聖剣伝説 VISIONS of MANA
【せいけんでんせつ ヴぃじょんずおぶまな】
ジャンル
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アクションRPG
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対応機種
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プレイステーション5 プレイステーション4 Xbox Series X/S Windows(Steam/Microsoft Store)
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発売元
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スクウェア・エニックス
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開発元
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NetEase桜花スタジオ
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発売日
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2024年8月29日
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定価
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8,778円(税込)
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レーティング
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CERO:B(12才以上対象)
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判定
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なし
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ポイント
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グラフィックとキャラは良好 独特な倫理・世界観 『ToM』のフィードバック不足
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聖剣伝説シリーズ
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概要
売り切り作品としてはニンテンドーDSで発売された『聖剣伝説 HEROES of MANA』以来の聖剣伝説シリーズ完全新作。据置機では『聖剣伝説4』以来の完全新作となる。
プロデューサーはモバイル版『聖剣伝説 -ファイナルファンタジー外伝-』から開発に携わってきた小山田将が担当し、キャラクターデザインは3Dリメイク版『聖剣伝説3 TRIALS of MANA』(以下ToM)でキャラクターデザインを担当したHACCANが引き続き担当している。
シリーズの生み親である石井浩一氏もモンスターグラフィック監修として参加し、モンスターのアートワークに『4』でモンスターデザインを担当した吉岡愛理が参加する等、旧作に携わったスタッフも参加している。
世界観自体は過去作を思わせるワードが頻出するが、決定的に時系列が繋がっている描写もなく世界観の繋がりは曖昧にされている。
ストーリー自体は本作内で完結するため過去作をプレイしていなくても理解するのに差し支えない。
開発は中国大手のNetEase(網易)社傘下で、中国・広州と日本・東京に拠点を構える桜花スタジオ(櫻華工作室)が行っている。
ストーリー
火の村ティアナに住む主人公ヴァルは
幼馴染の少女ヒナを誘い、
フェアリーを迎える祭りへ向かっていました。
フェアリーは4年に1度、
マナの樹へと旅立つ御子を任命するために各地を訪れます。
選ばれた御子は世界に満ちるマナの循環を支えるために、
その魂を捧げることになります。
やがて陽が落ちると空がきらめき
ヒナの前にフェアリーが舞い降ります。
ヴァルは魂の守り人として、御子に選ばれたヒナを守るため
村人たちに祝福されながらマナの樹を目指す旅に出ます。
(公式サイト Storyより引用)
用語
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ネタバレ要素も含むため格納
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クィ・デール
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本作の舞台となる世界。太古の時代には「ファ・ディール」と呼ばれ、人間界や精霊界等、複数の世界が干渉すること無く別々の世界として存在していたが、千年前に起きたアーヴ戦争により境界が壊され、現在の統合された世界が生まれた。
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聖剣
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アーヴ戦争の時に目覚めた神獣を沈める為に英雄が振るったとされる伝説の剣。女神から託されたと伝えられている。
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御子
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フェアリーの指名により選ばれ、マナの樹に魂を捧げる事を役目とする人物達の事。クィ・デールでは最も名誉のある役目だと称えられ、4年に一度、魂の守り人が各国の御子を集めてマナの樹が座する聖域まで旅をする事となる。御子が魂を捧げなければ、各地で災いが起きてしまう。
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魂の守り人
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御子をマナ樹まで送り届ける事を使命とする選ばれた者。過去作で言う「マナの樹に選ばれた勇者」に該当し、御子同様、フェアリーから指名される。魂を捧げると命を落としてしまう御子とは異なり、数回に渡って御子の度に同行する。
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精霊
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『聖剣伝説2』から登場している馴染みの8精霊。普段は人々の目につかない所に存在し、これまでのシリーズで登場した精霊達は「大精霊」と分類がなされ、本作から新たに幼生体の様な姿をした「小精霊」が登場する。
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大精霊たちのデザインは『4』および『CoM』に準拠している。
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種族
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クィ・ディールには「ガイア族」、「草人」、「有尾人」、「ドラゴン族」、「獣人族」等、様々な種族が存在している。
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システム関連
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フィールド
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原作を意識し街道に沿ったフィールド造形だった前作の『ToM』から、ダンジョン以外の各エリア内は基本的には見えない壁や侵入不可能な地形のない構造になった。
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公式サイトでは「オープンフィールド」と称しており、マップごとのロードを挟む接続部が存在するものの、広大なフィールドを自由なルートで進めるようになった。
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マップが広くなったことに合わせて、新たに陸上の移動手段となる生物であるピックルが登場した。序盤のイベント後に呼び出せるようになり、騎乗中は高速移動が行える。
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フィールド上では敵に接近するとそのままシームレスにバトルが始まる。
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戦闘システム
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前作にあたる『ToM』を発展させたバトルが特徴。□ボタンで弱攻撃のコンボ、△ボタンで強攻撃を繰り出す事が可能であり、攻撃をヒットさせるとSPゲージが溜まっていき、100%で必殺技を放てる。
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『ToM』同様、戦闘時には行動範囲となる円型のサークルが表示され、サークルから出ようとすると逃走ゲージが溜まって行き、全て最大になると逃走可能になる。
