水月 -すいげつ-
【すいげつ】
ジャンル
|
ノベルアドベンチャーゲーム
|

|
対応機種
|
Windows 95/98/2000/Me/XP
|
発売・開発元
|
F&C・FC01
|
発売日
|
2002年4月26日
|
定価
|
8,800円(税別)
|
レーティング
|
アダルトゲーム
|
廉価版
|
リニューアルパッケージ:2007年10月26日/6,800円 BEST BUY F&C:2012年11月30日/3,000円(税別)
|
配信
|
2009年7月17日/4,104円(税8%込)
|
判定
|
良作
|
ポイント
|
エロゲ界隈の代表的なメイドヒロイン 全体を通じて不安定な空気 別名「尿月」
|
概要
「F&C・FC01」ブランドの初期作にしてF&Cの代表作でもあるノベルゲーム。
ストーリー
梅雨明け、蒸し暑い昼下がりに『僕』は目覚めた。 記憶喪失――何もかもを失って。
混乱、そしてすがる過去がない事の恐怖。 闇夜に怯え、震える『僕』を救ってくれたのは、自分のメイドを名乗る少女、琴乃宮雪。 そして友人たち――宮代花梨、新城和泉、大和庄一
優しい人たちに囲まれて『記憶喪失の自分』の新しい生活が始まった。
それは、どこかぎこちなくも優しい時間。 『僕』はそんな時間に幸せなものすら見出し始める。
けれども、目覚めたその日から続く悪夢だけは変わることなく『僕』を苦しめ続けた。
夢の中には少女がいた。 色素の欠けた白い肌と赤みがかった瞳。
そして、闇夜を呑み込んで、なお黒光りする髪。 数週間後の七夕の晩、『僕』が出会う美しい人。
牧野那波――
それが、毎夜のように『僕』が射抜き殺し続ける少女の名前だった。
(公式サイトより抜粋)
特徴
-
一般的なビジュアルノベル形式だが、一部のシステムがやや特殊。
-
コンシューマーのRPGのようにファイルを作成するところから始まる。
-
ファイルは3箇所あり、コピーや削除することが可能。
-
主人公の名前はファイルから変更することが出来る。
-
一般的な選択肢が表示されるほかに、文章中に
赤文字の単語
が表示される箇所がある。
-
赤文字の単語をクリックすると、その単語について掘り下げた会話が進行する。
-
これらにより、道中の展開やエンディングが分岐する。
-
通常のセーブは20箇所、クイックセーブは5箇所ある。
評価点
-
ストーリー
-
民俗学や伝奇を取り入れた読み応えのあるシナリオとなっている。
-
主人公が記憶喪失で、ルートによっては登場すらしないヒロインも存在する。
-
普通なら「ルートによって整合性が取れていない」と非難されるところだが、本作は「主人公の認識」がテーマであり意図的な演出と見るべきであろう。
-
ヒロインの立ち位置は複雑で、特に那波や雪の存在に関しては程度解釈が分かれており、考察なども行われている。
-
総じてはっきりしない要素が多いものの、「水に映る月」のごとく不安定な認識を表した“水月”のタイトルに相応しい内容と言えよう。
-
グラフィック
-
☆画野朗のハイレベルな原画はキャラクターの魅力を高めている。
-
当時の基準でずば抜けていたことは勿論のこと、発売から15年以上経っても色褪せないキャラデザであることは特筆すべきだろう。
-
キャラの普段着はジーンズなどの普遍的なものだが、各自に似合った衣装がデザインされている。
-
背景にも力が入っている。
-
キャラクター
-
シナリオだけではなくキャラ萌えゲーとしても人気がある。
-
主人公を慕うメイド“琴乃宮 雪(ことのみや ゆき)”の人気は特に凄まじい。「雪さん」の愛称で親しまれている。
-
主人公を絶対的に肯定する性格である事や、時折見せる弱さが可愛らしさを引き立てる。
-
理想のメイドとして挙げられることも多いキャラであり、発売から10年以上経ってからもオンリーイベントが開かれるほどである。
-
雪さんが頭一つ抜けているものの、他のキャラクターも人気がある。
-
理想のメイドの他に、ミステリアスな障害者(盲目)、快活な幼馴染、大人しい眼鏡っ子、つんでれ姉とでれでれ妹のロリ双子、ボーイッシュなロリ元気っ子とヒロインは皆個性的。ある種定番な要素が揃っており選り取り見取りである。
-
ロリ元気っ子の「わはー」といった口癖などもネットでは長らく愛されていた。
-
エロ
-
ヒロインがやたらと漏らすのはエロ・ネタの両面でファンに愛されている。「尿月」呼ばわりされるのはこのため。
-
