フロントミッション セカンド
【ふろんとみっしょん せかんど】
ジャンル
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ドラマティックシミュレーションRPG
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対応機種
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プレイステーション
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発売・開発元
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スクウェア
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発売日
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1997年9月25日
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定価
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6,800円(税抜)
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レーティング
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CERO:A(全年齢対象) |
廉価版・配信
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フロントミッション ヒストリー 2003年12月11日/9,800円(税抜) アルティメットヒッツ 2006年10月5日/1,500円(税抜) ゲームアーカイブス 2008年12月24日/600円
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判定
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なし
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ポイント
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長すぎるロード時間 後の作品に受け継がれる要素を実装 ゲーム自体は前作から正統進化の良作
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フロントミッションシリーズ
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概要
1995年にSFCで発売され、近未来を舞台に組み換え式戦闘ロボット「ヴァンツァー」が活躍する世界観を描いたSRPG『フロントミッション』(以下、1st)。
本作はその正式な続編(『ガンハザード』は外伝扱い)として、2年後の1997年にプレイステーションにてリリースされた。
太平洋上の架空の島を舞台とし、幾分SF的な要素が強かった『1st』と比べると、本作はよりリアルな路線の軍事モノとしての要素が強くなっている。
ハードの変更に合わせてグラフィックや音源も向上し、戦闘デモのヴァンツァーはフルポリゴンで描かれるようになった。
また前作のゲームバランスの甘さを見直し導入された「APシステム」は、形を変えながらもその後のシリーズのスタンダードとなる。
しかし、フルポリゴン化の代償として本作は「あまりに長いロード時間」という難点を背負い込んでしまった。
ストーリー
日本・オセアニア・東南アジア諸国による「オシアナ共同連合(O.C.U.)」。
22世紀において、南北アメリカ大陸統一連合「ニューコンチネント合衆国(U.S.N.)」と並ぶ巨大共同体である。
西暦2102年。OCUアロルデシュ人民共和国。
かつてバングラデシュという名だったこの国は、OCUに一方的な工業化を迫られ、一時は軍需産業国として発展する。しかしその後、産業国としての価値が薄れるとOCUはアロルデシュからの撤退を開始。アロルデシュは一転して貧困に苦しむようになり、それはOCUへ正式に加盟した今も変わっていない。国民の間では自分たちを振り回してきたOCUへの不満がくすぶっていた。
2102年6月12日、アロルデシュ軍はクーデターを起こし、OCUからの独立を求め「革命軍」の名で宣戦布告する。首謀者はアロルデシュ陸軍のヴェン=マッカージェ中佐。祖国の窮状を見かねた末の決断だった。
OCU海防軍・アロルデシュリミアン駐留基地配属のヴァンツァー乗りアッシュは、同僚のジョイス、エイミアと共に革命軍の奇襲を受けたリミアン基地を脱出する。クーデター発生を知り途方に暮れる三人は、同じようにOCU陸防軍のラマンストン駐留基地を脱出してきた三人のヴァンツァー乗りと合流する。
一行は陸防軍三人組のリーダー格、トマスの提案に従い、アロルデシュの首都ダカを目指すことにする。トマスは密輸組織として悪名高いアロルデシュの海運会社「バーグ運輸」のオーナーと面識があり、彼を頼るつもりだったのだ。
彼らがダカ郊外へ進路を向けた後、二人のOCU軍情報部員がアロルデシュに潜入し、革命軍に占領されたリミアン基地を目指していた。二人は表向き「OCUの捕虜救出任務」にもとづいて動いているのだが、その真の目的はリミアン基地に保管されていた「ある物資」の回収だった。エージェントの一人リーザは、この任務にある決意を持って臨んでいた。
アンダーグラウンドに潜り込み、国外脱出を目指して奔走するアッシュ、ジョイス、エイミア。
