北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ ~追憶の流氷・涙のニポポ人形~

【ほっかいどうれんささつじん おほーつくにきゆ ついおくのりゅうひょう なみだのにぽぽにんぎょう】

ジャンル アドベンチャー
対応機種 Nintendo Switch
Windows(Steam)
発売元 G-MODE
開発元 G-MODE
room
発売日 2024年9月12日
定価 【Switch】パッケージ版:8,800円
【Steam/Switch】ダウンロード版:4,800円
レーティング CERO:B(12歳以上対象)
プレイ人数 1人
判定 良作
ポイント 37年の長い時を超えてのリメイクと新しい物語
フルボイスによりたっぷり感じられるドラマ性
それでいて懐かしさもある絵質で新しい感動
堀井ミステリー三部作
ポートピア連続殺人事件 (FC / AI TP) / 北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ (FC / リメイク) / 軽井沢誘拐案内


概要

2024年9月12日にG-MODEから発売されたNintendo Switch、PC(Windows)のアドベンチャーゲーム。
原作はアスキーから1984年12月にPC用として発売され、1987年6月にはファミリーコンピュータ用ロムカセットソフトとして発売された『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』。
本作はそのファミコン版をベースにしたリメイクだが、新しく発売当時と同じ2024年を舞台にしたオリジナルストーリーも追加された形になっている。

スタッフはファミコン版でキャラクターデザインを担当した荒井清和氏が続投、BGMも上野利幸氏が同様に参加し新曲の作成や編曲を行っている。原作のシナリオを担当した堀井雄二氏は新たなオリジナルシナリオの監修という形で参加している。

Switchのパッケージ版のみ、ファミコンのオリジナル版もプレイが可能となっている*1


ストーリー(2024年パート)

あの「オホーツク連鎖殺人事件」から37年が過ぎた2024年。
当時あの事件を解決した通称「ボス」と呼ばれた警部は定年退職を間近に控え有休消化に入っていた。
事件を通じて出会った野村真紀子と結婚した部下の猿渡俊介もまた年月を重ね、一人娘まりなをさずかり、それから二十年以上の時が流れていた。

そんなある日、東京の大学に通っていた猿渡まりなはかつて父とともに事件捜査をしたボスを訪ねてくる。
母真紀子から電話を受けて、父俊介が事件に巻き込まれ何者かによって襲われ、意識不明で入院した事実を知ったのだ。
その折、ニポポ人形がなくなったことから俊介が巻き込まれた事件は37年前の事件に関係するものと思い、助けを求めてきたのだ。

ボスとまりなは一路釧路を目指すことになる。
まりなはボスに37年前の事件を聞くのであった。

旅の始まり、ボスは語り始めた……………


内容(主にファミコン版との違い)

