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SFC森田将棋シリーズ
本項では、オリジナル版である『初段 森田将棋』と『早指し二段 森田将棋』と『早指し二段 森田将棋2』について解説する。
判定は『初段 森田将棋』が「クソゲー」、『早指し二段 森田将棋』2作は「なし」。
初段 森田将棋
【しょだん もりたしょうぎ】
ジャンル
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将棋
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対応機種
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スーパーファミコン
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メディア
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4MbitROMカートリッジ
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発売元
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セタ
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開発元
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セタ、ランダムハウス
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発売日
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1991年8月23日
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定価
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8,800円
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判定
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クソゲー
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ポイント
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SFC将棋第一作目 初心者お断り 文字が潰れていて見辛い駒 1手20秒の段位獲得戦
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概要
『本将棋 内藤九段将棋秘伝』から始まったセタの将棋がついにSFCに上陸。
名プログラマー森田和郎氏が手掛けた『森田将棋 (FC)』から4年以上ぶりの続編、しかも日本将棋連盟公認という事からプレイヤー達からの期待の声は大きかったのだが……
特徴
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「入門教室」「将棋道場1~3」「段位獲得戦」「詰将棋」が用意されている。
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入門教室では、CPU側のみ2枚落ちまでしてくれる上に待った機能も使える。
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将棋道場ではプレイヤー側も駒落ちを選べる。
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段位獲得戦は厳しいが、クリアするとアマ初段の免状が認められる。
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詰将棋は10分で2段くらいはある。
評価点
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SFC初の将棋
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SFCになった事で後述する棋力は勿論、FCでは考えられなかった演出も実現されている。
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タイトル画面では将棋の盤面が3Dの平面で登場したりするが、これは回転拡大縮小機能の活用によるものである。SFC第1作目からこういう機能を活用してきている。
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棋譜の読み上げも実装されたのも本作が初
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FCでも人工音声が使われているゲームがあったが将棋作品では使われなかった。勿論、本作の音声読み上げの品質はFCの技術を上回っている。
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棋力の進化
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ハードをスーパーファミコンに移行した事により棋力も向上。プロには及ばずとも日本将棋連盟からアマ初段を認められているまでの強さに到達(ただし、将棋ファンの検証により実際はもう少し弱いことが分かっている)。
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定跡手は即座に指してくる。また奇襲戦法の対策も万全で、パックマン戦法を狙っても馬を逃がすために通用しないようになっている。
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終盤は特に強い。
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これは筆者による検証だが、5手詰めであれば確実に詰めてくる。
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詰みがあるなら確実に詰ませてくる事や自玉の詰みは消してくる事に加え、ポカやトン死はほとんどやらないので勝ち切るのは難しくなっている。
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実際に段位獲得することが可能
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プレイヤーネームを入れて2時間以上にわたる対局を乗り越えるとパスワードが表示される。それを送ると実際に認定してもらえた(有料)。
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クリア画面で表示される免状も直筆で格調高く、二上達也会長、中原誠名人、大山康晴十五世名人、谷川浩司竜王の4名の署名付き。
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詰将棋の実装
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AIの終盤力も強化されており簡単な問題ならば瞬時に解くので頼りになる。10分で2段レベルならば10分以内に解いてもらえる。
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例えば、玉方1三玉。攻め方1一角、1五角。持ち駒、金、銀の11手詰めでは所要時間2分強。
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大駒の不成も読んでくれる。例えば、玉方1一玉、1三桂、2三桂、3三桂。攻め方、2四桂、2六飛。持ち駒は歩。
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時間をかければ長手数も解けるのだが問題によっては2時間以上かかる事も。SFC将棋で終盤力が強いとは言えど流石に高難易度の詰将棋に挑むのは難しいと言える。
賛否両論点
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初心者お断りの難易度。
