THE KING OF FIGHTERS EX 2 ~HOWLING BLOOD~
【ざ きんぐ おぶ ふぁいたーず いーえっくす つー はうりんぐ ぶらっど】
ジャンル
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対戦格闘
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対応機種
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ゲームボーイアドバンス
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メディア
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64MbitROMカートリッジ
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発売元
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マーベラスエンターテイメント
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開発元
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サン・テック
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発売日
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2003年1月1日
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定価
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5,800円
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判定
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良作
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ポイント
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前作とは打って変わって正当進化 GBA格闘ゲームでは最高級の作品
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THE KING OF FIGHTERSシリーズ
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概要
前作『THE KING OF FIGHTERS EX NEO BLOOD』は鳴り物入りで登場したがクソゲーどころか商品失格レベルであった。
それに対し、旧SNKスタッフも含めた布陣で作り上げた汚名返上の一本。今回は本体とセット発売はされなかった。
ストーリーは本家『KOF』シリーズのノベライズで知られ、前作のオリジナルキャラの設定考案も担当していた嬉野秋彦氏が本格介入。
チームごとのストーリーも『2003』と同じように筆をとっている。
公式イラストやそれを切り取ったバストアップ絵は、のちの『XI』『2002UM』でも担当することとなったヒロアキ氏が担当している。
ストーリー
――十種神宝(とくさのかんだから)。
それは、かつて三種の神器を補佐するために存在した一族であり、いまでも草薙・八神・神楽の御三家との関わりを保っていた。
そんなある日、十種神宝の一人「天羽忍」が行方不明になると同時にKOFの開催が宣言された。
この事態に封じられたオロチの気配を感じ取った神楽ちづるは、京と葉花萌の元に大神零児を送り、KOFへの出場と忍の救出を依頼するのだった。
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十種神宝の設定自体はアドベンチャーゲーム『ザ・キング・オブ・ファイターズ京』で初登場し、
「三種の神器(京・庵・ちづる)を補佐する10人」という設定も共通しているが、
『KOF京』では「十種の神宝(じっしゅのしんぽう)」表記でメンバーが全て既存キャラクターの10名で構成されていたのに対し、
本作の「十種神宝(とくさのかんだから)」は設定が変更されてオリジナルキャラクター5名が属していることとなっており、残りの5名は未登場のため詳細不明(正確には後述の没キャラクターが1名居るが)。
また、『KOF京』では誰がどの神宝を担当しているか特に設定されていないが、本シリーズでは各キャラクターに対応する神宝が設定されている。
特徴
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ステージやキャラクターグラフィックは『2000』とほぼ同じだが、前作からカウンターモードとアーマーモードが削除されており、システム的には大分異なるものになっている。
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ストライカーのシステムも変更され、今回は「次に戦う控えキャラクター」がストライカーを務めるようになった。1人目は2人目、2人目は3人目がストライカーになる。
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ただし、本作では1チーム3人編成に戻されているため、3人目はストライカーを使えない。逆転性にはやや欠けるがプレイヤーの工夫次第で対処はできる。
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このため、ストライカーに依存しないキャラクターを大将に据える、ストライカーを多用するキャラクターを先鋒に据えるなどの出撃順の駆け引きが深まっている。
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キャラクターには「テクニカルジャッジ」という経験値のようなものがストーリープレイ時に加算され、この値が最高値になったキャラクターが増えるごとに隠し要素が開放されていくようになった。