  • ストーリーは1987年パート(原作のリメイク)と2024年パート(新規シナリオ)の二部構成になっている。
    • 1987年パートをクリアすると、ファミコン版のエンディングを挟んで2024年パートに移行する。
      • 1987年パートの途中でも「いったん回想が途切れる」という形でデモ的に2024年パートの一部挿入がある。
    • 1987年パートの行動が、一部2024年パートの「猿渡家のリビング」で変化をもたらす。
  • スタート時に4文字以内で主人公の名前を入力するのはファミコン版と同様だが、ひらがなのみだったファミコン版と違い、カタカナ・漢字・アルファベット・数字・一部の記号も使えるようになった。
  • カスタマイズが可能になった。
    • BGM、SE、ボイスの音量をそれぞれ個別に調整可能。
    • メッセージ表示も、遅い、普通、速い、一括表示の4通りでプレイヤー好みに調整できる。
    • 「既読表示」をONにするとすでに聞いた内容と全く同じ場合に黄色っぽい文字で表示される。
  • 台詞はフルボイスとなっている。
    • 端役の演技で気になる部分はあるものの、主要人物はベテラン声優が当てられている事が多く、いずれもイメージに沿う演技でオホーツクに消ゆの世界を盛り上げてくれる。
    • ちょい役のホステスに宮村優子氏を使うなど豪華声優も参加している。もちろん調べるコマンドで色々と色っぽい声を出してくれる
    • 例外的にボスのセリフのみボイスが無いが、プレイヤーの感情移入を妨げないための配慮といえる。ボスのセリフも原作以上に少ない。*2
  • グラフィックはファミコン版の荒井清和氏による原画に準拠したものとなっている。
  • 1987年パートは旧来通り、ボス(プレイヤー)が命令し、行動するのは北海道では俊介、東京では黒木、2024年パートではまりなが行動する。
  • 人物相関図や捜査マップが導入された。
    • 前者は1987年と2024年の2通り用意されている。
    • 捜査マップは実際の北海道の地図に準じており、具体的な位置関係などがよくわかる。
  • 電話番号はカミベースでメモしていなければならなかったが、自動的にメモされるようになった。
    • その中にはただ背景グラにあっただけで進行上で関係なかった「北浜ホテル」も含まれている。
    • 原作と同様に1つ1つ番号を入れる事も可能。原作の隠し要素と同じくある人物にかける事もできるが、大半は間違い電話になってしまう。ただしこの間違い電話のためだけに複数のキャストが用意されているという拘りがある。
  • 絵質は当時のパッケージデザインがベースになっており画面上に見えているキャラの台詞はそれぞれにフキダシが出るような形。
    • 見えていないキャラの台詞は画面下のウィンドウで表示される。
  • パスワード制だったファミコン版とは異なり、セーブデータによる保存が可能で、その枠は20枠分+オートセーブの、計21枠が用意されている。
    • またファミコン版では一度パスワードを取って再開しないと先に進まない部分があったが、当該の箇所はフラグさえ満たせば進めるようになった。
    • セーブ後にゲームを終了するかを問われ、終了すると原作にも存在した「つづく」演出が見れる。もちろんセーブをした上で続行する事も可能。
  • 3D迷路もファミコン版からそのまま持ち越されているが、オートマッピングの機能が付いている。
  • 捜査中のトランプ(ブラックジャック)はファミコン版ではチップ15枚スタートでベット5枚ずつだったので最低3回勝たなければならなかった*3が、チップ枚数がデフォルトで5枚になった。
    • 2024年パートではまりなが持っている携帯アプリでブラックジャックをする。ここでは条件の異なる5人と対戦し、それぞれに3勝できればトロフィーが貰え、「猿渡家のリビング」に飾られる。
      • チップ枚数で基本的にプレイヤー側が不利な条件となり、後になればなるほどハンデが大きくなる。
      • 2024年パートでは特に捜査を進めるヒントのようなものはなく気分転換のためのミニゲームでしかない。
  • 「なにか調べろ」→「そこを調べろ」の指カーソルで有効なポイントではカーソルの指先に「!」のマークが付いて、カーソル自身も赤っぽい色になり特別なポイントを告知してくれる。
    • 原作よりも調べられる箇所が増加した上に原作と同様に細かくフラグを立てなければ先に進めないため、初心者や久しぶりのプレイヤーに対してのフォローとして役に立っている
    • 後述する「記憶のかけら」は視覚的には全く見えないように隠されているので基本的にはこのヒントを頼りに探すことになる。
  • 1987年、2024年双方のパートで背景の中に「記憶のかけら」が隠れており、上記のコマンドの指カーソルで調べて見つけ出すことができる。
    • これがまるでジグソーパズルのピースのようになっており全部で40個ある。
    • 最初はノーヒントだが、捜査を進めていくうちに隠されているマップ名のヒントが得られる。
    • 1987年パートで取り逃した場合も2024年パートで回収ができるようになっている。
    • ただし有効ポイントはかなり狭いので少々見つけにくい。
  • 一部の人物の名前や組織の名前が変更されている
    • いずれも同音異字なので違和感はない。元々原作でもひらがな表記である事からよほどのファンでもない限りは気づかない点でもある。
  • Switch版はタッチスクリーンでの操作に対応している。

ファミコン版の特徴

  • 概要の通りパッケージ版にはオリジナルのファミコン版も入っており、こちらのプレイも可能となっている。
    • IIコンでの操作も取り込まれており、裏技にも対応している。
  • 基本的にすべて当時のままだが、セーブデータとして保存が可能になった。
    • ただし、パスワードを取らなければ進めない箇所は当時のままなので、そのタイミングではパスワードを取らなければならない。
    • こちらはセーブデータ枠は本編とは別で4枠用意されている。
  • ファミコン時代の説明書も当時のまま収録されておりゲーム中の画面で見ることができる。