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精霊器(後述)を装備していると精霊を使った特殊技が使用可能であり、一度使用するとクールタイムが設けられ、0になる事で再び使用可能となる。
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パーティーキャラについて
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『ToM』との違いとして主人公の選択・シナリオの分岐要素はなく、シナリオの構造としては『初代』や『2』同様の特定の主人公を中心とした物語を追う形となっている。
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全5人のプレイアブルキャラから3人を選ぶPT制となっており、非戦闘時ならばメニュー画面でPTメンバーを入れ替えられる。
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操作キャラはPTメンバー3人の中から十字キー上下でいつでも入れ替えられるが、街中で操作するのは主人公であるヴァル固定となっている。
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これに加え、ストーリーの特定期間中は一時的に操作できないサポート役の同行者が加入し戦闘に参加することもある。
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クラスチェンジ・育成要素
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各地で精霊の力を宿した道具である「精霊器」を入手するとクラスチェンジできるようになる。
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『3』の様なクラス1~3と光・闇の分岐概念はなく、8属性ごとに対応するクラスが一つだけ定められている。
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一度クラスを選んだら変更できない『3』とは異なり、非戦闘中であればいつでも任意のクラスに変更することが可能。
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各キャラの育成要素としてエレメントボードがあり、各クラスに応じた8属性分の項目が存在する。
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エレメントボードでは専用ポイント「EP」を消費することで、特技やアビリティ・当該属性のクラスになっている場合のみ使える特殊行動等を習得できる。
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EPの獲得方法はレベルアップと、各地に点在する精霊石を同属性の精霊器で解放することの2つ。
EPの消費量は、風の第1段階で5→風の第2段階で10→月の第1段階で5→風の第3段階で15…といったように属性・段階別で増えていく。EPが足らない場合、各地に落ちている「ゴールドクローバー」で補填する手もある。
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なお、一定の段階ごとに強化上限が設けられており、そちらはキャラ別の「しずく」を入手・消費することで開放可能。
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精霊器
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大精霊の力を宿した特殊なアイテムであり、バトル中に使用すると属性ごとに異なる効果が発動する。
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フィールドマップやダンジョンでは特定の場所で使用する事によって仕掛けを作動させ、進行不可能な場所に足を踏み入れる事ができる。
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精霊の住処
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世界各地に存在する制限時間付の特殊なバトル。対応する属性の精霊器を所持していると挑める。制限時間内に敵を倒しきると特殊なアイテムを入手出来る。
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精霊の住処には(小)と(大)の概念があり、特定属性の(小)を全て攻略すると(大)に挑戦できるようになる。
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基本的に雑魚ラッシュの(小)とは違い(大)は属性ごとのコンセプトが定められた高難易度のチャレンジ要素となっている。
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龍脈
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SFC版『3』『新約 聖剣伝説』のマナの女神像を発展させたシステム。
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世界の各地には上に溢れ出たマナの結晶である「龍脈」が存在し、セーブポイントになっている。
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どの龍脈でも過去作の金と銀の女神像のような差異はなく、セーブと同時に体力回復も行える。
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龍脈を介することで同じ大陸内の移動可能ポイントへファストトラベルが行える。詳細は問題点にて述べる。
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サボテン君日記
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『聖剣伝説 LEGEND OF MANA』『新約』でも実装された収集要素。各国のフィールドのあちこちに隠れているサボテン君を見つける事によって日記を習得する事ができ、メニュー画面の項目から日記を閲覧可能となる。本作では日記の獲得数によって固有の成長要素が解禁される新要素が追加された。
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登場人物紹介
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ヴァル(cv,寺島拓篤)
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本作の主人公。初期クラスはモリビト。
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火の村ティアナ出身の少年で、御子を導く「魂の守り人」の次代として修行の日々を送っていた。ストーリー冒頭で幼馴染のヒナが御子に指名されたことで、二人一緒に御子の旅へと出発する。
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お人好しで困っている人を見過ごせない性格だが、鍛冶職人の父と剣術の扱いに長けたフェーゴに師事している為、村一番の剣士である。
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歴代主人公の中では比較的ポジティブで物分かりの良い性格な一方で、挫けやすい一面もあるため、作中通して悩みながら成長していく姿が描かれる。倒した魔物を魂石に変える事の出来る不思議な能力を有しており、本作最大謎の一つでもある。
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バトルでの性能は攻防に優れた前衛職。『3』のデュランに近い性能で、攻防に属性を付加するセイバー・シールド魔法などを習得する。
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ヒナ(cv,石川由依)
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ヴァルの幼馴染。CPU操作限定のサポートキャラとして戦闘に参加する。
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本と物語が大好きな少女。朗らかで優しく、村の皆に慕われている。補助魔法を学んだのは、修行に励むヴァルの身を案じての事である。
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ひたすら修行に明け暮れていたヴァルほどではないが、自身もティアナ村の外へ出た事はほとんどなく、火の御子として二人一緒に旅ができる事を嬉しく思っている。
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カリナ(cv,夏吉ゆうこ)
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ドラゴン族の少女。初期クラスはカンナギ。
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ヴァルとヒナが最初に出会った御子であり、風の谷ロングレンの出身。先祖由来の関西弁を話し、思った事は何でも口出しする性格である。いつもそばにいる聖獣の子供ラムコは友達でもあり、姉妹のようでもある大事な存在。