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これによって解放される隠し要素のひとつとして「マスターモード」がある。このモードは『2000』のカウンターモードに近い仕様で、超必殺技が出し放題になり空キャンセルも使えるようになるので通常では出せない連続技が使えるようになる。
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また、「テクニカルジャッジ」によって解放されるその他の隠し要素として、特定のキャラクターの組み合わせでチームエディットした場合の特殊(隠し)エンディングも存在する。
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特殊エンディングは、京・庵・零児、萌・純・壬羽、リョウ・零児・拳崇の3種類で、該当キャラクター各3名をマスターすると解放される。三種の神器&十種神宝のメンバーを性別で分けた他の2つに比べ、最後の1パターンだけなんともチグハグな組み合わせに見える…が、その組み合わせがぶっ飛んだネタエンディングへの布石となっている(詳細は後述)。
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ゲームモードは「ストーリー」「チームVS」「シングルVS」「プラクティス」「レコード」があり、条件を満たすと「タイムアタック」「エンドレス」が使用可能になる。
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操作モードはA,B,L,Rの4つのボタンを使用する「4ボタンモード」とA,Bの2ボタンを使用し、Rボタンと十字キーを組み合わせた簡易コマンドで技を出せる「2ボタンモードA (初心者用)」とネオジオポケットのように押す長さで強弱を使い分けられる「2ボタンモードB (溜め押し用)」の3種類。それぞれオプションで変更出来る。
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前作で登場していたA,B,Rの3つのボタンを組み合わせた「3ボタンモード」は削除された。
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キャラクターとチーム編成は今回ほぼオリジナルとなっており、3人編成となったことでストライカー専用キャラクターは廃止された。
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前作の新規キャラクターは萌のみだったが、本作では多くのキャラクターが追加されている。
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前作のストライカー専用キャラクターからはユリがプレイアブルに昇格し、ジョーとジョンが関連チームのエンディングにサブキャラクターとして登場している。
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逆に前作のプレイアブルからは紅丸、ロバート、キング、ボスキャラクターのギースの4名が新キャラクターの増加による枠の減少を受けて削除される形となった。ただし、ロバートのみ龍虎チームのエンディングにサブキャラクターとして登場している。
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キャラクター一覧
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デフォルト7チーム+中ボス1人+ラスボス1人(太字は新キャラクター)
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主人公チーム:草薙京 葉花萌 大神零児
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八神チーム:八神庵 華守純 黒咲壬羽
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餓狼伝説チーム:テリー・ボガード アンディ・ボガード 不知火舞
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龍虎の拳チーム:リョウ・サカザキ タクマ・サカザキ ユリ・サカザキ
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怒チーム:レオナ・ハイデルン ラルフ・ジョーンズ クラーク・スティル
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サイコソルジャーチーム:麻宮アテナ 椎拳崇 包
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韓国チーム:キム・カッファン チャン・コーハン チョイ・ボンゲ
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中ボス:天羽忍
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ラスボス:暴走忍
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評価点
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あまりにも"終わっていた"前作から、その出来を平均以上に引き上げたこと。
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携帯機にしてはネオジオ版と遜色ないグラフィック、ACと同じ頭身のキャラクター、動きを再現している。
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対戦バランスは、良くも悪くも『2000』とそれほど変わらないというのが一般的な評価。その『2000』自体の対戦バランスは賛否両論のために項目参照。
ともあれ、携帯機の格闘ゲームとなれば研究もしにくいところがあるのだが、同作で培ったテクニックをほとんどそのまま活かせるのは大きい。
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隠し要素も豊富。上記のようにキャラクターを使い込むことが各種要素の解放条件となっているため、対戦する相手がいなくともしっかりと遊べる。