評価点

  • 1987年パートは当時の雰囲気を残したまま、フルボイスとなり懐かしさと新しさが両立。
    • 絵質はあの頃のパッケージのままで、当時の魅力はそのままにそんな彼らが常にフルボイスで蘇り、また声優陣の熱演も見どころの1つで一層ドラマ感覚で楽しめる。
      • ふざけた選択肢を選んだ際のシュンのツッコミや毒舌、お土産の買占め、芸者呼び、ドラ〇エ的な隠しメッセージ等の脇道部分もしっかりとフルボイスで実装されている。
      • 厳密には捜査中断・再開時のシュンのセリフや捜査を指示するボスのセリフ等、削られているテキストもあるにはあるが無くとも問題のないセリフが多く、本編においてはカットされたり変更されたセリフを探す方が難しいと言えるほど細かく再現されている。
    • キャラグラフィックは原作を忠実にリファインした上にさらなる表現が追加されていることも多い。脇役のキャラにも表情や顔の向きが変わる演出がさらに追加されていたり、原作ではテキストで言及されるだけだった人物の素顔や登場人物の過去の姿がわかるなど37年目にして明らかとなる部分もある。
      • ファミコン版準拠のリメイク(移植)と言えばPC-9801版や携帯アプリ版があるが、そのどちらもキャラデザイナーが異なるために印象が変わってしまっていた。本作では同じキャラデザイナーが当時の作風の再現を徹底している為、追加要素を含めてファミコン版の延長線上のものと受け入れやすくなっている。
      • 原作では遠近法がおかしいと言われていたある死体も発見時には原作通りのアングルで表現され、その後に移動される事でインパクトを損なわずに問題のない表現になるといった修正点もある。
    • 背景グラフィックは原作の構図を意識しつつより詳細に描き起こされ、広大に広がる北海道の情景が当時の雰囲気のまま広がり、チープな当時のグラフィックでは味わえなかった雄大な風景も表現されている。
      • 原作であまりに簡素過ぎた背景の場合は実際の風景に寄せる形で大胆に変更されている場合もある。ニッカウヰスキーの看板が目立つ札幌すすきのの交差点の中に存在するコロポックリは新たな印象を与えてくれる。
      • 調べられる場所が増加したことによりテキストが増えているが、既存のテキストと区別がつかないぐらいに自然な反応が多く、主張し過ぎていない。
      • 原作では不明瞭な部分が多かった死体発見現場も被害者、野次馬、駆けつけた関係者も含めて一つの画面で描写されるようになり、状況を把握しやすくなっている。
    • 言葉に関しても特に近年ありがちな悪癖であるコンプライアンスや言葉狩りといった影響を受けることなく、ほぼ当時のまま再現されている。
      • ゲーム開始時に「1987年当時の原作の表現をあえて忠実に再現しています」とテロップが出るだけあって原作パートでは原作から削られたりマイルドに変更された表現はほぼ存在せず原作の再現に徹している。リメイク作品にありがちな当時の表現の変更や過剰なアレンジによるイメージの崩壊といった事は本作では無縁である。
    • 中山めぐみのサービスもしっかり引き継がれている。
    • 一方、ファミコン版の問題点であった、空港のシーンで飛行機の効果音がうるさい、上述の通りのとある段階で一旦終了してから再開しないと話が進まなくなるうえにその事がノーヒントである、といった点は解消されている。
  • あの頃の想い出が懐かしくも新しさを携えて蘇ること必至。
    • それぞれの場面が完全に1枚絵だけだったのが、新しい描写も加わったことで、これもドラマをより盛り上げている。
    • テキストが長くなる場面では状況がわかりやすいようにカットイン的に絵が挟まれたり、回想シーン的に関連人物が表示されるようになったので物語を理解しやすくなっている。
    • BGMは現代のクオリティまで昇華されたアレンジに加え、あの頃の雰囲気もしっかり踏襲され、懐かしさも新しさも感じられる良好な仕上がり。
