アルトネリコ2 世界に響く少女たちの創造詩
【あるとねりこつー せかいにひびくしょうじょたちのめたふぁりか】
ジャンル
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ムスメ調合RPG
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対応機種
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プレイステーション2
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発売元
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バンプレスト
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開発元
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ガスト
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発売日
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2007年10月25日
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定価
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7,140円
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レーティング
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CERO:B(12才以上対象)
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廉価版
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PlayStation 2 the Best 2008年8月7日/2,940円
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判定
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良作
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アルトネリコシリーズ : 1 - 2 - 3
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概要
『アルトネリコ』3部作の第2作。
第二の塔がある「メタ・ファルス」が舞台となり、「御子」と呼ばれる特殊な力を持つレーヴァテイル(以下、RT)と共に、新たな大地「メタファリカ」の創造を目指す。
また、本作はRTとの恋愛関係以外にも親子や仲間同士のつながりも描かれ、全体的に「絆」を重視した内容となっている。
前作のキャラも多数登場する。
前作からの変更点
調合やコスモスフィア(以下、CS)といったシステムは継承されており、基本的なスタンスは変わっていない。
戦闘
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今作のバトルは攻撃フェイズと防御フェイズを交互に行う形になった。また、バトルのメンバーも前衛2人にRT2人という配置になり、互いにパートナーのRTを守りながら戦うスタイルになった。
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攻撃フェイズは、方向キーの上下左右に対応した攻撃を繰り出す形になった。上下左右の攻撃にはそれぞれ異なる効果があるため、戦況に応じて使い分けなくてはならない。
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画面上にはRTの要求を示すグラフがあり、グラフに対応した攻撃を出すことでRTの要求に応えることが可能。要求を満たすと詩魔法の進化、前衛の攻撃の変化など様々な恩恵を得られる。
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防御フェイズは、表示されるバーが重なり合った瞬間にボタンを押すことで敵の攻撃を防げる。タイミングが正確であるほどダメージを軽減でき、詩魔法の威力も増加する。
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詩魔法も細かい仕様が変化し、補助魔法である「青魔法」で溜めた力を攻撃魔法である「赤魔法」に還元できるようになった。これにより、防御から攻撃への切り替えがスムーズに行えるようになった。
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ある条件を満たすことで「合体詩魔法」が発動できるようになった。
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「レプレキア」という詩魔法が追加され、協力関係にあるにI.P.D. を従えて大人数での詠唱が可能になった(ヒロインの1人のみが使える)。最大100人のI.P.D.を従えることが可能であり、詠唱速度が凄まじいレベルで高速化する。
I.P.D.保護
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暴走状態になったI.P.D.を保護し、心を癒すことで冒険に協力してくれるようになった。
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全部で100人のI.P.D.がおり、全員外見や性格などが細かく設定されている。
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「ダイバーズセラピ」
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保護したI.P.D.にダイブし、会話を繰り返し心を癒す作業。選択肢を選び、規定のポイントまで目盛りを増減させなくてはならない。
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「ムスメパワード」
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心を癒したI.P.D.の力を借りる(装備する)ことにより、能力の上昇や防御補正などの特殊効果が得られる。前作の「パワード」のようなシステム。
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同じI.P.D.を装備し続けると、経験値が溜まり付加効果が追加される。
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「クローシェ親衛隊」
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心を癒したI.P.D.が出す条件を満たすことで、親衛隊に参加してくれるようになる。親衛隊に加わったI.P.D.はレプレキア使用時に詠唱に参加する。
