はパスワードによるコンティニューを行った時や、トランプのミニゲーム(後述)時などに表示される。
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北海道到着後はコマンドに「トランプを する」が追加され、部下のシュンとブラックジャックで勝負できる。
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操作に詰まった際の適度な息抜きになるほか、勝つとシュンからヒントをもらえることがある。
評価点(FC)
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BGMが導入された。
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その数も豊富で、汎用の捜査BGMが4種もあり、場面独自のBGMも多く、物語を盛り上げてくれる。
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質も良く、終盤の汎用捜査BGMは特にファンの評価が高い。
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演出面の強化
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前作では電源を入れると通常のテキストフォントによる簡素なタイトル表示の後すぐにゲームが開始されていたが、今作ではちゃんとタイトル画面とタイトルロゴが存在する。
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また、アバンタイトルが導入されており、冒頭の調査が終了して北海道に映ると、冬のオホーツク海の背景イラストとともにタイトルロゴが表示される。以後、パスワードを聞いて中断した際にもこの一枚絵が表示されるようになる。
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その際にはひらがな表記で「つづく」と書き加えられており、連続ドラマの引きを意識したような演出となっている。
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グラフィック面の強化
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登場人物の立ち絵も、前作ではのっぺりとした簡素なものだったが、本作では黒の描線込みでより細かく書き込まれるようになり、漫画調のキャラクターデザインも相まって表情豊かになった。
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風景の一枚絵もシンプルながらもしっかりと書き込まれており、描写力の向上も相まってサスペンスドラマの風情がより強められた。
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登場人物のまばたきや口パク、横を向いていた人物が会話時に正面を向く、ネオンサインの点滅といったグラフィック面の演出も細かい。
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パスワードの導入によって中断・再開が容易になった。
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パスワードは5文字ごとに区切られておりフォントも見易い。
問題点(FC)
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空港のシーンで飛行機の効果音がかなりの音量で延々と鳴り続けてうるさい。
いつまで空港周辺を飛び続けているんだ。
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パスワードを聞くとゲームが終了してしまい、そのままゲームを継続プレイすることができない。
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北海道到着後ならとある操作を行うことでそのままゲームを続行できるが、これは説明書にも書かれていない裏技である。
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一応、一箇所だけ自動的にパスワードが表示されてその後もゲームを続行できる場面も存在する。
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捜査と何ら関係のない、しかも思いもよらない事をしないと先へ進めない場面がある。しかもその場面は複数ある。
総評(FC)
パスワードの導入、行き詰まった時の救済措置となる特殊コマンド、臨場感溢れるBGM、グラフィック面の強化と、前作『ポートピア連続殺人事件』に比べてゲーム性はかなり向上しており、パソコン版と比べてより世界観と物語に没頭しやすくなった。
ファミコンにおけるアドベンチャーというゲームジャンルの定着にさらに一役買ったといってよいだろう。
余談(FC)
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説明書にはスタートボタンとセレクトボタンは使用しないと書かれているが、実際には両者とも機能が割り当てられている。
スタートボタンはAボタンと同じ効果だが、セレクトボタンはカーソルを下の選択肢に移動させる効果があり、さらに一番下の選択肢にカーソルがある時に十字ボタンの下を押しても何も起きないのに対して、こちらは一番上の選択肢に飛ぶことができる。
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裏ワザ。
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裏技「めぐみのバスタオルを取る」
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本作のファミコン版では、バスルームでめぐみのバスタオルを取る裏技が有名。
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やり方は、わごと温泉で入浴中のめぐみと遭遇したら、なにかとれ→めぐみのバスタオルの順番で選択後、「そう?わたしはかまわないんだけどな。」と言った後、2分間待つ。
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すると、めぐみがバスタオルを取り、裸になってくれる。後ろ姿なのが残念だが…
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描いてはいけないものを、描かずに表現する荒業を使っていることでも有名、この時点のドットをよく見ると……?
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ちなみにこの状態で更に数分待つと、めぐみが前を向いてくれるというウソ技がファミマガで掲載されていた事も有名。
当時、これに騙されたファミコン好きの少年達は数知れず…
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ウトロの町のある場所を調べると隠しメッセージがある。
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ウトロの町のお土産屋に売られているペナントは取ると買ったことになり、10枚買うと売り切れになる。
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売り切れても画面上のペナントは消えないが、それを取ろうとしても、これは見本品だから非売品ということで売ってくれない。
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2024年9月12日にSwitch/Steamでリメイク版『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ ~追憶の流氷・涙のニポポ人形』が発売された。
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キャラクターデザインも原作準拠にHD化の一新ほか、ボイス追加や堀井雄二本人監修で事件から37年後の2024年が舞台の後日談エピソードを新たに追加。
最終更新:2025年01月19日 09:03