本項では『モモコ120%』と、アレンジ移植版の『うる星やつら ラムのウエディングベル』について記述する。
判定は前者が「なし」後者は「良作」「シリーズファンから不評」。
モモコ120%
【ももこ ひゃくにじっぱーせんと】
ジャンル
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アクション
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対応機種
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アーケード
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発売・開発元
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ジャレコ
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稼動開始日
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1986年4月
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プレイ人数
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1~2人(交互)
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判定
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なし
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ポイント
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モモコの受難人生を体験する(?)ゲーム メインBGM「ラムのラブソング」 早すぎた萌えとカオスな世界観
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概要
1986年にジャレコからアーケードにてリリースされた横アクションゲーム。
80年代半ばのACゲームでありながら、今でいう「萌え」を意識したような異色のゲームデザインが特徴的。
一人~二人交互プレイ可能、全6ステージ構成、周回ループ制。
主なルール
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主人公であるモモコを操り、火災が発生した学校などのステージをひたすら上に進み、屋上で待っている飛行船に触れればクリア。
ボスに該当する存在はいないが、雑魚敵や落とし穴は多数配置されている。
「敵に触れる」「落とし穴に落ちる」「火災に巻き込まれる」のいずれかでミス。
残機制の戻り復活で、残機がすべてなくなるとゲームオーバー。
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レバーでモモコの移動、2つのボタンでジャンプ・ショットが可能。
ジャンプの高さは一定だが、ジャンプ中に移動制御や向き調整が可能。
ショットはモモコ前方に直進する。立ち・しゃがみ・ジャンプ中に攻撃できる。
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ギミック一覧
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エスカレーター…上の階層に進める。移動時は敵と接触してもミスにならない。
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天井パイプ…取っ手につかまりながら移動できる。但し、移動中はショットが撃てなくなる。
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トランポリン…ジャンプで乗り、タイミング良くジャンプボタンを押せば、上の階層まで移動できる。
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移動床…左右もしくは上下に移動する床。
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ドア…中に入れる。入った先はその階層の別地点となるが、ボーナスが稼げる「別空間」にワープできる場合もある。
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はしご…上に登れる。なぜか何度も上にレバー入力しないと登ってくれない。
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飛行船…ステージの屋上に存在し、ジャンプしてこれに触れればステージクリア。
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特定の敵を倒す、上記の別空間をクリアする事で出現する「P」アイテムを取得すれば、モモコのショットを最大5段階までパワーアップさせる事ができる。
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最終面であるステージ6はボーナスステージになっており、他ステージのようなミス要因やクリア条件などは存在しない。
制限時間内に配置されているアイテムを取得して、大ボーナスを稼ぐチャンスとなる。制限時間が経過すればエンディングとなり、ステージ1からの周回となる。
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ゲームを開始するといきなり「モモコ、4才、さくら幼稚園入園。」の文字が表示され、4歳児のモモコを操る事となる。
ステージクリアに伴ってモモコも成長する。もちろんステージ毎にモモコの専用グラフィックが用意されている。
各ステージにおけるモモコの成長記録は以下の通り。
ステージ
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成長
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舞台
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1
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4歳(幼稚園児)
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さくら幼稚園
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2
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6歳(小学生)
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さくら小学校
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3
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12歳(中学生)
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さくら中学校
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4
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15歳(高校生)
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さくら高校
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5
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18歳(アイドル)
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テレビ局
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6
