超兄貴
【ちょうあにき】
ジャンル
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横スクロールシューティング
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対応機種
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PCエンジン スーパーCD-ROM2
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発売元
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メサイヤ(日本コンピュータシステム)
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開発元
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メサイヤ(日本コンピュータシステム) WINDS
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発売日
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1992年12月25日
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定価
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7,200円
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配信
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プロジェクトEGG:2003年10月29日/440円 バーチャルコンソール 【Wii】2007年10月23日/800Wiiポイント(税5%込) 【WiiU】2016年3月23日/823円(税8%込)
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判定
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良作
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バカゲー
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超兄貴シリーズ 超兄貴/愛・超兄貴/超兄貴 爆烈乱闘篇/超兄貴~究極無敵銀河最強男~ 超兄貴~究極…男の逆襲~/超兄貴 男の魂札/超兄貴~聖なるプロテイン伝説~/零・超兄貴
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ストーリー
大銀河ボディービルコンテスト10連覇を果たした、ビルダー星の帝王にも不安があった。
母星の残有プロティンが、底をつきはじめたのだ。
筋肉こそ最高の美徳とする文化がため近隣の惑星は、無差別侵攻を受けていた。
この様子を天界で見ていたイダテンとベンテンは、これをよしとせず、侵攻を受けた星を巡りビルダー軍を駆逐し、
軍の築いたプロティン採掘プラントを破壊しつつ帝星を目指した!!
(全てOP原文ママ)
概要
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1992年の末に突如登場し、様々な意味で話題となったゲーム。
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マッチョな筋肉で塗り固められた世界観、あまりにも異質すぎるデザインにより、PCエンジン屈指のバカゲーとして名を轟かせる事になった。
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一人プレイ専用、全5ステージ(各ステージはいくつかのエリアにて構成されている)。
ゲームとして
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ゲームを始める前に、三段階の難易度選択と、自機をイダテン(男)かベンテン(女)から選択し、ゲームスタート。
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方向キーで自機を8方向に操作、Iボタンを押すとショット、IIボタンを押すとボムを撃つ。
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Iボタンを押しっぱなしにし、頃合がきた時にボタンを離すと、ドピュっと一撃必殺技の「メンズビーム(イダテン)、スプラッシュビーム(ベンテン)」を放つ事が出来る。深い意味は無いよ。
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いわゆる溜め撃ち扱いの攻撃で使用制限は無いが、ビームを発射する間に隙が生じ、危険を伴う事になる。またメンズビームは発射の反動で若干後方に下がるのでかわしたはずの弾に当たる場合もあるので注意が必要。
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メンズビームは一方型、スプラッシュビームは拡散型の攻撃を放つ。すべての敵を貫通して広範囲に攻撃を当てやすいメンズビームを持つイダテンの方が扱いやすいキャラだが、攻撃力はベンテンのスプラッシュビームの方が高く、密着して全弾当てた時のダメージはメンズビームの比ではない。
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IIボタンを押すと弾数制限がある広範囲に攻撃できるボムを発動できる。
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爆風に弾消し能力はあるが自機が無敵になるわけではないので敵の体当たりなどはしっかりかわす必要がある。
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またレーザー、ウェーブなど一部消えない敵の攻撃も存在する。
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時折敵が落とすアイテム「プロテイン」を取る事により、威勢の良いボイスと共にパワーアップ(本作ではビルドアップという名称)する。
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ステージを進めていくと、お供キャラ(オプション)である、アドン、サムソンが現れ、自機の上下にくっつく。