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スタッフの妙な本気がうかがえるリョウ・零児・拳崇のチームの特殊エンディングもその一つ。
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その内容
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だいぶネタキャラに染まってきたリョウがいよいよトリップしてしまい、関西弁というだけで拳崇をロバートと誤認し、チームメイトの突っ込み空しく初代『龍虎の拳』のように妹を探し求める、黒幕の話をガン無視して覇王翔吼拳を連射しまくる、挙句タクマとユリを認識できずに二人をも蹴散らす…と突っ込みどころしかない迷エンド。
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グラフィック・演出周りのクオリティもGBA向けの格ゲーとして最適化され大きく上がった。
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前作でカクカクしていたグラフィックが、今作ではある程度アニメパターンが自然になり解消している。
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BGMも前作では聞くに堪えないと批判が多かったが、今作ではかなり改善されている。
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前作で問題に挙げられたボイスも、今回は前作のようなボイスを継ぎ接ぎしたような無理矢理すぎる使い回しはなく、収録量自体も増えているため違和感が少なくなっている。
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中間デモもキャラクターが動くようになり、各チーム1枚ずつとはいえエンディングイラストも描き起こされた。
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新キャラクターのグラフィックや動き、それを絡めたストーリーは総じて秀逸。
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ちづると深い付き合いがあり、分身を使って戦う零児、199cmという巨体を持つパワー系の女性キャラクターの純、全身を黒いイメージでまとめた暗器使いの壬羽など、本家のと比較しても見劣りしないキャラクターがそろっている。
ボスキャラクターの忍や、デモに登場する黒幕のグスタフ・ミュンヒハウゼンも、あくまで本作が外伝であることを強調しながらもそれだけに終わらないストーリーや人物関係を織りなしている。
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既存キャラクターと異なり最初からGBAのスペックで動かすことを前提に作られているため、若干ドットやモーションが粗い部分はあるが、他のキャラクターと比べた際の違和感はかなり軽減されている。
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前作では扱いがほぼ空気だった萌も、本作では十種神宝がストーリーの中心に据えられたことである程度は存在感が出ている。
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残念ながら当時の本編であったネスツ編における主人公のK'らは、前作では隠しストライカー、本作に至っては全く出番が無いという冷遇を受けてしまったが、十種神宝を絡めたストーリーはオロチ編に回帰するムードが漂っており、総じて違和感は少ない。
問題点
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前作ほどではないにせよバグ・不具合・不自然な仕様が多い。
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特にボスの忍がひどい。中ボス時は「たまに下半身や技モーション時の当たり判定がなくなる」「技を受けるとたまに妙な現象が起きる」などが発生する。それに中ボス時もラスボス時も「こちらが動かないとその場から動かずに必殺技を連発してドローになって勝てる」「超必殺技を使わない」など明らかにおかしい現象が散見される。
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新キャラクターの純も「異様に攻撃の気絶値が高いので適当にやってるだけで気絶に追い込める」「吹っ飛ばし攻撃が完全無敵やガードポイントだらけ」「必殺技のリボルバードロップが数ドットしか減らない」「必殺技のチョップバスターが他キャラの超必殺技並に威力がある」など調整不足が散見される。実際強キャラ。
ほか、本作で性能が大きく改善された萌や新キャラクターの零児の技などにも、本シリーズオリジナルキャラクターのせいか何かと不具合が見られる。
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他、異様にダメージの高いコンボを叩き出せるキャラクターが多い。
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ただし、前作に比べると質がマシであり、許容さえできればネスツ編と同様程度に楽しむこともできるようなものが並ぶ。テストプレイ不足なのは確かなのだが。
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キャラクターの性格が一部おかしい。
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勝ち台詞において、テリーの「生きてる事に感謝しな!」、タクマの「戦い続けて牙が脆くなったようだな!」、ラルフの「死ぬ覚悟はできているのか!?」など、大凡そのキャラクターが言いそうにないセリフが目立つ。また隠しストーリーに置いてはリョウが完全にトリップしてしまっているがその原因の説明などが無いなど、キャラクターの演出面では違和感が残るものが多い。
総評
スペックなどの問題で量も質も低かった当時の携帯格闘ゲームにしては相当の出来。
格ゲーとしての体をなしていなかった前作の批判を受けて大きく改善され、一気に名作に数えられる作品へと上り詰めた。
遊びやすさ、やりこみ性、ストーリーなど随所に工夫がみられ、演出面についても本家に劣らぬ品質を有している。