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20歳(花嫁姿で結婚)
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結婚式会場
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評価点
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本作の魅力はなんといっても「萌えとカオスが融合した」とでも形容すべき世界観。
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そもそもステージ1~5まで
悉く火災が起きている
状況からしてツッコミ所しかない。
チラシ裏のストーリー解説によれば「火の国のモンスターがモモコを追いかけ結婚を迫っているから」らしいが、モモコや舞台関係者にとってはたまったものではない。
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しかも、幼稚園児からアイドル時代まで何故かモモコが銃(ショット)を所持しているが、それに関してはゲーム中はおろかインストやチラシ内ですら言及が無い。
年端もいかない女の子が火災中の学校や一般施設で銃をぶっ放すなど、ハッキリ言って正気の沙汰とは思えない光景である。
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ステージ6をクリアすれば、(火災の発生していない)結婚式会場にて、ウエディングドレスを着たモモコが男性と結婚して子供を生むエンディングとなる。
しかし、周回制システムが災いしてモモコ4歳から再スタートというシュールな構図に。
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わかりやすいゲーム性
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飛び抜けて難しい操作を要求されることもなく、「敵をかいくぐってステージの一番上に到達すればクリア」と、目的やゲーム性自体はわかりやすい。
シンプルすぎる故に、単調さが目立つのは惜しいところ。
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パステルカラーで柔らかな色味をメインにした色使いのグラフィックや、モモコの成長ぶりをしっかりと表現したドット絵技術、仕草の可愛らしさも評価点。
そのグラフィックでもって
ジャンプの度にパンツが見える
というサービスもバッチリ。
しかも高校生までは純白だったパンツがアイドル以降では水色になるなどの変化もある。
問題点
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十分遊べるゲームだがシステムとしては至って平凡。
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雑魚の種類が少ない上にあまり強くないので、雑にショットを撃っているだけでも割とどうにかなってしまう。
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プレイしているうちに慣れるが、モモコの動き方に若干のクセがある。
総評
世界観こそ独特だが、ゲーム単体としては平凡の一言。
バランスが破綻しているわけでもないので、ある種のバカゲーとしてみれば十分楽しめるだろう。
家庭用移植
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『うる星やつら ラムのウエディングベル』(ファミリーコンピュータ、1986年10月23日発売)
余談
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メインステージBGMがかの有名アニメ『うる星やつら』の名オープニングテーマ「ラムのラブソング」を使用している。
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後にFC版で『うる星やつら』のキャラクターに差し替えた移植版が出ているが、AC版の時点で使用許諾を得ていたかは不明。
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無断使用の可能性もあるが、この年代はまだ著作権に対する認識が業界へ浸透していなかった時期であり、この手の無断使用もそう珍しい話ではなかった。
実際、同期の『ボンジャック』など、著作権絡みのBGMの事例は幾らか報告されている。
とはいえ無断使用と確定しているわけでもなく、許可を取っていた可能性ももちろんある。
後に『うる星やつら』へのリメイク移植が行われている以上、少なくとも版権面での重大なトラブルが無かったのは間違いない。
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本作の基板に収められている未使用BGMの中に、小泉今日子氏の代表曲である「ヤマトナデシコ七変化」と「真っ赤な女の子」のアレンジが入っている。
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恐らく「ラムのラブソング」と合わせてメインBGMは全て版権曲で統一する予定で、「モモコ18才アイドルデビュー」のステージで上記の曲を使う予定だったと思われる。
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BGMにバリエーションがあればメリハリもついたかもしれないだけに、今更ながら惜しいものである。
その後の展開
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本作主人公のモモコは同社のお祭りSTG『ゲーム天国』にも小学生バージョン(小学五年生)がプレイヤーキャラクターとして登場している。担当声優は椎名へきる。
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同作は出典のキャラクターにやたら濃い味付けを施して登場させる作風であるが、本作のモモコはセリアと並んで割と普通…と思いきや、超能力少女と言う設定にされ、人間キャラクターでは唯一自機に乗らず自ら飛行して戦うキャラクターになっている。
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更にボムであるモモコボンバーはモモコの様々なコスプレ姿が表示されて敵を殲滅するというとんでもない代物。
復刻版『ゲーム天国 CruisinMix』に登場したクラリスのボムはこれに対抗した演出になっている。
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メニューにてゲームキャラクターによる本作および上述のFC移植版に関する説明があるのだが、移植版の説明が「キャラクターが某空飛ぶ虎縞ビキニの子」とか語尾に「だっちゃ」を付けて説明したりだの大人の事情を含めた説明となっている。
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続編に相当する『GUNばれ!ゲーム天国』では妹のさくらがモモコの代わりにプレイヤーキャラクターとして登場しており、モモコは隠しプレイヤーキャラクターになっている。
モモコの担当声優絡みで何やらゴタゴタがあったらしく、ゲーム内に収録のアニメでネタにされている。
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2006年にリメイク作『モモコ1200%』が携帯アプリとして配信された。
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成長後の姿がステージごとに固定だったAC版と異なって成長パターンが豊富に用意されており、ステージ毎の成績により成長の仕方(進学先の学校や職業)が変化していく。
加えてモモコのバストサイズも変化する。その内訳もAC版での成長パターンの他に巫女・メイド・金持ちのお嬢様と、現代のゲーム界隈のニーズに合わせたセレクトとなっている。
また本作では必殺技を発動でき、職業ごとに異なるカットイン演出が挿入される。
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ちなみに本作における求婚者の名は侵略者である火星の王子「グレイテスト・ファイヤーダンス」。
もうちょっとまともな名前は無かったのか?