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アドン、サムソンには自機同様に当たり判定が存在し、数発の被弾には耐えられるが一定以上のダメージを受けると「兄貴ィ…!!」の断末魔の叫びとともに撃沈してしまう。
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また、アドサムは個別でパワーアップするので、自機だけではなく、彼らにもプロテインを与えなければ強くならない。
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IIボタンを押しながらIボタンを押すとホーミングアタックを発動、オプションがオーラを放ち体当たり攻撃をする。
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稀にアドン・サムソンの代わりに、メサイヤの看板(?)キャラである「うみにん」がオプションに付く事がある。
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ただし、プロテインを食わせてもうみにんは全くパワーアップしないため、性能としては彼らの完全下位互換のハズレ扱い。
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ベンテンの場合、上記2種とは別に「天使」が出現することがあるが、外見的なインパクトが薄いためあまり存在感がない。
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ショットの性質も他のオプションとは異なり、放物線状に落下していくショットを撃つ。しかしながら今作の敵配置とは相性が悪く、お世辞にも使いやすいとは言い難い。
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後述の漫画版においてはイダテンがアドンとサムソンをつき従えていることもあってか、ベンテンはこちらの天使のオプション(名前は「ミカ」と「エル」。ゲームよりも濃いデザインに味付けされていた)をどっかよくわかんないところから召喚して従えていた。
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いずれのオプションも、溜め撃ちはメンズビームで固定。
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イダテン、ベンテンは敵および敵弾に当たると一発でミスになり、エリアの最初に戻り復活する。ボス戦の場合はボスからやり直しとなる。オプションが無くなり、ショットが一段階パワーダウンするので、ミスする場所によっては復活が困難な場合もある。
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自機の移動速度はセレクトボタンによっていつでも自由に変更可能。ボス戦などで速すぎると思った場合は、移動速度をこまめに調整するだけで大分楽になる。
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残機が0になると5カウントとともにアドン&サムソンがポージングをとりながら登場、カウント0になると「もう駄目だぁ~!」という声とともにゲームオーバーとなる。
評価点
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筋肉とよく分からん世界観。
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何よりも筋肉押し。イタデン、アドン&サムソンはもちろん、敵キャラだって筋肉。ビーナス誕生もとい筋肉親父誕生のシェル・ジ・アニキ、逆立ちマッチョのメンズビキニなエル&トポ。こんな感じのザコやボスも筋肉まみれ。
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しかしながら今作の魅力は筋肉だけにあらず、筋肉以外にもシュールなキャラも山盛り。ちょんまげの天狗、手足の生えたサンマ、きかんしゃトーマス…もといヤエモン、革ジャンリーゼントのプレスリーな潜水艦……などなど。
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ちなみに女主人公のベンテンはややセクシーな程度でまともなデザインだったり。ただ、やっぱり超兄貴のキャラクターというべきか、プロフィールの数値はメチャクチャ。
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葉山宏治氏が手掛けた、インパクト抜群のBGM。
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「ドイツ人ジャーマン」「ラブミープレスリー」「あこがれのマッチョダンディー」「仁義なき兄貴」等々…これらは一部の楽曲のタイトル。タイトルもアレだが、中身も当然何かアレな曲。葉山宏治氏の作曲したBGMが、本作のなんとも言えない世界観の味をさらに強化しているのだ。
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勘違いの無いように書いておくと、曲の評価は高い。一回聞いたら二度と忘れられないインパクトと中毒性を持つ。世界観に負けないほどぶっ飛んだ曲揃いということでもあるが。
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この作品がきっかけとなったのか、葉山氏は後に
ゲームミュージック界の兄貴
の異名を得ることとなる(ライブでは盛大な「兄貴コール」で迎えられたとか)。
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ほどよい難易度と特色あるステージと、中身は意外に真っ当なSTG。
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難易度は三段階。何度か練習すればクリアできるレベル。
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各ステージもそれぞれテーマがあり、キャラや障害物の配置などが一工夫されてる。単調感のない作り。
問題点
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全5面とややボリューム不足。慣れてくると、あっさり終わってしまう感じが否めない。
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初心者はやや戸惑う面も。
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オプションであるアドン&サムソン他にも耐久力やパワーアップの概念があるため、オプションへの被弾を避けたりパワーアップさせようとして自機に当たってしまうというのは初心者にありがち。