ちなみに雪さんは汗をかかない・双子はロリだから……など一応理由付けはある。他の面子は……。
問題点
-
ストーリー
-
考察してもはっきりしない要素や理解が難しい箇所がある。
-
「そもそも“ユーザーのご想像にお任せします”なのはどうなのか」と言う意見も。
-
「認識」を題材としているだけに仕方がない部分もあり、長所の裏返しでもあるが、「分かりにくい」「エンターテインメント性に欠けている」という非難も存在する。
-
細かいミス
-
選択によっては整合性が取れない展開となる。修正パッチで改善された。
-
「ひと段落」という読みにくい表記も見られる(一段落の読みは「いちだんらく」が一般的)。
総評
民俗学を扱ったシナリオゲー・メイドが登場するエロゲーと言えば真っ先に名前が挙がる傑作。
足が地に着かないストーリーは独特の雰囲気を生み出しており、主人公の「認識」により世界がまるで代わる様はまさに「水に映る月」である。
余談
-
公式サイトでは体験版をプレイできる(但しエロ要素はない)。
-
本作と共通するワードが存在することなどから、プレイ後に柳田國男の『遠野物語』に興味を持つ人もいる。
-
現在は上記リンク先のサイト青空文庫で無料で読むことが出来る。
-
後に発売された『Garden』は本作の著名スタッフが手掛けた事から期待されていた。
-
だが、未完成ルートなどの問題を抱えており、本作ほど高い評価とはならなかった。また、『Garden』を最後にシナリオライターが消息を絶つ。
関連作品
-
『みずかべ』
-
コミックマーケットで先行販売されたファンディスク。詳細は後述。
-
『水月 -迷心-』
-
ドリームキャスト・プレイステーション2・プレイステーション・ポータブルへの移植版。
-
移植に伴いボイスが追加されている。
-
『水月 弐』
-
『水月 弐 ~Portable~』
-
『水月弐 ~追憶~』
-
2011年にPS3で発売された続編。PSPで『Portable』が発売された後に18禁である『追憶』が発売された。
-
『水月』とは原画家もシナリオライターも違うため、別物扱いされることが多い。
-
(他ブランドだが)『ONE2 ~永遠の約束~』のような立ち位置である。
-
『水月 ~すいげつ~ Grand Package』
-
2018年8月9日に『カスタムメイド3D』『カスタムオーダーメイド3D2』のコラボ第32弾として、本作のキャラのなりきり衣装が発売された。
-
2024年5月31日にカードゲーム『ディヴァインクロス』のブースターパックが発売予定。
みずかべ
【みずかべ】
ジャンル
|
アドベンチャー
|

|
対応機種
|
Windows 98/2000/Me/XP
|
発売・開発元
|
F&C・FC01
|
発売日
|
2002年9月27日
|
定価
|
3,800円(税別)
|
レーティング
|
アダルトゲーム
|
廉価版
|
リニューアルパッケージ:2007年10月26日/6,800円
|
配信
|
2014年4月11日/2,036円(税8%込)
|
判定
|
なし
|
ポイント
|
壁紙集+ミニアドベンチャー まさかの雪さんルートなし
|
概要(FD)
-
コミックマーケットで先行販売されたファンディスク。
-
後に一般販売されたほか、リニューアルパッケージやコンシューマー版に同梱されている。
特徴(FD)
-
複数の絵師により描かれた36枚の壁紙とミニADVを収録している。
-
ゲームエンジンは本編を引き継いでおり、タイトル画面も「水月 -すいげつ-」と表示されている。
-
立ち絵なども本編から引き継がれているが、書き下ろしのCGもある。
-
ゲームファイルを作成する要素はなくなった。
評価点(FD)
-
本編のifルート
-
牧野 那波、香坂 アリス・マリアの3人に的を絞り、日常を描いている。
-
本編より分かりやすくとっつきやすいシナリオとなっている。
-
美しいグラフィックや尿月といった好評だった要素をそのまま引き継いでいる。
賛否両論点(FD)
問題点(FD)
-
人選
-
本編で莫大な人気を誇った雪さんのルートがないことはファンから惜しまれた。
-
一応出番自体はあるが、やはりルートは欲しかったところ。
総評(FD)
ファンならプレイ必須とまではいかないものの、本編を気に入ったなら購入しても良いだろう。
現在はダウンロード版もあるので、プレイのハードルが低くなっている。
最終更新:2023年12月19日 12:20