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キャラクターは今風にリファインされているが、AC版のモモコと同一人物かどうかは不明。
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デザイン担当者が所属する同人サークル「スタジオるんば」の公式サイトでは本作のラフ画が多数公開されている。
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2021年10月21日より、Nintendo Switchでジー・モードが他社のフィーチャーフォン向けタイトルを移植するシリーズ「G-MODEアーカイブス+」の1作品として配信開始。
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同じく2006年に、スピンオフとして『モモコの火星ボウリング〜ラ・マーズカップ〜』が携帯アプリとして配信された。
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上記の『モモコ1200%』をベースとしており、火星王子と「火星ボウリング」で対決するといった内容。
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こちらも同じく「G-MODEアーカイブス+」の1作品として、Switchで2023年9月7日に配信開始。
うる星やつら ラムのウエディングベル
【うるせいやつら らむのうえでぃんぐべる】
ジャンル
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アクション
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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発売元
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ジャレコ
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開発元
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トーセ
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発売日
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1986年10月23日
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定価
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4,900円
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プレイ人数
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1人
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判定
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良作
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シリーズファンから不評
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ポイント
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飛べないラムちゃん ナゾに幼児化するラムちゃん 『うる星やつら』では唯一のアクションゲーム システム面での出来は良い方
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少年サンデーシリーズリンク
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概要(うる星)
上記『モモコ120%』をベースに、登場キャラクターを『うる星やつら』のキャラクターに変えたアレンジ移植。
1986年10月にファミリーコンピュータ用ソフトとして発売された。
屋上を目指して上がって脱出というゲームの大筋は上記作品から受け継がれている。
「ガワ替え」ではあるが、単にキャラクターだけでなく一部システムに絡む部分でもアレンジが施されている。
相違点(うる星)
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プレイヤーキャラクターはゲームタイトル通り『うる星やつら』の主人公でありヒロインのラムに変更されている。
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ゴールに相当する飛行船がUFOに変わり動くようになった。
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使用キャラクターが変わったことで攻撃方法が電撃に変更されている。
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敵キャラクターは炎モンスターの雑魚以外はほとんど別物になり上記作品の面影すら感じない。
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ワープは扉を開ける形が廃止され、いきなりパッと消えて画面がスクロールし、ワープ到着点で再開する格好になった。
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動く床は隠れアイテムの「スイッチ」を取らないと動かなくなった。
スイッチは後述の「テクニックキャラ」と違ってその場所を歩くと出現する。
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パワーアップが廃止された代わりに、特定の場所でジャンプすると出現する「テクニックキャラ」が導入された。
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青い鳥…ラムが服を着る。この状態なら1度だけ攻撃に耐えられる(喰らうと虎柄水着に戻る)。
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おまる…テンちゃんがラムの頭上に来て斜め下方向に火を吐いて攻撃してくれる。一定時間経過で飛び去って行く。
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半魚人…5,000点ボーナスが入る。
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星…ラムのまわりにバリアが張られ一定時間無敵(敵の攻撃をスルーできるだけで体当たりでの攻撃は不可)。
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純情ギツネ…ボーナスステージにワープできる。
当該のステージでは空中に敵が4体いて、すべて倒すと残り秒数×100点がボーナス点となる。