己の利益のためにOCU軍を抜け、バーグ運輸の傭兵となる道を選ぶトマス、ロッキー、ロズウェル。
OCU軍の暗部に関わる二人の情報部員、リーザとサユリ。
来歴も目的も動機も異なる三つのチームは、それぞれ仲間を加えながら紆余曲折を経て一つにまとまり、ある一つの情報を共有する。そして最終的に12人となった彼らは、このクーデターの裏に隠された巨大な陰謀に立ち向かっていくことになる。
ゲームシステム
ミッション&ヴァンツァー
マス目状マップで敵を撃破し経験値を稼ぐミッションと、ヴァンツァーの組み上げや情報収集を行うインターミッションが交互に入り混じってストーリーが進むという、基本的なシステムは『1st』と一緒。
ここでは「APシステム」などの、本作で加わった・変更された新要素を軸に解説していく。いずれも前作の失敗を改善する形で考えられており、それらは概ね成功している。
+
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長いので格納
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APシステム
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敵味方全てのユニットは、一種の「行動値」とでもいうべき「AP」を所持している。自機の行動によってAPは減少していき、次ターン始めに最大値まで回復する、というのが基本。初期値は7で、キャラが成長するごとに最大13まで増える。
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自軍ターンでは、移動は1スクエア1(移動範囲は機体の移動力によって異なる)・格闘攻撃は0・近距離攻撃は2・遠距離攻撃は6ポイントが消費される。敵軍ターンでは、攻撃を受けるたびに2ポイントが消費され、0になると反撃・回避行動が出来なくなる。
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前作では遠距離攻撃が強力・便利すぎたのだが、このシステムによって遠距離攻撃が簡単に実行できなくなった。
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APは敵軍にも適用されている。これにより、回避率・攻撃力が高い敵ユニットに集中攻撃を加えることでAPを消耗させ、回避・反撃不能に追い込む戦術も重要となった。
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APは次の自軍ターンに全回復するのだが、敵ユニットが自軍ユニットに隣接しているとAPの回復量が減少する(前後左右で-2・斜めスクエアで-1)。
反対に友軍ユニットが隣接していると、回復量が+1される(ただし最大値を超えることはない)。
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前作ではある程度レベルが上がってさえいれば、取り囲まれても何とかなる場合が多かった。今作では周囲を囲まれるとほとんど何も出来なくなってしまい、単騎での脱出はまず不可能になる。
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仲間と足並みを揃えればこのような事態は回避でき、逆に敵機を取り囲んでしまえば、返しの自軍ターンでは一方的に攻撃できる。
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このAPシステムによってゲームバランスの改善が図られると共に、「集団VS集団」というシミュレーションの原則が強く打ち出されることとなった。前作と比べると戦略性が格段に増加し、歯ごたえのある戦闘を楽しめる。
地形効果の強化
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草むらや砂地の様な不整地と、舗装道路の様な足場や見通しの良い場所では攻撃の命中率に差が出る。この「地形効果」は前作でも存在したが、それほど意識しなくてもいい程度のものだった。
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今作ではその影響が増大し、森の中や建造物のそばでは命中率が大きく下がる。やはりシミュレーションの重要なポイントである「位置取り」の重要性が大きくなった。
スキルの増大
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パイロットは敵機にダメージを与えたり、敵機のパーツを破壊するごとに経験値を獲得し、レベルアップしていくうちに「スキル」を覚える。経験値は格闘・近距離・遠距離の3つに分けられており(前作の防御経験値は廃止された)、覚えるスキルもそれぞれ異なる。
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前作のスキルは3系統7種類しかなかったが、今作では4系統40種類に再編・追加された。更に各キャラクターごとのスーパースキルや、パーツ破壊数に応じて獲得できるオーナースキルも登場する。
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これら多種多様なスキルは各キャラごとに4つまでセットすることが出来る。一度獲得したら固定された前作とは異なり、付け替えは自由。ヴァンツァーのカスタマイズに加えて、キャラクターカスタマイズの楽しさ(または悩み)も加わることとなった。
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スキルの「連鎖(チェーン)」は健在。うまくスキルが連続発動すれば、1回の戦闘で大きく敵のライフを奪える。更に今作ではスキルの組み合わせによって連鎖確率がアップする場合もあり、ベストの組み合わせを探す楽しみもある。