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AIの棋力は評価点で述べた強さであり、入門の2枚落ちでもR100・15級は要求されるまでになっている。
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そのため、ルールを覚えた程度で勝てるようなものではなく初心者にとっては非常に厳しいものとなっている。
問題点
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盤面の駒が画像縮小処理に失敗したような感じになっているため、文字が潰れていて見辛い。
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3個めの書体はシンプルで読みやすいものの、安っぽい。
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読み上げが少し甘い。
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相手が駒を動かした直後にその駒を取ると、本来「同歩」などと読むところだが「同」が付かず普通に読み上げる。
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CPUの思考がとても長い。
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定跡のある序盤はすぐに指してくるが、定跡から外れた途端に思考時間が極端に長くなる。
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そこまで複雑でない盤面であっても1分近くかかる。状況によっては数分レベルにわたる思考をすることも。
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相手が長考している間、画面には「思考中です」の文字が表示されるのみ。プレイヤーの速度次第ではプレイ時間の大半が相手の思考時間になることもあり、非常に退屈になりやすい。
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段位獲得戦が厳しすぎる。
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本作の評価を大きく落とした最大の要因である。
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3局連続で勝利しなければならず、負けたら1局目からやり直しになる。
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持ち時間はなく1手20秒、切れた時点で即負けという厳しい条件を課せられている。
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一方、CPUは1手で何十秒も使い、しかもその消費時間は非表示。相手の長考が兆候もなく終わり、突然20秒以内を突き付けられるので不公平である。長考中はずっと、相手の指し手にすぐに対応できるように身構えておく必要がある。
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さらに手数制限があり、100手以内に勝たないといけない。しかもCPUはその場凌ぎの連続王手など将棋ソフトにありがちな悪あがきを連発してくるため、ほぼ勝ちが確定している局面でも手数制限により失敗になることもある。
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CPUの終盤の粘りもあるため、玉の守りを固めているとまず手数が足りなくなる。そのため、守りは捨てて攻め続け、CPUの手数を削りに行かないといけないという、もはや将棋とは何なのか考えさせられる状態となってしまっている。
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そもそも棋力を測るのに手数制限をかけるという試み自体が謎であり、当然のことながら持久戦が得意なプレイヤーや持久戦になりやすい戦型を好むプレイヤーが一方的に不利を被ることになる。何より将棋には短手数で勝った方が強いというような文化は無い。
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本作では不正防止のためか、3戦目の棋譜を書いたものを送らないと段位は認められない。紙スペースや事務手続きの時間を考慮して手数制限を設けたとも考えられるが、それなら1,2戦目にも手数制限をかける意味が分からない。
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相手が長考している際は操作は一切受け付けず、中断する事はおろか、駒フォントの切り替えも出来ない。駒の切り替えは20秒の間でないと受け付けないのだが、投了コマンドもあるので時間に追われてうっかり投了を選ぶと悲惨なことに。
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この仕様のため、対局時間が休憩なしで数時間かかる事を覚悟されたし。理論上最速を目指すTASですら一時間近くかかっている(しかもその時間の大半はCPUの思考時間である)
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ただ、このような仕様は本作より前の1990年にPCエンジンで発売された『将棋 初段一直線』でも見られた。当時の家庭用ゲーム機の将棋ソフトは、プレイヤーと同じ条件だと初段クラスに満たないレベルだったため、仕方なかった面もある。
じゃあやるなという話かもしれないが
似たような棋力のソフトが並ぶ中「現実に初段をもらえるソフト」のアドバンテージはユーザーにもメーカーにもそれだけ魅力的だったということだろう。
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詰将棋の仕様
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詰将棋はプレイヤーが配置しなければならない。せめてサンプルが欲しかったところ。
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解答が複数あっても表示されるのは1つのみ。
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簡単な問題でも、解くのに時間がかかるケースがある。
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例えば、玉方5五玉、攻め方5七歩、6七と、持ち駒は金四枚。これは簡単な並べ詰めの9手詰だが、3分弱かかってしまう。また、解法が数種類ある際も1通りしか示さない。
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他には、玉方2一玉、攻め方1三~9三歩、1九香、持ち駒なし。歩を成り込んで玉を寄せていくだけの簡単な15手詰だが40秒近くかかる。
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これでもまだ早い方で問題によっては2時間以上かかる場合もある。その際は経過時間も表示されず、解いた際も所要時間が出るわけでもなく分かり辛い。詰みましたという音声でもあれば良かった。
総評
SFCに移行した事により3Dや読み上げなど演出も強化されており、CPUも明らかに強くなっており、将棋連盟からアマ初段を認定されるまでになっている。
段位認定戦については棋力よりも悪条件で難易度を上げており最早苦行でしかないので評判が悪い。
本作を公認したのは日本将棋連盟公認にとっての大悪手であり、SFC将棋は先が思いやられる出だしとなってしまった。
その後の展開
93年には『早指し二段 森田将棋』が発売される。
早指し二段 森田将棋
【はやざしにだん もりたしょうぎ】
ジャンル
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将棋
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対応機種
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スーパーファミコン
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メディア
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4MbitROMカートリッジ
