月下の棋士 王竜戦
【げっかのきし おうりゅうせん】
ジャンル
|
将棋
|

|
対応機種
|
プレイステーション セガサターン
|
発売元
|
バンプレスト
|
開発元
|
アクセス
|
発売日
|
【PS】1996年9月13日
|
【SS】1996年11月22日
|
定価
|
5,800円(税抜)
|
判定
|
なし
|
ポイント
|
CPUが弱い 超豪華声優陣 良くも悪くもキャラゲー
|
概要
ビッグコミックスピリッツで連載されていた奇人変人が跋扈する実に変わった内容の将棋漫画をゲーム化した作品。
各モード説明
王竜戦編
主人公の氷室将介となって王竜戦に参加するストーリーモード。
じっちゃん修行編
祖父の御神三吉との対局練習モード。レベル5まで強さを設定できる。
宿命の対決編
フリー対局モード。好きなキャラ同士を選んでの対局ができる。二人対局も可能。
定跡などない!編
他のモードで保存した棋譜を再現し、閲覧するモード。
ストーリー
森圭太「A級B級など関係ねえ、全プロ棋士がトーナメントで争うんだ!
こいつは待ったなしの壮絶な戦いになる事請け合いだ!
決勝はドームでやる!ドームを満杯にするんだ!
オーロラビジョンに、盤上に振りかざす指がでっかく映ってよお……
タイトルの名称は『王竜戦』だ!」
評価点
-
良い意味で原作通りではない。
-
原作の王竜戦で実際に氷室と対局する棋士以外にも数人参加している。ある意味原作ぶち壊しだが、彼らは皆原作で氷室と名勝負を繰り広げた人物であり、原作ファンにも納得のいくチョイスである。
-
既に退会済みの鈴本永吉、まだプロになっていないはずの関崎勉、別の棋士に負けたはずの幸田真澄、C級で初顔合わせするはずの大和岬などとも対局する。
-
上記ストーリーのドーム決戦は原作では様々な事情により実現しなかったが、ゲームでは本当に実現する。
-
原作で叶えられなかった夢を、別の媒体とはいえ叶えることができたIFストーリーとして、決勝戦にふさわしい盛り上がりを見せる。
-
対局中は事あるごとに原作絵のカットインが挿入される。
-
どれも印象に残る場面で使われた絵であり、原作の対局のような異様な雰囲気を醸し出すのに一役買っている。
-
声優陣が超豪華。
-
主役クラスのキャラである氷室将介を演じる檜山修之氏や御神三吉を演じる塚田正昭氏は勿論の事、対局相手のキャラにも茶風林氏や千葉繁氏、子安武人氏に三石琴乃氏等と実力派の声優陣が並ぶ。当然演技も巧みであり、原作の決め台詞がふんだんに使われていてファンには感動もの。OPで上記の発言を行う森圭太にも長嶝高士氏が起用されており、力の入れ具合は半端ではない。
-
棋譜の読み上げも行われ王手の際は王手と出るのも細かい。ちなみにこの読み上げは三石氏によるもの。
-
画面構成
-
盤面に数字が振ってあり、上部には算用数字、右側には漢数字、先手後手に応じて並び順も変わるので見易い。
-
全体的に、盤面と駒台、更には対局者の顔の配置が分かりやすいものとなっている。おそらくNHK杯の仕様を意識したのだろう。
-
ストーリーという概念
-
将棋ゲームの殆どがCPUと対局するのみであるのに対し、ストーリーが展開されるのが良い。この手の取り組みは珍しく他作品を挙げるなら当時から半年前あたりにSFCで発売された『プロ棋士人生シミュレーション 将棋の花道』が将棋界を舞台にしているくらいであろう。
賛否両論点
-
セリフの量
-
評価点の項の通り今作は超豪華声優陣であるが、セリフは対局中の王手や決着時などのわずか数種類しか用意されていない。これではとんでもない声優の無駄遣いと捉えられるのも止むなしであろう。
-
ゲーム内容
-
本作に限らず当時のPSの性能ではプロの棋力を再現出来ないのは仕方のないところである。のだが、後述の問題点でも挙げられている通りCPUがあまりにも弱い。
-
PSの性能で猛威を振るって来るどころか、当時発売されているSFC将棋の方が強いという事になっている。それでも終盤力は若干あるので全くの初心者では太刀打ちできないくらいの強さはあるので、将棋を始めたいという人には不向きと言える。
-
それなりの棋力のファンにとっては親しみやすくて良いのかも知れない。
問題点
-
CPUが弱い。
-
滝川名人でさえも、平然と悪手を指してくる。
-
原作ではたった一度の悪手で戦況がひっくり返るという場面が数多く登場するのでその再現とも言えるが、さすがに一戦で何度もやらかすのはどうなのか?
-
強い相手ほど思考時間が長くなるが、本当に考えているのか疑わしいくらい弱い。
-
将棋の強い人なら、原作の氷室のように初手端歩突きをやっても問題なく勝てるだろう。むしろそれを再現させるためにわざと弱くしているのかも?
-
決め台詞も用意されているのは良いのだが、敗勢から苦し紛れの王手をしながら得意気に放ってくるので、そのあたりは流れがおかしいと言える。
-
登場人物は四段とあるが本作の棋力は遠く及ばない、かといって初心者に優しいというわけでもない。ゲーム自体も対局以外はなく将棋ゲームとしては中途半端であるため、ファンアイテム寄りの作品とされている。
総評
原作と展開こそ違うものの、これはこれで良く出来ており、ある程度の棋力を持った原作ファンにはお勧めできる一品となっている。
CPUの棋力は原作と比べるとあまりに物足りないが、指し方をよく知らない人でも頑張れば勝てるような親切設計とも言えるだろう。
ただし原作を知っていること前提の作り方をされているため、原作を知らない人から見ればただ将棋をやるだけのゲームでしかない。
可能ならば、原作を(少なくとも王竜戦編まで)読んでからのプレイをお勧めする。
余談
ちなみに、本作発売の翌年である1997年に当時のチェスの最強コンピューター「ディープ・ブルー」と人間のチャンピオンであるガルリ・カスパロフ氏との間で行われた「世紀のマンハッタン決戦」にて「ディープ・ブルー」が勝利し「コンピューターが人間を超えた」と話題になったが、コンピューター将棋はまだそこまで発展しておらず、プロ棋士で自身もコンピューター将棋の開発に携わっていた飯田弘之氏の見解によると1996年当時の将棋の最強コンピューターはアマ初段・レーティング1600相当の実力に止まる、といったところであった。そのため本作に限らず当時のコンシューマーゲーム機で動作するソフトの棋力がアマ級位者レベルなのもやむを得ないところではあったろう。
本作はPSでは棋力も弱い方であり15級・レーティング100程度と思われる。月下の棋士のゲーム化としては本作が唯一である、現在は相場も高くないのでファンアイテムなら手軽な選択肢になるだろう。PSで強さを求めるなら「永世名人II」あたりがレベル0からして13級・レーティング300以上はあるので選択肢に入るだろう。
最終更新:2023年08月24日 18:36