絶体絶命都市
【ぜったいぜつめいとし】
ジャンル
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サバイバル・アクションアドベンチャー
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対応機種
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プレイステーション2
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メディア
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DVD-ROM 1枚
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発売・開発元
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アイレムソフトウェアエンジニアリング グランゼーラ(ゲームアーカイブス版)
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発売日
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2002年4月25日
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定価
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7,140円(税込)
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プレイ人数
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1人
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レーティング
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CERO:15才以上対象 |
廉価版
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アイレムコレクション 2004年9月16日/2,800円(税込)
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配信
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ゲームアーカイブス 2015年2月18日/1,000円(税込)
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判定
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なし
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ポイント
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敵はモンスターでも人間でもなく災害 荒削りだが震災の演出・知識は本格的 グラフィックなどはやや低クオリティ 後半になるにつれ薄れる震災ゲーム感
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絶体絶命都市シリーズ : 1 - 2 - 3 - 4Plus
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概要
『絶体絶命都市』シリーズの記念すべき第1作。実際の大震災の記録を元に製作された、本格的なサバイバルアクションゲーム。
「大規模な災害に晒された一般人がいかにして生き延びるか」に主軸においたリアリティ溢れる作風を特徴としており、アクションゲームながら派手なアクションはほとんど無い。
本作の成功によりシリーズ化が進められ、現在まで4作品が発売されている。
プロローグ
2005年6月快晴
窓の外に首都島が見える
僕は今日付けでこの島に転属になった新聞記者だ
これから始まる新しい生活を思うと胸が高鳴る
だけど、空港島から乗り込んだ電車は、
僕を首都島へ運んではくれなかった
(ゲームオープニング参照)
特徴
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地震により崩壊した架空の巨大人工島、通称「首都島」が舞台。主人公である若き新聞記者「須藤真幸」を操作して島からの脱出を目指す。
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災害から生き延びるゲームなので敵との戦闘は無く、地震によって起きる崩落・倒壊などの危機を上手く切り抜けることがメインとなる。
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体力ゲージの他に乾きゲージというものがあり、時間経過で減少する。激しい行動を取ると減少も早まる。
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水分補給で回復できるが、放っておくと主人公の運動能力が下がり、咄嗟の判断ができなくなる。
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そのため、本作では水の確保が欠かせない。水は随所にある水道で飲める他、ペットボトルに入れて持ち歩く事もできる。但し、水道には稀に海水や泥水が出てくるものがある。
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同行者となるヒロインが2人存在し、選んだ方に応じて中盤の展開やエンディングが分岐する。
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ヒロインは大学生の「相沢真理」と高校生の「比嘉夏海」の2人。
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序盤に必ず真理と出会い、途中で真理と別れるルートを選んだ場合に夏海と出会う。どちらのルートでも後に合流し、以降のパートナーを再度選択できる。
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ストーリー的に本筋と関わりがあるのは真理の方で、彼女がメインヒロインにあたる。一方、夏海は後のシリーズにも登場する事になる(後述)。
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同行者と言っても護衛対象ではないので、災害に巻き込まれてダメージを受けたり死亡することはない。プレイ次第では稀に落下したり災害に巻き込まれたりすることもあるが、シーンが進めば何事も無かったかのように復活する。
1人でも十分じゃないか…。これはシリーズ通して同様である。
評価点
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雰囲気作りは十分出来ている。
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OPにおけるニュース映像風の語りや、地震が起こった時の模様をムービーで再現するなど、震災の恐怖を再現したぞっとする作りになっている。
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シナリオ進行に伴って主人公とヒロインの服がボロボロになったり包帯が巻かれていく演出もあり、被災地の過酷な状況を上手く表現している。
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BGMは一部を除いて基本的にはない。寂しいと言えば寂しいが、この静けさは震災が起こった街の、不気味な静寂をよく表現している。
