アルトネリコ 世界の終わりで詩い続ける少女
【あるとねりこ せかいのおわりでうたいつづけるしょうじょ】
ジャンル
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ムスメ調合RPG
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対応機種
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プレイステーション2
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発売元
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バンプレスト
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開発元
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ガスト
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発売日
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2006年1月26日
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定価
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7,140円
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レーティング
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CERO:12歳以上対象
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廉価版
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PlayStation 2 the Best 2006年12月7日/2,940円
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判定
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良作
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アルトネリコシリーズ : 1 - 2 - 3
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概要
『アトリエ』シリーズで名を馳せたガストが、バンプレストとの共同開発で世に出したRPG。
『イリス』3部作などと同様に、世界を救うことがストーリーの中心となっている。
特徴
世界観・設定
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本作の特徴の1つとして挙げられるのが、SFとファンタジーを融合させたような雰囲気を持つ、壮大で緻密な世界観・設定である。
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ガストのサウンドクリエイター兼本シリーズの製作総指揮である土屋暁氏が、在野時代に行っていたTRPGの設定を出発点としている。
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作中の舞台は空中大陸であり、中心には「アルトネリコ」と呼ばれる巨大な塔が建っている。合わせて3本が建造され、それぞれが少しずつ異なる世界観を持っている。
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それぞれの塔の物語は『1』~『3』で1つずつ描かれていく。初代となる本作では「ソル・シエール」の世界が描かれる。
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キャラクターの設定も非常に凝っており、特にヒロインの設定は斬新で非常に練られたものになっている。
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ヒロインはいわゆる魔法使いキャラであり、本作では詩を力に換える能力を持つ「レーヴァテイル」(以下、RT)という人工生命体(及びそれと人類の子孫)となっている。階層構造の精神世界「コスモスフィア」を持つなど多数の固有の設定がある。
詩・音楽
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本作の最大の特徴ともいえるのが「音楽」に関する部分である。「詩」が主題のRPGということで、「ヒュムノス」と呼ばれる詩が存在している。
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ヒュムノスは、エスニック風の曲調に乗せてヒュムノス語の歌詞が流れるという、かなり独特な中毒性を備えている。ゲーム本編で大掛かりなことをやるためにヒュムノスが謳われ、物語を盛り上げるようになっている。
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音楽とゲームの世界観を結びつけるということは他のRPGでもやられているが、ストーリー上の演出と音響効果とをリンクさせる本作の手法はかなり手が込んでいるといえる。
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ヒュムノスを謳うのは作中のキャラを担当する声優ではなく本職の歌手。志方あきこ氏・霜月はるか氏・みとせのりこ氏・石橋優子氏の4人が担当している。
コスモスフィア
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ヒロインの精神世界となるコスモスフィア(以下、CS)に潜り込み、ヒロインの悩みを解決することで新しい詩魔法(魔法)を生み出すことが出来る。
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精神世界ではテキストが中心となって進行し、重要な部分では一枚絵が表示される。階層によって展開は様々で、ギャルゲーのような展開をする層があったり、ヒロインの葛藤が重苦しく描かれたりする。
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深い階層にいくほど「ヒロインの深層心理」になっているため、CSを進めていくとヒロインの汚い面や過激な面が現れてくるのが特徴的である。時には、主人公に対して過激なアプローチをかけてくることも。
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CSをクリアすることで、ヒロインの衣装が入手出来る。衣装を変えることでヒロインの能力を変化させられる。バスローブや着ぐるみなど、ネタ枠もある。
フィールド
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2Dで描かれたフィールドマップで「緑魔法」という魔法を使い、物を凍らせたり、風を起こしたりしながら仕掛けを解いていくのが、探索の中心となる。
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エンカウントはランダム方式だが、画面に表示される「エンカウントバー」が空になると敵が出現しなくなるため、バーを空にしてからじっくりと探索を行うことも可能である。
戦闘
