ジュエリー・ナイツ・アルカディア -The ends of the world-
【じゅえりーないつあるかでぃあ じえんずおぶざわーるど】
ジャンル
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アドベンチャー (公式ジャンル名:意志と宝石の青春学園ファンタジー)
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対応機種
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Windows 10/11
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発売・開発元
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きゃべつそふと
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発売日
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2025年1月28日
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定価
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【パッケージ】10,780円 【ダウンロード】9,800円(税込)
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レーティング
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アダルトゲーム
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判定
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なし
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ポイント
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まさかの続編&ファンディスク 演出の弱さは変わらない 舞台やルールの変更でバトルのテンポは改良
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きゃべつそふと作品
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概要
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プロローグから前作の重大なネタバレが含まれており、プレイ前提となっている。
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ストーリー復習のためか、数ヵ月前にエンターグラムのゲームエンジンに変更した前作のCS版が発売されたが、本作のゲームエンジンはきゃべつそふと共通の「Ethornell」に戻っている。
ストーリー
大陸全土を脅かした<石喰い>から一年──
最終学年へと進級した『クラス・ペガサス』は、西方デルタ帝国への修学旅行を控えていた。
そして同年。
かの国から、世界を揺るがす一報がもたらされる。
トルマリン巨大鉱脈『深層[ラビュリントス]』の発見──
希少と思われていた従来の鉱床は氷山の一角にすぎず、地下深くにさらなる電気石の洞窟が眠っていると明らかになった。
そして一攫千金を夢見る採掘者たちが、各国からデルタへと集うようになる。
第二次トルマリン・ラッシュの起こりであった。
「この鉱脈そのものが……巨大なひとつの『遺志』なんだ」
彼らは亡き恩師の残光に導かれ、
迷宮のごとく入り組んだ『深層』の奥へと迫っていく……。
「集え、争え、徒ども──勝者は雷神の栄誉に賜わす」
果たして、最奥で彼らを待ち受けるものとは?
(公式サイトより引用)
特徴
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ゲームシステム
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前作と同じくノベルゲーム。メイン部分の本編とファンディスク的な「メモリアル」の項目に分かれている。
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本編では前作のサブヒロイン2人と完全新規ヒロイン2人を選択肢の分岐で攻略可能。
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前作の「エピソード」と「メモリアル」は似た仕様でファンディスク的な恋愛エピソードがほとんど。前作メインヒロイン4人・新ヒロイン4人(うち2人は前作のサブヒロイン)・その他2人の短編の項目に分かれている。前作メインヒロイン以外は本編を攻略すると解禁される。ただし、前作ヒロインのストーリーには本作本編のネタバレが一部含まれる。一部ヒロインの項目では本編を先にプレイすることをシステムメッセージで推奨される。
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立ち絵のポーズ・背景・BGMなどの一部は前作から流用している。
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セーブスロット数は10×8ページだったのが、最大999ページまで拡張可能になり、セーブ箇所の少なさに悩まなくなった。(ブランド前作『あまいろショコラータ3』からの仕様。)
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メインストーリーの特徴
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時系列は前作終盤~エピローグの間のエピソードとなる。
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修学旅行で訪れた炭鉱で、最後の一人になるまで争うデスゲームのような戦いに巻き込まれるのがメインの舞台。
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敗北者は地上に送り返されるため、早期離脱者は地上での情報収集や地上で発生したトラブル対応などにあたる。
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基本的に主人公ソーマの視点で語られるが、ソーマに同行していないメンバーの視点に切り替わる場面も多い。
評価点・改良点
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前作で説明不足だった点の補完
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前作で最大の賛否両論点だった終盤をなかったことにするのではなく、それを踏まえたうえでの物語に昇華している。強力すぎる味方の能力を抑えてバトルのバランスを保ち、強力すぎる力の代償が題材の一つとなっている。
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伏線放棄と捉えられやすかった前作終盤のカーラのセリフも早い段階で拾われる。
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宝石一覧で存在が明らかになっていたが、所有者が登場しなかった宝石の意志を持つ者も初登場して物語に大きく絡む。
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メッセージ性の強化
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新用語である「ヴァニタス・シンドローム」は本作の世界で流行る鬱病のようなものであり、「未来へ希望を持てず、虚無感を抱く人が増える」といったプレイヤー目線でも同調しやすい題材となっている。
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そこに種族や立場の違い・意志を用いたバトルといった前作から引き継いだ要素を加えて、最後に一つの結論を出す。前作で積み重ねた要素を生かしつつ、別ベクトルでの掘り下げを成立させている。
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バトルの改善
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敵の能力の裏をかいての撃破、意外な弱点を見つけ出すといった頭脳戦の要素が強まった。
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単純な殴り合いと舌戦に終始していた前作に比べると、意外性や戦略性が増した。