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被災経験のあるスタッフが製作に参加していることも、雰囲気作りに少なからず影響を与えていると考えられる。
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本編中は善人、悪人問わず自然の驚異の前に命を落とし、主人公も何度も命の危険に晒される(実際に何度もゲームオーバーになる)。
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無慈悲且つ圧倒的な自然の力の前では、人間など如何に無力な存在なのかをこれでもかと思い知らされ、それでも生きるために必死で足掻き続ける姿が克明に描かれている。
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この「人間の無念さ」というテーマはプロデューサーの九条一馬氏の以後の作品にて、良くも悪くも特徴として定着していく。
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次回作以降のようなバカゲー要素も少ないので、シリーズでも最もシリアスでシビアな内容になっている。
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襲い来る災害の緊迫感も抜群。ゲーム的な誇張はあるものの、タイトルに違わない絶体絶命の危機が何度も襲い来る。大地震の崩壊の恐怖がひしひしと伝わる作りになっている。
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後にシリーズ作品が何本も発売されるが、その中でも本作主人公の絶体絶命ぶりは群を抜いている。
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震災時に意識すべき点は押さえており、実際役に立つ知識は多い。
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実際、本作のコンセプトは災害時のシミュレーションであり、ゲームにおいて仮想体験することで震災時の心得を身に付けてもらうという目的も備えている。
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このコンセプトは作品を重ねるごとにより強化されていくことになる。
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コスチュームやコンパスなどの収集要素が豊富。
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コスチュームに関してはヘルメットや軍手、プロテクター程度で次回作以降に比べると非常に少ないが、種類豊富なコンパスは本作から存在しており、中にはアイレムのゲームキャラクターをモチーフにしたものもある。
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ややネタっぽい部分も多いが、やりこみたくなる要素ではある。
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これらは全て2周目に持ち込みも可能。最低2周することで基本を押さえられる本作においては地味に楽しい要素。
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声優の演技は本格的。
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フルボイスではないものの、助けを呼ぶ声などは中々真に迫っている。
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メインキャラクターは当時はさほど有名でなかった声優が使われているが、棒読み感はそれほど感じない。むしろ臨場感を盛り上げるチョイス。
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脇役は緒方賢一氏をはじめベテランの声優が多くを占めている。
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緒方氏が主宰していた劇団すごろく関係者がやや多い。以降もアイレム作品では声優は劇団すごろく関係者を中心に起用されることになる。特に緒方氏は常連となっており、本シリーズにおいては『4』含めて全作に出演している。
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7種類のエンディング。
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『2』以降のように主人公が複数いるわけではなく、分岐も少ないが、周回プレイするうえである程度良い数ではある。
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ただし、ストーリーを最後まで進めないエンディングはクリア扱いにはならず、次の周には進まない。
賛否両論点
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基本的には死に覚えゲー。
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プレイヤーが普通行くと思われるルートや地点の所々に、崩落・倒壊などの即死イベントが用意されており、かなり意地が悪い。
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一応前触れはあるため、震災時における命に直接関わるアクシデントを表現したものともとれる。ゲームとしては意地悪に思えるものの、災害の恐ろしさを伝えると言う意味では成功していると言えるか。
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エンディングの仕様
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2人のヒロインそれぞれに2種類のエンディングが用意されており、イベントの達成具合やヒロインとの好感度で判定される。しかし…。
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ネタバレ
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普通のゲームなら、ヒロインと親密になればより良いエンディングを迎えるものだが、本作の場合はノーマルエンドよりも暗いエンディングになってしまう。
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何故仲良くなったのに暗くなるのかと疑問に思うかもしれないが、本作はラストの展開的に「仲良くなったからこそこうなった」というもので、心情はともかく内容自体は納得の行くものである。
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セオリーを破り意表を突く演出ではあるが、親密になればきっとハッピーエンドになると期待したプレイヤーには落胆することになるだろう。
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問題点
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あまり意味のない体力ゲージ
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体力ゲージがじわじわ削られてゼロになり死ぬという機会はほとんどなく、あまり意味がないゲージになっている。
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処理落ちがちらほら起こる。
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後の『2』ほど頻繁に目立つものではないが、崩落時などはやや気になる部分が多い。