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スキル関連として、ヴァンツァーのコンピュータパーツはそれぞれ、用途に応じて設定を切り替えることが出来るようになった。その中には基本性能が低い代わりに、コンピュータ独自のスキルが自動的に働くセッティングもある。
多彩な敵ユニット
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前作の敵はヴァンツァーと戦闘車両、大型ヴァンツァーくらいのものだったが、今作では戦車、ヘリ、飛行機、そして敵機の耐久力を回復する支援用ポッドが新たに登場する。
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装甲の厚い戦車、長射程で回避率が高い航空機など、普通のロボットアニメではやられ役の兵器も、本作ではなかなかの脅威となる。軍事的な魅力が強い。
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本作は登場ユニット数がシリーズ一の多さを誇り、大型機動兵器の登場数も最多である。ポリゴンで描写される大型機は迫力があり、特に終盤で登場する「ビスミラー」は圧倒的な攻撃力と威圧感でユーザーを絶望させた。
パーツの変更点
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前作にはなかった大量の武器カテゴリが追加された。見た目の種類も増加している。
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腕自体が武器パーツとなっている「武器腕」に、新たに遠距離用のミサイル・ロケットパーツが登場。
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背中武器に複数スクエアへの範囲攻撃が可能な遠距離武器、グレネードが追加。更に手持ち専用だったマシンガン・キャノンといった近距離武器も背中武器に加わった。
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武器腕のみならず、ボディに武器を内蔵している機体やブルドーザーや戦車のようなレッグまである。その豊富なラインナップは変態とも評される。
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カラーリングもより豊かになり模様もつくようになった。イチゴ柄や唐草模様などで笑いを誘うセットアップを考えてみるのもいいだろう。
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また、既存の遠距離武装が再編され、新たに「対空ミサイル・ロケット」の新カテゴリが登場。通常のミサイル・ロケットでは空中ユニットへの攻撃が不可能となり、手持ち武器の命中率も下がるようになったため、ミッション・敵ユニットごとに応じた武器の選択が重要となった。
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更に前作では弾数無制限だった手持ち武器にも装弾数が設定され、それぞれの予備弾薬アイテムも登場。戦略性と難易度の向上に一役買っている。
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住み分けがあいまいだったライフル・ショットガン・火炎放射器にはそれぞれ個性づけがされ、差別化がなされた。
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今作では戦闘中に、あらかじめ持ってきた予備の武装を装備したり、使いきった武装を投棄して格闘戦に移行することも可能になった。
攻撃の属性・抵抗力
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マシンガンやライフルなら「貫通」と、格闘武器ならば「衝撃」と、火炎放射器なら「炎熱」というように、各武器に新たに属性が設定された。
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ヴァンツァーのパーツにも「対○○」といった風に、特定の属性に対する抵抗力を持つパーツが登場。但しそれらは他の2属性に対しては脆い。属性を考えた攻撃・パーツ選択が求められるようになった。
ステータス異常・投降
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前作のスタン(気絶)に加え、攻撃不能となる「テラー」、移動時のAP消費が増える「パニック」が追加。また新たな要素として、敵レーダー車からレーダー照射を受けると、近距離または遠距離攻撃の回避率が低下する「ロックオン」も導入された。
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敵ユニットはライフが残り少なくなったり、スキル「降伏勧告」の影響を受けると降伏し、投降してくる場合がある。ヴァンツァーが降伏・投降してきた時はアイテムを奪う事が出来る。
しかし今作ではその確率が低く、普通にプレイしているとまずお目にかかれない。この点は次作『3rd』で大きく改善された。
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インターミッション
ネットワーク
