学校のコワイうわさ 花子さんがきた!!
【がっこうのこわいうわさ はなこさんがきた】
| ジャンル | アドベンチャー(インタラクティブムービー) |  
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| 対応機種 | プレイステーション セガサターン
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| 発売元 | カプコン | 
| 発売日 | 1995年8月11日 | 
| 定価 | 4,980円(税抜) | 
| 判定 | ゲームバランスが不安定 | 
| ポイント | 子供でも楽勝なアドベンチャーパート 大人でも厳しいミニゲームパート
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| 学校のコワイうわさ 花子さんがきた!! PS / SS / DS
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概要
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フジテレビ系列「ポンキッキーズ」内で放映されていた同名アニメの初のゲーム化作品。内容は、画面内の怪しい場所を探りながら進めていくオーソドックスなアドベンチャータイプ。アイテムは常に自動使用される。
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花子さんには94年版・2010年版・2014年版の3シリーズが存在するが、本作は1作目の94年版のゲーム化である。
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セガサターン版が同時発売されており、ミニゲームの難易度などが異なるらしいが、この記事ではプレイステーション版について解説する。
 
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ちなみにスタッフロールはない。このため、花子さん以外のキャラクターの担当声優などは一切不明である。
物語
ある日、「自分は花子さんに会ったことがある」と嘘をついたヒロシくんは、放課後、花子さんを呼び出そうと公衆電話に行き、花子さんを呼ぼうとしたが、
花子さんの電話番号をしらなかったため、出鱈目に「0(ゼロ)」ばかりの電話番号をかけてしまい、悪霊大使達の封印を解いてしまう。
日の出(5:00)までに霊界とこの世を結ぶ門を封印しなければ、この世は悪霊界にされてしまう。それを防ぐには学校中に散らばった7つの鏡の破片を集め、復活させなければならない。
ここから彼らと花子さんの大冒険が始まる。
(Wikipediaより)
問題点
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子供向けゲームに突っ込むのも野暮ではあるが、子供向けであることを差し引いてもシナリオの練りが甘い。
    
    
        | + | 以下シナリオ終盤までのネタバレ含む | 
パーティはヒロシ、マミ、ノブヤの小学生3人組だが、ゲーム的にもシナリオ的にも3人いる意味はほとんどない。
3人分かれての行動も、3人で協力して何かを成し遂げる場面もない。そもそも話し合って方針を決めることはおろか、メンバー同士での会話が皆無。また、それぞれの個性も希薄。ノブヤがさらわれて一時パーティから外れるが、それで行動に制約がかかったりすることもない。
3人は花子さんからアップリケのパーツを一つずつ渡されており、ピンチになるとこれを合体させて花子さんを呼び出すのだが、わざわざ分けておく意味がよくわからない。よりにもよって前述のノブヤが誘拐されるシーンで花子さんを呼び出せなくて大ピンチに陥っている。いざという時の保険のはずなのに本末転倒である。大魔王シャザーンやウルトラマンエースじゃないんだから…。
 
基本的に「鏡の欠片を探す→悪霊軍団に襲われる→花子さん呼び出す→悪霊消滅」のワンパターンの繰り返しで、花子さん召喚時のムービーも全く同じものを何度も見せられる。子供達は悪霊が出現するとおびえるばかりで自ら立ち向かうことは一切ない。
この悪霊軍団の面々が非常に安っぽいB級ホラーめいた面子ばかりで、しかも大抵出現と同時に花子さんに退治されるのでほとんど印象に残らない。見た目は個性的なくせに「ウガー!」と吠えかかってくるばかりでやることも単調。原作はどちらかというとしっとりとした怖さなので、明らかにアレンジの方向性を間違えている。
展開がワンパターンに見えてしまう原因として、原作はポンキッキーズの中の1コーナーという扱いであり、毎回登場人物や舞台が異なるオムニバス形式のシナリオだったのに対して、本作は『同じ登場人物が、同じ舞台で、同じような展開を繰り返す』という形になってしまっており、ほんの数分前に見たのと同じシナリオが繰り返されているという印象が強くなってしまっている。
 
