ロンドニアンゴシックス ~迷宮のロリィタ~
【ろんどにあんごしっくす めいきゅうのろりぃた】
ジャンル
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ゴスロリアクションRPG
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対応機種
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ニンテンドーDS
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メディア
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DSカード
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発売・開発元
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メガサイバー
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発売日
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2005年10月13日
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定価
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5,040円(税込)
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プレイ人数
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1人
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レーティング
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CERO:全年齢対象
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セーブデータ
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3個
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判定
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ゲームバランスが不安定
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ポイント
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RPGではない ひたすら逃げ回るゲーム 私じゃなきゃダメなのぉ!
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概要
ジャンル名の通り、現代ファッション様式の1つである『ゴシック&ロリータ(ゴスロリ)』をモチーフに取り入れたアクションRPG。
主人公の少女アリスを操作し、魔物のはびこる地下迷宮をさ迷い、モンスターたちの追跡を交わしつつ逆襲して倒して素材を集め、探索の助けとなる魔法のドレスを作成しながら迷宮の最奥を目指していく。
ストーリー
19世紀末、革命を逃れてロシアから亡命した天才科学者・ナボコフはロンドンに居を構え、闇の魔導に通じる執事・ミヒャエルの助けを借りながら次々に巻き起こる怪事件の原因である魔物に対抗する手段の研究を進めていた。
ところが、屋敷の地下に開いた大穴から這い出した魔物によってナボコフは魔界の奥深くへ連れ去られてしまう。
ナボコフの一人娘・アリスは魔法のドレスに身を包み、ミヒャエルの協力を得ながら父を救うべく魔界へ足を踏み入れる。
(Wikipediaより引用)
ゲームシステム
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本作を端的に言うと、『パックマン』の要領で敵をかいくぐりつつ地下迷宮を下へ下へと進んでいくゲーム。
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地下迷宮
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ナボコフ邸の地下室と突如つながった迷宮。全30階。
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各階は複数の部屋に分かれており、扉を介して行き来が出来る。
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ただし、扉は最初は閉じているものもあり、それを開けるには部屋の中に配置されている魔法陣の上を全て通過して無効化する必要がある。
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それぞれの階層には必ず1つずつ「ポアダムン」と呼ばれる溶岩で出来たような球体が配置されており、これに触れることで破壊できる。
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破壊するとポアダムンのある階層全体の邪気が祓われ、同階の魔物が弱体化する。一定時間経過でボアダムンは復活する。
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ボアダムンが破壊された状態でないと通れない通路というものもある。一方で、魔法陣はボアダムンの復活に合わせて再生してしまう。
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「礼拝堂」「ミシン部屋」という拠点と通じている場所もある。
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礼拝堂は1回でも入ってしまえばワープ拠点に使えるほか、アリスの体力等を全快させる効果がある。
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ミシン部屋では集めた素材を2~5種を組み合わせて、新しいドレス(後述)が作れる。ただし、ドレスを作るには型紙をあわせて入手しておく必要がある。
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敵
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原則、1つの部屋に必ず2体以上はいる。
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アリスを遠くから感知し近寄ってくる。DS下画面には心電図のような外見の「気配メーター」が用意されており、敵が近くにいるほどこの心電図が大きく波打つようになる。
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下の階層に行くほど敵の足が速くなる傾向。中盤以降になると、武器を向いている方向に振り回す敵、直線の通路をダッシュしてくる敵、奈落の底や池を無視して進んでくる敵、壁をすり抜けてくる敵、飛び道具を発射してくる敵が登場するようになる。
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通常は触れた時点でアリスが昏倒し勝つことが出来ない。しかし唯一ボアダムンが破壊された状態だとアリスから逃げるようになる。この状態の敵に追いつくとスタンし、さらに上から何度か踏みつける(Aボタン)と倒すことが出来る。
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倒すと金銭、新しいドレスの型紙、ドレスの素材を入手可能。1回のエリアチェンジで復活するのでアイテム稼ぎに使える。
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素材は同時に6つまで持ち歩ける。
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例外として「魔法使い」「精霊」「ドラキュラ」の3人は倒せない。代わりにボアダムンが壊れている間は会話することが出来、新しい型紙やドレスの素材を売ってくれるケースがある。