デュアルストール
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「デュアリスノ結晶」という特殊な結晶を浮かべた湯にRTを入れることで、レベルアップや特殊効果の付与が出来る。
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入浴剤や小物を使用することもできる。投入したアイテムとキャラの組み合わせで、イベントが発生することも。媚薬っぽい入浴剤など、明らかに狙ったものもある。
コスモスフィアの仕様変更
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ルートに入ったヒロイン以外のCSは、浅い階層にしかダイブ出来なくなった。
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また、ストーリーの進行に合わせてCSの攻略に制限がかかるようになった。
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バックログや音声再生など、テキストゲームによくある機能も追加された。
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「ママキタボタン」の搭載。CSプレイ中にセレクトボタンを押すことで、画面をダミーのものに切り替えることが出来る。が、音声はカットできない。
調合
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調合は主に店で行う形になり、店によって調合出来る物が違うようになった。
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同じレシピでも調合を手伝うヒロインによって完成形が変化するようになった。
評価点
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前作同様練られた世界観。
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第一の塔とのつながりや3本の塔を含めた世界全体の現状が語られ、前作以上の広がりを見せた世界観に感心したファンは多い。
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前作はストーリーが王道であることに賛否があったが、今作ではその反省を活かし二転三転するストーリーとなった。
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「様々な人物の思惑が交差する中、いがみあっていた人々が最後は大陸創造のために心を1つにしていく」というストーリーは高評価である。
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キャラクターも魅力的なキャラが多く、評価が高い。一部の女性キャラが攻略対象でないことを惜しむ声も多い。
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声優は遊佐浩二氏・沢城みゆき氏・小清水亜美氏など有名どころが担当しており、豪華になった。
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ヒロイン同士の会話も描かれるようになり、ヒロインの描写に関してはさらなる掘り下げに成功している。
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CSもよく出来ており、ヒロインのトラウマ・悩み、主人公に対する愛情や独占欲が印象的に描かれている。
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本作のラスボスは、ルートによってはキャラクターが詳細に描かれること、自分なりの正義感を持っていることから「倒したくないラスボス」と評価するプレイヤーもいる。
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音楽は今作でも非常に評価が高い。ヒュムノス、BGM共に良曲ぞろいである。
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ヒュムノスは前作同様、志方あきこ氏・霜月はるか氏・みとせのりこ氏・石橋優子氏が担当している。また、Dahna氏による男性声のヒュムノスも一部のルートで登場し、「ヒュムノス = 女性声」と思っていたファンを驚かせた。
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ヒュムノスによる演出面も進化しており、場面とヒュムノスの印象づけに成功している。
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ED曲は「2つの歌が合わさり、1つの曲になる」という凝った作りになっており、高い評価を得ている。
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戦闘が前作以上に斬新なものになった。
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「斬新で面白い」「音ゲーっぽさ(音ではなく視認に頼る形なので正確には違う)が作品に合っている」という感想もある。
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前衛に派手な必殺技が追加されたことも好評である。
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レプレキアも「大勢のI.P.D.による大合唱」という規模の大きさで多くのプレイヤーを魅了した。溜めた詩魔法を放ち敵を一掃する爽快感は、今作でも健在である。
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イージーモードに難易度を変更出来るので、苦手なプレイヤーへの配慮もきちんとされている。
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デュアルストールによるRTの育成も斬新である。小物や入浴剤もバリエーションが豊富で凝っている。
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タオルに空気を溜めて遊んだり、ウトウトして溺れかけるなど、ヒロインたちのリアクションもかわいらしいものが多い。
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親衛隊のメンバー集めなど収集・寄り道要素は今作も多い。
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クリア後のおまけでCSや調合などのイベントを再プレイできるようになった。
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今作でも健在のバカゲー要素。
