エナジーブレイカー
【えなじーぶれいかー】
ジャンル
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シミュレーションRPG
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対応機種
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スーパーファミコン
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メディア
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24MbitROMカートリッジ
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発売元
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タイトー
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開発元
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ネバーランドカンパニー
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発売日
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1996年7月26日
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定価
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7,800円(税別)
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判定
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良作
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ポイント
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何事もバランスが肝心 神ゲーになり損ねた良作
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概要
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スーパーファミコン末期に発売され、あまり注目を浴びることのなかった隠れた良作。
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『エストポリス伝記』で知られるネバーランドカンパニー開発。同シリーズのキャラクターや、物語中に登場する「プリフィアの花」がゲスト出演している。
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ただし、世界観が全く異なるので同一世界ではない可能性が高い。あくまでファンサービスであろう。
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キャラクターデザインはまだブレイク前であった内藤泰弘氏。
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当時氏が連載中だったSF西部劇漫画『トライガン』のオマージュなのか、同作序盤のエピソードに似た暴走列車を止めるイベントなどが存在する。
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本作の舞台はファンタジー世界だが銃や蒸気機関車が発明されているという、いわゆるスチームパンクに近い世界観。機関車で行き来ができる「開拓の街」が存在するなど西部開拓時代を思わせる描写が多い。
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尚、主人公はパッケージで先頭に描かれているレオン(青髪の男性)ではなく、その後ろのマイラ(薄紅髪の女性)であり、当時としては比較的珍しい女性主人公作品である。
特徴
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マップ形式
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画面形式はクォータービュー。RPG形式の移動を行うマップとSLG形式の戦闘を行うマップに区別がない。
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ダンジョン内ではRPG式の操作で移動を行い、エンカウントが発生すると同一マップにそのまま敵が登場する。
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街にモンスターが襲来し、馴染みのある街のマップで戦闘するという場面も。
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段差の概念があり、移動時は1段の差ならジャンプで昇降できる。戦闘時の昇降にはBP(後述)が余分に必要。
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ワールドマップは場所選択式。全体フィールドにあたるものは存在しない。
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バランスポイント
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戦闘中の行動にはバランスポイント(BP)と呼ばれる行動力を消費する。BPの許す限り、1ターン中に何度も行動が可能。
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BPは主人公の初期値で12。移動には5、通常攻撃には3のBPを消費する他、技にはそれぞれ必要BPが設定されている。
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各ターン開始時にBPは回復するが、回復量は残りHPに依存する。
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HPが満タンならBPも全回復するが、瀕死だと4しか回復せず移動もままならない。
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負傷により行動力が落ちるという合理的なシステムである。ピンチからの挽回が難しいということでもあるが…。
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エナジーバランスの振り分け
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メインキャラクター5人はそれぞれ固有(一部共通)の技を習得することができるが、修得条件が独特である。
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各キャラクターはレベルアップ時にエナジーポイント(EP)を獲得し、キャンプ画面の「エナジー」コマンドでEPを属性に振り分けることができる。
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配分はいつでもリセット・再振り分けが可能。
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技ごとの必要エナジー値ちょうどの状態で攻撃を行うと高確率で技を習得できる。必要値を超えたEPを振り分けている場合は30%の確率で習得。
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属性は火・水・風・土の4種×光・闇の2種で、それぞれの最大値は7。画面上では上方向を光、下方向を闇とした棒グラフで表現される。
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例えば全員が覚える遠隔攻撃技「ショット」であれば、火の光に3・水の闇に1振り分けて攻撃すると習得できる。
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一度覚えた技も、エナジーの条件を満たしていない状態では使えない。
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各技のエナジー配分は宝箱などから入手できる「秘伝書」に記されている。
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秘伝書入手前でも、条件を知っていれば技の習得は可能。低レベル時はEP・振り分け上限とも低いため、最初から覚え放題という訳にはいかないが。
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仲間の一人スタアは技の覚え方が特殊。
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彼はモンスターの技をコピーする能力を持っており、覚えられる技を持つモンスターを倒すことで技を習得する。
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ただし、覚えた技を使用するにはやはりエナジー配分の条件を満たしている必要がある。
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実はエナジー配分は攻撃力の算出にも影響している。
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簡単にいうと、光と闇をバランスよく振っているほど強くなる。一極化はむしろスペックが下がるという、属性のイメージの真逆をいく仕様である。
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正確には同属性の光と闇をかけた値の合計で最大は50。火・水・風・土の分類では一極集中、光・闇の分類ではバランスが重要。
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ライブリートークシステム
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重要人物など特定のNPCに話し掛ける時には、会話のオプションが表示される。
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態度
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「普段のまま」「強気に出る!」「穏やかに…」「あげます」から選択可能。
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「あげます」を選ぶとあげるアイテムの選択。大抵は要らないと言われる。
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単語
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シナリオ中で登場したキーワードについて聞ける。『ファイナルファンタジーII』にあったワードメモリーシステムと同様のものと考えてよい。
評価点
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戦略性の高い戦闘システム
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BPの存在により「1回でも多く攻撃するか、次ターンの行動回数確保のために回復を優先するか」などの駆け引きが楽しめる。
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技も攻撃や回復だけでなく、敵を引き寄せたり遠ざけたりといったテクニカルなものも。もちろん強力な技ほどBP消費も大きい。
