Fe
【ふぃーや】
ジャンル
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アクション
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対応機種
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Nintendo Switch Xbox One プレイステーション4 Windows(Steam/Origin)
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発売元
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Electronic Arts
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開発元
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Zoink Games
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発売日
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2018年2月18日
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定価
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1,944円(税込) 【Win】2,000円(税込)
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判定
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スルメゲー
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ポイント
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神秘的な森の冒険 セリフはなし 雰囲気を楽しむのを阻害する要素
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概要
説明不要の北米大手サードのEAが送るインディーゲーム開発者支援企画「EA Originals」の第一弾となったタイトル。
開発を務めたZoink Gamesはスウェーデンの独立系ディベロッパーである。
「開発スタッフが少年時代に森で遊んでいた頃感じた神秘的な体験」と「スカンジナビアの古代文明を思わせる雰囲気」をゲームで再現することが制作のコンセプトになっており、ゲーム全編通して北欧の森林を連想させる静謐とした雰囲気が特徴の一作である。
ちなみに開発者によるとタイトルの発音は「Fee」や「Feh」ではなく「Fee-ya」が正しい発音で、これはスウェーデン語で「森の妖精」という意味があるとのこと。
特徴
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プレーヤーは主人公である「Fe」を操作する3Dアクションゲームとなっている。
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基本的にはジャンプアクションを駆使したりフィールド上のギミックを活用して先に進んだり…と『マリオ64』と『時オカ』以降の王道的な3Dアクションゲースタイルとなっている。
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本作の独自要素として、Feは「歌う」ことができる。
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森の中の特定の動植物は特定の波長で歌いかけ交信に成功すると、空中に足場を作ってくれたり背中に乗せてくれて障害物を突破できるようになったりとこの方法で道を塞ぐ物を突破することができる。
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このほか、ストーリーの進行に伴いFeは特別な鳴き声を習得できる。
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鳴き声ごとに対応したギミックがあり、これを作動できるようになるため行動範囲が広がる。こちらはストーリークリアに必須。
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また、世界のあちこちに散らばる赤い石を一定数集めるごとに新たなアクションを身に着けることもできる。
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こちらは全6種あるのだが、二段階目まで習得していればクリアには支障はない。あれば便利程度の物である。
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敵キャラとしてはサイレント・ワンという不気味な一つ目の敵が登場する。
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Feがサイレント・ワンに発見された後に逃げ切れないと捕縛されて檻に閉じ込められてしまい、即ゲームオーバーとなってしまう。
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サイレント・ワンはFe以外の動物も見つけ次第檻に閉じ込めていく。この檻は森の中にある木の実を投擲することで破壊することができる。
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Feは他のゲームのキャラのように相手を踏みつけて倒したり魔法で攻撃することはできない。また、サイレント・ワンはFeを発見次第変形しこちらよりも早いスピードで追い詰めてくるので真正面でかち合った場合逃げ切るのは難しい。
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このためサイレント・ワンの入る場所では物陰や草むらに隠れたり大きく迂回しながら進む必要があり、いかに見つからず進むかというステルスゲームの要素もある。
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ただし特定のポイントでは森に生きる他の生き物の力を借りたり、特定の場所に持っている物を投擲することで倒したり追っ払ったりすることもできる。
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ストーリー面での特徴的な部分として、
この作品はキャラクターのセリフやナレーションは一切存在しない
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序盤・ロード中などにメタ的な操作説明は入るが、それ以外は文字を用いた情報開示は無いため、ストーリーをどう受け取るかは個々のプレーヤーに委ねられてる。
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ハードごとのゲーム内容の違いは無いが、Switch版のみHD振動に対応しており、歌う際の波長の変化をモーションコントロールで操作することができる。
評価点
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幻想的なビジュアル
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本作の最大の特徴にして評価点。黒曜石を思わせるような質感ながらもどこかオーガニック的でカラフルな世界が広がっており、どのシーンでSSを撮影しても常に絵画のような美しい一枚が撮れる。
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ゲーム全体通して主に暗色を基調とした世界となっているが、不気味さと親しみという相反する二つの要素を両立したような不思議な印象を受ける。
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逆にサイレント・ワンのいる場所はどぎつい橙色の色合いになっており、世界観的にも異質なものであることが分かりやすく、かつプレーヤーにとっても緊張感を生じさせるものとなっている。
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BGMも神秘的かつアンビエント感のある曲調となっており、作中世界への没頭感をより深めている。