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初見殺しの多さや当たり判定の分かりづらさ
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ボスの攻撃にとにかく初見殺しが多い。また見た目や大きさのインパクトがあるのは良いのだが、どこが弱点でどこまでは当たってもいいのかという情報が非常に分かりづらい。
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そのくせ撃破するときは一瞬にして落ちる事もザラで、余計に攻略の不透明さが目立ってしまっている。
総評
見た目のイっちゃってる具合とは裏腹に、ゲームとしては多少クセはあるもののかなりまともなシューティングであり、一度遊んでみればすんなり入り込める内容と言える。
外見が毒電波満載のゲームなので「どうせ見た目通りのクソゲーだろう」と思われがちだが、シューティングとしての出来は良作ぞろいのPCエンジン作品の中でも決して見劣りしないレベル。
現在ではプロジェクトEGG(Windows)、バーチャルコンソール(WiiU)などで配信されており、千円足らずで購入することができる。
これ以外にも、2020年3月19日発売の『PCエンジン mini』にも本作は収録されており、2024年12月には続編の『愛・超兄貴』とのカップリング移植『超兄貴COLLECTION』もNintendo Switchで発売している。
色物と敬遠せずにプレイしてみれば、その独創的すぎる領域へと貴方を誘ってくれるであろう。
余談
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実はメガドライブにてリリースされた薄幸の良作シューティング『ジノーグ』をベースにした作品である。ステージクリアBGMもジノーグのそれをアレンジしたものである。
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人が自機であったり顔の付いた敵デザインなど関わりは強いが、ジノーグが不気味さや気持ち悪さを強調したものであるのに対し、超兄貴はカラッと明るくユーモアのあふれるもので方向性は正反対である。
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またジノーグはグラディウスとスクランブルを足したような地形があったが、超兄貴は最終面を除きほぼ地形を気にしないで進めることができる。
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プレイ感覚自体はメサイヤが以前出したエルディスに似ている。
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ゲームよりも本作のサントラCDの方が高売上だったという逸話がある。葉山宏治氏は引き続き、後の超兄貴シリーズも手がける事になる。
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本作のサントラ『超兄貴~兄貴のすべて~』はNECアベニューより1993年に発売、98年に日本コロムビアより再販された。再販版は2022年現在もなお廃盤になっておらず新品で購入可能。
超有名タイトルでも無い限りゲームのサントラは廃盤になるのが早いことが多い中、20年以上のロングセラーとなっているのはもはや伝説級である。
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これも間違われやすいのだが、
サントラに収録されている人気曲の1つである「兄貴と私」はゲーム中では使われていない曲である。
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登場キャラクターの「アドン」「サムソン」等の元ネタは本サイトではあまり大っぴらに表現するのはアレなので割愛するが、今風でいえば「アッー!」な雑誌である。
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加えて、彼らが身につけている物も「手枷・足枷」「貞操帯」という、投獄されていたことを考慮してもなかなか危なげ。
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後述の漫画版においてこちらは「凶悪に重いウェイト」ということになっており、ボ帝との最終決戦においてそれらを解放し、
悟空さんの様なパワーアップ
(見物していたサブキャラの解説によると、「もはや異様なまでに無敵」な状態)を行ったりしていた。
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登場を重ねるにつれ、デザインも「服装がリスト&アンクルウェイト+ビキニパンツに変更」「サムソンは色白の肌、アドンは褐色の肌になり見た目がわかりやすくなる」という風に変化していった。
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いかにもな見た目と後のシリーズ作品のパッケージ等にデカデカと登場することも多いので勘違いされがちだが、この作品における兄貴とは主人公である「イダテン」のことであり(ちなみに「ベンテン」は姉さん)、彼等はあくまでも
ヤケにたのもしい舎弟
なのでそこのところ留意されたし。
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「まともなデザイン」と評したベンテンだが、どういうわけか続編が出るたびにキャラデザインがコロコロと変わっていった。
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対照的に、相方のイダテンはシリーズを重ねてもデザインが大幅に変化するようなことはなかった。
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当時のPCエンジン雑誌によれば、最初期の仮タイトルは「超兄貴」と書いて「スーパーアニキ」と読ませる予定だった。
また、開発途中にタイトルが「超裸漢マッスルシューター」に一時変更されていたことがある。スタッフ曰く「上層部の意向でタイトルが変更されそうになったが、開発部のクーデターにより超兄貴に戻った」とのこと。
タイトルを変更しようとした上層部の意向もわからなくはないが、代替タイトルが「超裸漢マッスルシューター」であるあたり上層部も大分アレだったと思われる。ゲームの本質を上層部がきちんと理解していた、と解釈もできるが…。
にしても何なのだろう、このどうでもいいエピソードは
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続編に『愛・超兄貴』があるが、こっちは自機がサムソン&アドンになっていて、「ポージングを決めると敵を倒せる」という、ゲームとしてもかなりクセのあるシューティングでアクが強くなっている。