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仲間キャラは全部で5人と少ないが、技の違いにより個性付けがされている。
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厳密には特殊な仲間キャラであるロボットの「ガリバーくん」を含めた6人。彼は移動しかできない代わりに完全無敵、つまり動かせる壁である。
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大型ボス「セクレリータ」というものもいる。
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これは、所謂召喚獣的なもので、倒すことで召喚できるようになる。
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豊富なテキスト
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街中やダンジョン内のオブジェクトを調べると、大抵何かしらの反応がある。
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花を調べると実(HP回復アイテム)を、キノコを調べると粉(BP回復アイテム)を入手できたり。
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…といったゲーム的に意味のあるものに限らず、フレーバーテキストがとんでもなく豊富。
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ゲーム開始地点である宿屋の一室だけでも、ベッド・ランプ・酒瓶・花・窓・クローゼット・バケツ・テーブルそれぞれに調べた時のメッセージ有。
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宿屋内の窓のメッセージは自室・廊下・別の客室でそれぞれ違うという凝りよう。
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ストーリー上で夜のシーンがあるが、屋内で窓を調べた(外を見た)時の反応はちゃんと昼と違う。
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調べた時の台詞には主人公マイラの陽気な性格が出ており、色々な物を調べ回るだけでも楽しい。
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その一例
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「あたし、お酒ダメなのよね~」(酒樽)
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「『おかみの友』『おんな自身』うわ・・・・おばはんの本だわ~」(本棚)
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「ははっ・・無理無理」(ピアノ)
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「・・・・水面に、美女が」(水桶)
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「素敵な彼・・・・待ってます♡」(立て札)
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スタート地点となる宿屋だけでもこのバリエーションである。この調子がずっと続くのだから、どれだけ豊富かが分かるだろう。
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クオリティの高いグラフィックと音楽
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SFC末期だけあってグラフィックは美麗。
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細かい描き込みのドット絵で流れる水や雲の影まで表現されており、3頭身のキャラも可愛らしくモーションも多彩。
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ダンジョンにもキノコが立ち並ぶ自然洞窟や氷の宮殿など美しく幻想的なものがある。
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BGMも名曲揃い。作曲は中島享生氏、塩生康範氏、山本祐世氏。
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発売当時にもサントラCDは出ているが、更に10年後の2006年11月22日にはアレンジバージョン入りのサントラも発売された。
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終盤のイベント戦闘で流れ悲壮な雰囲気を盛り上げる『祈りの鐘は鳴らない』は非常に評価が高い。
賛否両論点
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シナリオ面
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全体としてのシナリオの出来は良い。キャラは立っているし話に盛り上がりもあり、敵として何度も現れる「闇の将」たちとの決着などは感動的。
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しかし、ところどころに説明不足感があり謎も残る。伏線を回収し切れていないと思わせる部分も。
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後述するように開発中に内容が大幅削減された作品であるため、削りすぎてしまったのではと思われる。
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最大の謎は主人公。
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主人公マイラは「記憶を失っている夢」に悩まされ、夢に見た女性と現実でも出会ったことを切っ掛けに旅に出る。…のだが。
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夢の謎は解けるが、現実世界のマイラの素性については終始一切説明されない。生い立ちも職業も不明。主人公なのに。
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宿屋に長期滞在、戦闘能力がありダンジョンでの護衛依頼を当然のように受けるなど、いわゆる冒険者のような立場と推測はできる。
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結末も完全なハッピーエンドではなく、切ない余韻を伴うものである。
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綺麗に締められてはいるので高く評価するプレイヤーも多いのだが。
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女性主人公に明るい色調の画面、軽妙な会話など本作の第一印象には陽のイメージが強い。そこに惹かれた人には終盤の展開や結末は重すぎるかも知れない。
問題点
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ライブリートークシステム
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態度選択のシステムには、はっきり言って意味がない。
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強気・穏やかに話しかけても相手が汗やハートの感情アイコンを出したり、最初の一言が変わる程度。会話内容に影響は皆無。
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どう見ても、廃止されたシステムの残骸だけ残してしまった状態である。
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「あげます」や単語について聞く方はシナリオ上で使う機会がある。
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が、使わないと話が進まないので選択できる意味はあまりない。台詞を聞いて楽しめる程度。
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技習得ヒントの少なさ
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上述のように技を覚えるためのエナジー配分は秘伝書に記されているが、秘伝書のない技がある。
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よって、効率的に覚えようとすれば攻略情報を見るのが必須になってしまう。
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ぴったりの数値でなくとも30%で習得はできるため、レベルアップでEP上限が上がればいずれ覚えるが…。
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アイテムが強すぎる
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技と同様の効果を発揮できる消費アイテムが存在するが、アイテム使用での消費BPは一律1。
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持ち運べる数に限りがある消耗品とはいえ、技として使えば4~7BPを消費するところが1で済んでしまうのは強力すぎる。
総評
ところどころに大味・未完成な部分が見え隠れしてはいるものの、独特のシステムと丁寧な造りが光る職人芸の如き良作。
SFCから次世代機への過渡期にひっそり生まれ、あまり知られることなく埋もれていった不遇の作品でもある。
容量の大きい次世代機で当初の構想のまま発売されていれば、更に完成度の高い作品になっていたのかも知れない。
余談
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発売前のゲーム誌での第一報では、主人公を5人から選択できると紹介されていた。
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仲間キャラ各人に強い個性と、主役を張れそうなドラマチックな背景があるのはその名残なのだろう。
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パッケージイラストの先頭にいるのが作中では最後の仲間となるレオンなのも、恐らくはこの影響。本来の予定では彼がメイン主人公だったのかも知れない。
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しかし5本のシナリオ、そしてオブジェクトを調べた時の大量のメッセージも5人分、と考えるとSFCの容量ではどう考えても厳しかったと思われる。
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ライブリートークシステムも当初から推されていた要素の一つ。本来は意味のあるシステムだったのだろう。
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2006年にサントラが再版されたものの、本作そのものはプロジェクトEGG、バーチャルコンソール、Nintendo Switch Onlineなどで配信された事は未だ無く、プレイのハードルが高いのが実状である。
最終更新:2021年09月05日 23:01