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本作のインターミッションで加わった最も特徴的な要素。各軍・各社のデータベース、民間ニュースなど、様々な「フォーラム(今でいうWebサイト)」を閲覧できる。発売時期が時期なので「インターネット」というよりは往時の「パソコン通信」風のデザインとなっているのは御愛嬌。
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監視衛星情報にアクセスすれば次のミッションの敵配置を知ることが出来る、オンラインショップ機能を使えばどこでもヴァンツァーのパーツやアイテムが購入できる、などの設定を生かした新要素も登場した。
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パスワード(大抵は対象の英語表記)を入力すれば、軍データベースでは登場人物の来歴、兵器会社では兵器の解説文を閲覧できる。ニュースサイトはシナリオが進むにつれどんどん更新され、作品世界への没入感を深めている。
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隠しアドレスやパスワードを入力すれば、裏情報や隠しパーツを入手することも可能。
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ネットワークシステムはこうした便利なツールや、メインのストーリー以外の情報を開示することで、ユーザー達からは「新しい楽しみ方が増えた」「より深く作品を味わう事が出来る」と評価された。APシステムと同じくこの要素も後のシリーズに取り入れられる(『3rd』の「天網」はその最たるもの)。
サブミッション
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本作では特定の条件を満たすとプレイできる小ミッションが幾つか用意されている。
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シナリオの本筋とは無関係な幕間劇のようなもの。キャラクターがより深く描かれており、作品の理解にも一役買っている。
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特に最後のサブミッションでは、前作で登場した幻のヴァンツァー「レイヴン」を隠し機体として入手可能。その高性能さもさることながら、初登場時の威厳ある演出、前作との繋がりを色濃く漂わせる設定も前作ファンに受けた。
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なお、サブミッションの戦闘では経験値が入らない。
闘技場の変更点
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個人戦の仕様変更が行われ、じゃんけん方式だった前作より戦略性が格段に深くなった。
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チーム戦も可能に。最大5vs5の対戦が行える。
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前作のように経験値こそ稼げなくなったが、賞金は得られる。さらに上位クラスとなると強力な武器パーツを入手することも可能。
特徴・評価点
ゲームシステム
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ゲームオーバーの条件が全味方ユニット撃破
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基本的な敗北条件が全味方ユニットの撃破に変更されたため、全滅まで粘る事ができる。
グラフィック・BGM
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ハードが次世代機へ移行したことでグラフィックはより美麗に。
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戦闘マップも3D化し、よりリアルに、わかりやすくなっている。
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戦闘デモの各ユニット(主にヴァンツァー)の動きも重量感あふれるものとなり、固定ファンも多い。「シリーズで最も重厚感がある戦闘デモ」とも。
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キャラクターデザインは前作の天野喜孝に代わって、『グイン・サーガ』シリーズの挿絵などで知られる末弥純が担当。
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癖の強い画風で知られる天野の降板を惜しむ声もあったが、末弥のリアルではあるが繊細で柔らかいタッチで描かれたキャラを評価するファンもまた多い。女性陣にはファン多し。
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BGMは下村陽子が降板、松枝賀子の単独担当となった。
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前作の雰囲気を残しながらもより重厚に。僅かな民族抒情も取り入れられた奥深い曲調は、前作に勝るとも劣らない。
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随所で用いられるアレンジされた前作曲も、ファンには嬉しいところ。「Rise to Action」のまさかの使われ方に苦笑し、その後の3回目の登場では思わず震えたという人もいるのではないだろうか?