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アリスのスペック
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アリスが出来る行動は歩く(方向キー)・走る(移動しながらBボタン)・着替える(Xボタンでメニューを開いて選択)・ドレスの能力を使う(Yボタン等)、敵を踏む(Aボタン)の5つ。
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パラメータはDPと残機の2種。
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DPは走ったりドレスの能力を使うことで徐々に減少。歩いたり何もしないと自然回復するほか、ミスからリスタートしたとき・魔法陣を踏んだときにも一定量回復する。
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礼拝堂に入るとDP・残機ともに全快する。
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敵に触れたり、持っている武器や飛び道具にぶつかると1ミス。最後に出入りした部分から再出発となる。6回分ミスすると最後に訪れた礼拝堂から復活となる(ゲームオーバーとはならない)。
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ドレスの能力
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上述のように、基本はYボタンを押すとドレス固有の能力を使う。常時効果を発揮するものもまれに存在する。
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メニューを開いている間は時間が止まり、持っているドレスを取り替えられる。ただし、ドレスの特殊能力を解除できない状況(たとえば溶岩の上をドレスの能力で歩いている途中など)では着替えられない。
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種類
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大きく分けて移動を補助する系統、敵を攻撃する系統、敵の攻撃から防ぐ系統の3つ。
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移動系には、ランダムで近くのどこかにワープする、通常は歩けない水面や溶岩の上を歩けるようにする、体を小さくして壁の隙間を潜り抜ける、大ジャンプして奈落を飛び越える、移動速度を上げる、といったの特殊能力がある。
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攻撃系には、近づいてきた敵に電撃を浴びせるもの、大砲を向いている方向に発射して敵を弾き飛ばすものなどがある。
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終盤に手に入るドレスは、攻撃範囲や効果が向上していく傾向がある。
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大砲を放つドレスの最上級版は、(砲弾を直撃させた)敵をマップから消し去る効果をもつ。ボアダムン非破壊時では、唯一敵を排除できる手段である。
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防御系には、敵の飛び道具を無効化させるもの、敵に触れたときにDPを消費して身を守るものなどがある。
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例外として、能力を行使している間だけ時間を止め周囲の地形や敵の位置を把握するもの、踏んでいない魔法陣のある方角を教えてくれるもの、着用している間DPの回復を早めるもの、敵の移動速度を落とす妨害系のものがある。
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ラスボス戦用のドレスもある。剣を前に振りかぶる能力を持つのだが、こちらはラスボス戦以外で使用は不可能。
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評価点
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ドレスのデザイン
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「ゴシック&ロリータ」を根幹に据えているだけあって、ゴスロリファッションが本格的に盛り込まれている
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ドレスに応じた能力を発揮できるという設定に加え、アリスが着替えるとポリゴンモデルの服装だけでなく髪形も変わり、会話時に現れる2Dの立ち絵にもこれらの変化が反映されるなど細かい部分が作りこまれている。
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勢い任せ・奇々怪々な世界観
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耽美的なキャラデザでありながら色々といい意味でおふざけが効いている。
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ゴスロリ服を身にまとい危険な迷路を歩き回りつつ魔物を足蹴にする、という設定の主人公は今後、なかなかお目にかかれないだろう。
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主人公アリスは、お淑やかな外見とは真反対でとにかく脳筋で純朴。多彩な表情(時には変顔をしながら)物語のなりゆきに驚いてくれる。
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最序盤のシーンでは、制止する周囲を押し切って「私じゃなきゃダメなのぉ!」という理由(?)で地下迷宮にさらわれた父を単身で助けに行こうとする。
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ラストでもこの、「私じゃなきゃダメなのぉ!!」というセリフが使われるが、今度は単なるわがままではなく、「魔王を倒せるのは私しかいない」といった意味合いに使われるため、妙に熱い展開となる。
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総じて、勢いで突っ走るタイプのシナリオであり、プレイヤーの疑問を差し挟む余地など存在しない。
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パズルのような戦略性の余地あり
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ドレスの種類を増やすと、敵を撒けるポイントが次第に増えてくる。
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敵はほぼ確実に2体以上近づいてくるため、慣れこそ必要だが、逃げ場をふさがれないように敵を誘導する工夫は最低限通用するゲームバランスではある。
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勢いのあるBGM
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タイトルロゴ時に、倫敦とは思えないようなデスメタル調の曲が冴え渡る。
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ダンジョンのBGMもループが短いながらも、妙に耳に残るつくりになっている。
問題点
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難易度が高い逃げゲー
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「ポアダムン」を壊さない限り、主人公が主体的に攻撃できる機会はほぼない。RPGという公称は事実上の嘘であり、敵や敵の攻撃に触れてしまえば即ミスの逃げゲーである。
