爆走デコトラ伝説 ~男一匹夢街道~
【ばくそうでことらでんせつ おとこいっぴきゆめかいどう】
ジャンル
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レーシング
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対応機種
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プレイステーション
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発売・開発元
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ヒューマン
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発売日
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1998年6月25日
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定価
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5,800円(税抜)
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判定
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バカゲー
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ポイント
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アサッテの方向に力を込めたレースゲーム 独創性がウケて大ヒット&シリーズ化
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爆走デコトラ伝説シリーズ 男一匹夢街道 / 男人生夢一路 / for WonderSwan / 男度胸の天下統一 / 男街道夢浪漫 / 男花道アメリカ浪漫 / 天下統一頂上決戦 / BLACK
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概要の花道 ~アンタも男なら歌ってみなさい~
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ヒューマンが1998年にリリースしたレースゲーム。ゴテゴテに飾り立てられた長距離輸送トラック、いわゆる「デコトラ」を操りレースをするという斬新な作品。もちろん荷物を運びながらのレースである。
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F1を題材にした『ヒューマン・グランプリ』などの硬派なレースゲームも制作している同社ではあるが、その独創性がウケたのか、35万本ものヒットを記録した。しかしなぜかヒューマンはその後倒産している。
システム海峡 ~嗚呼今日も特徴の風が吹く~
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高速道路を舞台にしたレースゲーム。各コースは実在の高速道路をモデルにしている。
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本作では東名高速道路・中央自動車道・名神高速道路・中国自動車道・九州自動車道・関越自動車道・東北自動車道・道央自動車道が選べる。
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既存のレースゲームに比べ、操作は極限まで簡略化されている。
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「シンプル操作」と「カスタム操作」二つの操作方法があるが、やることは基本的に常時アクセル全開で突っ走るだけである。
なお、どちらの操作方法でもシフトチェンジの概念は存在しない。
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シンプル操作にすると、プレイヤーがハンドル操作を行う必要は一切無く、トラックが勝手に車線に沿って走ってくれる。走行車線を変えたい時は、同じ方向に十字キーを2回押せばウインカーを出してから車線変更する。
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カスタム操作にするとハンドル操作が可能だが、本作のコースはコーナーと呼べるようなコーナーがとても少ないため、本作の段階では「普通のレースゲームと勘違いしたユーザーへの救済措置」という意味合いが強い。
が、シンプル操作では実質不可能な一般車の隙間を縫っての走行や、左右に連続するコーナー等でハンドル操作を最低限に抑えるテクニックが使用でき、更に方向キーを上に押している間はシンプル操作と同様に走れるため、突き詰めればカスタム操作の方が有利といえる。一応、頂上戦争モード(=タイムアタック)ではシンプル操作より良いタイムが出るようなので、極めてみるのも一興か?