シナリオ
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今作は「ストーリー」の項目でも述べた通り、異なる立場にある複数のグループが入り混じりながら話が進み、中盤からは一つにまとまって行動する形でシナリオが展開する。
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それに伴い、人物の描かれ方も変化している。前作ではあくまで主人公が中心となっていたが、本作では各個人の意見・心情がクローズアップされる部分が多く、群像劇の趣きが強い。
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味方メンバーの出自も多彩である。仲の悪いOCU海防軍と陸防軍、軍諜報部、嫌われ者の外部調査組織、情報屋や密輸商人、クーデター軍からの離反者…… これら、使命も目的も心情も異なるメンバーが時に利用しあい時にぶつかりながらも結束していく過程も見もの。
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勧善懲悪的だった前作とは違い、今作では敵側の情勢も深く描かれ、敵側も一枚岩ではなく複雑な事情がある事が示されている。ファンによっては「ヴェンこそ真の主人公」という人も。
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逐一挿入される日時のテロップや、1日ごとに更新されるニュースフォーラムでの情勢情報の演出、更にマスコミや民間人などの第三者の目線などが取り入れられたことで、より大局的・軍事的な視線で物語が描かれていることも特徴。ロボアニメファンや硬派なドラマが好きな人は元より、純粋な戦争ものが好きな人にも十分勧められる内容である。
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幾分奇をてらった内容であり、SF要素が強かった前作と比べると、本作は幾分地味にはなったもののより堅実で重厚な物語を持っていると言える。「何が間違っていて、何が正しいのか」をテーマとしたストーリーは一見の価値あり。
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ちなみに、本作の仲間キャラクターの中にはゲイ嗜好をもった人物がおり、彼の予想外の告白は多くのプレイヤーを唖然とさせた。
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全く濃い内容ではなく、むしろライト向けのコミカルな描写なので、そっち方面が苦手な方も安心してほしい。
問題点
上で挙げた長所だけを見れば、本作は間違いなく「文句なしの良作」の部類に入る作品であっただろう。
しかし、それに待ったをかける問題点があった。
圧倒的に長いロード時間と、同じく長くてスキップ不能の戦闘デモ
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とにかく長い。このロード時間を本wikiの名作・良作判定の作品に適用すれば、ほとんどの作品が「名作・良作」から「一歩惜しい凡作」に格下げされるだろう。
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これ程までに長くなってしまったのは、各ユニットを全てポリゴンで描き、なおかつパーツデータを一括で読みこんでいるためである。主に発生するのは「セットアップ時の機体切り替え」時と、「戦闘デモ開始時と終了時」。どちらも頻繁に発生するためどうしようもない。本作の味方ユニットは最大12、戦闘の規模もシリーズ随一である。
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戦闘デモも、突入まで長いのもさることながら、デモ自体が長くスキップ不能であることも大きな問題。さらに各ヴァンツァーの動きも「重量感」があるだけに妙にもっさりしており、テンポが悪い。前後の『1st』『3rd』と比べると余計に際立つ。
APシステム
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本作が初導入ではあるが「ちょっと制約がキツすぎるのでは」という意見もあった。
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このAPシステムも相まって、本作の戦闘はシリーズでもトップクラスの難易度として知られる。
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これを受けて、システムの項で説明した要素は『3rd』以降は単純化された。
ゲームバランスの不備
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経験値は基本的にこちらの攻撃が相手に当たらない限り入らず、寄り道や闘技場で稼ぐことも出来ない。事実上有限で取り返しが付かない。
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さらに、命中率は近距離、格闘、遠距離という攻撃系統ごとのレベル依存。回避率の判定には防御側の攻撃系統の中で最も高いレベルのものが使われ、レベル差が5開くと攻撃がほぼ当たらなくなる。
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つまり、一度育て損なった攻撃系統は、そのままずるずると育てる機会を得られないままになってしまう。それだけで済めばまだいいが、下手を打てばちょっと成長が遅れたキャラクターがそのまま戦力外に落ちていくことになる。
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成長の遅れを取り戻す方法は色々あるが、どれもシステムのきちんとした理解とコツが必要なものばかり。それを知っているプレイヤーなら、そもそも攻略が困難になるほど育成に失敗すること自体が無いだろう。
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中盤までは近距離攻撃がかなり強いが、それ以降は格闘の攻撃力がインフレし、次第に存在感を失っていく。