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前作以上に悪ノリしている部分があり、その突き抜けっぷりは高く評価されている。
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デュアルストールも要するに「お風呂」であり、色々理由だの設定だのを語ってまで、しかもゲーム中の重要要素としてゲームに導入したスタッフの情熱に驚いたプレイヤーが多かった。
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音声だけ聞くといかがわしいセリフも健在である。
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ママキタボタンの搭載により、前作以上に「これなんてエロゲ?」と言われることに。
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最強武器が「色々ゴチャ混ぜにしたら出来たやつ」というネタ装備だったことも、多くのプレイヤーを驚かせ笑わせた。どう見てもガラクタです。しかも、前作のラスボス考案。
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EDで、ヒロインの「どうして私のことを好きになったの?」という質問に対する回答を選択肢の中から選ばなくてはならないのだが、3つのうち2つがネタ性の高い選択肢だったことも話題となった。
賛否両論点
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主人公のクロアがやや空気気味。
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今作のストーリーで最も重要なのは「二人の御子の絆」であるため、クロアは後半蚊帳の外気味である。
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「このくらいが丁度良い」という意見もある。また、一部の百合好きには女性キャラの絆がピックアップされたのが好評だった。
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ヒロインの1人であるルカ。
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序盤では「かわいい幼馴染」として描かれているが、ストーリーの途中で「ネコを被ってクロアを利用していた」ことが発覚する。そのため、「裏切られた」「騙された」と感じるプレイヤーが続出した。
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CS内での描写もきついものが多く、殊に、Lv.7におけるルカの言動は「危険な情事」や「運命の女」といった映画を思い出させるほどの狂気をはらんでいる。しかも、職業上の特技を利用してCSに細工までしていた、
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ルカのCSを最後まで攻略すると、心の奥底に眠る彼女の本心が語られ上記の件もフォローされるため、ルカを好きなプレイヤーも多い。しかし、最後の最後で自演でとんでもない行動に走ってしまったため、少々興ざめである。
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調合の仕様の変化。
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店ごとの個性の演出、店主のキャラクターづけには成功しているため肯定的な意見もあるが、移動の面倒さやテンポの悪さを指摘する意見もある。
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前作ネタが多い。特に、ジャクリとスピカによる会話で顕著。
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前作ファンからは「前作を大切にしていて嬉しい」、新規層からは「前作に興味が持てた」と肯定的な感想が出ているが、「疎外感がある」「内輪ネタで盛り上がってて寒い」という否定的な意見も少なくない。
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本作の世界での物語はきちんと完結するものの、EDに次回作をにおわせる描写がある。
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次回作への期待が高まったプレイヤーと、露骨な次回作のにおわせ方に萎えたプレイヤーとで賛否が分かれた。もっとも、メタ・ファルスの物語は完結しており、関わるキャラはせいぜい2名である。
問題点
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世界観は広がったものの、用語が大量に増えたため、物語や設定の全貌を理解するのが難しくなった。
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用語の説明も、ゲーム内の「用語集」や設定資料集といった関連書籍に任せている節があるため、ゲームをプレイしているだけでは少々分かりにくい。
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ルートに入ったヒロインは中盤に長期にわたってメンバーを離脱するため、「選ばれなかったヒロインの方が一緒にいる時間が長いのはおかしい」という批判が多かった。
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やっと出てきてもわがままに振り回され、ミニゲームに付き合わされるので「せっかく選んだのに嫌いになった」という声も少なくない。
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ミニゲームもあまり必要性が感じられず、無理矢理ねじ込んだ感が強い。
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前作と同様、全てのエンディングを見るには周回プレイが必須であるが、引継ぎなどの要素はない。
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序盤にルートの分岐があり、最終的には共通のストーリーとなる構成も、前作と同様である。分岐による違いも少ない。
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見ていてキツい描写が多い。
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ヒロイン同士でケンカをする場面があるのだが、その様子が「ぶりっ子してんじゃないわよ!」→「うるさい白豚!」といった口汚い罵り合いであったため、「ゲームでこんなもん見たくない」と嫌悪感を示すプレイヤーが続出した。
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建前を捨てた本音のぶつかり合いだと思えば、真の友好のための通過儀礼的なものとも捉えられようが、かわいいヒロインをメインに据えたゲームとしてはやはりきつい。