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序盤の敵は近づかれなければいいためパックマンのようなゲームとみなしてよいが、中盤以降になってくると足が速かったり地形を無視してきたり、飛び道具を使ってきたり武器で広範囲攻撃してきたりと逃げゲーの難易度にさらに拍車をかけてくる。
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走らないと追いつかれる事態がデフォルトになってくるため、DPが切れるとほぼ確実に詰みである。
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ハードがDSであるが故の画面の小ささも視界確保が重要となるこの手のゲームとはあまり相性が良くなく、迂闊に走ると不意の敵との衝突も起きがち。
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ゲームをロードしたときには「最後にセーブした部屋」の出入り口からスタートとなるため、敵に接触しそうになったらいったんソフトを中断してリセットすれば、アリスの残りミス数の温存自体は可能。
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これを正攻法といって良いかはだいぶ疑わしいが、ぶっちゃけサクサクプレイしたいのであればリセットで調整しないとやってられない。
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迷いやすい
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本編に登場するマップは、迷宮とナボコフ邸の2つのみ。途方も無く広いマップではないのだが地図の類は一切無く地形を覚えるのには一苦労。
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地下迷宮の一部屋分の範囲であればドレスの能力で偵察できる。しかし地下迷宮の部屋がどこにつながっているかまではわからず、部屋を移動したら行き止まりだった、という事態は珍しくない。
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ナボコフ邸に至ってはドレスの能力も使えない。
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実際にナボコフ邸のメイドに話しかけると、道に迷っているのでは?とおちょくってくる。
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ドレス製作に必要な素材も、都合よくそろわないことのほうが多い。敵に応じて落とす素材は変わっていくため、どこでどんな敵からどんな素材が手に入ったかは、細かくメモをとる等の対策が必要。
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ゲーム難易度に影響するドレスもいくつかあるため、素材が集まらないと中盤以降キツイといった事態も十分ありうる。
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例としては、時を止めて周囲を見渡せるドレス「サーベイ」、DPの回復を早めるドレス「プロティウス」は早めに入手していたほうが良い。というか前者はほぼ必須。
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またどの敵を倒せばいいのか分からない場合、踏破してきた迷宮を再度探索する羽目になる。
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モーションがぎこちない
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斜め移動に対応していない。ひざが曲がらない。前後左右を見回すときに、90°ずつグルっと回転する。
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シナリオが薄い
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筋立てが王道かつシンプルなこと自体はいいのだが、シナリオの肝であるアリスの出生の秘密に関してはたいした伏線もなく唐突に判明する上、なぜ魔物たちがわざわざ博士を明鏡の奥に連れ去ったのか等についても詳細が語られないまま投げっ放しで終わってしまう。屋敷とダンジョンでしか話が進行しないため、舞台が19世紀である必然性もない。
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シナリオを読み返す機能がないが、なくても問題ないと思えるほどに内容は薄い。キャラクターの個性が際立っているだけにもったいない。
総評
ゲームシステム部分では、倒せない敵複数体に追い掛け回されるというのがデフォルトであり、爽快感は薄い。
最後までやりきるにはかなりの技術と愛が必要なゲームであり、ストーリーも至極シンプルがゆえに薄味であること、何よりもゲーム性のテーマが「ゴスロリファッション」「着せ替え」という点で、大きく人を選ぶ。
その一方、脳筋ゴスロリ少女が敵から逃げつつ敵を踏んづけて倒すという奇奇怪怪な世界観や、主人公含めて癖のあるへんてこな造形のキャラクターたちが一種独特の味を醸し出している。
「ゴスロリファッション」をテーマとしたゲーム性も、その筋の愛好家に訴求するだけの魅力はもち得ており、単調なゲーム性を受け容れへんてこなキャラの珍妙なやり取りなどにも素直に笑いどころを見いだせた一部のプレイヤーにはそれなり評価されている。
ある意味、「刺さる人には刺さる」というフレーズがふさわしいゲームと言えよう。
余談
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2chの携帯ゲームRPG板におけるデフォルトネーム『名無しじゃなきゃダメなのぉ!』は本作の主人公のセリフが由来。
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売り上げは約5000本と決してプレイ人口が多いわけではないのだが、コアなマニアがいるのは事実だろう。
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本作の開発・販売を行ったメガサイバーは、後にコナミデジタルエンタテインメントに吸収合併されている。
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そのため、近年の一部コナミ作品に本作由来のネタが仕込まれることがある。
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例としてはスマートフォンアプリ「ときめきアイドル」のオフライン版で、「アリスお嬢様」の一言コメントに「私じゃなきゃダメなのぉ!」が使われているなど。
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アリスの父の名「ナボコフ」は、おそらく小説『ロリータ』を著した作家ウラジーミル・ナボコフに因んでいる。
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「ロリータ」はこの作品で主人公の中年男が恋する少女の名。1955年に発表されたこの作品は、当時としては極めてスキャンダラスな内容であり、毀誉褒貶の嵐を巻き起こしつつ大ヒットを飛ばした。
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「ロリータ」という名を少女愛や少女装の代名詞としたのは、他ならぬこの作品である。
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甘い少女趣味的な嗜好性を取り入れた「ロリータ」というストリートファッション様式(ゴスロリの『ロリ』を構成する要素)が日本独自の文化として発祥しているが、そちらにおける「ロリータ」も同様に小説『ロリータ』を由来としており、ファッション様式上においては「大人の女性の幼さ」や「純粋な少女らしさ」等の意味合いを持っている。
最終更新:2024年04月17日 15:33