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ある事故で左翼を失って以来、周囲から「翼で風を読む力が弱まり、ひいては御子の素質も失った」と見なされ人間不信に陥っていた。しかし、ヴァル・ヒナ・ラムコの協力を経て「風の御子に選ばれ、広い世界を見て回る」という夢が叶ったことで、本来のムードメーカーぶりをみるみる取り戻していく。
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『3』のリースを連想させる敵・味方のバフ・デバフ系魔法を中心に習得する。また、パルミナ・ジュリの加入がある程度進んでからのためその間の魔法攻撃・回復役的な運用も視野に入る。
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また、カリナをパーティに入れている場合、聖獣の子供のラムコがサポートキャラとして戦闘に参加する。ラムコはたまに攻撃してわずかなダメージを与える程度だが、カリナの一部の特殊攻撃時に一緒に攻撃してくれる。
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モートレア(cv,羽多野渉)
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ネコ獣人の剣士。初期クラスはレンジャー。
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月の街エテラナ出身であり、ヴァル達が出会った2人目の御子。16年前のある事件によりエテラナが壊滅し、家族を亡くした過去を持つ。その事が原因で、幼少期の明るさを失って現在の憂いを秘めた性格となる。
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加入当初は生真面目な一面が目立つが、月の御子としてヴァル達と旅をするうちに、内面の変化や年相応の青臭さが出て生の感情も見せるようになる。
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他のゲームで例えるとシーフ・サムライ・ニンジャ等のジョブの要素を持つキャラ。獣人という要素は『3』のケヴィンを思わせるも、アビリティの傾向としてはホークアイが近い。
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パルミナ(cv,日笠陽子)
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有尾人が集う水の都エリスタニアの女王であり、ヴァル達が出会った3人目の御子。初期クラスはクイーン。
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数年前に前代の王である父を亡くし、若くして王位を継ぐ事となった。その後はまだ幼さの残る弟イアンを見守りつつ、階級制度の撤廃に尽力した父の政策を引き継ぎ、身分や貧富の差なく民に接している。それゆえ一部の貴族層を除いて人気も高いが、政策完遂前に水の御子に指名された事で、一抹の不安を抱いている。
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曲者揃いのパーティーメンバーの中では理性的な性格を持ち、誰に対してでも柔軟に対応する良識人。一方、気品溢れる性格とは裏腹に容姿の露出度が高く、『3』のリースやアンジェラ同様本作のお色気枠でもある。また、お忍びで民の暮らしを直接見て回ったり、大の演劇好きで他の大陸へ通い詰めたりと、なかなかの茶目っ気も持ち合わせている。
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『3』のアンジェラ同様の魔法使いタイプ。この手のキャラらしく物理耐久に不安がある反面、魔法攻撃や補助魔法に秀でる。
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ジュリ(cv,花守みゆり)
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樹の里ヴィラルスに住まう草人であり、ヴァル達が出会った4人目の御子。初期クラスはウォッチャー。
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『LoM』に登場した草人をかわいく擬人化した様な容姿だが、性別はれっきとした男。
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一見するとパーティーメンバー最年少に見えるが、草人自体が他の種族に比べて長寿であるため、最年長となる。その為、独特の死生観を持ち、加入当初は他人とあまり関わろうとしない辛辣且つドライな性格だったが、木の御子に選ばれた事によってヴァル達の旅に同行する事となり、内面に変化が生じていく。
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ちびっこ的な見た目から予想がつく通り『3』のシャルロットのような回復・サポートキャラ。召喚魔法や特定の相手への特効魔法などを習得するのもシャルロット同様。
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ニキータ(cv,神奈延年)
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エリスタニアを拠点とする豪商であり、世界中の獣人孤児を引き取る父親でもある。モートレアも彼に引き取られた孤児で、『父さん』と呼ばれている。
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「兎猫の商人は強欲」という風評に反し、儲けよりも義理や人脈を重んじており、幅広い層から支持される人格者。
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本作では『LoM』で使用された大柄体格の兎猫獣人デザインとなり、『2』『3』で使用された小柄のネコ獣人デザインは娘のマドレーヌ(cv,愛原ありさ)、フランソワーズ(cv,鈴代紗弓)、クリスティーヌ(cv,愛美)達に引き継がれている。
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アッシュ(cv,立花慎之介)
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闇の書殿ロロバッゾの若き書殿長。ヒナ同様、CPU操作限定のサポートキャラとして戦闘に参加する。
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書殿に携わる者は皆好奇心の塊だが、アッシュのそれは特に強い。記録の乏しい草人であるジュリを見るなり調べたがった末「小生は諦めませんからね」と怖がらせたり、一度調べ物を始めると眠らずに体調を崩す事もしばしば。
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近隣にあるバッザニアの書塔に魔物がはびこっている都合上、ヴァル達と出会った当初は「安全に探索するための戦力」と見なしていた。しかし彼もまた、ヴァル達との交流を経て内面に変化が生じていく。
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評価点
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改善されたゲームシステム
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過去作の変則的なシステムが見直され、歴代作で特に評価が高かった『2』『3』を踏襲したアクションRPGとなった。
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各国の主要都市や村で起きるイベントを進めながら目的地のダンジョンへと向かい、最深部に潜むボスを倒してイベントクリアと言うオーソドックスなRPGスタイルに回帰し、ランドメイクが採用されていた『LoM』やチャプター選択制の『4』で廃止されていた都市や村を繋ぐフィールドマップが復活。
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一方で、本作の探索要素は『4』を踏襲した3Dアクションアドベンチャー形式を採用し、高低差に富んだマップを二段ジャンプや精霊器を駆使しながら攻略していく事となる。
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精霊器による特殊移動もバリエーションに富んだ物となっており、サラマンダーの力を借りてロケットに乗ったり、ドリアートの力を借りて巨大な植物に乗ったりするなど非常に多彩で飽きさせない工夫が成されている。
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美麗なアニメ調の3Dグラフィック
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グラフィックは『ToM』の路線を受け継いだアニメ風ながら温かみのあるグラフィックで、『聖剣伝説』シリーズらしさを感じられる。
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特にシリーズの顔であるマナの樹と聖域はよく出来ており、旧シリーズのイメージイラストの様な絵画的なイメージ・現行のデザイナーのHACCAN氏の絵柄・本作独自のアニメ調のCGという3つの要素がバランス良く混ざって成り立っている。
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フィールド・キャラクター双方が『ToM』から順当にクオリティが上がっている。特に『ToM』に出演していた雑魚敵で本作にも続投している種族は、モデリングやテクスチャがリアル寄りに刷新され明らかにデザイン上の情報量が増えており、クオリティが上がったのを一目で実感しやすい。