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発売元
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セタ
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開発元
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セタ、ランダムハウス
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発売日
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1993年6月18日
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定価
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14,800円
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判定
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なし
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ポイント
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初心者お断り (社)日本将棋連盟公認 総合棋力が二段に上昇
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概要(早指し)
『初段 森田将棋』の失敗から2年…日本将棋連盟とプロ棋士による第2作目森田将棋が発売。
前作のCPUの長考を反省し、タイトルには「早指し」を打ち出している。
ゲームモードは前作同様、「入門教室」「将棋道場1~3」「段位獲得戦」「詰将棋」の4つが用意されている。
「入門教室」に限り、「次の1手」モードがあり、CPUの最善手を教えてくれる。
評価点(早指し)
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「特殊チップ」の実装
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前作のクソ仕様にセタと日本将棋連盟に苦情が殺到したのだろう、長考を猛省し「特殊チップ」を搭載してタイトル通り早くて強いを実現。これにより日本将棋連盟からアマ二段を認められるまでに到達。
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ただし、開発者の森田和郎氏は「アマ初段くらいの実力の人でも十分遊べるくらい」と語っており、通常の対局ではアマ1~3級程度の実力のようだ。
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なお、筆者が検証したところ、激指6級程度の実力はあった。
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免状獲得はアマ三段まで挑戦できるようになったが、三段認定にはゲーム内の「段位認定戦」クリアに加え、取扱説明書に記載された段位取得認定問題に正解する必要がある(つまり
ゲーム内だけでは完全クリアはできない
)。
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「段位認定戦」クリア時に表示される免状は、二上達也会長、中原誠名人、谷川浩司竜王の署名付き。パスワード送付と料金支払いで、本物の免状を取得できるのも同じ(現在は受付終了)。
賛否両論点(早指し)
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値段も難易度も上がっているため初心者向けではなくなっている。
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腕に覚えのある、少なくともある程度の戦法や定跡を習得したプレーヤー向けになっている。
問題点(早指し)
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「特殊チップ」のコストによる定価上昇
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従来は棋力と時間を天秤にかけなくてはならなかったが、コストをかけて両立するという新しい軸を打ち出した。それゆえに定価が前作から6割以上増している。高いと言われるSFCソフトの中でも第4位になるほど。
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プロ棋士の要素が皆無
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SFC将棋の中で最も強いというのは確かであり、本作以降に発売された作品においても上回る事は無かった。その一方では付加価値というものが無いのは残念なところである。
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「次の1手」が使えるのは「入門教室」のみで、「詰将棋」も自分で用意しなくてはならないのは相変わらず。本作にあるのはSFC将棋で最も強いAIとの対局と詰将棋解答のみである。
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CPUの持ち時間を長くすると、かえって弱くなることがある。
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本来であれば持ち時間が長いほど強くなるというのが常識だが、激指15との対局の結果、持ち時間を長くすると逆に勝率が下がってしまうケースがあった。
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段位獲得の次の一手問題で、最善手がはっきりしない。
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激指15と水匠4に解かせたところ、①と②の問題で、それぞれ異なる最善手を出していた。最強クラスのAIでも異なる回答が発生するということは、最善手が一意に定まらないということであるため、あまり良問であるとは言えない。
総評(早指し)
「特殊チップ」の実装により早くて強いを実現。前作の大問題であった長考の問題も克服した。
値段的にも棋力的にも初心者お断りだが、有段者にとっては自宅で人間の相手がなくても本格的な将棋が楽しめるようになり、待望の1本だったといえる。
その後(早指し)
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日本将棋連盟にとっても、本ゲームによって「免状の売上にかなり貢献したようです」という。その結果、続編の2も発売されている。
早指し二段 森田将棋2
【はやざしにだん もりたしょうぎつー】
ジャンル
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将棋
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対応機種
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スーパーファミコン
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メディア
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4MbitROMカートリッジ
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発売元
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セタ
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開発元
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セタ、ランダムハウス
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発売日
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1995年5月26日