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障害物である一般車をかわしつつ、ライバルより速くゴールできれば勝利。ライバルに負ける、制限時間切れ、ぶつけすぎて荷物が全損する、のいずれかでゲームオーバー。
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メインである全国制覇モードでは、勝利するとBPというお金がもらえる(荷物が損壊しているとその分さっぴかれる)。このBPを消費してトラックを改造していく。
荷物は数種類のバリエーションがあり、種類によって得られるBPが異なる。得られるBPの多い荷物には「壊れやすい」「重さでトラックの性能が落ちる」等のマイナス要素がある。
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実際プレイしてみれば求められることは単純だが、コースは何処も高速道路。当然一般車両も走っている訳で、チンタラ走っているそれらに対してホーンを鳴らしてスピードを上げるよう促したり、外線マイクで怒鳴りつけて車線を変えさせる必要も時としてある。一般車やライバルのトラックをどうやり込めるかを考える戦略性も、皆無とは言えない。
長所街道 ~向かう先は栄えある徒花~
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覚えることが少なく、非常にとっつきやすい。
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特にシンプル操作の場合、邪魔になる一般車を避けることぐらいしかやるべきことはない。
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かといって単調な内容というわけではない。「スリップストリーム」という要素があり、敵車の後ろに付くと大幅にスピードが上がる。本作ではこの補正が極めて大きく、後ろにいる方がスピードが上がりやすいため、終盤まで気の抜けないデッドヒートが繰り広げられる。
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先行する車は対戦相手に抜かされないために妨害を行うことになる。接触した場合、基本的に前方の車が有利なバランスになっているが、当然スピード面では後方の車が優位。もちろん抜かされたら立場は逆転する。
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一般車についても後の作品と比べて出現台数はやや多めで、各車両のスピード差もかなり大きく、油断すればすぐ追突する羽目になる。複数の一般車が車線をすべて塞いでしまう状況もザラにある為、公道を高速走行するならではの緊張感もある。
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トラックを「デコる」幅が非常に広く、自分好みの一台を生み出せる。
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荷台の絵をはじめとして、電飾、バンパー、キャブ部分、果てはホイールやクラクションまで選択肢はかなり多い。電飾リレーの発光パターンもいじれる。
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なお、どれだけいじろうが性能には一切影響はない。金の使い道は装飾オンリーである。
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荷台ペイントのデザインは本職のトラック工芸師である関口操氏が担当しており、本物さながらの迫力がある。ペイント用のイラストを自作する機能もあるので、絵心に自信がある人は自慢の一作を載せて走ってみよう。
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ちなみに関口氏はショップの店主としてゲーム中にも出てくる。
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レース中のBGMはなんと演歌。ある意味これ以上に「らしい」BGMもないのだが。
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ネタでもなんでもなく、作詞・作曲・歌唱すべてプロが担当したガチで聞ける良曲ばかり。しかもほぼ全て本作の為に作られた曲である。曲数も9曲と多い上、サウンドテストモードで自由に聞けると至れり尽くせり。
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発売年代を考えるとグラフィックレベルはかなり高い。敵車の造形も手を抜いておらず、非常に凝っている。
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各高速道路も実際の特徴をある程度再現しており、情景も走っている内に細々と変化していく。
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ストーリーモードにあたる「男の華道」がなにやら怪しい世界観を醸し出しており、一種独特な魅力がある。
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非常に古くさい感じの男の世界で繰り広げられるトラック勝負…といったところ。ストーリーはありがちな感じなのだが、どことなくのめり込む熱さはある。
短所の女 ~惚れた女ならあばたもえくぼ~
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評価点の裏返しにもなるが、やることは非常に単純なので、奥は浅い。
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特にシンプル操作では、キー操作をろくにしなくていいのでなおさらである。
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多少運の要素が絡むとはいっても、レースは先行している側が圧倒的に有利なことに変わりはなく、少しでも前に出ていればほぼ確実に進路妨害が成功するため、特に二車線の道路での駆け引きは無いに等しい。プレイヤーが妨害された時も同じ事が言え、スリップストリーム等を活用しても追い抜けるかどうかは運。