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絵画的なグラフィックが特徴の『LoM』で初登場したキャラや『LoM』版準拠のデザインでは初めて3Dモデル化するキャラクターがいるが、本作の世界観に登場するキャラとして他のキャラと並んでも浮かないように違和感なく3D化できている。
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キャラクターデザイン
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特にクラスチェンジのデザインがかなり凝っており、5人×8種あるが同じ精霊器を使ってもキャラが違えば全く別のデザインになるため、着せ替え的な面白さがある。
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一部『3』と同名のクラスがあり、それらは見た目もそちらに寄せられているファンサービス要素がある。
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親しみを感じられる主人公一行
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メインの5人はいずれとも過去作の主要キャラを思わせる要素を持ちながらも、二番煎じにならないよう工夫したキャラ付けがなされている。
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まっすぐな性格のヴァル、ムードメーカーのカリナ、生真面目なモートレア、常識人だが意外な一面があるパルミナ、浮世離れした種族故の独自視点を持つジュリ、といずれも純真な人格。また、パーティーへの加入後は一貫して互いに信頼し合い、それを豊富な組み合わせのサイドトークで存分に披露するため、ユーザーが好感を抱きやすい。
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いかにもな正統派メインヒロインのヒナ、メンバー随一の曲者のアッシュとサポートの二人も同様。特にアッシュは最初はただの変人と思いきやなかなかおいしい場面が複数あるため、メンバーの中でも特に気に入ったとの感想もある。
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『ToM』では新エリアに入った時などにボイス付きのサイドトークが発生したが、本作では突入時のみならずフィールドマップの各所にもサイドトークが用意されており、探索中のにぎやかしになる。
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また、ボイス関連での評価点としてあるダンジョンにて複数名が諸事情で情緒不安になってしまうという場面があるのだが、ここでの役者陣の演技が非常に面白く、なかなか楽しいイベントになっている。
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JRPGの定番を押さえたシナリオ
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『2』以来のパーティー固定制が採用され、旅路の状況が理解しやすいものとなった。パーティー選択制による弊害でキャラクター同士の関わりが希薄だった『3』『LoM』や、序盤の時点で味方陣営が崩壊したまま理解不可能な方向に走ってしまった『4』よりも王道的で、人を選ぶ要素は本作では控えめになっている。
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後述のように色々設定を上手く消化できず賛否・問題点になってしまった部分はあるが、公式で愛がテーマと言ってるように、過去作ではあまり掘り下げられなかった男女関係・親と子・兄弟や、あるいは見ず知らずの誰かへの愛と言った様々な愛が描かれる。
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旅立ちに至るまでの過程でPTメンバーの各員が抱えた個人的な感情の問題が解消されたり、後半では旅を経たことによる人格の成長などはきっちりと描かれる。
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こう書くと固い話に思ってしまうかもしれないが、実際はいい意味で整合性やリアリティを考えていない勢い重視のギャグ的なイベントがちょくちょくあるため、随所で脱力して楽しめる。
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最終的な結末のシーンは過去作と被っておらず、ご都合的なハッピーエンドでも救いの無いバッドエンドでもない本作の独自色がある結末であり、評価する向きもある。
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豊富な武器・特技・アビリティ・モンスター
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武器カテゴリは5人×3種の計15種。同キャラの8+初期クラス間で被りがあるものの、他キャラとの被りはなく、必殺技(問題点にて後述)以外のモーションも幅広い。
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特技・モンスターは主に『2』と『3』のミックス、装備系アビリティの入手方法は『ToM』のポイント割り振り制から拾得・購入・交換制に変わっており、いずれも総数が非常に多い。
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過去作のモンスターが現在のハードスペックで描かれ動き回るだけでなく、ネームドモンスターの由縁に各シリーズの要素を匂わせたりと、シリーズファンが新しさと懐かしさの両方を楽しめるよう配慮されている。
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他にも、より上位の攻撃魔法・召喚魔法の実装、空中でも使用できる投擲技、本来は習得できない特技を使うことも可能となったアビリティシードシステムなど、シリーズ総決算の趣が強い。
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軽快でシンプルな戦闘
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3Dアクションと言えど『ToM』同様どちらかと言えばアクションゲームの腕前はそれほど要求されない作りになっている。
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敵の攻撃はよく見ていれば回避可能で、食らってしまった際のリカバリーも容易。リングコマンドを開いた際には時間停止することや回復アイテムの効果が強力なのもあって普段あまりアクションゲームで遊ばない人でも楽しみやすい。
賛否両論点
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独特すぎる世界観及び倫理観の登場人物・一般人たち。
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上述のあらすじの通り、作中世界観は4年に一度御子となった人間たちが魂を捧げることでマナの循環が行われ安寧が続く…という世界観となっている。
この「魂を捧げる」のは比喩表現や作中世界での特殊な用語などではなく、文字通りの意味合いを持つ。つまり、御子に選ばれた人間たちの旅路の果てに待つものは自分たちの死である。
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こうした人身御供は現実世界でも古代東アジアや中米、ヨーロッパなど世界各地で実在した文化である一方、当然ながら現代社会を生きる我々からすれば未開な前史時代のような印象を受けるであろう。
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しかしながら、作中では御子となることは大いなる名誉として捉えられており、御子となった人間は他の一般人から羨望の眼差しで見られる…という、現実世界での我々とは大きな価値判断基準のギャップがある設定が世界観の柱となっている。
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倫理観が全く異なるため、「あくまで作中世界内の価値観だからそういう物」と冷静な観点からの見方もあれば「特殊すぎて感情移入しにくかった」との率直な意見もある。
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ユーザー側がこの設定を受け入れるか受け入れざるかはどうであれ、受け継がれる意志は無駄ではないというヴァルの主張と、個々人の意志が世界をも動かす力となる世界観は作中で一貫している。
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『聖剣伝説』シリーズ自体麗しいビジュアルから重かったりダークな話になりがちなので、そういう意味でもシリーズの作風は踏襲してはいる。
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しかしながら、最後まで遊ぶと見方が変わる部分もあるかもしれない。
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(ゲーム後半・クリア後に解禁される要素を含めての重大なネタバレがあり)
