本項では実質上位機種にあたる『beatmania III THE FINAL』についても併せて掲載する。
beatmania THE FINAL
【びーとまにあ ざ ふぁいなる】
beatmania III THE FINAL
【びーとまにあ すりー ざ ふぁいなる】
ジャンル
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音楽ゲーム
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対応機種
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アーケード
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販売・開発元
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コナミ
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稼動開始日
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無印
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2002年7月26日
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III
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2002年8月26日
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判定
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良作
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ポイント
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共通
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五鍵シリーズ最終作にして集大成
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beatmaniaシリーズ
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概要
5つのボタンと1つのターンテーブルを用いて楽曲をプレーする、音楽シミュレーションゲームとして、大きなムーブメントを起こしたbeatmania源流シリーズ、通称「五鍵シリーズ」の最終作。
『3rdMIX』から『CompleteMIX』頃に隆盛を極めたが、その後はアンダーグラウンドな方向への路線転換、兄弟機種である『beatmania IIDXシリーズ』の人気が高まったこともあり、人気は下火に。また、「初代筐体」の基板性能や「III筐体」との並行対応の限界もあり、遂に最終作としてシリーズが締めくくられ、以降は『IIDXシリーズ』などの他機種へとノウハウが受け継がれていくことになる。
初代から7thMIXに至るまでの全てのバージョン(ドリカム(版権曲)を中心に取り扱っている『featuring DREAMS COME TRUE』を除く)から人気投票を行い、その結果を元に新規オリジナル楽曲・BEMANI機種からの移植曲を含め、『初代筐体』では全189曲、『III筐体』では260曲以上のボリュームを達成した、まさにシリーズの「集大成」とも言うべき作品。
特徴・評価点
主に初代筐体のbeatmania THE FINALに準拠しての記述になります。
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beatmaniaシリーズのアーカイブとしての価値
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概要でも述べた通り、初代から7thMIXまでのほぼ全ての人気楽曲を網羅しているため、遊びごたえは抜群。初期の代表曲である「20,novermber」はもちろん、人気が下火になり始めた4thMIX以降の中でも殆どのオリジナル楽曲を収録しているので、遊びつくすのには相当な時間が必要。
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beatmania IIIの方では基板性能・HDD容量の余裕があるため、初代筐体の方では漏れてしまったオリジナル楽曲も(≒ライセンスの都合で削除されたもの以外)シリーズの全曲がプレー可能である。
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楽曲毎の判定なども再現しているため、「20,november」のアナザー版や「Acid Bomb」、また激辛判定で知られる3rdMIXの「nine seconds」「area code」や、初代作での2人プレー/ダブルプレー限定の「greed eater」はタイミング判定が非常に狭い仕様となっている。
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とはいえ、(公式サイトでは否定されているものの)通常曲での判定や、グルーヴゲージ増減は一旦難化した7thMIXに比べれば緩くなっている。
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5thMIX以来の家庭用移植楽曲
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PS移植版の『YebisuMIX』から「Ain't it Good」「Body」の2曲、GOTTAMIXから「Miracle Moon」、6thMIX&CORE REMIXから「MGS2 Mission R」が移植された。
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「Miracle Moon」の歌唱を担当したSanaはデビューが家庭用『YebisuMIX』だったが、初代筐体のアーケード版に彼女の楽曲が収録されるのは実はこれが初。
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THE FINAL新曲
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数こそ少ないものの、初期から活躍したdj nagureoやbeatmania IIDXシリーズの当時のサウンドディレクターであるdj TAKA、6thMIX以降引き続きサウンドディレクターを務めるSLAKEとDes-ROWによる新曲はもちろんながら、初代と3rdMIX以来となるe.o.sによる新曲は話題を呼んだ。
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最終作であることを意識してか、やや哀愁漂う楽曲やbeatmaniaへの愛が詰め込まれた曲タイトル等、熱心なファンであれば落涙モノの楽曲が多い。
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beatmania III楽曲の移植やエンディング楽曲であった「RETROFUTURE」の譜面追加
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基板性能の問題で、移植不可能と思われていたbeatmania IIIの楽曲が、エンジニアやプログラマーの血と汗の滲む努力で通常筐体版への収録を達成。
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「RETROFUTURE」はClubMIXのエンディング専用楽曲だったが、データのコンバートに苦労しながらも初めて譜面が用意されプレーができるようになった。
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他BEMANIシリーズからの豊富な移植曲
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pop'n musicシリーズからは大見解、beatmania IIDXシリーズからはGAMBOL・gentle stress、GuitarFreaks&DrumManiaシリーズからはThe least 100 sec・JET WORLD、DDRシリーズからはCANDY☆・BRILLIANT 2Uといった具合に、それぞれの機種を代表する人気楽曲を移植。また、DanceManiaXやMAMBO A GO GOといった若干マイナーな派生シリーズの楽曲も収録された。