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荷物が全損すると敗北…なのだが、荷物は丈夫なものが多く、むやみにぶつけまくらない限り全損する事はまず無い。
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ホーンとボイスの効力がいまいち弱く、無反応な一般車も少なくない。ボイスは変更先の車線を左右で選べないため、三車線の中央で鳴らした場合、意図した方向とは逆の車線に移ってしまう事もある。
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後の作品では効き目が強くなったり、ボイスが左右の方向別になるなどして、この問題は解決されている。
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ローディングの頻度が高め。ステージ中の処理落ちが少ないのはありがたいが、ショップに入るだけでもロードが入るなど鬱陶しい部分がある。
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キャラクターのイラストが全体的に古臭い。雰囲気作りだから仕方がないにしても、「すさまじい美女」と表現されるシナリオモードのヒロインですら微妙なヒラメ顔であんまり可愛くない。リアル調のイラストと見れば質は悪くないのだが…。
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関口親分はなぜか1人だけ実写。そのため若干浮いている。実写なら実写でキチンと取り込めばいいのにトリミングすらしていないため、浮きっぷりが強い。
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トラックの性能は高速域・中速域・低速域の3つに分かれているが、本作は全開走行が基本な上に、「頭脳対決」を除く全てのレースが一定速度で走行しながらスタートする形式のため、停止状態からの加速力に影響する低速域の強さはほぼ意味を成さない。
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プレイヤーが選べるトラックは5種類あり、それぞれ低・中・高速域のいずれかの性能に長けている。このうち1台のみ存在する低速型のトラックを選び、難易度を上げた状態で全国制覇モードを開始してしまうと、スリップストリームを駆使しても追いつけないという事態まで発生する。
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初期作品なので仕方のない部分もあるが、改造において不満点が多い。
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先述の通り確かに改造できる箇所はそこそこにあるが、パーツ類は「モダン系」と呼ばれる近代的なデザインのものばかりで、映画『トラック野郎』シリーズに登場するような「レトロ系」のトラックを作ることはできない。バリエーションに関しても、電飾リレーやアンドンを多用したパーツが大多数を占め、メッキパーツ主体のドレスアップはほぼ不可能。
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パーツの形状や数も種類によってバラつきが酷く、特にハシゴに至っては選択肢が3種類しかない。かなり目立つパーツでもあるので、この選択肢のなさは痛い。
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色を変更できるアンドンはすべて単色塗りつぶしで、彩色部位のパート分けも粗い。
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敵車両と比べるとパーツのバリエーションが狭く、荷台前の装飾パーツに至っては存在すらしない。
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ここまで記述した短所は後発作では大きく改善されている。前述の通り、初期作品ゆえの作り込みの甘さと割り切るのが賢明だろう。
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アンドン部分の色は昼と夜でかなりの差があり、夜になって発光するとかなり薄い色になってしまう。赤のアンドンは色のバランスが特に劣悪で、昼は赤茶色、夜は桃色にしか見えない。
反面、電飾リレーは原色がそのまま明るく光っているような色であり、色にこだわるとより目立ってしまう。
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一度荷台にペイントを入れてしまうと、二度とノーマルの荷台には戻せない。実車では荷台に直接絵を描くので付け外しできる方がおかしいのだが、そんなところで中途半端にリアリティを出されても…。
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当たり前と言えば当たり前だが、十字キーで操作してイラストを描くのは常人には非常に難しく、オリジナルペイントはなかなか活かせない。機能そのものはそこそこ充実しているが、関口親分のような美麗なペイントを描くのはかなり困難だろう。
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他にも、プレイヤーのトラックがやや縦長だったり、安全窓が運転席と助手席の両方についている(実際は助手席側のみ)など、初期作故に浮き彫りになる難点がここそこにある。
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トラックは最初に選んだ1台しか所持できず、途中で乗り換えることもできない。別のトラックを使いたい時は、また一から全国制覇モードを始めなければならない。
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後の作品においては、スパイク系作品ではトラックの売買と複数台の所持が可能となり改善されたが、ヒューマン系作品では一度選んだトラックは後から変更できない仕様のまま、改善されなかった。