このボーナスステージのみラムは空を飛べる。
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温泉マーク…温泉マーク(教師)がラムの前に張り付いて、盾となってくれる(そのまま体当たりで攻撃できる)。一定時間有効。
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刀…面堂終太郎がラムの数歩前の位置で刀を振り回して敵を倒していってくれる。
ラムが反転すると、それに合わせて移動し、ラムの前をすり抜けて反対側でラムの数歩前の位置に出る。一定時間有効。
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上記「テクニックキャラ」は取得数がカウントされており、3つ集めるとレイ(怪物状態)が登場。
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この状態では穴の上も普通に歩くことができ、敵が全てタイヤキに変化し、実質的な無敵になる。
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タイヤキを1つ食べるごとに1,000点のボーナスが入り、3つ食べた後に上を押しながらジャンプすると1つ上の階に上がることができる。
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レイは一定時間経過か、上記のジャンプで屋上に達すると解除となる。
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「テクニックキャラ」の取得カウントはステージクリアでリセットされる。
評価点(うる星)
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「テクニックキャラ」の大半がエスカレーター付近や扉の前に出現するので、場所を覚えるのは難しくない。
さらに、刀を振り回す面堂終太郎・炎を吐くテンちゃんなど、原作再現・ゲーム的な差別化のクオリティも高い。
レイもしっかりお助けキャラクターとして機能し、難しい部分も突破しやすくなるなど、当時のゲームとしてはかなり親切。
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操作性も滑らかで、ある程度はジャンプ中の空中制御も効く。
電撃も3連射までできるので、タフな敵にもそこそこ対応できる。
問題点(うる星)
ラムちゃんの再現度が低い
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本作で槍玉に上がる問題点筆頭。
ジャンプ式アクションのガワ替えで開発したことで「
ラムちゃんが飛べない
」構図になってしまったことには批判が多い。
一応「パラレルワールドに入り込んでしまったため飛べなくなった」とのことらしいが、テンちゃんが普通に飛んでいる以上説得力は無い。
この点に関しては「ベースにするゲームを間違えた」の一点に尽きるだろう。
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他にも、原作で描写がほとんど無い幼児期などのグラフィック、最終面でラムが電撃を撃てない等、疑問符が付く点もある。
ゲームとしての問題点
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「こたつねこ」が鬱陶しい。
小学生編以降登場する敵だが、高校生編あたりからやたらと落ちてくるようになる。
特に動く足場に乗る時・「テクニックキャラ」を出す時のジャンプに合わせて落ちてくることが多く、ミスになりやすい。
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『モモコ120%』でも似たような敵キャラクターはいたが、あちらと違い落ちてくる場所・タイミングがまるで分からない。
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スタジオ5階のスイッチの位置が少々理不尽。
順路から外れた飛び越せない穴の手前ギリギリに配置されているため、4階からトランポリンで穴の方に飛んでスイッチを回収、一旦4階に降りてから再びトランポリンで順路に進むのが正解。
隠しアイテムのために飛び越せない穴の方に行く必要があるなど、まず予想できない。
また、この時点ではテクニックキャラが3つに満たないためレイによるジャンプ飛ばしもできない。
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レイなどの救済要素はあるものの、当時のファミコン作品らしく大元の難易度は高めではあるため「ラムらしい姿を見られないまま終わってばかり」なんてことも。
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周回制がしっくりこない
周回制自体は当時の王道「ハイスコアを目指してのエンドレスループ」にすぎないのだが、「あたると結ばれる」という目的を考えると合わない。
FC版魔界村等、原作で周回制だったゲームが移植に際して1周エンドになるという例は他にもあったので、本作も1周エンドにしておいた方がしっくりきただろう。
総評(うる星)
1つのアクションゲームとしてはしっかり成り立っている上に操作性も良く、質のいい救済要素もあるなどゲームの出来そのものは非常に良い部類に入る。
が、やはり「主役であるラムちゃんの再現度が低い」というマイナス点が大きく目立ってしまった感が強い。
タイアップの組み合わせを間違えてしまった作品と言えるだろう。
その後の展開(うる星)
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直近では『うる星やつら ~恋のサバイバル・バースディ~』(PC版1987年8月・MSX2版1987年12月)、コンシューマ系なら『うる星やつら STAY WITH YOU』(PCE・1990年6月)が発売されており、いずれもアドベンチャーゲーム。
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『うる星やつら』のゲーム化作品はそれ以後もアドベンチャーゲームで統一されている。
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過去作でも、本作のような純粋なアクションゲームはなかったのである意味オンリーワンである。
余談(うる星)
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パッケージイラストはAC版のポスターを意識した構図になっているが、子供から大人に成長していく姿が描かれているAC版と異なり、なぜかラムが徐々に子供の姿に幼児退行していく様が描かれている(キャラクター替えで無理やりオリジナル版の設定に当てはめられた影響と思われる)。
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CMでもラムの幼年期などを見ることはできないし、やっぱり本来通り飛んでいる。
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そのため「飛べないラムちゃん」はやっぱり納得できないだろう。
最終更新:2024年05月26日 13:01