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状況に応じて曲調や楽器が変化するギミックも盛り込まれており、他のゲームならばボス戦に相当する場面(本作のボス戦は自ら暴力を振るって相手を殺害するというものではなくパズルの攻略に近いのでこのような表現をしている)ではかなり臨場感がある楽曲にもなる。
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一方所々BGMが流れず環境音のみの場所もあるのだが、どこから聞こえてくる虫や動物の鳴き声や木々がゆらめく音が非常にリアルで幻想的な風景ながらも実際に平穏な森の中を歩いているようなリアリティがあり、神秘性と現実性の融合に成功している。
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3Dアクションゲームとしての王道的な面白さ
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セリフや分かりやすい文章でのヒントが無い故に、もしかしてこうしたらいいのか?というプレーヤー自身の考えがうまく成功した時の快感はなかなか。
賛否両論点
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キャラクターデザイン・世界観のビジュアルが普段から漫画的な作品を親しんでいる日本人の好みに合うかは意見が分かれる。だんだん愛らしく見えてきたという意見もあるが。
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Feが自分から攻撃できない反面サイレント・ワンに発見されると即死なのでゲームとしての爽快感が薄い。
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本作は例えるならば「相手にダメージを与える武器・アイテムが全部使用禁止の3Dゼルダ」とも言える。一般的なアクションゲームのような刺し合いの楽しさは期待しない方がいい。
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ストーリー
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断っておくと文字的な情報のないこと自体は問題点ではない(本筋はシンプルなのでおおよそ理解できると思われる)
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だが、それにしてもストーリーには若干謎が残る部分がある。プレーヤーに委ねていると言えば聞こえはいいのだが…。
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肝心のストーリーなのだがどのような感情を抱くかは個人の感性に左右される。セリフを廃したこともストーリー上のギミックに結びついておらず、一言で言ってしまうと雰囲気ゲーである。
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見るに堪えない出来というわけではないが、感動したという人もいればよく分からないまま終わってしまったという人もおり、非常に評価の振れ幅が大きい。
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ストーリーは最終盤でそれまでの伏線を一気に回収する。このため序~中盤は何をやっているのかさっぱりで、最後まで通してプレイするモチベーションを保ちにくい。
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石碑
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各地に点在する石碑もほぼ確実にストーリーの補完的をしていると言えそうなものもあるが、スタッフは石碑について
「スカンジナビアで発見される古いルーン石碑は、意味のある内容もあればそうでない場合もある」
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という旨のコメントしているため、この言葉を考慮するならば本作にも本筋と一切関係ないような物が混じっている可能性は高いため尚更本作に関する考察は困難になっている。
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石碑を見つけた数自体は記録されるのだが、ギャラリーモード等が無く石碑自体は後から現地に行かない限り見返せないため、本格的にストーリーを考察しようと思うならば逐次スクリーンショット等を撮っておく必要がある。
問題点
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役立たずな道案内とマップ
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Feの進むべき道を示してくれる鳥がいるのだが、これが本来の目的地と違う地点にとんでいきやすい。
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全体的に高低差のあるフィールドが多いのだが、マップは段差や二階層を考慮せず描かれているためにかなり不親切。
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ただ、制作スタッフは「プレーヤーを導く要素はつけたくなかった」「そもそもMAP機能すらつけるつもりはなかった」とコメントしており、これらの仕様は意図的だった可能性が高い。
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先に進むべき道の分かりにくさは好意的に解釈するのであればプレーヤーが想像しえない異世界に土地に迷い込んでしまったような雰囲気作りの一助にはなっていると言える。
が、そういった場面がゲーム開始直後から最終盤まで続くために全編通して次どこにいってよいか分かりにくいというのはやはりストレスになる人も出てきてしまうだろう。
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カメラが背の低いFeに合わせて通常の3Dアクションゲームよりも視点が低く、視野も狭い。
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上記の通り高低差のあるマップが多く、この結果独特のグラフィックも相まって人によってはかなり3D酔いしやすい。
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作品世界の色合いが場所ごとに固定されている(木や地面などが全て同系統の色で表現されている)ため、距離感やオブジェクトの配置が掴みにくく、ジャンプアクションの失敗に繋がりやすい。
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これが原因で操作ミスを繰り返すと作品世界への愛着が薄れ途中で投げ出してしまうことに繋がりかねない。せめて進行上活用するオブジェクトは縁取りされたり若干周りと色が違ったりすれば分かりやすかったのだが。
総評
開発者曰く野生動物との一瞬の邂逅が制作の上で大きなインスピレーションを受けたとのことで、実際にプレイするとそうした神秘体験をゲームという媒体で上手く表現できていると言える。
ただ問題は雰囲気を抜いて3Dアクションゲームとして見ると出来に少々疑問符が付く部分もあり、どっぷり世界観を楽しもうとするとどうしてもゲーム的な不出来な部分が見えてしまう一作でもある。
しかしそうした部分を許せるのであれば唯一無二の作品であるとも言え、単純なアクションゲームとは一味違った魅力あふれるゲームとなっている。
総じて楽しむのにハードルがあるのは否定しないが、PVやイメージイラストを見てそれらに心を揺さぶれられたならばプレイしてみてもいいかもしれない。
きっと、忘れられない体験になるだろう。
余談
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一応小文字ではあるがタイトルが某『手ごわいシミュレーション』ゲームの略称と被っているため本作に関する情報発信及び収集には一苦労する。Switch版もあるだけになおさら。
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ネットで検索・レビュー等するときはタイトルの前後に「EA」か「Zoink Games」とつけることを推奨する。
最終更新:2021年10月28日 11:49