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破壊しても戦力低下をあまり期待できないレッグパーツに当たってしまうのも問題。
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しかし近距離は序盤から使いやすいため、意識してプレイしないと近距離が強いユニットばかり、という事態になってしまいかねない。
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ちなみに終盤ではうかつに格闘機に挑みかかると、反撃のスキルチェーンで瞬殺されることも珍しくない。
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逆に遠距離攻撃は、序盤こそ当たらない、APの消費が激しいと極めて使いづらいが、育てると反撃を受けないという特性により最強になる。
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航空ユニットは対空ミサイルに極端に弱く、すべて遠距離キャラに食わせるのが鉄則。これ以外では序盤に育てるチャンスがほとんどない。そして前述の通り、序盤の育成に失敗すれば遅れを取り戻すのは非常に困難である。
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なお、このゲームは同士討ちでも何の問題もなく経験値が入る。つまり、範囲攻撃のグレネード(遠距離武器)で…。
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上記「ビスミラー」は「攻撃力が非常に高く、こちらはほぼ一撃で破壊される」「APが20あるうえ隣接しても回復量が減らない」「遠距離射程がどの遠距離武器よりも長い」「接近戦ではほぼ確実に先手を取れるスキル持ち、さらにはこちらのスキル無効化スキルを無効化する」と、ゲームシステムを完全に無視した反則性能の数々を備えている。
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安全に倒すには反撃を受けない遠距離攻撃を浴びせまくるしかないが、上記の通り育て損ねる可能性が高いので、進め方によってはここで完全に詰んでしまう。
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即死系スキルに弱いという抜け穴はあるが、運ゲーのうえスキルを手に入れていなければアウトである。
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スーパースキルは、キャラクターごとに特定の一系統のものしか覚えない。つまりキャラクターの育て方が固定されるうえ、事前情報もないので育てる系統を間違えるとスーパースキルを手に入れ損ねてしまう。
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攻略上必須というわけでもない、と言えばそうなのだが。
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オールマイティキャラが不遇。経験値が有限である以上当然だが、1人の能力をあれもこれも伸ばすと間違いなくレベルが足りなくなる。
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このように、このゲームはシステム以外に事前に知っておくべき情報が多く、攻略情報がないとかなり辛いものがある。前作で有効だった戦術はほぼ潰されており、発売当時のプレイヤーは真っ白な状態で挑むことを余儀なくされたのであった。
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そしてやはり今作の最大の問題は、失敗して学習したプレイヤーの再挑戦への気力を削ぎまくる、地獄のロード時間であろう…。
その他
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武装が細分化されすぎていることに不満を呈すユーザーもいた。
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「リアルなのはいいが、ゲーム的には難易度を上げるだけでしかない」というものである。
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機体命中率が100%と表示されても当たらないことがある。説明書にも明記してあるが、ならばその計算を踏まえて表示して欲しいものである。
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主人公・アッシュとラスボスの影が少々薄い。
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決してアッシュが「主人公らしくない」ということではなく、仲間たちの個性が強いのと、群像劇的なストーリーテリングによるもの。
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ラスボスに関しては、直前のステージに登場する敵のインパクトが絶望を与えるほど強烈、これでエンディングかと思わせるような展開の矢先のことであるので仕方ない面もある。
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終盤の展開がやや巻き気味で、このラスボスも残った風呂敷をたたむために急遽追加された印象がある。実際、ゲーム的には直前のステージが最終ステージであっても何一つ問題が無い…。
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闘技場で経験値が得られなくなった=育成に使えなくなった点には苦言を呈すファンが多い。
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先述の「ゲームバランスの不備」の項にもあるように、本作における経験値入手はあまりにもシビア。その一因となってしまっている。
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敵が滅多に降伏せず、せっかくの新システムを生かせていない。