  • 人物相関図の導入により、より人物同士の関係がわかりやすくなり、同時にそれぞれの解説までついたことで要点はしっかりまとめてくれる。
    • これもファミコン時代はカミベースでやらなければならなかったことが自動化され、プレイヤーはよりドラマに没入できる。
  • 捜査マップにより、物語の舞台となる北海道の地名や地図上の位置関係が鮮明になり、イメージがしやすくなった。
    • 摩周湖、知床五湖、和琴温泉、名前そのものは聞いたことがあっても地元民や北海道旅行が頻繁な人でないと場所をイメージしづらかった難点が解消。同時に捜査のために無茶な移動をしまくっている事もわかる
    • また、それまで「移動する」の有効な場所が位置関係に依存していたこともわかるので目的地への移動にも計画的なステップが立てやすい。
    • それだけではなく、物語に関係ないその地域地域の解説も入っており、ちょっとした観光案内のような一面もある。
  • 3D迷路はプレイアビリティが大幅に改善。
    • オリジナル版では当時では当たり前とはいえ「前へ進め」「右を向け」「左を向け」をいちいちコマンドメニューから選択する煩わしかった方式が半アクション的な操作になり大幅なスムーズ化を実現。
    • オートマッピングが実装されたことにより位置の把握がしやすくなった。
      • もっとも、まったく知らない慣れない広い場所を散策していたことを思うとリアル気分が削がれてしまう一面もあるのだが、プレイヤーには親切。
  • 詰まった時のトランプのヒントが勝った場合、確実にもらえるようになった。
    • オリジナル版ではやりすぎると、ただ勝っただけに終わっていたのでそれを気にすることなく「迷ったらトランプ」に頼れるようになったのは親切。
    • 裏技不要で一発で勝負がつく仕様にしたのもプレイヤーに優しい。
  • あの頃の物語を辿りつつ、更にそれが現代に舞台を移して展開される新しい物語。
    • ゲーム中だけでなくプレイヤー自身も37年の時を経ており、あの頃からの時の流れを感じて感慨深い気分になれる。
    • 2024年パートのシナリオは原作者の堀井雄二が直々に監修しているだけあって原作との矛盾点やキャラ崩壊といった事はない。むしろ原作でわずかに語られていたある謎をベースにストーリーを展開させ、後付けとは思わせないぐらいに違和感のないシナリオになっている。 
      • 詳細は避けるが、プレイしていけば原作に残されていた謎やタイトルに含まれた意味も自然と氷解する。クリア後にはよりすっきりする形で物語を完結する事が出来るだろう。
    • 原作で行った場所や行かなかった場所を巡りながら捜査をするので北海道各地を巡る旅情ミステリーは健在。2024年では景色や状況が変わってしまった場所もあり、時代の変化というスパイスが新たに加わっている。
    • 2024年パートに入っても「捜査マップ」で過去の事件の場所の情報を見る事が可能。一部の場所は2024年パートでは一切語られずに行くことも出来ないが、2024年ではどうなっているかを知る事が出来る(現在も細々と営業を続けていたり、開発により閉業した、住民がいなくなり解体された等…)。
    • バスタオルももちろん健在である。還暦間近になった彼女にそれを要求するのもアレだが…よりパワーアップしている。
    • ドラゴンクエスト』や『軽井沢誘拐案内』といった他の堀井雄二作品のオマージュもあるため、わかる人はよりニヤりと出来る要素もある。
  • 猿渡家のリビング
    • 2024年パートで事件の発端となった場所だが、ここには1987年パートで入手したものがあり、2024年パートの捜査で購入したものや入手したものも後々次々と追加される。
      • プレイヤーとしても、いろいろと思い出多いものばかりでボスの気持ちに近い気分になれる。
  • オリジナル版の徹底。
    • ただの本編移植だけにとどまらず説明書まで当時のまま完全に収録され、細かいところまでファンサービスに抜かりがない。