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戦闘はコマンド選択式で、前衛3人とRT1人の隊列で行われる。詩魔法の力を溜めるRTを前衛で守りながら戦っていくことになる。
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詩魔法は溜めれば溜めるほど力を増していく。最大レベルまで溜めると演出が派手になり、威力も桁違いなものになる。桁違いすぎて、前衛の攻撃はほぼおまけである。
カスタマイズ
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「グラスノ」と呼ばれる特殊な結晶を使い、様々なカスタマイズが可能。
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「パワード」
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キャラクターの装備にグラスノを取り付けることで、装備の能力を底上げしたり、装備者に属性攻撃などの様々な特殊効果を付与することが出来る。
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「インストール」
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RTにグラスノを取り込ませることで、詩魔法の威力を上昇させたり、状態異常などの効果を付与することが出来る。
調合
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本作では「グラスメルク」という名称がついているが、基本的には『アトリエ』シリーズの錬金術と似たシステムであり、様々なアイテムとグラスノを混ぜることで装備や道具が作成出来る。
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調合に参加したヒロインが作成されたアイテムについてコメントし、独自の名称を提案してくる。
その他
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クリア後に、イベントCGやヒュムノスを鑑賞出来るおまけモードが出現する。
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製作側のコメントもついているので、設定に関する新たな発見も多い。
バカゲー要素
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ストーリーの本線はそれなりに真面目なのだが、設定面の一部やCSなどの寄り道部分にやたらとツッコミどころが用意されている。
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RTという種族固有の設定に、性的な何かをうかがわせるものが散見される。
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CSへは「ダイブ」という技術を用いて入ることになる。しかし、最初に出るダイブ屋の施設には、連れ込み宿のような怪しい看板がかかっている。
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RT(女の子)の側から「ダイブして」と頼むのは、慎んだ方が良い行為とされている。
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音声だけ聞くといかがわしく感じるセリフが多数ある。ヒロインに延命薬を投与する場面にいたっては、一種のプレイにしか見えないことから「問題のシーン」として一部で話題になった。
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上記のCSの過激なイベント、手に入る衣装のコスプレくささ(チャイナドレス、巫女さんなど)もあり、「これなんてエロゲ?」といわれることに。
評価点
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世界観は非常に作りこまれており、独自の設定に魅入られた人が多い。本編で語られない設定などもある。
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重要な用語は取扱説明書やゲーム中でしっかりと説明されるため、「用語が多くて話が分からない」という事態になりにくい。
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細かい設定についてはメニューの「用語集」でフォローされるため、「もっと細かい部分まで知りたい」というプレイヤーへの配慮もされている。
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エロゲだ何だと言われることが多いが、RTの設定やCSの内容もプレイした人からは好評である。
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人間とRTの間で支配・被支配の関係が出来ている描写、CSで描かれるヒロインの葛藤や汚い一面を主人公と共に乗り越えていく描写は高く評価されている。
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キャラクターが魅力的。CSで内面を徹底的に描かれるヒロインは3人とも多数のファンがついている。
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本作最大の特徴であるヒュムノスに対する評価は非常に高い。また、作中のBGMも良曲ぞろいである。
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本作独自の言語であるヒュムノス語は文法などもしっかりと作られており、公式側で読み解く手引きがされている。
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「ゲームはプレイしていないがヒュムノスコンサートは買い揃えている」という人がいるほどである。
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カスタマイズ要素が豊富なため、自分好みの性能を持ったキャラクターを作り出せる。
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RTの衣装はバリエーションが豊富。能力を重視するも、外見を重視するもプレイヤーの自由である。
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前衛・後衛の一体感を重視し、独自の要素を多数取り入れたバトルは斬新といえる。
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最大レベルまで溜めた詩魔法が、派手な演出と共に敵を一掃する様子は爽快である。
賛否両論点
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設定は凝っているものの、ストーリー自体は王道なものである。
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「王道だからこそ面白い」という意見と「展開が読めすぎてつまらない」という意見がある。
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主人公が冒険の末に出した「答え」に関しては、好意的な意見が多い。
