森田将棋
【もりたしょうぎ】
ジャンル
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将棋
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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発売・開発元
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セタ
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発売日
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1987年4月14日
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定価
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5,500円
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プレイ人数
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1~2人
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判定
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良作
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記録方式
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バッテリーバックアップ
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ポイント
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初心者お断り FCROM初のバッテリーバックアップ搭載 日本将棋連盟推薦
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概要
『本将棋 内藤九段将棋秘伝』から、およそ2年ぶりに発売されたファミコン将棋ソフト。
今回もセタからの発売であり、将棋秘伝の正当な続編と言って良いだろう。
更に本作は、ファミコン初のバッテリーバックアップを搭載したROM作品として有名。将棋をやらないゲーマーにも名を知られているほど。
正式タイトルは「森田将棋」だが、タイトル画面の文字のみPC版と同じ名称の「森田和郎の将棋」になっている。
ちなみにPS版とPS2版、さらにはスマホ版もFC版と全く同一タイトルの『森田将棋』なので、混同に注意。
特徴
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ほぼ対局しかなかった内藤九段将棋秘伝から進化し、色々なモードが新たに実装されている。
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「対局」
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CPUは強化されており、L1、L2、L3までの3段階の強さが用意された。
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2P同士の対局も出来るようになった。
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対局の途中でCPUのレベルを変えたり人間にバトンタッチなども可能。
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「再現」
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ファミコン初、ROMバッテリーバックアップの機能を搭載している。
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その用途は、対局した棋譜を保存するというもの。勿論、後から再現する事も出来る。
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「盤面」
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盤面を好きなように編集する事が可能で、そこから対局するという事も出来る。
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駒台の他にも先手でも後手でもない空白も用意されており、そこに飛車角香桂と収めていくと色々な駒落ちも行えたりする。
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BGM
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本作は将棋秘伝の曲をアレンジしており、タイトル画面、勝利、敗北、曲数が少なくて短いが品質は良い。ただし対局中にBGMは流れないが、初期ファミコンのテーブルゲーム特有の無音の緊張感が生まれる。
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定価も1000円上がっているが、その分だけ充実しているので概ね好評である。
評価点
CPUが強くなった
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強さは3種類用意
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L1からして将棋秘伝よりも強い。そして、他社から後発のFC…SFC将棋でさえ刺さってしまう事が多いパックマン戦法も通用しないのでなかなか手ごたえがある。
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L2、L3は更に強い。とはいえ、プレーヤーを待たせる事があり、局面が複雑になると途端に遅くなるという事もある。
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本作以降の作品にも言えるのだが、CPUの強さと長考はどうしても天秤にかけるのは仕方のないところである。
充実したモード
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前作では対局のみであったが、本作では詰将棋や棋譜の保存、といったことが出来るようになり、自由度が広がった。
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詰将棋も解いてくれる
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CPUと言えば終盤の強さであろう。それを詰将棋に使えるのは有難く、簡単な問題ならば瞬時に解くので頼りになる。また、少し難しいものも確実に解いてくれる。
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例えば、玉方1三玉。攻め方1一角、1五角。持ち駒、金、銀の11手詰めでは所要時間3分48秒
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大駒の不成も読んでくれる
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例えば、玉方1一玉、1三桂、2三桂、3三桂。攻め方、2四桂、4四飛。持ち駒は歩。
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13手詰めだが1分28秒で解いている。
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2人対局が可能になった。
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CPUにバトンタッチをして考えさせることも出来たり、カーソルの位置を記憶してくれていたり細かいところまで配慮が行き届いている。
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力量差に応じてあらゆる駒落ちを作り出せるので、より幅広いプレーヤーに対応可能。
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棋譜の保存と再現
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「再現」モードでは指し手毎に所要時間も並ぶ。
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時間がかかるL3同士の対局も一晩おいておけば翌朝には終了している。忙しい朝は貯蔵しといて、帰宅してからゆっくり見返すことも出来る。
素材
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文字のフォント
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タイトル画面の文字「森田和郎の将棋」が作りこまれている。
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作中でも文字数は少ないが大きな文字に漢字の仕様で快適。
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駒のフォント
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ファミコンで複雑な漢字を表現するのは難しいが、本作は分かり易い。更に「玉」「金」「桂」を見ると筆体を意識している事まで分かる。
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これは「一字駒」と呼ばれるもので、分かりやすさを重視するNHK杯将棋トーナメントでも採用されている。
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さらに成駒は朱色で表示するなど親切に出来ている。
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「双玉」と呼ばれる、先手後手ともに玉将を持つタイプ。通常はどちらかが王将、どちらかが玉将である。単純に違いを描けなかっただけかもしれないが。
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駒の音が痛快。
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「駒を手に取る→指す」をテンポよく行うと、CPUの思考速度の速さも相まってリズミカルで心地よい。
賛否両論点
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初心者には厳しい
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CPUは将棋秘伝よりも強くなっており、尚更、太刀打ち出来ない。一応、駒落ちでハンデは付けられるようにはなってはいる。
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CPUに勝っても何も起こらない
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勝利BGMも、CPUに勝つ必要すらなく対人戦で適当に指していれば聞けるようになっている。
問題点
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「待った」が実装されていない
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将棋秘伝にはあったのに、どうしてこうなった?
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操作ミスで別な手を指しても戻せないのが難儀なところ、相手の承諾があったとしてもダメ。
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一応、中断→再現から巻き戻してから→対局。の手順でやれるのだが、うっかり手元が狂うとそれまでの対局を棒に振る事になる恐れがある。
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対局仕様
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CPUを先手番にするとプレーヤーが画面上部を持つのでおかしい。
総評
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『内藤九段将棋秘伝』から2年、CPUの強化と色々な要素が盛り込まれ順当な進歩を我々に示してくれた作品と言えよう。
余談
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本作と丁度同日に『囲碁 九路盤対局』も発売されている。
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数少ない囲碁ソフトと将棋ソフトが同時に発売されたというのは珍しい。
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森田将棋が有名なため勘違いしている人もいるが、開発者の森田和郎氏はプロ棋士ではなくプログラマーである。
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氏が最初に開発・商品化したのは将棋ではなく、マイコンソフト『森田オセロ』。オセロの腕も一級品のようだ。
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エニックスとの関係が深く、「第1回ゲーム・ホビープログラムコンテスト」ではエニックス関係者であった中村光一氏や堀井雄二氏を差し置いて最優秀賞を獲得。ドラゴンクエストへの道でも取り上げられ、一躍有名人になった。
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その後ゲーム会社を設立して将棋の開発に取り掛かり、PC版『森田和郎の将棋』を発売。これがヒットし、ファミコンなどのコンシューマ機でも森田将棋シリーズを開発していくことになった。
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将棋以外にもFCで『ミネルバトンサーガ ラゴンの復活』や『ジャストブリード』、GBで『ダンジョンランド』など一風変わったRPGを開発している。
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しかしミネルバトンサーガは先に出ていた超クソRPGの風評被害をモロにかぶることになってしまい、ジャストブリードとダンジョンランドはSFCで発売されていた超大作RPGの影にモロに隠れてしまい大ヒットにはならなかった。これ以降RPGの開発はやめている。
その後の展開
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セタは日本将棋連盟による監修のもと『初段 森田将棋』を発売しており、段位認定まで実施されている。
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森田将棋シリーズは紆余曲折ありながらもシリーズ化を続けていった。後年には囲碁にも手を伸ばし、PSソフト『森田和郎の五目並べと連珠』を発売している。
最終更新:2022年04月01日 17:45