賛否両論点

  • グラフィックについて
    • 原作と同様のキャラクターデザインであり、忠実にリファインされているのだが解像度が上がった分、一部のキャラ絵は線の太さが気になったり、妙にのっぺりとした見た目になったり、原作では意外と美人だったおばさん達が設定どおりになってしまったり、人によってはシュールと捉えられがち
      • 特にとあるシーンでは番長ヨシオ顔*4のヤクザまで忠実にリファインされてしまったため、一応はシリアスなシーンなのに白けてしまいがちになる。しかも2024年パートでも同じ顔の人物が登場する。同一人物なのか、それとも息子か孫なのか…
  • BGMについて
    • イメージを損なうほどではないが、アレンジされたBGMはファミコン版の原曲ほどの存在感がなく、全体的に大人しい、音が軽いという声が多い。
      • 特に「殺人のテーマ」「追跡」などは印象的だったメロディラインが目立たなくなってしまったり、「救出」は音やテンポがおっとりし過ぎて迫力不足になっている。一部のBGMは追加シナリオで流れる2024verの別アレンジが存在しているが、そちらの方がより原曲の雰囲気を再現できているのでわざわざ分ける必要があったかどうかが微妙なところ。(2024ver.では「殺人のテーマ」はメロディラインがはっきりしている上に原曲の所々で流れるポー…と称される音が再現されていたり「救出」もしっかりと緊迫感を煽るアレンジとなっている。)
      • 曲によっては原曲のイメージを保ちつつアレンジによってパートが増えていたり、追加シナリオで流れる「涙のニポポ人形」といったクオリティが高い新曲もある。
      • 原作ではトラウマBGMとして名高かった「真相」は非常にシックで物悲しい曲調となったが、流れるシーンを考えるとよりマッチした良アレンジといえる。
      • この辺りはリメイク作品によくある問題ともいえる。残念ながら本作では原曲に切り替える機能はない。
  • 2024年パートのブラックジャックの仕様
    • 先述の通り、ブラックジャックの仕様が変わり、ただ対戦するだけのものになってしまったので困った時にブラックジャックでヒントを得るという攻略法が使えなくなっている。
    • 追加シナリオパートも原作と同様にフラグを一つ一つ立てなければ進行しないため、詰まった時には様々な場所に移動してコマンドを試さなければならず、苦痛に感じる事がある。
    • とはいえ気分転換の用途としては悪くはないし、対戦相手は1987年パートで登場したおなじみの人物で、そんな彼らが本編では見られなかった一面を見せてくれたりするのは見ていて楽しく感じられる。しかし彼らのうちの1人は年齢的にも作中描写的にも現代では故人の可能性が高いうえに犯罪者である。あまり深く考えない方がよさそうだ。