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人物グラフィックのクオリティが低い。
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PS1並とまでは行かないにしても、同時期のソフトと比較するとかなり低品質。
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また、登場人物の口パクは一切なく、表情の変化も極めて少ない。歩行も動きが固く、震災にあった人間にしては妙に冷静に見えてしまう。
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一応、序盤において町中で発見される震災被害者の遺体(シナリオ上には関係ない要素)は、そのグラフィック精度の低さが逆にリアルな感じを表現出来ていたりもする。
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一部無理矢理な展開がある。
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明らかに頑張れば飛んで登れそうな部分でも「登れそうにない」「手が届かない」と言って登らないことが多い。
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しかし本作シリーズは主人公のジャンプ力が低いため、飛んで登れてしまうと「なんで普段は飛んで登れないんだ?」という突っ込みどころになってしまう。システムとの擦り合わせの関係上、仕方ないと割り切るべきか。
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崩落した建物内をよじ登るパートは、主人公が通れるような形で崩れていくため、場所によってはちょっとシュール。
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ヒロインが愛犬のために命を賭けようとする部分は状況的にやや無理があり、ヒロインの人格が疑われる。
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それだけ愛犬が大事なのだとしても、最初はその存在を忘れていたというのだから酷い話である。
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渦巻く陰謀の部分はやや風呂敷を広げすぎている。
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後半は陰謀を秘匿するために主人公達を付け狙う刺客から隠れて進むステルスアクション要素が導入される。もはやそこに災害から生き残るサバイバルアクション要素の面影はない。
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刺客はヘリコプターに乗って堂々と襲ってくることもある。そのパートだけ震災ゲーというよりB級映画臭がしてしまう。しかもこれに対し、主人公はある手段で反撃し、ヘリを墜落させる。
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ただし、災害自体は最後まで主人公を襲い続ける為、災害ゲーのコンセプトから逸脱している訳ではない。当然ラスボスとの対決と言ったイベントはない。最後に黒幕との対峙シーンはあるが…。
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この点は本シリーズに限らず、『桜坂消防隊』や『パチプロ風雲録』など、アイレム作品全般にある傾向であり、一部からは「陰謀大好きアイレム」などと揶揄されていたほど。
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そもそもこの震災は…(ネタバレ)
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天災ではなく人災、しかも黒幕達が意図的に起こしたものだったことが判明する。自然の脅威かと思ったら、テロだったという話である。
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次回作以降は流石にストレートに人間が災害を起こすことはなく、精々「手抜き工事でいたずらに被害を拡大させた」という程度になっている。
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反面、次回作以降も陰謀は渦巻くのだが、そちらも災害とは直接は関係のないものになっていき、本作以上に「災害から生き残るサバイバルアクション」であることを忘れたような展開もちらほら見受けられるようになった。
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総評
荒削りで不足点はあるが、震災ゲームの第1作としてはかなりの意欲作である。『桜坂消防隊』とは違い続編も複数製作され、アイレムを代表するゲームの1つに成長したと言って良いだろう。
震災経験のあるスタッフも参加して作られていることもあり、入念なリサーチによって雰囲気はよく出せており、グラフィックの低品質さを乗り越えているのは評価点。
震災ゲームということで重すぎる雰囲気を出し過ぎることはなく、アイレムらしいお遊びの要素を加えていることも好評。
陰謀めいた内容に関しては否定的な意見が多いが、この点も後の作品にも大なり小なり受け継がれている。
しかしこれも上記の一環と思えば、否定的な人でもある程度は理解出来るか。
余談
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次回作以降は異様に豊富な選択肢で自由に振る舞えるのが特徴だが、本作に奇抜な選択肢はほとんど無い。そもそも選択肢自体が少なく、須藤は基本的に勝手に喋るタイプのキャラなので、シリーズでも常識的な主人公となっている。
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今でこそ、アイレム及び、グランゼーラ作品は選択肢が豊富なことが有名だが当時はそのような傾向はなく、どの作品の主人公も(後年に比べれば)至って普通だった。主人公のキャラクター性が薄れ、膨大な選択肢に振る舞いが委ねられるようになったのは2005年発売の『ポンコツ浪漫大活劇バンピートロット』の頃からである。
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ストーリー進行に応じての主人公とヒロインの外見の変化、泳ぎのアクションなど、次回作以降に受け継がれていない要素が幾つか存在する。
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本作と次回作に「ヒロインが高所に上がるために主人公が踏み台になる」シーンがあるが、本作ではちゃんと靴を脱いで乗る。服の破損の演出と同様、着替えができない本作ならではの細かい演出である。
良家のお嬢様には真似できない芸当ということか。
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必要な場面は少ないが、泳ぎが可能なのも本作だけである。また、川下りのシーンのようなミニゲーム的演出も次回作以降には無い。
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本作ではアイテム管理が立体パズルのような独特の管理方法になっているが、煩雑だと判断されたのか次回作以降は容量がブロック式の目盛りでのみ表示される形式になった。
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クリア時には『バイオハザード』シリーズなどのようにクリアランクが表示される。プレイ時間・コンティニュー回数・セーブ回数・水補給回数などを総合して判定される。
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次回作以降はプレイ記録は出るが、ランク表示は廃止されている。