当時の『KOF』シリーズは冬の時代を迎えつつあったが、クソゲーからの脱却と全体的な出来でシリーズの意地を見せつけた。
余談
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容量の都合からか、ゲーム性にさほど関係ないところで一部要素がオミットされている。これらはハードの制限上仕方ないと考えられる。
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サウンドテストにはオープニングの曲があるが、本作にはオープニングデモ自体が存在しないため、おそらくカットされたものと思われる。
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忍と暴走忍の勝利ポーズ、ラルフのしゃがみキックが強弱で絵が同じ、壬羽が仰向けから起き上がるモーションなど、ところどころ欠けているところもある。
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今作で主人公チームに新たに加わった大神零児の名前の由来は、かつてSNKに所属していた音楽家が他社へ移籍してから開発に関与した若返るババァが主役の対戦格闘ゲームに登場する空手家からと思われる。
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何故彼の名前がその空手家に由来しているのかというと、京のオロチ編での姿が某ゲームに登場したキャラクターに似ていた事から、そのキャラクターと対になる存在として登場する際に名前が冠されたと思われる。
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なお、開発段階では「大神修理(しゅり)」という古風な名前になる予定だったようだが、製品版で現在の名前に変更された。
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2015年末にシナリオ担当の嬉野氏が明かした裏話によると、本作のプロデューサー氏が「萌が実は草薙柴舟の隠し子」「零児の連れている幼女は実は零児とちづるの娘」等の本編キャラクターに関わるとんでもない設定をつけようとしていたらしく、もしそんな事になったら嬉野氏が集中砲火を浴びるような気がしたとの事で全力で阻止したとのこと。
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現行設定では、萌は「明治維新後にアメリカに渡ったが、向こうで日本人同士の婚姻を続けて血の濃さを保っていた一族」という柴舟不倫説を完全否定したものになっている。
さすがに柴舟の大切なもの「妻」が台無しになるので…。
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一方で零児の娘については結局詳細が不明のままとなった上に、ゲーム中にて本来嬉野氏のシナリオの予定になかった「幼女が皆をテレポートさせるシーン」等が知らぬ間に追加されており、P氏曰く「(僕の中では)この子はちづるの娘だからそういう力がある」等と押し切られてしまった模様。
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その容姿から一部のユーザーの間では「ちづるの亡き双子の姉マキの忘れ形見では?」等と噂されることもあるが、幼女の詳細設定については最終的に詳しく語られていないため、結局のところ誰の子かは不明という謎の存在になっている。
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なお、嬉野氏が担当したのは正規7チームのストーリーのみで、前述の狂ったリョウトリップストーリー等はノータッチである。
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その一方で『KOF』本編でも「『餓狼伝説』から客演している山崎竜二を強引にオロチ八傑集に入れる」という似たような設定改変をやっているため、上記の設定がもし正式採用されていたとしてもファンは動じなかった可能性もある。尤も血縁や人間関係の後付けに関してはそうした設定よりも荒れやすい傾向にあるため、単純比較などできようはずもないのだが。
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没キャラクターも何名か存在しており、その中で6人目の十種神宝として鬼の姿に変身して戦う「寿福大輔(じゅふく だいすけ)」というキャラクターを八神チームのストライカーとして出す予定があったらしく、発売当時のキャンペーンで配布されたプロフィールファイルにも変身前・変身後のデザイン案が掲載されている。
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しかし、本作でストライカー専用キャラクターが廃止になったことで敢えなく没となった。もし登場していれば「足玉」の守護者の予定だったらしい。
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ちなみに判明していない残り4名は「沖津鏡」「蛇比礼」「蜂比礼」「品物之比礼」となり、奇しくも「比礼」を守護する人物は誰も登場していない。
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残念ながら『EX』シリーズは本作で打ち切りとなってしまい、本作を受け継いだストーリーの作品も出ていないため、残りの十種神宝は不明のまま日の目を見る機会が絶望的な状況である。
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前作のストライカー専用キャラクター10人のうち、本作で使用キャラクターに昇格したのはユリ・サカザキ1人のみ。
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ただしプレイアブルにするには容量や枠の関係で難しかったとも考えられる。
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もっともジョー・ヒガシとジョン・フーンは本作の餓狼伝説チームと韓国チームのエンディングに登場するのでそれなりに未参戦は納得いくのだが。
最終更新:2024年06月23日 12:27