問題点

  • ボリューム不足
    • 原作シナリオ+αの作品ではあるが全体としてみるとボリューム不足な感は否めない。
    • 追加シナリオもそれほどボリュームがあるわけではないのでやり込めば原作シナリオを含めて1日ほどでクリア可能。
    • 一応、分岐や隠し要素もあるにはあるが内容自体は少ない。
  • 序章のまりなの存在
    • 序章に登場する「まりな」はもしかしなくともバレバレではあるが存在自体が原作のネタバレというキャラ。
    • そういうキャラがゲーム開始早々に登場して自己紹介と同時に色々と原作のネタばらしをしてしまい、原作未プレイのプレイヤーへの配慮に欠けるシーンがある。
      • それに付随してリメイクパートで真紀子が生命の危機に陥るポイントでも、後の生存が確定していることになるので彼女の身を案ずる気持ちになれず少々冷めた目で見てしまいかねない。
      • 犯人はヤス」といい、堀井雄二ミステリーにネタバレはつきものなのだろうか…
    • また、1987年パートの途中でも一度、話が中断されて2024年に戻されることがあるが必要性が薄く、盛り上がる場面の前に一呼吸おかれてしまうために原作のテンポが阻害されたと非難するプレイヤーもいる。
      • ファミコン版では冒頭の調査が終了して北海道に移る際に表示されていたアバンタイトルもカットされて単なる暗転になり、1987年パートクリア後の追加ストーリーの導入でようやく表示されるようになった。また、ファミコン版のエンディングもカットされ、過去編クリア直後にすぐ現代へと戻されてしまう。
      • ファミコン版のエンディングテーマのアレンジ曲は一応2024年パートで使われてはいる。
      • 2024年パートから始まって1987年パートをわざわざ回想扱いにしなくても1987年でスタートして走り切ったら現代に移行して、そこで初登場でも問題なかっただろう。
  • ジョイコンの操作が少々煩わしく感じられるところもある。
    • 元々ファミコンのソフトであり1本でも充分操作可能なはずなのに、わざわざ両方を使わせる意味が薄い。
    • またファミコン版のモードも、IコンIIコンに対応したボタン配置がかなり変則的で少々飲み込みにくい。
  • システムや表現に目新しさはない
    • あくまで過去作のリメイクに徹しているため、ゲームのシステムとしては当時とほとんど変わらず古臭いアドベンチャーにとらえられがち
    • キャラクターの表現も目パチ、口パク、表情の変化が主で、豊富にアニメーションをするという事はない。
    • 場所移動の際に「特定の場所に一度移動を挟まないと行けない場所」といった点も原作通りなので移動の煩わしさまで再現されてしまっている。令和になっても北海道を右往左往するのは変わらなかった。
    • メッセージの自動再生、バックログ、既読スキップ等、昨今のテキストアドベンチャーでは当たり前に搭載されている機能がすべて未搭載になっている。
      • 同じ事を直後に再び聞くとさらに新しい情報を出してこられたり、そうでなくとも「もういいました」的な事を言われたりとセリフが変化する事のよくあるこの本作を現代でプレイするのなら、バックログ機能は欲しかったところ。特に、同じく過去の推理ADVのリメイク作品で同時期に発売された「逆転検事1&2 御剣セレクション」では導入されているだけに気になる点ではある。
  • セーブ機能について
    • 最後まで進めてしまうと場所移動で戻る事が出来なくなる。「記憶のかけら」を集めきっていない状態でセーブしてしまうとそのデータでは諦めざるを得ない。
      • ちなみに最終盤に捜査メモを取る(セーブする)ように勧められるのだが、その時点で手遅れなのでよりこの問題が強調されてしまっている。加えてその場面に到達した際にオートセーブで自動的に保存されているので忠告自体がほぼ無意味になってしまっている。
  • スタッフロールで配役がわからない
    • 参加した声優のリストは出るものの、誰がどの配役なのは表示されない。一部のキャラクターは公式SNSやネットニュース等で判明しているものの、主要人物でも担当声優がわからないキャラクターが多い。
    • 中には高橋名人やHTB(北海道テレビ)のディレクターの藤村忠寿氏と嬉野雅道氏*5といった本職が声優ではないキャストもいるのでダメ絶対音感をもってしても担当声優を推測する事が難しくなっている。
  • 追加シナリオ以外の追加要素の貧弱さ
    • ゲームクリア後のシナリオセレクトがない。本作は原作パート、追加シナリオパートで完全に独立しているので選択できればなおよかったのだが…
      • 追加パートを遊びたければセーブデータを残すか、原作パートをもう一度クリアしなければならないので面倒になっている。
    • BGMのテストのみ条件を満たすことでラジオから自由に聴くことが可能だが、そのラジオも追加シナリオパートに存在する上にやや気付きづらい(そこを調べろでラジオを選択するのではなく、コマンドから直接ラジオを調べなければいけない等)。
  • ボスの年齢と時代設定について
    • 本作のボスは2024年に定年を迎える事から1987年では概ね23~24歳ほどと意外と若い事が判明している。*6*7
      • 警部という階級や妙におっさん臭いPC版のパッケージなどから40代くらいのベテラン刑事をイメージしていたユーザーが多く、この設定は驚かれた。
      • 言及はないものの23~4歳で警部という事からキャリア組であると予想される。半ばプレイヤーのせいとは言え、あなたは変態ですねと断じるシュンのクソ度胸も改めてネタにされる。
      • しかしながらこの設定でいくと、2024年においてある人物が中々子宝に恵まれなかったり、ある人物が非常に長生きしたことになったり*8原作ヒロイン達が還暦目前になったり、ボスが37年間昇進できなかったり*9、不可能と断じきるほどではないが色々とギリギリな設定になってしまい、様々な議論を呼ぶことになってしまった。