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中でもdrummania 2ndMIXの異端曲だった「IMPLANTATION」はアレンジされた上でこれまでのbeatmaniaになかった強烈な隠し譜面が後にオペレータコマンドで解禁され、隠しモードEXPERT+の最後に立ちはだかる。最終作にして最強譜面を持つ移植曲という異例なポジションに。
この譜面を元にしたものが後にpop'n music 9(ee'MALL経由)や家庭用beatmania IIDX 15 DJ TROOPERSに移植された。
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なお、これらの別シリーズはいずれも通常筐体版の基板よりも少なからず性能が高い後発の基板を使用していた製品であった。上述のbeatmania III楽曲逆移植に関するノウハウはこの移植でも活きている。
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(初代筐体版における)隠し要素の簡素化
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前作「7thMIX」では隠し要素を細かく解禁することでプレーヤーの関心を長引かせる狙いがあったが、その反面として隠し要素解禁のためにプレーヤーやオペレーターが入力するコマンドが複数回に渡り、しかもその一つ一つがややこしいという難点があった。
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その反省や、今作は最終作として超長期稼働する可能性があることを踏まえ、隠し要素の解禁は1回のみ。しかもその解禁作業はオペレーター側が一度入力すれば再度の入力は不要とかなり簡素化され、開発時の想定通り、シリーズ終了後も遊びやすい様考慮されている。
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通常モードでの全曲自由選択コマンドは初代筐体のみ・毎プレーごとにプレーヤーが操作しなければオンにならないが、その作業もコイン投入後エフェクトボタンを押した後ターンテーブルを1回転させる、と簡単なものであり仮に入力し忘れても影響は軽微。
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初代筐体では「6thMIX」から搭載された「最難関楽曲を回復ほぼなしゲージで10曲連続でプレーする」最上級者向けモード「EXPERT+」を引き続き搭載。こちらもオペレーターコマンドで同時に登場する。
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本作では歴代最難関譜面を10曲連続プレーという、まさしく本シリーズのエンドコンテンツともいえる内容。SPもDPも、特にランカーをも唸らせる歯ごたえを誇る。
インターフェース(初代筐体版)
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初代筐体では容量を楽曲データの方に割いたため、beatmaniaの特徴とも言えるアニメーションクリップは縮小表示され、動きも紙芝居のような感じになってしまっている。
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しかしそんな中でもbeatmania III楽曲ではIIIのアニメーション、CANDY☆ではDDRのアローが流れるなど歴代で特徴的な汎用パターンを収録しており、ある程度の雰囲気を感じることはできる。
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従来アニメーションが表示されていた画面中央の部分は、その時点での判定数と最大コンボ数が表示される。判定表示をオフにしてもMVは拡大されないのであしからず。
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選曲画面ではbeatmaniaシリーズではお馴染みだったレコードが回転する演出を削除、右側に楽曲リストと左側に楽曲名、譜面毎のレベルが表示される簡素なものになった。
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デザインが簡素化したが、初代筐体限定でソート機能が充実しており難易度順、曲名順、シリーズ順に並べ替えができ選曲しやすくなっている。
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「確か5th mixに収録されてた曲だけど、曲名はうろ覚え…」と言ったケースでも探しやすい。こういった選曲のしやすさもシリーズ終了後の現在でも遊びやすさに貢献している。
問題点
初代筐体版
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初代筐体では189曲の収録数を達成するために、楽曲データが極限まで圧縮されており、音質が悪い。
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基板性能の問題で仕方ない部分ではあるが、筐体の音量設定次第では音割れが顕著になる。
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THE FINAL新曲である「2.14.13」では楽曲終盤に爆音で鳴る音があるのだが、それが「低スペックで頑張り続けた筐体の叫びにも聞こえる」といった意見、逆に籠もった音だからこそ味があると言う意見もある。
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またこの弊害で1曲のローディングに10~15秒ほどかかる。
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アニメーションの簡素化
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こちらも基板性能の問題だが、アニメーションと言うより画像のスライドショーのような感じになっており、表示も小さいため、プレー中はほとんど見えない。
III筐体版
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『初代筐体版』では「6thMIX」で行われたシステムの刷新が、こちらでは最後まで行われなかったため全体的な利便性においては『初代筐体版』に劣る点も。
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「低難易度」モードと「標準」モードがそれぞれ別モードのままで、「特定の曲を低(高)難易度譜面で遊ぶ」といったことができない。
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「低難易度」モード及び「通常」モードでは全曲自由選択を適用できず、序盤ステージの選曲に幾らか制限がかかる。
総評
バグもなく、新曲を始め、移植曲・過去作の復活曲も非常に数多いため、シリーズの最後を冠し「集大成」を謳うにふさわしい出来。
EXPERTランキングのデフォルトネームに「WE NEED MORE HIGH SPEC」と仕込むほど基板の性能不足に悩まされながらも、不可能と思われていた『beatmania III』の楽曲の移植を実現し、可能な限りユーザーへの感謝と愛を詰め込んだ本作は、稼働終了から20年以上経った今でも設置されている店舗もあるほど。
『THE FINAL』として終止符を打てたことは、最終作と銘打つことなくフェードアウトしていくゲームが増加していった音楽ゲームシーンの中では、それだけでも幸せなことであったのかもしれない。
サポートが打ち切られた現在でも現役で稼働しているゲームセンターもあるため、見かけた際にはBEMANIシリーズの初期を彩った名曲たちを一度プレーしてみるだけの価値は十分にある。
ただし、『初代筐体』の方はブラウン管モニターの経年劣化の問題があり、『beatmania III筐体』の方は基板電池の交換など正規手段でのメンテナンスがすでに不可能となっているため、いずれ撤去されることは免れないだろう。
そうした意味でも動いているうちに一度触ってみることをお勧めする。
最終更新:2024年06月30日 14:37