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モートレアの養父であるニキータから受諾できるサブイベントがいくつかあるのだが、これの最終段階にて「モートレアを御子として送り出すことへの感情の葛藤」が分かると同時に、最後の救済を予兆させる展開がある。
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故にこうした現実世界の倫理観との溝を埋めるイベントを増やしたり、もっと早いタイミングで攻略上の必須イベントとすればこの設定に関して批判的なユーザーからの意見も軟化したのではないか。
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ラスボス撃破後、ヴァルが最終的に選ぶのは「御子が存在する世界の変革」である。
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これに関する前振りとして、6章以降に登場するNPCのセリフや、シナリオ後半のパルミナがメインになる話にて彼女が御子としての定めに抗う内容を口にするため、変革という結末に向けたお膳立て自体はなされている。
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しかしながら、他4人の個別ストーリーは家族や郷土、旅で知り合った人々に対する愛情の話になってしまう。これらは評価点で述べたように出来自体はよくテーマである「愛」に則っているが、最終的なヴァルの選択の動機付けにはなっているとは言いにくい。
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以上のようにちゃんと結末に向けての種撒き自体はしているものの、そこに至るまで(パルミナ以外の)一行は魂を捧げることになんの躊躇もしていないため、唐突に天から与えられた幸運に乗っかっただけのような印象も受けてしまう。
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一応パルミナ以外の御子らも未来を意識した事を口にすることもあるが、「変革」が結末であれば序盤からこのままではいけない、と登場人物に意識させる場面を増やしたり、パルミナ以外の御子の個別シナリオでもよりはっきりと新たなる未来を掴もうという意志表示を見せた方が良かったと思われる。
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クリア後に更新される用語辞典のフェアリーの項目に極めて重大な設定が記述してある。
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その内容は、御子は世界を救うべく人間たちが覚悟の上で自発的に行うようになった、フェアリーや精霊も御子になる事を無理強いできないために、あくまで人間の自主性を尊重しているという内容。
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フェアリーは淡々と人間を選んでるだけと思われかねないため、フェアリー側の視点でのドラマや御子の成り立ちに関わる過去の出来事はしっかりメインストーリーに組み込むべきだっただろう。
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ただし、ストーリーの転がし方としては多角的な観点から御子を描くのではなく、逆に徹頭徹尾自己犠牲の尊さを説くという形でも良かったのではないか?との意見もある。
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後半からは神獣・ディロフォロスを止めること第一に話が動いてしまい、その中でメンバーそれぞれや関連する人物たちの身の上話になるので御子に対する是非の話題が出てこなくなる。「大多数の為に少数が犠牲になるのを良しとするか」は哲学上王道的な議題なので、これを掘り下げればより深みのあるシナリオになったかもしれない。
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特に本作のプロモーション上の最大の失敗と言えるのが、体験版として切り出した部分だけ見る限りは生贄を礼賛してるだけのように捉えてしまえることで、未だにネット上ではそうした体験版部分だけでの誤解及び誤解した意見の又聞きからのデマが広まっている。
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製品版では序章でいきなり作中での一般認識と大きなズレを抱いたキャラが登場し、リージョン内で述べたように隅々まで遊べば開発者の思想が極度に常識離れしているストーリーではないことは理解できるようになっている。
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だが、体験版まで含めたコンテンツとしての設定・各描写の出し方の悪さがあったり、テーマである「愛」や主人公勢の和やかな雰囲気に対して世界のために誰かが命を捧げる必要があるという容赦のない設定との融合度の低さなど、もう少しうまく出来たであろう点があるのは否めない。
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バトル中のエフェクトも『ToM』からパワーアップし、大きく派手な物になり見栄えが更に良くなった。
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しかしながらその分視認性が悪化してしまい、乱戦時は現状把握しにくくなった。
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特に小さい雑魚敵が状態異常攻撃を使ってくると視認できないまま食らってしまいストレスになりやすい。とりわけ現在はアップデートでナーフされたが、初期版では敵からの凍結攻撃が凶悪だったため、凍結攻撃を使う敵相手は気を抜けないことになっていた。
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精霊器アクション
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月で時間操作、火のロケットで高速移動、水の玉を使ったジャンプアクション、などうまくアイデアを活かしているものやビジュアル的な面白さがあるものもある。
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フィールド・ダンジョンにある仕掛けの内、水は一度解放すると恒久的に使えるのだが、風は毎回起動し直す必要があるためテンポが悪い。
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特に後半訪れるダンジョン「風の社」はこの風の仕掛けがひたすら配置されており、本編・何個かあるサブクエ・クリア後シナリオで最低三回以上は訪れる必要があるため、プレイしていてまたか、と思わせる。
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カエルのような見た目のボスの舌を闇の精霊器の力で引っ張る、等で特定のボスに対しては有利になる要素が存在する。
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しかし、ある場所で戦うボスである「ゲールース」は船上から大砲を発射して迎撃するギミックがあるのだが、この際風の精霊器をつけてると大砲のリロードが早くなるという明らかに精霊器と関係性が見いだせない効果が発生する。
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そもそも雑魚戦や中ボスなどで特攻アクションを有効活用して攻略していくゲームデザインではないので、ボスに対する特攻アクションがあること自体細かくNPCの会話などを聞いていないと気づきにくい。
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基本的なゲームバランスは初心者でも気軽に楽しめる程度なのだが、中盤のあるダンジョンの中ボス・ヴァンパイアだけはゲーム全体を通して極端な強さを誇り、ラスボスより苦戦したという意見もある。
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当たると確定催眠する誘導弾を連射、PTメンバー一人を行動不能+体力回復する掴み技…とやたらと突出した強さを持つ攻撃方法を持っている。
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特に誘導弾が凶悪で、誘導する都合上少しでも気を抜いていると引っかかってしまう。また、回避できるとは言え弾の判定が自キャラの横幅4個分ぐらいあるため、大きく回避行動をとろうとすると意図せずに味方に命中してしまうことがある。
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回復行動も回復量のわりに頻度も低くないため、一人減って一時的に総火力がダウンするのもあって、もうそろそろ勝てると思ったら短いスパンで使われて仕切り直しになってしまいドツボにハマることがある。
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この件についてスタッフインタビューではディレクターの吉田氏は「やりすぎだった」と素直に反省するコメントしているが、プロデューサーの小山田氏は「アビリティをしっかりと意識してもらう機会」「どこかでちょっと考えて戦う要素が欲しかった」とコメントしている。
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キャッチーさが足りないBGM