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パワーアップシステムが不親切。
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全国制覇モードにて、一定の条件を達成した状態でショップに行くとイベントが発生し、自車の低・中・高速域のいずれかの性能を向上させることができる。パワーアップは最大で3段階あり、上の段階になるにつれて要求される勝利回数と注目度も増大する。
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パワーアップの条件について、説明書では「どうしても勝てない時は関口親分に相談してみよう」といった趣旨でぼやかされているが、実際には「一定以上の勝利回数+一定以上の注目度」であり、負け続ければパワーアップされる訳ではない。
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勝利回数だけでなく注目度も条件に含まれているため、ノーマルもしくはそれに近い外観のまま最大までパワーアップする事は不可能。
もっとも、これに関してはパワーアップ後に元の外観に戻せばいいだけの話であり、そもそも外装のデコレーションが売りの本作で、ノーマル仕様のままゲームを進めるプレイヤーがどれだけいるのかという疑問もあるが…。
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ショップに行かなければパワーアップイベントは発生しないため、条件を達成してもショップに顔を出さぬまま次の段階の条件を達成してしまうと、前の段階のパワーアップは完全にスルーされ、その分パワーアップの回数が減少してしまう。
最高段階までパワーアップしていない状態でのクリアは非常に厳しく、難易度設定等によっては勝てずに事実上詰むことすらあるので、用が無くともショップにはこまめに顔を出すべき。
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続編ではパワーアップイベントが強制的に発生したり、ゲームが進むにつれてイベントを挟まずに自動的に性能が向上するなどして、この問題は解決されている。
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対戦モードである「頭脳対決」の存在意義が怪しい。
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「2人同時に操作することはできません」と説明書に明記されているとおり、人間vsCOMの対戦しか出来ない。
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ではなぜ対戦モードと説明書にも書かれているかというと、COMの思考パターンを人間が設定することで代わりに走ってもらうというモードだからである。前代未聞の代役前提の対戦モード。
パッケージ裏には当たり前のようにプレイヤー人数1~2人と書かれているのだが、これでは詐欺同然である。
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なお、1Pと2Pが両方ともCOMの思考を設定して一切操作せずにコンピューター同士の対戦を鑑賞することも可。斬新ではあるかもしれないが、ゲームとしては空しさが募る。
総評の街 ~眠らぬ街の夜は暮れゆく~
全体的にニッチな対象を狙った感はあるが、本能的に「派手派手しい悪」に引かれる習性がある男子という生物の感性を直撃する方向性で、大ヒットを記録した一本。
ゲームシステムは独自性こそあるが、少々浅い印象は否めない。しかし、ゲームデザインの方は非常に良くまとまっており、最近ではなかなかお目にかかるのも難しいデコトラの世界観がよく表現されている。
初期作だけに荒削りな部分も多いが、シンプルなレースゲームを遊びたい、という人には十分オススメできる佳作である。
余談の桜 ~散りゆく花は次代に咲き誇る~
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使用可能な車両の中には、ごくわずかながらトラックではない乗用車も登場する。頭脳対決で競わせれば「スポーツカーvsレーシングカー」というもはやデコトラでも何でもないバトルを繰り広げることも可能。
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なんと攻略本が2種類も出ている。片方は特徴のない普通の攻略本だが、もう片方はいきなり本物のデコトラの写真から始まり、実物のトラックに関する話題まで取り上げているというとんでもない代物であった。なお、攻略本としての利用価値は後者の方が上である。
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わかる人にはわかると思うが、本作は映画『トラック野郎』シリーズのあからさまなパロディである。同映画の登場人物や出演俳優をモデルにしたキャラが出てきたり、名物の喧嘩シーンをイベントに入れたりと、下手したら訴えられても仕方のないくらいに似通っているが、特に問題は無かったようである。
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続編『爆走デコトラ伝説2 男人生夢一路』ではパロディの度合いがさらに露骨になり、その上『トラック野郎』の主演俳優・菅原文太氏をイメージキャラクターとして起用(しかも氏はゲームにも声優として出演)するに至った。ここまでくると完全に『トラック野郎』のゲーム化である。
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ヒューマンの倒産後、本シリーズは正式に版権を継承した株式会社スパイク(現スパイク・チュンソフト)による作品(スパイク系)と、本作の開発スタッフが移籍先の別メーカーからリリースした作品(ヒューマン系)の二派に分かれて存続していくこととなる。
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本作の開発スタッフは、監修の関口工芸や演歌歌手を含めて大半がヒューマン系に流れたものの、挿入歌の作曲を担当した志倉千代丸氏はスパイク系に流れた。
最終更新:2024年11月14日 21:15