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本作は声優の山本兼平(当時の名義は「ヤマモト ヒロフミ」)氏のデビュー作品でもある。以降のアイレム作品でもほとんどの作品に出演している。
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北米では『Disaster Report』として、ヨーロッパでは『SOS The Final Escape』として発売されている。
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舞台も海外に変更されており、主人公やヒロインも一部リージョンを除いて金髪に変更されている。
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それに伴ってパッケージイラストに描かれた主人公達もやたらアメリカンなデザインになっており、これを見ただけは別ゲームと思っても仕方ないほどに変貌している。
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『R-TYPE FINAL』のオープニングムービーを良く見ると当作のタイトルの看板が確認できる。また、本作がモチーフの災害型波動砲試験機「R-9WZディザスター・レポート」が初登場する。
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本作に登場するヒロインの1人、比嘉夏海はシリーズを通して登場することになった。毎度震災に巡りあわせてしまう不運なキャラになってしまっている。
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本作では高校生だったが次回作『2』では教育実習生として、『3』『4Plus』では高校教師として登場(勤務先は変わっている)。
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その被災頻度は7ヶ月で3度(!?)。ここまで来るともはや呪いである。
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それでも毎回足を挟まれて動けなくなる程度で大した怪我も無く生還しているので、まだ運は良い…と言えていたのだが、『4』では…。
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なお、メインヒロインである相沢真理の方は本作以外には登場していない。
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一応、近年では『巨影都市』(早期予約特典のみ)や『マンガ・カ・ケール』と言ったグランゼーラ作品にて衣装のみだが登場するようになっている。
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本作の主人公の須藤真幸は他のアイレム作品にも度々出演している。
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『絶体絶命都市2』にもストーリー中に登場し、条件を満たせば隠れ主人公として操作可能である。
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『パチパラ』シリーズ収録の『パチプロ風雲録』シリーズにもスターシステムで出演し、「銀玉の狼」と呼ばれるパチプロになっている。
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『風雲録1』~『風雲録4』では主人公として、『風雲録5』『風雲録6』では強豪パチプロとして登場する。
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『ポンコツ浪漫大活劇バンピートロット』では記憶を失った謎のビークル乗り「スドウ」として登場している。しかも唯一覚えているのが「マリー」と言う名前だけ、なんて小ネタも。
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『絶体絶命都市3』にも登場する案があったらしいが、やり過ぎ感があったとのことで没となっている。
比嘉の連続被災はいいのか。
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『絶体絶命都市4Plus』では本編にこそ登場しなかったが、DLCの後日談シナリオでチョイ役ながら『2』以来の出演を果たした。
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後に本作のスタッフが独立したグランゼーラより発売されたシリーズ派生作品『巨影都市』でも須藤、比嘉の他、メインキャラの陣内晃二と「宝石女」こと竹辺幸が某所でモブキャラとしてゲスト出演している。
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須藤は『1』の頃の出で立ちで登場。橋の崩落に巻き込まれながら泳いで対岸まで辿り着くと言う、元祖主人公らしい超人ぶりを発揮している。
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比嘉は『2』に近い外見で高校教師としての登場。やはり足を挟まれて動けなくなっているというお約束の展開になっている。
震災と本作
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『絶体絶命都市2 -凍てついた記憶たち-』『絶体絶命都市3 -壊れゆく街と彼女の歌-』と続編が発売された後、PS3用ゲームとして『絶体絶命都市4 -Summer Memories-』が2011年に発売予定として制作が進んでいたが、未曾有の被害をもたらした3.11こと東日本大震災の発生直後に発売中止が発表、後に『1』~『3』も絶版となりシリーズは事実上の凍結状態となった。
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その後アイレムは既存タイトルのダウンロード販売を中止するなどゲームの製作販売事業を大幅に縮小していくが、本作のプロデューサーの九条一馬氏はアイレムから独立してゲーム制作スタジオ「グランゼーラ」を立ち上げ、Twitterなどで本シリーズへの思い入れと『4』を完成し発売することへの意欲を前面に出していた。
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また、2013年1月に劇団エリザベスによる舞台化が行われた。震災の影響による自粛から断られるかと思われていたが、意外にもアイレム関係者は前向きに応じてくれたという。
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なお、舞台版の内容については本作の純粋な舞台化というよりは、「ボーイミーツガール」をテーマに『3』までのシリーズ全ての要素を1つの作品としてまとめた内容になっている。
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その後、2014年12月にはグランゼーラが本シリーズの版権をアイレムより取得。今後は旧作の配信と新作の発売に向けて活動していくと公言された。
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そして2015年2月18日に本作と『2』のゲームアーカイブス配信が開始、『3』のダウンロード販売も再開され、シリーズ全作が手軽に入手可能になった。これまで興味はあったがプレイ出来なかった人はこの機会に触れてみては如何だろうか。
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2015年11月、遂に『4』が『絶体絶命都市4Plus -Summer Memories-』のタイトルでPS4用にリメイクされることが発表され、3年後の2018年11月に発売されたが…。
最終更新:2024年06月21日 03:31