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本作の楽曲は全体的にフレーズが主張しない曲が多い。映画の劇伴のように聞いてて自然にスッと入ってくるのだがその反面印象に残りにくい傾向にある。
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コンポーザーの一人である菊田氏は近年のインタビューなどで「あまり主張が強すぎず、無意識のうちに耳にしている自然の環境音のような音楽が自分のゲーム音楽としての理想」という旨のコメントしているので、そうしたコンセプトに沿った楽曲群とは言える。
その意向を反映してかBGMの音量がボイスやSEに対し小さめ。これも印象に残りにくい原因とされている。設定からボイスやSEに対しBGMボリュームを上げれば多少は改善される。
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神秘的で壮大なOP/メインテーマ「楽園の絆」や、民族楽器を用いたりアンビエント系の楽曲だったりといかにも『聖剣伝説』らしいサウンドの楽曲自体は複数存在するため、そういった楽曲は評価されている。
問題点
駆け足気味のストーリー展開
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過去作よりも王道的なストーリーだが、寄り道無しだと1週クリアまで20時間~25時間程しか掛からないので、若干の説明不足感や急展開を感じえない。
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以下、大まかなストーリーの問題点
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1章でヴァルとヒナの旅立ちが僅か数回のイベントで済まされ、そこから立て続けに各国の御子と出会って目的地であるイルージャ島には中盤であっさり到達する。以降は光の御子と闇の御子と邂逅を果たす為にロロバッゾとロリマーに行った後は、旅路を引き返して神獣を討たなければならないので、どうにもスケールが狭く感じる。
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本作と同じくナンバリング3D作品である『4』と同様に省略・縮小されたと思わしき箇所があり、特に序盤の精霊達が住む遺跡ダンジョンは規模が狭く、精霊器を数回使って奥地に進めば後はボスが座する最深部のみと言う少々物足りない仕様となっている。
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その後、マナの聖域に辿り着く為に巨大な豆の樹を成長させて大絶壁を昇る事となるが、豆の樹を昇っていく過程はゲーム中では省略され、専用のダンジョンも存在しない為、マップを跨ぐと聖域前の密林まで一気に移動する事になるのでどうにも違和感が強い。
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光の御子と闇の御子がいるロリマーとロロバッゾに至っては街と遺跡ダンジョンが統合されている為、フィールドマップすら存在しない。
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2章の後半の展開がかなり強引でプレイしていて疑問符がつく。
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エリスタニアにかつて身分に基づく差別が存在したという根深そうな問題があったことが語られるが、作中の登場人物がこのことにほとんど触れず急に出てくる話題のため、実感が湧きにくい。
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2章の騒動を仕組んでいた人物はかつての階級制度を復活させようとしており、その傘下の派閥が一定の地盤があることが述べられるのだが、作中で確認できる範囲ではその人物の直属の部下とごく一人か二人程度のモブキャラぐらいしか乗っかっていない。
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ボス撃破後、その人物を主人公一行が余裕で捕縛できる状況にもかかわらず、目の前で逃げていくのをただ眺めていてそのまま逃走されるという意味が分からない展開がある。
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「主人公一行がボスと戦っている間に逃げた」や「主人公一行が捕縛するも、後でその人物の配下の者が裏で手引きして逃がす」など違和感なくまとめる展開にできたのではないか。
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4章以降のストーリーが起伏が弱い。
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3章で衝撃的な展開があるのだが、それ以降はだいたい予想しやすい範疇に収まる展開が続く。
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○○するのに××が必要だから△△に行こう、●●が◆◆で暴れてるから止めに行こう、と言った目的地が明確化されすぎている受動的な展開が連続して続き、ストーリー的な意外性に欠ける。
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後半の主要キャラ・ディロフォロスの悪墜ちの原因が読みやすい。
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悪墜ちの描写もかなり断片的なので、展開自体は読めてしまえてもムービー等でしっかり悪墜ちの背後にある戦争の悲惨さや絶望の大きさを描ければ受ける印象も変わったと思われる。
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あるキャラの退場直後、フィールド上での会話でそのキャラとヴァルが旅の仲間たちよりも前から関係があったから複雑だろう…という一見しんみりとしたコメントをするのだが、
仲間たちと合流する前に偶然数日程度過ごしたぐらいなのでそんなに長い付き合いでもなく、会話内容が全くの誤りではないが関係性に適した表現とは言いにくい。
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製作中はしばらく同行したりするイベントがあったのだろうか?いずれにせよ製品版として世に出た物としては違和感を感じる。
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終盤霊体と化したその人物がヴァルに励ましの言葉をかけるが、取り返しのつかないことをしてしまったのにもかかわらずそのことを悔いたりヴァルに対する謝罪もないので、どの口で言うのかと思わざる得ない。
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移動・フィールド関連
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不便すぎるファストトラベル。
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マナが流れている竜脈で移動しているという設定を忠実に守りすぎたせいで、現在いる大陸とは異なる大陸にファストトラベルできない仕様がある。
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大陸内ファストトラベルを使うにしても必ず竜脈のところまで移動する必要がある。(竜脈のところへの移動はマップメニューからいつでも行える)
快適性を考えたら普通に他のゲームのようにいつでもメニューから他の大陸にも行けるようにすべきではないか。
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『ToM』のファストトラベル未実装(オリジナル版準拠)があまり問題視されなかった理由は、マップサイズに対する「何もない場所」が狭かった事や、攻略済の地域へ寄り道する必要がほとんどなかった(サイドクエスト自体がなかった)事が大きい。一方、本作は何もない場所の割合やサブクエスト関連の往来が激増し、それに対するストレス軽減策を詰め切れていない結果となった。
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ブースカブーとフラミーの操作について
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ブースカブー・フラミー操作時にメニュー・マップ画面が開けず、あらかじめ準備したり構成の見直し、サブクエストの確認ができない。
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マップが開けないのはフラミー操作時はともかく、ブースカブー操作時は地形で着岸地点が見えにくいのでミニマップしか参照できず現在地点が分かりにくい。『ToM』では開くことができた。
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メニュー画面が開けないためクエストの進行状況確認やマップ突入前に装備を整えたりできない。
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そもそもの問題点として本作でブースカブーとフラミーの操作パートが必要だったのか?と言わざるを得ない。
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『ToM』では確かに好評だったが、それはリメイクとしてオリジナル版に準拠した表現であったことや、FCやSFCのゲームの様なフィールドマップが昨今のゲーム業界ではなかなかないという表現上の物珍しさからくるもので、完全新作たる本作でも続投させるのであれば本作ならではの必要性を作らなければいけないのではないか。