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全てのヒロインのCSが最深部まで攻略出来る。
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「CSは心の全てをさらけ出す作りになっているため、深い階層に入れるのはRTが心を許した人(恋人)だけ」という設定がある。しかしルートに入ったヒロイン以外も最深部が攻略出来るため、「恋人でもない人の心の全てを見るなんて、ひどくないか」という意見がある。「ライナーは浮気者」という印象を抱いて彼を嫌悪する人も出た。
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「RTの強化につながるんだから、全員出来た方が良い」という意見もある。また、一部のハーレム好きには好評。
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フィールド上のグラフィックやエンカウントゲージが同時期の『イリスのアトリエ エターナルマナ2』からの使い回し。本作とアトリエシリーズの世界観には特につながりはない。
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続編以降はグラフィックがオリジナルになっているが、こちらはこちらで気になる点があるため、使い回して良かった点も一応ある。
問題点
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主人公であるライナーへの批判が多い。
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よく批判されるのが、ヒロインの1人であるミシャに対する行い。「幼馴染なのに存在を忘れ去っている」「他のヒロインを救うために見捨てる」など、酷い仕打ちやデリカシーのない行為が多い。ハーレム物の主人公では割とあることだが。
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事情がややこしいので「謳ってくれないか」で検索すると分かりやすい。少なくともミシャファンの神経を逆撫でしたのは確かである。
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また、「棒読み気味」「滑舌が気になる」という意見も多い。「『FF12』のオイヨイヨ並」という人もいる。
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「慣れると別に気にならない」「ライナーのキャラをよく表現しているので、これで良い」という好意的な意見も多い。
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なお、ライナー役の布施雅英氏は、今では、演技力が向上して、他のアルトネリコ声優陣に引けを取らないレベルに達している。
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実際、ライナーが外部出演した際には棒読みではなくなっていた。
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全体的にお使いの要素が強く、RPGとしての面白さは並程度。
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頻発する強制移動、パーティメンバーの集合離散など、悪い意味で和製RPGらしい。
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強力な詩魔法やパワードの存在により、戦闘もヌルゲー化しやすい。
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全てのエンディングを見るには周回プレイが必須であるが、引継ぎなどの周回用の要素がない。
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ルート分岐直前のセーブデータを残しておけば多少周回の手間は減るものの、分岐はストーリー序盤で起こるため、再びエンディングを見るまでに時間がかかる。
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ルートが違っても最終的には共通のストーリーとなるため、分岐の面白みが少ない。
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ルート分岐の内容を端的に表すと「二手に分かれる仲間達のうち、どちらに付いて行くか」だが、どちらを選んでも両方の過程・結末とも大筋で全く違いが無く、選ばなかった仲間の動きに関しても、説明・描写が不足している。
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バグやフリーズといった不具合が多い。
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フリーズの頻度には個人差があるものの、「メニュー画面を開いて装備を変えていたらフリーズした」「マップを切り替えたらフリーズした」といった報告が多数あり、こまめなセーブが推奨されている。
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バグは細かいものからゲームの進行に影響を及ぼす危険なものまである。
総評
ゲームとしてはあまり歯応えのある方ではなく、シナリオも王道的である。
しかし、特殊で印象的な世界観およびヒュムノスや豊富な寄り道・収集要素、あちこちに漂うネタ要素に魅入られたプレイヤーは多く、本作を高く評価する声も多い。
余談
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おまけのCSに『アトリエ』シリーズのキャラが多数登場し、「マルローネ」「エルフィール」の衣装が入手出来るなど、『アトリエシリーズ』ファンへのファンサービスが多い。
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ガストが公式で運営しているファンサイト「トウコウスフィア」などを介し、本作世界の裏設定が詳細に語られている。
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2015年12月にドメイン失効によりサイトが消滅してしまった。
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2008年に発売された『クロスエッジ』に、本作のキャラが登場した。
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上記の布施氏を含むメインキャストの大半が、当時アイドル声優事務所として一時代を築いた「ラムズ」の所属声優である。
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同社の戦略である「1つの作品を自社声優で固める」というやり方を語る上で、本作が槍玉にあがることも多い。
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その後ラムズがどうなったかは、しかるべきところを参考にしてほしい。
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東京2020オリンピックにて、オーストラリア組によるアーティスティックスイミング演技に本作のOP『謳う丘 -Harmonics EOLIA-』がBGMとして使用された。
最終更新:2024年05月22日 14:44