テケテケ、トンカラトンといった原作のキャラクターも登場するが、なぜか全員味方である。
ユーモラスでおどけた性格のテケテケはともかく、トンカラトンは遭遇するだけで命に関わる怪異であって、いわば人間の天敵なのになぜ3人の味方についているのか疑問が残る。しかもその理由もハッキリとは説明されない。普通に悪霊軍団の一員として出せば良かったのでは…?
無理矢理解釈するなら、偽トンカラトン(前述のノブヤをさらった犯人)の存在に怒って…というところだろうが、やはりうやむやに終わる。
また、「世未さん」という花子さんをライバル視しているゲームオリジナルキャラクターが登場するが、原作にはすでに花子さんのライバルキャラ「ヤミ子さん」がいるのに何故わざわざオリジナルキャラを用意したのか…。
 
終盤は鏡の欠片の隠し方がやたら雑になってくる。序盤は謎を解いて悪霊の居場所を突き止めて、といった流れがあるのに…
特に5枚目。体育館に行ったら床に落ちている。謎解きもミニゲームも初見殺しの罠も全く無い。なお、このとき正体不明の妖怪達が花子さんのオープニングテーマに合わせて踊る謎のダンスを見せつけられる。ユーモラスな動きなので悪霊軍団のメンバーではなさそうだが…
 
最終盤、悪霊大使との決戦の展開もよくわからない。
巨大化(いきなり)した悪霊大使に対抗するため鏡を完成させるのだが、その上に花子さんのアップリケと世未さんのリボンを乗せてみんなで祈ると、なぜかアップリケとリボンが金色の槍に変身、それを悪霊大使に投げつけると悪霊大使は滅びて…という支離滅裂な展開。鏡の意外な使い道はもちろん、みんなで祈る行為、金色の槍、何から何まで唐突に事が運ぶのでこちらは置いてけぼりを食らう。
ちなみにその場にいる「みんな」にはテケテケとトンカラトンも含まれる。足しかないテケテケと包帯グルグル巻きのトンカラトンが小学生含めた一団と手を組む様は実にシュール。というかよく見るとテケテケが逆さまになっている。
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アドベンチャーとして見ると、基本的に罠と呼べる物が存在せず、難易度はかなり低い。唯一、偽トンカラトンにからんでゲームオーバーになる罠は存在するが、時間切れ以外でのゲームオーバーはここのみ。
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気づいてしまえば楽勝な謎解きばかりなのに、ヒントが少なめなのでイライラすることがある。基本的に一つの謎解きが他のフロアに派生することがないのが救い。
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当然のことながらバックログ機能などは未搭載。セーブは章の切れ目でしかできない仕様なので、最悪戻って聞き直せるが。
 
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謎解きは一本道で分岐などはない。再プレイするほどのモチベーションは保ちづらいだろう。
 
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一方で全5種類のミニゲームは非常に難易度が高い。
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加えて、明るい色調とBGMがゲーム全体の雰囲気からやや浮いている。息抜きともとれるが、ホラーゲームに息抜きがいるかというと…。
 
    
    
        | + | ミニゲームについて | 
水よ静かに流れよ
最初のミニゲーム。幽霊が4つの蛇口を開けていくので、対応するボタンを押して閉じていく。お手つきは3回まで。
まずまずの難易度。フェイントがかかるのでワンテンポ遅れてボタンを押すのがコツ。
 
霊界縄をつくれ!
16枚のパネルを組み合わせて幽霊を捕まえるための霊界縄を完成させる。
単なる絵合わせパズルなのだが、枚数が多く正解でないのに繋がるパーツも多いので結構難しい。
そのためにヒントがとある場所で見られるのだが、パネルを全て集めた時点で強制的にゲームスタートし、ギブアップなどもできないのでヒントを覚えていなかった場合、手探りで進めることになる。
 