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そういったインセンティブが働く要素が用意できないのならば、ファストトラベルが不便な点と合わせ「いつでも全体マップから行き先を選んだら運んでくれるムービーが流れて即到着」にすべきではなかろうか。
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一部のイベント終了後のタイミングで、自動で次の目的地に進むため次のエリアやフラミー操作画面に強制転移されてしまう箇所がある。
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便利なのでは?と思うかもしれないが、進行と同時に新サブクエストが受注可能になっていたり単純に買い物などをしたい場合行えないまま話が進んでしまうので、選択肢で移動するかどうか聞いて欲しかったところ。
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フィールドが広いのはいいのだが、街が機能に反してだだっぴろい。
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街中ではピックルが使えないのは往来を馬で突っ切るようなものなので納得できるのだが、何故か街の中では二段ジャンプと空中ダッシュができなくなってしまうため、空中を突っ切った方が早い時などにストレスになる。
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そのピックルも、呼び出す際は毎回キャラクターが足を止めて鈴を鳴らすモーション→ピックルがどこからか現れる→騎乗という流れで5秒ほど待たされる。
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たかが5秒と言ってもこの操作は実行回数が多いだけにプレイ中だんだんと気になってくる。ワンボタンでスムーズにピックル騎乗まで行けないものか。
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降りたい時もすぐ降りられずある程度ボタンを押しっぱにしないといけない。誤操作防止にしてももう少しフレームを減らしてよいのでは。
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フィールドではPT編成が行えるのに街中では編成が変えられない。特に街中にある光と闇の試練(大)に挑む際にはわざわざ別の場所で編成を変えてくる必要がある。
バトル関連
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必殺技について
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SPゲージがパーティー全体での共有式となった、関連アビリティなしではゲージが溜まりにくい、ゲージ回復用のツボはボス戦エリアでのみ再配置される、ネームドモンスターや精霊の住処が各所に点在するという仕様を踏まえると、雑魚敵に対して気軽に使えるとは言い難い。
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各キャラの必殺技の演出自体はカッコいいが、使用武器種が同じクラスの場合エフェクトが異なるだけでモーションや演出の構成が使い回されている。
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『ToM』はクラス1、2の演出はあっさりめではあったものの、6人×9クラスで54パターンも個別に作っていたのだが…。
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戦闘終了後に経験値取得画面が表示されるが、これが表示されている間はまだ内部処理的に非戦闘時に切り替わっていない扱いになるためか、アイテムの使用や宝箱を空けたり、フィールドの精霊器ギミックを使うことはできなく、テンポが悪い。
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特に精霊器を使って道を作っていくダンジョンだと切り替わりの遅さでやりたいことができない「間」が頻発するため、地味ながらもかなりのストレスとなる。
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『ToM』でも指摘されていたが、武器・防具のほとんどは「上位種の方が数字が大きくて強い」という違いしかなく、フレーバーテキストや防具のグラフィックが存在しない。
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武器の着せ替え機能が実装されたことは評価点だが、「頭・腕・アクセサリ枠と状態異常耐性が削除され、購入時に装備者のボイスが流れなくなった」という点ではむしろ退化している。
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『ToM』は元がSFCなので一応原作再現した結果ではあったが、2024年に出す完全新作としてはひねりが無い。
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アビリティシードの装備画面にて、特定のアビリティシードを既に他の仲間が装備済みかどうか直感的に把握しにくい。
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手持ちのアビリティシードの横には所持数が表示されるのだが、「未装備のアビリティシードの数」ではなく常に「装備済みのアビリティシードを含めた総数」が表示される。このため、余っていると誤解して装備させようとした時に警告メッセージが出て初めて気づく事になりやすい。
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一応手持ちのアビリティ枠の下に装備している他のキャラのアイコンも出るが小さめで、一目で判断できない。
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誰かが装備済みなら選択画面で所持総数から-1個分した数字を表示するか、仲間のアイコンを視線を動かさなくてもいいように個数欄のすぐ横にを表示させる…等であれば分かりやすかっただろう。
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クラスチェンジ関連
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『3』のランクアップ式ではなく8属性の切り替え式に変更されたのだが、着せ替え機能に対応しているのはDLC衣装のみ。
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各クラスの性能は一長一短となっているが、いわゆる最強クラスの解禁後は既存クラスが劣化版となってしまうため、お気に入りの衣装とキャラ性能を両立できない。
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ボイス関連
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「複数の敵を同時撃破して戦闘終了」した場合の処理が無いのか、必殺技や範囲魔法でまとめて残存敵を倒した場合でも「あと1体!」というボイスが流れてしまう。
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しかしながらテストプレイをすればまず気づくような箇所にもかかわらず、アプデ後も未だ修正されていない。
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ヴァルのクマミツ習得ボイスがやかましく、シナリオ的にシリアスな状況でも流れる。
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フィールド・ダンジョンでは他のキャラに変更すれば対策できるが、街中はヴァル固定である以上回避方法はない。
その他の問題点
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旧世代感漂うサブクエストの仕様の数々
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○○を×匹倒すだけ、特定の物品を人に渡すだけ…など、10年以上前から指摘されていたような「お使い」タイプのサブクエストだらけ。
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雑魚を倒すだけなど簡単なクエストの場合、初来訪時に通りすがるついでに片づけられれば効率が良いのだが、しばらく話が進んでから受託可能になるものがあるためゲーム側の段取りの悪さを感じる。
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中盤以降は特定のダンジョンクリア直後に一見関係性がない遠く離れた地域のモブからクエスト発生することがあるので予想がつかない。もう強くなりすぎているので倒すだけの作業みたいになることがある。
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「特定の敵を倒して入手する素材を納品」するタイプのクエストの場合、他のゲームのようにいつでもその敵が素材を落とすのではなく、クエストを受注してから初めて落とすようになる。
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敵が落とす素材を利用する要素が無いためだと思われるが、テンポの悪さに繋がっている。