      • ユーザーの中ではボスは2024年においては既に定年済みであるとしてボスの年齢をぼかす、あるいはボスの定年設定はそのまままに現代をもう15~20年ほど早く設定されていれば色々としっくりくると言った意見もあり、2024年という時代設定の難しさ*10や、もう少し配慮があればユーザーが持つイメージを損なわずに出来たかもしれない。
      • 一応フォローするとボスは原作の時点でも捜査中にファミコンやペナント(しかも同じものを何枚も)を欲しがったり、最後の反応などから意外と若いかもしれないと思わせる部分はある。
    • ボスが「ベテラン警部」のイメージに付随してかシュンの設定は1987年当時27歳だったので、そのままなら既に定年退職しているはずなのだが未だ現職というありえない状況になってしまっている。
      • しかもシュンはとある事情から原作のエンディング時に退職を余儀なくされたはずであるとファンの間で囁かれていたにもかかわらず、無事に警察官を続けている。
      • 真紀子もPC-8801版においては23歳という設定だったが、本作では公式ページにて19歳と明言されており、設定が変更されている可能性がある。
  • 2024年パートには他にも難点がチラホラある。
+ ネタバレに触れる部分
  • 原作の謎は氷解するが、追加シナリオの中では若干謎を残す作りになってしまっている。
  • 特に謎の女性はしっかりとフラグを立てて回らなければ本当に謎の女性のまま終わってしまうし、イベントをこなしてもストーリーには関わらないので製作者のお遊びか続編の顔見せのようなキャラになってしまっている。
    • キャラ自体はセカンドヒロイン扱いにしてもいいぐらい可愛くて気合が入ったデザインなだけに空振り感が大きい。
  • 1987年パートではまさに立て続けの連続殺人だったのだが、このパートでは殺人は全く発生しない。
    • そのため、原作を意識すると少々物足りなく感じられる。
    • ストーリーそのものは見せ場が多く長い時を隔てての再会だったり、37年前の追想が重点に置かれプレイヤーとしても感慨深さを味わえるものには違いないが。
  • 無人のはずの屋敷から出て来た挙動不審な人物と会った後、その屋敷の所有者を訪ねる事になるが、その際に屋敷から出て来た人物の事を「時々様子を見に行っているという所有者の息子かもしれない」で済ませてしまい、家族写真を見せてもらうなどの確認をしない。
    • その後、件の人物が暴力団と繋がりのある不動産屋であったと判明し、主人公たちが屋敷を調査する展開となるのだが、屋敷の所有者が主人公たちに友好的であるにもかかわらず、会いに行って件の不動産屋に関する証拠品を見せるなどしても屋敷に入る許可を求める展開にはならず、不法侵入するはめになってしまう*11。普通に許可を得て気兼ねなく調査するか、せめて許可を求めるも「暴力団関係者が出入りしているというのなら危険だ」との理由で拒否され、それでも謎の解明のために調査を強行といった流れにはできなかったのだろうか?
  • 2024年パート最終盤にも1987年パートの夕張炭鉱同様な3D迷路があるのだが、ナゾにこれまでの常識を覆し、なんとこれがRPGになっている。
    • ここでは歩くとヒグマとエンカウントし、それと戦って経験値を得てのレベルアップや、アイテムを得て攻撃力や防御力を上げるのだが、あまりに急な展開に戸惑うこと必至。
    • しかも、ゲームオーバーなどのリスクもなくやられてもスタートに戻されるだけとデスペナは皆無。
      • そもそも森の中に入ってしまうとやられない限りは元のマップには戻れない。やられる事で限定の仲間の女性達の一枚絵が見れる上に使った回復薬も元に戻るのだが、仲間の女性二人からは「もう大丈夫だからもう一度行きましょう」と再びヒグマの森へ行くように促される。鬼か!
    • なお、このパートではHPがあるのは主人公のみで攻撃は全て受けることになるし、仲間の女性二人が襲われないと言うのも不自然。アイテムもゴミのようなものが混じっており、そんなものが装備的位置づけになるというのも変な感じ。
    • また、これがRPGというにも中途半端なボリュームで、レベル上げを意図的にしなくてもクリアは可能でむしろ3D迷路としての探索要素の方が色濃い。
      • そんなわけで、わざわざRPG形式にしたことに関しては非常に懐疑的。ドラマ的要素を魅力としたADVではその雰囲気も壊している。
      • またヒグマは人間程度でどうにかなる相手ではないので、簡単な武器程度で倒せたり、そんな巨獣の攻撃を喰らって立っていられるボスはやはりタダモノではないのか。*12
      • ちなみにこのヒグマとエンカウントする森はある人物も若い頃に足を踏み入れているのだが、当然ながらヒグマとは戦わずに命からがら逃げだしてその事を家族に言い残している(なのでボス達は事前にヒグマと遭遇する可能性がある事を把握した上で行動している)。折れたオールと救命胴衣だけでヒグマを撃退する還暦過ぎのボスが浮いてしまっている
    • また、このパートに関しては様々な関係者に内緒で隠された金塊を取りに行くというかなり不純な動機で動いている。ちゃんとした動機付けもある(仲間の女性二人もその関係者である)が、主人公達が金に目がくらんで無茶をしているように映りやすい。
+ 記憶のかけらも…ネタバレにつき隠し
  • 記憶のかけらは全編にわたって収集可能なパズルピースだが…
    • 集めきると、パズルの絵柄を閲覧できることと猿渡家のリビングに完成したパズルが置かれるだけというもの。ちなみに最後のピースが手に入るのは最終マップの1つ手前なので完成した後にわざわざ一度目的を放置して猿渡家まで戻らなければ見れない、そもそも完成した後にどうなるかも説明されない…といった全編にわたっての収集要素としては微妙過ぎるご褒美となってしまっている。ビジュアルビューワー等、ご褒美は色々用意できそうなものだが…
    • 先述のセーブ機能の仕様とあわさって1周目ではせっかく集めたのに見ることが出来ずに終わってしまう事も多い。
    • 周回要素で引き継がれることもないのでプレイする度にパズル集めもやり直しである。もはやSteam版の実績の為だけの要素と言える。