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定価
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14,900円
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判定
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なし
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ポイント
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初心者お断り (社)日本将棋連盟公認 総合棋力は二段のまま SFC将棋で強さも価格も1位
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概要(早指し2)
早指し二段の第2弾。
更に強力な特殊チップを採用した事により棋力が上昇、SFC将棋としては本作が最強と言える。
評価点(早指し2)
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強さはSFC将棋で第一位
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特殊チップを駆使してSFC将棋の限界点を突破。鬼に金棒としたものだ。
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アマ二段認定は前作同様ながら、1万手以上の定跡を収録し、思考時間もさらに短くなり、SFC将棋最強とみて間違いないだろう。下手なPS作品よりも強い。
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検証の結果、激指15の二級と同程度の実力があることが分かった。
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段位認定戦に打ち勝ち、説明書の次の一手問題を解いて送ると実際に認定してもらえた(現在は受付終了している)。
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今回は、二上達也会長、羽生善治竜王・名人の署名付き。
賛否両論点(早指し2)
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定価は前作から100円だけ上がって14,900円。14,800円のソフトが多かった中で目立っており、SFC将棋で最も高額なものとなっており、SFCソフト全体でも3位に入っている。
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たった100円でより強い相手と戦えるのだから安いものと言えるが、前作を買った人にとってはさらにもう一本買わなければならなくなり、合計で3万円近くにもなってしまう。
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段位獲得戦の条件が変更された。
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手数制限はあるものの、100手から300手に伸ばされている。これは条件緩和と言える。
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参考までに、プロ棋士の勝負での最長記録は420手(入玉の無い対局では339手)である。よほどゆっくりしていない限り300手以内に勝負はつくと考えて大丈夫だろう。
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時間制限も変更されている。一手20秒から、持ち時間5分(切れ負け)となった。
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この時間制度の変更については「合計時間は短くなっているから難しくなった」という意見や、「序盤で素早く指せば終盤で考えられるから簡単になった」という見方がある。
問題点(早指し2)
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前作同様、詰め将棋はサンプル配置などがなくゲームモードのバリエーションも乏しい。
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棋力が上がった以外は前作とほぼ同じ。得られる段位も同じで、新たなモードの追加等もない。
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CPUの動きにランダム性が無い。
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CPUのレベル、持ち時間が同じであれば、こちらが同じ手を指す限り、相手の動きが固定される。
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そのため、一度勝ちパターンを覚えてしまえば、あとはそれに従って指すだけで何度でも勝ててしまう。
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これの影響が大きいのが段位獲得戦。あらかじめ勝ちパターンを用意しておけば、全く同じ手順で勝つことが出来てしまう。
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なお、前作まではこちらの指し手が同じであっても、CPUはある程度ランダムに指し手を変えてきた。
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パッケージの文章が若干詐欺気味。
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CPUの一手あたりの平均思考時間は約50秒であると謳っているが、実際はレベル5のCPUは5分近い長考を当たり前のようにしてくる。人によっては詐欺であると感じるかもしれない。
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初期設定の持ち時間30分、秒読み30秒だと、持ち時間を使い果たした後は30秒しか思考できないので段々と平均時間が30秒に近づいていく、というだけの話である。
総評(早指し2)
特殊チップの実装により値段も最強となってしまっているが棋力はSFC将棋では間違いなく最強のソフトに仕上がっている。
現在では相場が下がっているため入手は容易ではある。対局と詰将棋しかないのは相変わらずなので自分の力量と相談してから手を出そう。
余談(早指し2)
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特殊チップのうち、解析が非常に困難だったST018を搭載しているため、SFC実機以外ではまともに動かない。これにより移植のハードルが上がってしまい、VC化や他ハードでの配信などは実現しなかった。
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完全動作するエミュレータがリリースされたのは2012年3月になっての事だった。
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...と思われたが、有志による検証の結果、実機での指し手よりも弱いことが分かった(参考)。謎は深まるばかりである。
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同一タイトルのファミコン版の発売が1995年2月頃に予定されており、マスターアップ段階まで開発されていたらしいものの結局発売されず、ソフト発売予定表からも人知れず消滅した。
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その後ファミ通誌上のレア物オークション企画記事でプロトタイプ版カートリッジの写真とともに掲載されていたのだが、それがその後どうなったのかは不明。
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SFC版森田将棋はこの作品が最後だが、森田将棋シリーズはPS、64、DC、WS、PS2、GBA、DS、スマホへと続いていくのである。
最終更新:2024年06月12日 15:57