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仲直りのさせ方については「身分や育った環境が原因で起こったケンカの解決策になっていない」と指摘する声がある。
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また、ヒロインが町の住人に「死ね」だの何だとの罵倒されるような場面もある。
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直後に「御子様頑張れ」と手の平を返すこともあって、「こんな奴ら救いたくない」と住人に悪い印象を抱くプレイヤーも少なくなかった。
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ヒュムノスの演出はよく出来ているが、それ以外の演出部分に詰めの甘さが見られる。
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「幼馴染の母親が敵に攻撃される」「ヒロインが住人に非難される」という場面で、クロアが棒立ちで何もしていないように見えることがよく指摘される。
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回想シーンがまめに入り、ストーリーのテンポを悪くしている。
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グラフィックの出来があまり良くない。部分的には良くなっている所もあるが全体としては前作より劣化している。外注に頼りすぎた結果か出来にムラが目立つ。特にI.P.Dのグラフィックは酷い。
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フィールドはどこが歩けるのか分かりにくい部分がある。特に奥へと続く通路に気付きにくい。
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フィールドグラフィックは劣化ペーパーマリオのごとく一枚の板で出来たオブジェクトで擬似2Dとして構成されている。手抜きにしか見えない。その為設定上は色々なロケーションがあるのに、どこも似た様な場所を走らされている感覚に陥る。
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主人公の走りモーションの出来が悪く、移動も遅いことから「競歩」と言われている。
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また、このゲームの売りの1つでもあるコスモスフィアへのダイブ(ギャルゲーパート)も前作から進歩が見られず、エフェクトや効果音も使い回しが多くて盛り上がりに欠ける。
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戦闘は斬新ではあるものの、細かい部分での不満点が目立つ。
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攻撃フェイズには時間制限があるため、戦略を考える暇もなく右下のインジケーター(菱型のレーダーのようなもの)を見ながら要求された方向キーとボタンを押すだけになりがち。自分の意思で戦っている感覚もなく、キャラクターの攻撃エフェクトを見ている余裕もない。
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防御フェイズでは音ゲーのように流れてくるバーに合わせてボタンを押すことになるのだが、PERFECTならばボスの攻撃ですらダメージを受けない。
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はっきり言って、この「BGMに関係ない音ゲー」の成否があまりにも重要すぎる。レベル上げもせず、装備がどれだけ適当でもこの防御フェイズさえ完璧ならラスボスですら雑魚と変わらないし、逆にいうとどれだけレベル上げをして装備を整えようとも防御フェイズが苦手ならそこで詰むことになる。
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さらに、一部の敵の攻撃は画面全体がグラグラと揺れて視認し辛くなり処理落ちもするため、防御の入力タイミングがずれてほぼカン頼みになる。
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前半は上記の防御フェイズの慣れの問題もあって苦戦することもあるが、後半になって慣れてくるとムスメパワードや強力な仲間キャラの存在もあり、ヌルゲー化しやすい。
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前衛の攻撃性能が低下し、時間をかけて魔法を溜め放つバランスになった。コンセプト上は正しいものの、雑魚戦が毎回長引く結果に。
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その対策が、上記のムスメパワードによる確率で即死効果を付加するというもの。大味。
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後半は必殺技と合体魔法を連発する戦い方が多くなるため、飽きやすい。
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「RTが2人で謳う」というシステムにもかかわらず、パーティの出入りが激しくRTが1人しか参加出来ない状況が多い。
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また、RTの性能差を不満に思う声も多い。クローシェにはレプレキア、ジャクリには強力な詩魔法があるのに対し、ルカは何の特殊能力もない。
総評
本作は前作の不満点を多数改善し大きく進化を果たした内容となった。
前作で多くのプレイヤーを魅了した世界観もさらなる広がりを見せ、斬新な戦闘システムも本作の設定や雰囲気を活かしたものになった。
バカゲー要素はユーザーの予想の斜め上を行くものが多かったため、前作同様好意的に受け取られている。
新しい不満点や詰めの甘い部分も見られるが、感動的なストーリーや良質な曲による演出などの点によってしっかりカバーできており、本作を「シリーズで1番好き」と評価する声も多い。
余談
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今作も「トウコウスフィア」で裏設定が語られている。
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北米ではAr tonelico II: Melody of Metafalicaというタイトルで2009年1月20日に発売された。
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IGNという海外ゲームサイトで2009年のBest PlayStation 2 Gameに選ばれた。
最終更新:2024年05月22日 14:44