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一部を除き原則的にクエスト達成時にはいちいち依頼人に報告に戻る必要がある。
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これも近年のゲームだと達成した時点で終わりになるケースが見受けられるので二度手間を感じる。
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中盤以降はお金があまりがちなのだが、中盤以降の複数地点を跨ぐクエストでもルクだけしか貰えないものや「戦闘終了後○○を若干回復」のようなもはや不必要なアビリティを渡されるのがあって、がっかりする。
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新クエストが発生した場合マップに表示されるが、全体マップからクエストが発生してるか確認できないニキータや普段人がいないためクエストが始まっているとは思えないダンジョン内に人が配置される場合があり、受注できるのを見逃しやすい。
そのようなマップでクエストをクリアし、同じ依頼人から続き物のクエストを受注出来る条件を満たしていてもマップを一度読み込み直さなければ続きのクエストを受注できない。これも見逃しやすさに拍車をかけている。
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サボテン君発見時『ToM』ではそのままスタンプを押して貰ってすぐ終わっていたのだが、何故か本作は一度暗転した後に「ヴァルが発見した」という小ムービーがいちいち挿入されるためテンポが悪い。
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特にフィールドでのサボテン君発見時はヴァル以外のキャラがサボテンを発見したボイスが流れてその後にこのムービーが流れるため、ヴァルが手柄を横取りしたかの様な表現になっており、違和感が凄まじい。
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前作の後に同じくXeenが製作した『リベサガ』のせんせい探しはこんなことにならないので、地味ながら開発変更の煽りを食らったポイントと言える。
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サボテン君発見のご褒美の一つに逃走時間半減があるが、知らない間に誤って逃走してしまいやすくなるのでON/OFFを切り替えられるようにして欲しかったとの声も。
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後述の桜花スタジオ側の事情からか、ゲーム進行に影響を与えないが細かい部分で作りの粗いポイントがある。
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地形に対する操作キャラの3Dモデルの足の可動範囲を広く取りすぎているため、接地する場所によっては恐ろしく不気味な曲がり方をする場合がある。
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特にキャラクターが屈む閉所や、斜面や段差で片足だけ高い位置にある場合、足がゴムで出来ているかのようにぐにょぐにょになりやすい。
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利用頻度の高いアイテム画面およびアビリティ装備画面において、ソート機能がデフォルトと「新しい / 古い順」の3つしかない。
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「所持数が多い順」や「所持数が増えた順」といった随時変動するタイプが存在せず、デフォルトに切り替えてもメインメニュー全体を閉じてから開き直すと「新しい順」に戻ってしまうため、かなり使いづらい。
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ロード画面に表示されるTipsは一度でも見たことある物全ての中から表示される。
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このためもう足を踏み入れることがない特定のダンジョンの専用ギミックなどの解説も出てくる。もう少し有意義な情報や現在いるダンジョンの解説をして欲しい。
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『ToM』でも指摘されていたが、一定金額以上貯めると戦闘後セリフがお金に言及しがち。
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ラストダンジョンは製作済みの既存のマップデータを流用して作ったからなのか、フィールド移動時に他の地名が出てしまうというクライマックスにもかかわらず興ざめな仕様がある。
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アップデートで致命的な物は改善はされたものの、現在でも様々な不具合が起きやすい。
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リングコマンドが一時的に開けないo閉じれない状態になることがある。
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キャラクターが地形ハマりを起こしたり、動きはするが特定のポーズのまま固まってしまうことがある。
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竜脈やフラミーで遷移先を選択する時、マップ上でメインシナリオの星マーカーやサブクエストの達成マーカなどがおかしな位置に表示される事がある。
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操作キャラクターの切替入力が上下逆に扱われてしまうことがある(リングコマンドなどのキャラ切替は影響なし)。
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マップ上の精霊石などがもう習得済みなのに未収得状態で表示されたり、逆に全て消えてしまう現象が起こる。
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パーパポトが「パーパポトの魂石」をドロップしないため、魂石をコンプリートできない。
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他にも街中のモブキャラが隣り合わせに分身したり、火の村ティアナにいる防具屋のボイスタイプが変わるなど、大小様々な現象が確認されている。
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基本的にPS5世代のゲームとして作られているためか、他のゲームでも良く起きる事だがやはりPS4版はロード時間が相応にかかる。
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別のマップに入った際の読み込み時間は15~30秒程度待たされる。一度読み込めばそのマップにいる限り再ロードこそないが、各地を転々とするような場面では頻繁に発生するため気になる。
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特に中盤以降の移動手段であるブースカブー・フラミーは呼ぶとロード、その後目的地に移動してロード、と2回読み込み時間が発生するのでかなり待たされることになる。
総評
『聖剣伝説』シリーズ悲願の本編最新作となった本作。
絵作り面はシリーズの系譜を感じられる良好な出来で、主人公一行のキャラクター像に関しても好感の持てる仕上がりとなっている。
一方で、世界観に関してはそのあまりの特殊性故に、ユーザーを納得させきることに失敗した印象は否めない。
ストーリー・サブクエストの中には見所がある展開もあるが、全体を俯瞰した場合の結末に向かっての段取りやテーマの貫徹性の悪さを感じるため、これらをうまく調理できていればもっと良い評価は得られただろう。
戦闘やアクション・探索面に目を向けると、ベースとなった『ToM』由来の安定感はあるが、開発会社の経験の差か『ToM』からの分析・改良が適切になされていない部分も気になる。
見場はいいだけに、実際に動かした際の快適性が伴っていないのが惜しい。
総合的にまとめると『聖剣伝説』らしさは備えておりシリーズ作に求められる十分条件は満たしているが、手放しで褒められる良作とは言い難い。具体的にどのような作品か気になる人は自分で遊んで判断するのが一番いいだろう。
余談
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クリア後ネタバレ注意
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日本語版において、本編を一度クリアしてタイトル画面に戻ると、タイトルロゴにナンバリングが加わった『聖剣伝説5 VISIONS of MANA』に変化する。
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本作発売前の小山田Pインタビューでは「タイトルを『聖剣伝説5』にはしなかった」事が触れられており、海外版では元々ナンバリングの区別がなく『◯◯ of MANA』に統一されていることが理由とされていた。
そのためクリア後に改めてナンバリングタイトルへと変化する演出はある意味サプライズとも取れる。
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最終更新:2025年03月24日 03:41