総評

37年という長い時を超えて現代のクオリティでリメイクされただけでも充分なほどだが、新しくなっただけでなく当時の雰囲気も大切にしており、リメイクとしてだけでもファンの期待以上に応えられたものになっている。
それだけでなく新たに現代を舞台にした物語も加わり、それはプレイヤーにとっても同じ時を重ねての再会でもあり二重の意味で感慨深く、こちらのストーリーもまた見せ場がいっぱいで良質なもの。
現実と同じ37年後の話に繋げてしまったことで、その隔たりが設定に無理を生じさせている不自然な点はあるもののストーリーに関しては元々良質だったものが現代のクオリティによって一段と磨きがかかったものとなった。


主なキャスティング

+ 詳細

猿渡 俊介(後藤ヒロキ)

黒木(浜田賢二)

野村 真紀子(Lynn)

中山 めぐみ(中川翔子)

アケミ(宮村優子)

ルナ(氷上恭子)

猿渡 まりな(瀬戸麻沙美)

苫米地 彩(ファイルーズあい)

犬飼 健太(河西健吾)


余談

  • ゲームに登場する和琴温泉は正しくは「わことおんせん」と読むが原作及びPC版の時点から一貫して「わとおんせん」と読まれていたため、本作でも訂正はせずに通している。
    • 和琴温泉は2024年にも登場するが建物が変わっている。というのも1987年当時の建物(和琴共同浴場)は2023年末に老朽化につき立ち入り禁止(のち解体)となったため現実に即した変更といえる。
    • また、同様に釧路市内の地名「緑ケ岡」も、ゲーム中ではファミコン版の説明書での誤字の通りの「緑ヶ丘」表記になっている。
  • 北海道到着時に主人公を出迎える山辺という人物は、ファミコン版の説明書では釧路署の署長と書かれていたのだが、本作の人物詳細では刑事部長と書かれている。ファミコン版でもゲーム中でシュンが「ヤマベぶちょう」と言うシーンがあるので、刑事部長が正しいのかもしれない。
  • 上記の通り間違い電話は事細かに個人名が割り当てられている反面3桁番号は「110」のみが有効で他の「117(時報)」「115(電報)」「104(番号案内)」など「現在使われておりません」扱いになってしまう。
    • これはオリジナル版そのままなのだが、さすがに不自然でせっかくだからこれらも有効にした方が良かったのでは?と思ってしまう。
  • 2024年パートにおいてはまりながシュンの位置付けでボスの助手を務めるのだが、とある場面にてまりなが喋っているのに名前が「シュン」と表示されるバグがあった。
    • これは後にアップデートで修正されているため、現在ではもう見ることができない。
  • 夕張の電気屋の主人は荒井清和氏の漫画「べーしっ君」に登場するべーしっ君の父の「目森二五六」にそっくりだったが、本作では人選が謎過ぎるブラックジャックの相手として「目森二五六」の名前付きで登場したため、正式にゲスト出演した形になる。
    • べーしっ君も原作と同様に登場し、中川翔子氏の声で決めセリフを喋ってくれる。
  • 本作のために主題歌「流氷に消ゆキラリ」が新しく書き下ろされた。
    • 作詞は原作者の堀井雄二によるもので歌い手は中川翔子。しょこたんはまさに大車輪の活躍。
最終更新:2025年01月04日 16:21

*1 他に初回生産分には特典として雑誌『LOGiN』を模した設定資料集とサウンドトラックCDが付属する。

*2 原作では調べる場所を指定する際に「うーむ、ここだな」といったボスのセリフはあったが、テンポを優先するためか無くなっている。

*3 ただし裏技で15枚一気賭けが可能

*4 キャラクターデザインの荒井氏の漫画、べーしっ君に登場するキャラ。頬にバカという形の傷を持っている

*5 両名ともHTBの名物番組である「水曜どうでしょう」のディレクターとして全国区で知られる人物

*6 作中には顔は不鮮明なものの1987年のボスの姿がわかる写真があり、シュンと同年代ぐらいの人物であることがわかる。

*7 警察官の定年は2023年から2年ごとに1歳ずつ段階的に引き上げられて2031年に65歳になるとされる。これに照らし合わせると本作のボスは2024年で61歳であるとされる。

*8 言及はないものの1987年の時点で若くても70代ぐらいと推測される年齢ながら、そこから30年以上生きた(つまり100歳を余裕で超えた)ことになってしまう。

*9 ノンキャリアならば珍しくはないが、本作のボスの設定で考えるとさすがに無理がある。

*10 あらゆる元凶となった出来事も含めれば約80年にもわたる壮大な話となる為、関係者の年齢がえらい事になってしまっている。

*11 その際にヒロインも「これって不法侵入…」と一旦躊躇うが、結局侵入する事になる

*12 アメリカ人の空手家ウィリー・ウィリアムスがヒグマと格闘したのは有名な話だが野生のものではなかった。