山村美紗サスペンス 京都龍の寺殺人事件
【やまむらみささすぺんす きょうとりゅうのてらさつじんじけん】
ジャンル
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アドベンチャー
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対応機種
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ファミリーコンピュータ MSX2
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メディア
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【FC】2MbitROMカートリッジ
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発売元
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タイトー
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開発元
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トーセ
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発売日
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【FC】1987年12月11日 【MSX2】1987年12月11日
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定価
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【FC】5,500円(税別)
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判定
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なし
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ポイント
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有名作家が手がける推理ADV 無理矢理アナグラム
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山村美紗サスペンスシリーズリンク
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概要
推理作家・山村美紗がシナリオを担当したミステリーADV「山村美紗サスペンスシリーズ」の第一作。
同氏が執筆するミステリーサスペンスの1つ「キャサリンシリーズ」を根底としたオリジナルストーリーが展開される。
同作の主人公キャサリンも登場するが、主人公はあくまでプレイヤー自身であり、彼らはサブキャラクター的な扱いとなっている。また、シリーズレギュラーの狩矢警部も登場する。
ストーリー
新作ソフト「京都龍の寺殺人事件」の制作発表会とサイン会のために京都を訪れていたゲームデザイナーの主人公は、
サイン会の会場となる京都・竜安寺で発生した殺人事件の現場の第一発見者となった。
更に自身が開発した新作ゲームのシナリオと殺人現場の状況が酷似していたことから容疑者とみなされてしまう。
アメリカ副大統領の娘であり、数々の事件に首を突っ込んで解決してきた経歴を持つアメリカ人女性キャサリンと現場で偶然出会った主人公は、
彼女の手助けを受け、自身にかけられた容疑を晴らすべく事件の謎にたちむかっていく。
特徴
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本作には日付の概念があり、調査がある程度進んだら主人公の部屋に戻ってそれまで集めた情報をまとめる事で日付が変わる。
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ミステリーADVで定番のコマンド選択式。コマンドはアイコンで視覚的に表現されている。
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人物の立ち絵は主に顔のアップで描かれ、絵のサイズが大きい。
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セーブはパスワード方式。カフェ・ド・ミサで「中断」コマンドを実行すると、山村氏似のマダムがパスワードを教えてくれる。
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基本的に名探偵キャサリンが推理をリードしてくれる。プレイヤーは関係者に話を聞いたり手掛かりを探したりして情報を集める助手的な役割を主に担う。
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アイコンの「キャサリン」は、カフェにキャサリンがいる時にのみ選択可能で、キャサリンが様々な助言を与えてくれる。
評価点
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シナリオ全般の出来
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下記のようなややこしい名前の問題はあれど、山村美紗が執筆しただけあり2時間ドラマのようなミステリーとしての出来はなかなか。
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最初の事件でダイイングメッセージが示されたり、一連の事件の中に密室殺人が含まれたり、尾沢家における遺産を巡る人間関係や血縁関係がストーリーに関係してきたり、といった推理小説定番の要素がふんだんに盛り込まれている。
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BGM
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切なさの漂うタイトル画面曲や、尾沢家で流れる哀愁感漂う曲、エンディングを迎えた際の安堵感ある曲や、物語の終幕を演出する穏やかなスタッフロール曲など、サスペンスドラマにふさわしい雰囲気溢れる曲がそろっている。
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顔グラ
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顔グラが大きく描かれている分しっかりと描かれており、元となった俳優によく似て出来も良い。
問題点
シナリオ面
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手がかりの為のギミックで人物名がややこしくなってしまっている。
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物語冒頭のダイイングメッセージでひらがな六文字が出てくるのだが、該当者が5人(おさわみなこ、おさわなみこ、こさわみなお、こなみさわお、みさわなおこの5人。)もいる上、ゲーム上の表記が全てひらがな表記なので読み辛く、非常にややこしい。
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全員がきちんとした役割をもって物語に絡んでくるものの、かなり強引なのは否めない。
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しかもこのダイイングメッセージは「上記5人の内の誰か」以上の意味はなく、作中でも殺害された人に連なる人間を調べていけば彼らは出てくる。その為、結局名前をややこしくしただけの存在になってしまっている。
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そのせいでスタッフも混乱したのか、エンディングのキャスト紹介で「こさわみなお」が「おさわみなお」と誤記されている。
システム面
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コマンドアイコンがモノトーンで描かれているので、やや視認性が悪い。
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またアイコンのマークの目や耳といった身体パーツがリアルに描かれていて見た目の印象が少々不気味。「考える」や「中断」は漫画調なのに…。
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コマンド選択がかったるい
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状況に応じて不要なコマンドを絞り込んで誘導してくれない上、選択肢の数も多いので難易度が高く作業的になりがち。
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人にアリバイを聞くという作業にしても『アイコンの「聞く」→ 誰に聞きますか?「人物名」→ 何を聞きますか?「人」→ 誰のことを聞きますか?「人物名」→ 何を聞きますか?「アリバイ」』と、これだけの数を経なくてはならない。
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カーソルを使ってグラフィックウインドウ内を調べるADVではお馴染みの謎解きが出てくるが、判定はシビアで詰まりやすい。
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判定が狭い場所で詰まってしまいクリアできなかった人も多い。
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また、このシビアな判定のせいでシナリオ進行がそのつど足止めされてしまうため、ストーリー進行のテンポは全体的にいまいちになってしまっている。
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バグやフラグミスが多い。
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例えば、「コマンドを実行してもテキストが表示されない場合がある」「パスワードを入力して再開するとプレイヤーの名前が変わる」など。中にはフリーズや詰みといった重大なものも多い。
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進行不能バグの詳細
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17日に尾沢家に行き、およねにみなこの写真を見せるとフリーズ。
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20日にヴィラみやこで「聞く→あたりのひと→さわお」を行わずに移動してしまうと尾沢家のみなおの部屋となみこの部屋へ行けなくなり進行不能になる。
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誤植や文章の区切りがおかしい点が目立つ。
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特に、誤植に関してはゲームの非常に重要な場面でやらかしており、ずっこけさせられる。
総評
愛憎もつれる人間ドラマや密室トリックといったミステリーサスペンスの王道を行くシナリオを搭載し、FCソフトとはいえ「山村美紗」のブランド力をきっちりと作品に活かし、小説同様に謎解きを楽しめる質の高さをきちんと備えている。
いっぽう、肝心のシステム面では全体的に粗が多く不親切で、進行を阻害するバグも多いため、話を楽しむ事に没頭し辛い。
地道な作業をこつこつ積み重ねられる人なら、タイトルに惹かれて本作を買ってもそこそこ楽しめるだろうが、逆に言えば、元来アドベンチャーゲームに耐性のある人でないと厳しい。
まだシステムがこなれていない時代に発売された作品なので仕方ない部分はあるものの、プレイアビリティ面の配慮含め、もう一歩足りないのがおしい点である。
その後の展開
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FC版発売の翌年の1988年にMSX2に移植された。
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登場人物の減少や音楽の使用箇所の変更などの多くの変更が施され、難易度はFC版よりやや下がっている。
最終更新:2024年07月18日 04:02