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意図的に降伏させようとすると、かなり複雑な条件を全て満たした上で十数ターン待つ必要がある。
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「ショップ使用禁止・敵を全て投降させて奪ったパーツのみを使う」という「超」高難度の縛りプレイを行うユーザーもいた。
総評
「ロード時間が全てを台無しにしてしまった」という、PS時代の典型的な作品。
更に本作の場合ゲーム部分は良作であり、なおかつAPシステムやネットワークなどの後作に受け継がれる良好な追加要素を備えていただけに、なおさら「惜しい」としか言いようがない。
またAPシステム黎明期の仕様や、経験値が有限で育て損ねの挽回が困難な育成仕様などにより、本作はシリーズ屈指の高難易度作品として名を連ねており、少々ハードルが高い。
後に、様々な改善を加えたものが廉価版として販売された(下記項目参照)。
現在発売されているゲームアーカイブス(PSP版)なら、ロード時間のストレスは大幅に緩和される。それでも元が元なので、普通のゲームと比べたら明らかに長いが…。
過去に投げ出したと方もこの機会にプレイしてみてはいかがだろうか。時間をかける価値は十分にある作品である。
廉価版
フロントミッション ヒストリー
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PS版3作と、ヴァンツァーフィギュア三体をセットにした限定版。
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収録された3作の中では唯一大幅な改良が行われ、戦闘デモのスキップ、フリーズバグ修正、スキルのバランス調整が行われた。
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戦闘デモスキップはプレイ時間短縮に大きな効果があるが、「長いデモとダメージ計算を全部見る」か「全スキップ」のどちらかしか選べず、やや不便な調整となってしまっている。攻撃が成功したか否かも、メニューを開いてステータスを見るしか確認する方法がない。
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移植やリメイクではない廉価版にここまで大きな仕様追加は当時あまり例が無かったため、可能な限りバグの出ない方法を選んだのだろう。
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スキルの調整は正式な発表がなかったため、修正されていたことが発見された時には既に発売から5年近い年月が経過していた。
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前述の通り悪い意味で攻略情報通りのプレイが求められるゲームであるため、攻略サイトで「弱い」と評価されたスキルは誰も使わず、発見が遅れた。
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修正が確認されているのは「ラッキー」「スーパーラッキー」の二つ。弱い弱いと言われていたサユリ(スーパースキル「スーパーラッキー」を習得)の株が大幅に上がった。
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フィギュアはゲーム通りパーツを組み替えて遊べるのがウリだったが、関節が脆く慎重に取り外さないとすぐに破損する。
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後に「トレーディングアーツ」として種類を増やして単体発売されたが、「パーツかかみ合っていない」「それを誤魔化すため塗装をやたら厚塗り」「塗料で関節が固まっていて腕を動かしたらポールジョイントがねじ切れた」と、阿鼻叫喚の報告が相次いだ。第2弾も発売されたが、こちらは商品としてちゃんと改善されている。
アルティメットヒッツ
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ヒストリー版の単体発売。ヒストリー版と違いはない。
ゲームアーカイブス
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アルティメットヒッツ版を配信。
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PSP版を高速読み取りで起動した場合のみ、ハード特性によりロード時間が半減される。今から遊ぶなら間違いなくこれ一択。もちろん、可能な限り高速なメモリースティックを準備すること。
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PS3版はオリジナルとロード時間に大差ないとの情報あり。注意。
余談
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本作は『FM』シリーズの大ファンである漫画家・吉田戦車とコラボレーションを行っている。ネットワークにて特定の手順を踏めば、珍妙なデザインのネタヴァンツァー、その名もズバリ「嫌なヴァンツァー」を使用できる。ちなみのこのパーツ群は見た目やふざけたパーツ名とは裏腹にゲーム中最強クラスの性能を誇っている。
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アロルデシュ軍の軍事蜂起描写に関して、スクウェアはバングラディシュ大使館から抗議を受けたという逸話がある。
その後の展開
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2022年2月に初代のリメイク『フロントミッション ザ・ファースト:リメイク』が発表され、それと同時に本作のリメイク『フロントミッション セカンド:リメイクも発表された。
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対応機種はSwitchで、2023年10月5日発売。
最終更新:2023年10月07日 23:48