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能力の設定変化により、主人公のソーマもバトルで積極的に活躍できるようになった。前作では基本的に戦力不足だっただけに主人公らしい立ち位置となった。
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前作では二転三転として長すぎたラスボス戦も短めに収まっている。
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ファンサービス
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既存ヒロインの普段着の新規立ち絵、前作サブヒロインのメイン昇格、意外なキャラの再登場、エンディングムービーで語られる彼ら彼女のその後など、続編・FDとしてのツボはしっかり押さえている。
賛否両論点
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続編+ファンディスクの構成について
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前作の倍にあたる8人分の恋愛・エッチシーンがある分、本編のボリュームは縮小している。
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前作から続投された男友達などもいるため、一人一人の活躍も分散。
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CGやシーン数は新規ヒロインの方が多めだが、前作の積み上げ分がない点で、既存ヒロインよりも愛着が湧きにくいとの指摘もある。
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前作は似たようなバトルの多さやCGの使いまわしが目立っていたが、本作では飽きが来る前にエンディングを迎えやすくなったとも言える。
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舞台設定について。前作の結末ネタバレを含む
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緊張感に欠ける要素
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卒業まで描かれた前作の過去を舞台にしているため、ペガサス組全員が無事に卒業できることは確定してしまっている。敗北者が地上に戻される設定と合わせ、死闘ではなくなっている。
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とはいえ、過去を描く派生作品にはありがちなことであり、前作で死亡者が出たことにも賛否はあった。
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似たメンツの集団戦で戦いが単調になりやすかった前作と違い、いつまでも同じチーム戦にはならず、バトルのCG使いまわしも減っているというメリットもある。
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エッチシーン関連
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前作と同じくエッチシーンは本編と切り離されている。肯定否定ともに前作と似たような意見が上がる。
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「シャワーを浴びる前のエッチを強要する」「無知に付け込んで性処理させる」「エッチのお預けをさせる/される」などと全体的に変態性が増した。元々悪ノリっぽさはあったが、本作ではその傾向が特に強い。
問題点
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シナリオに期待されていたトリックは前作より弱め。
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終盤に一枚絵とBGMの切り替えや多数の情報開示でプレイヤーを驚かせようとする演出があり、単独で見れば悪くはない。
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だが物語の見方そのものを一新させるトリックだった前作と比較すると、バトルを優位に運ぶタネを明かした程度に収まってしまっており、見劣りするのは否めない。
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演出面の弱さは変わらず
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バトルする時間がそれなりに長いが、少ない一枚絵の切り替わりと迫力のないSEによる戦闘シーンは変わっていない。
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前作から続投されたダイヤ組のモブキャラなど、立ち絵がないキャラは本作でもボイスのみの登場。
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前作初出から2年以上経っているため、発売直後にプレイしただけのプレイヤーは忘れていてもおかしくない。情報を補完するTipsなどもない。
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「選択肢までスキップ」がない。
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CG回収のために、数十分待たされる欠陥仕様を引き継いでいる。前作で散々指摘された同じ問題点を引きずったために非難されやすい。
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総当たり選択肢があり、スキップが何度か止まるのも改善されず。
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前作のSwitch/PS4移植版では改善されていただけに、本作もゲームエンジンの変更や機能追加による対応があれば良かったのだが。
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誤字
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一枚絵のある肝心なシーンで「獲物を弾き落とされ(武器のニュアンスなので得物が本来。)」「絶好の適正個体(本来は「適性」)」などの誤字が見られる。
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「明るみにして(本来は「明るみに出す」)」「底が尽きる(本来は「尽きる」「底を突く」のどちらか)」などところどころ言い回しのミスもある。
総評
前作は大胆なトリックが好評だったものの、プレイ時間の多くを占めるバトル演出が貧弱な点や、超展開と捉えられやすい終盤の展開により、トータルの評価は個人差が大きかった。
本作は前作終盤の説明不足な点を補完しつつ、バトルの方向性を変えてテンポを向上させたが、メインシナリオのトリックの衝撃は弱まった。
最大瞬間風速は強いがダレやすい点も目立つ『ジュエハ』。
大きな衝撃には欠けるが、小粒にまとまった『ジュエナ』といった感じである。
前作プレイは必須レベルなので、プレイしたうえでシナリオの補完・拡張を望むのなら本作もプレイすると良いだろう。
余談
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紛らわしいタイトル
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原作と似たタイトルのため、公式サントラの帯が「ジュエリー・ナイツ・アカデミア」と誤植され、交換対応となった。
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続編発売の是非
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終盤の急展開や、続編を匂わせるセリフなどはあったものの、きっちり区切りをつけたエンディングだったため、続編が発表された際には意見が分かれた。
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「サブヒロインとの恋愛や意味深なセリフの回収などはできそうだが、フルプライスでやるほどのシナリオ量を確保できるのか?」「既に大きなトリックを成立させているうえに、終盤の超展開を引きずることになるくらいなら、仕切り直した完全新作の方が良かった」などの声が上がった。
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発売後には「トリックは前作に及ばないが、補完やファン向け要素は良い」といった続編・FDによくある評価に落ち着いた。だが、2年以上経っての続編なので、発売当初の購入者からは設定を忘れる前に早く出してほしかったとも言われる。
最終更新:2025年06月23日 17:22