テケテケをつかまえろ!
最難関。ここで詰まった人は数多くぶっちゃけ直接対峙する場面もない悪霊大使などより、よほど手強くて印象に残る。実質テケテケがラスボス。
11カ所のマスとそれを繋ぐ道があるボード上に3人とテケテケが配置される。人間とテケテケに分かれて互いに一マスずつ進めていき、テケテケの進路を全てふさぐとクリア。だが成功条件と失敗条件がわかりにくく、始めはなぜ逃げられるのかなかなか理解できない。
人間側は右向きか上下方向にしか動けず、後ろに下がれない制約があるのだがこれが曲者。うまく追い詰めたと思ったら、一手足りず逃げられたりは日常茶飯事。
テケテケの初期配置はランダムであり、AIの挙動が安定しない。一応何度も試せば狙いの配置になるが、同じ手を打ったのに違う方向にテケテケが逃げることがあるので決まった解法が通じにくい。
コツとしては右端に追い詰めるのではなく、上下に向かわせると成功しやすい。
 
真夜中のスイマーズ
幽霊とリレー形式で水泳勝負という意味も意義もよく分からないミニゲーム。場外のメンバーがボールを当てて妨害できるが、勝負としても幽霊としてもそれでいいのだろうか?
3人のキャラクターにそれぞれ個性がある珍しいミニゲーム。操作するのは泳者ではなく場外のキャラクターで、スタミナを消費して加速する応援、速度を落としてスタミナを回復させる浮き輪、幽霊に当てて妨害するボールの3つのアクションを駆使して戦う。
操作も独特でなかなか面白いのだが、やはり相手が速く泳者により戦略を変える必要もあるので難易度は高い。「テケテケをつかまえろ!」に比べたら、勝ち筋がわかりやすいのでまだマシだが。
 
最後の大決戦!
大仰な名前だが、上から落ちてくる鏡の欠片を枠を回転させてはめ込むだけという完全な名前負けミニゲーム。
枠の判定が厳しめだが、落ちてくる順番が完全固定なこともあり、そこまで難しくはない。
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さほど重要ではないが、トイレに入ることは出来ない。トイレの花子さんとアニメの花子さんは別物ではあるが、それでも花子さんを名乗るゲームでそれはどうなのだろう…。
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花子さん抜きにしても、学校といえば怪談話の宝庫なのだが、動く人体模型だとか勝手に鳴るピアノだとかの定番系の怪異は皆無である。
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そもそも悪霊軍団以外の敵がほとんどいないので、ホラーと名乗れるかは微妙…(肝心の悪霊軍団もムービーであっさり倒される)。
 
 
評価点
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薄暗い色調と不気味なBGMで表現された夜の校舎の雰囲気は非常によくできている。
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ただ、前述の通りいきなり幽霊などが出現するわけではない。悪霊軍団の面々はイベントでしか出ず、出ても全て花子さんが退治してしまう。
 
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花子さんのアニメ合計4本の鑑賞と、フロッピーディスクを集めて怖い話を読むことが出来る。
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花子さんのアニメは原作をそのまま用いているため、伊武雅刀氏の独特な語り口もそのままである。ちなみにみんなのトラウマ「さっちゃん」も収録。
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怖い話は所詮小学生向けレベルなのであまり期待できるものではない。とはいえオマケとしては十分。
 
総評
ゲームとしてはかなりバランスがおかしいが、雰囲気はなかなか。登場するキャラクターこそデフォルメされていて可愛いが、1人称視点で移動する夜の学校のグラフィックは写実的で不気味。BGMも不気味。 強いてい言えば、この夜の学校を移動している時が一番怖いかもしれない。 軽めのホラーゲームとしてはまずまずの完成度である。
花子さんシリーズは人気の割に長編アニメが作られたことがなく、ムービーの量も多いことから本作を一種の劇場版のようにとらえる向きもある。
余談・その後の展開
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本作は後に逆転裁判シリーズのディレクターとして注目されることになる巧 舟(たくみ しゅう)氏がカプコンに入社してから初めて手掛けた作品でもある。
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これを考慮すると、本作におけるシナリオの練り込みの甘さは新人クリエイター製故に仕方の無かった点ではあるのかも知れない。
 
最終更新:2023年02月10日 00:07