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この『愛・超兄貴』をもって、メサイヤはPCEソフトのリリースを終える事になる。
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本作のシステムを引き継いだ続編としてはPSでリリースされた『超兄貴 ~究極無敵銀河最強男~』とそれの移植にあたるSS版『超兄貴 ~究極…男の逆襲~』があるが、登場キャラが全編実写取り込みという代物。
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しかも、アドンとサムソンのモデルを演じているのは日本では著名なボディビルダーである小沼敏雄氏というだけあって、当時一部のボディビルダーファンの間でも話題になった。
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以前はこういった「奇抜な設定の良作」もひっくるめて「クソゲー」と呼ぶ傾向があった。
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近年では海外のゲーム投稿者に受けており、実況動画では様々なプレイヤーが驚愕したり目を丸くしたりしている様が確認できる。
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知る人ぞ知る名作だからか、CSで放送されているゲーム番組『ゲームセンターCX』や『東京エンカウント』でも取り上げられた。
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PCエンジンではスーパーシステムカード専用のゲームを起動する際、旧システムカードを挿しているとカードのバージョンが違うという警告画面が表示される。
本作でのこの画面は「覆面頭巾をかぶったマッチョが両腕を上方に掲げるイラストの横に、手書き文字で『カードが ちがいまっする』と書かれている」というもの。
この突拍子もない一発ネタのインパクトにより、以降バージョン違いの警告画面の代名詞としてPCエンジンユーザーの間で語り継がれていた。
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ソフトが悪いわけではないのでこちらで取り上げるが、大ボス以外のステージ移動でロード画面を挟まずに行っている影響なのか、ロードの遅い初期CD-ROM²などで遊んでいるとBGMが流れなかったり途切れたりすることがある。タイトル画面等は問題なく再生されるので、シームレスなロードを行っているのが原因だと思われる。
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ハード側の問題なので、勿論移植版では問題なく再生される。音楽をしっかり聴きたい場合は移植版をお勧めする。
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『ゲームセンターCX』で有野氏が今作に挑戦した際はDuoを使用していたが、挑戦中いきなり中ボスが登場しなくなり、色々ボタンを押している間にソフトリセット(RUN+セレクト)をしてしまったというなんとも悲しい一幕があった。その後もコンティニュー画面でフリーズするなど本体の不調が続き、最終的には本体の熱暴走のため挑戦中断を余儀なくされた。
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その時にDuo本体のCDトレイ蓋の透明な部分に丁度「超兄貴」のCDの印字が入り笑いが起こったが、挑戦の中断はやはり精神的にダメージがあったであろう。これから今作に挑戦する方は、短期決着を心がけて。
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1993年には「月刊少年キャプテン」(徳間書店)にて漫画版が連載された。作者は田丸浩史氏。
大まかなストーリーは一応ゲームに沿っているが、主人公はイダテンに(顔だけ)そっくりの木こり「ジョーイ=デマイオ」(初登場時はイダテンに勘違いされてもおかしくない様なマッチョな体型であったが、物語が進むにつれて明らかに貧弱な身体になっていった。作者も直し作業中に「うわ 今と全然ちがうッ!!?」とコメントを入れてしまったり、物語中でもネタにされるくらいに…)で、敵から逃げていたイダテンは深手を負っていてその木こりの目の前で死亡。それを知らないアドンとサムソンに「兄貴」と慕われて巻き込まれていくという、第一話からなんともハチャメチャな内容になっている。ちなみに主人公の名前は作者である田丸氏の敬愛するヘヴィメタルバンド、Manowar(マノウォーと読む。ライブの音のデカさでギネスに登録されたこともある世界一男らしいバンド)のベーシストである「ジョーイ・ディマイオ」からとられていると思われる。
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オリジナルキャラの登場も多いが違和感なく溶け込んでおり、ゲームに登場した敵キャラも上手く活躍(?)する展開も多い(ちなみにコンテニュー時のマッチョマンカウントダウン&「もう駄目だぁ~!」も地味に再現されていたりする)。田丸氏の作品らしくノリの良いギャグも上手く噛み合ってギャグ漫画としてもなかなか出来が良いと思われる作品となっている。好評だったのか「完璧版」、更に「FUG(ファイナルアップグレード)版」と増補されて再販されている。
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ちなみにこの漫画のオチ
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覚醒した様なイダテン(偽)がボ帝(ラスボスであるビルダー星の帝王)の技をかわし、必殺技を決めるのかと思いきや、ボ帝のパンチで一蹴されて終わるという
まさかの敗北エンド。
ギャグ漫画なので湿っぽい終わりにはなっていないのが救いだが…。
増補版に収録されたその後の展開でもうみにんを雇ってボ帝を暗殺しようとしたりする等、主人公としてどうなのかという行動を堂々と行ったりしていた。こっちもボ帝の優しさに触れた(ボ帝は酔っ払ってうみにんを美少女と勘違いして心優しい態度で接した)ことでイダテン(偽)一味を一蹴して依頼を取り下げられてしまったので失敗に終わった。うみにん曰く、愛の力はMUGENDAI(ムゲンダイ)だッ!!!
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今作のプレイ動画。上記のカードが違いマッスルやゲームオーバーシーンもあり
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最終更新:2025年01月24日 17:09