本記事では、ニンテンドーDSソフト『君に届け ~育てる想い~』『君に届け ~伝えるキモチ~』について記述する。判定はいずれも「なし」。



君に届け ~育てる想い~

【きみにとどけ そだてるおもい】

ジャンル 想いを伝えるピュアアドベンチャー
対応機種 ニンテンドーDS
メディア DSカード
発売元 バンダイナムコゲームス
開発元 バンプレスト、アクリア
発売日 2009年10月15日
定価 5,229円(税込)
プレイ人数 1人
レーティング CERO:A(全年齢対象)
セーブデータ 8個
判定 なし
ポイント 原作を上手にトレースした作品
膨大な分量をスキップできない欠点有り

概要(育てる想い)

別冊マーガレットに連載されていた人気青春漫画、『君に届け』のゲーム化作品。
プレイヤーは主人公の爽子となって北幌高校1年生の1年間を体験する。
なお原作では夏休み直前から話が始まるのに対し、本作は1年を通した内容となっている。

あらすじ

性格が暗く、見た目を怖がられ、ほとんど話し相手がいなかった女子高生 黒沼爽子。ある日、自分の見た目を気にせず関わってくれた男子高生 風早翔太と出会う。 彼のように周りと打ち解けられる人間になり、いつか彼に憧れの気持ちを伝えるべく奮闘するのであった。

システム(育てる想い)

  • ADVと育成シミュレーションを折衷したようなつくり。
  • 時間経過
    • ゲーム中は、高校生活が1週間単位で過ぎていく。
    • 春15週、夏15週、秋15週、冬15週すごすことでゲーム中のシナリオを1周したこととなる。
  • 1週間のすごし方
    • 爽子がこの1週間心がける「思考」、積極的にとる「行動」をそれぞれ1つずつ決定する。
    • 爽子には心のパラメータ(がんばり、やさしさ、きくばり、まえむきの4種類)が存在。思考や行動に応じて上下する。
    • 「思考」や「行動」はイベントを経るごとに、次第にバリエーションが増えていく。
    • 爽子が何かしら行動することで爽子への噂話が蓄積していき、「きっかけ種」というアイテムが収穫できる。
  • イベントの起こし方
    • 時間経過で強制的に起こるタイプ、プレイヤーの選択によって起こるタイプの2つがある。
    • プレイヤーの選択によって起こるタイプは、1週間をはじめる前のタイミングの操作で起こるか起こらないかが決定する。具体的には上記の「きっかけ種」というアイテムを、イベントに関連するキャラクターの「植木鉢」にセットする必要がある。
      • 「きっかけ種」のセットで発生するイベントの中には、イベント心のパラメータが一定値以上達していること、爽子の「思考」「行動」を指定されたものにすること、といった追加条件を満たしていないと発生できないイベントもある。
    • ニコちゃんマークがつくイベントは、エンディング分岐にかかわる重要なイベント。
    • 1週間にて配置できる「きっかけ種」の数は最大5まで。逆に1つも置かずに進めても直接的な問題はない。
    • 強制で起こるイベントの場合、対応したキャラの植木鉢に既に「種」が置かれている状態となっている。
  • エンディング
    • 冬の15週を終えるとエンディングとなる。
    • キャラエンド8種類、ノーマルエンド1種類の計9種類。
    • 冬の4週目で大きな分岐点があり、そこでの行動でキャラエンドの種類が決定。
    • キャラエンドは、対応したキャラクターに関する特定のニコちゃんマークのイベントをすべて見ておかないと見ることができない。逆に言えばニコちゃんマークのイベントをひとつでも見逃してしまうと、そのキャラクターエンドは見られなくなる。
  • 周回プレイ
    • 周回プレイをする場合、爽子の「思考」「行動」「入手した服」を引き継げる。また周回プレイでないと見られないシナリオも存在する。
    • キャラの好感度や前の周回でイベントを起こしたか否のフラグ管理は引き継げない。
  • おまけ
    • キャラエンドを見たキャラとお出かけする内容の小イベントを閲覧できる。

評価点(育てる想い)

  • 原作再現度が高い
    • オリジナルエピソードも時折盛り込まれるが、原作との齟齬はなくむしろ良い意味で補完する内容となっていたりする。
    • 必ず起こるイベントというものが存在し、そこでは原作にあった内容が再現される。例えば春期間であれば、原作際序盤の「爽子が風早を道案内する」「風早が爽子と付き合う罰ゲームに憤慨する」「席変えで矢野や千鶴が爽子の近くの席に座ろうとする」と言ったシーンが再現される。
    • 恋のライバルが登場し、爽子を貶めようとするくだりもきちんと再現されるほか、爽子の行動次第では、そのライバルときちんと和解するシーンも描かれる。
  • グラフィック
    • 原作漫画およびアニメ準拠の立ち絵やイベントスチルは多い。原作は少女マンガ風のデザインとコロボックルのようなデフォルメ調の2つのデザインが存在するが、いずれも対応している。
    • 冬になればきちんと冬着に着替えてくれるほか、まばたきもする。
    • DS上画面に話し相手が表示され、下画面に爽子の表情が表示される形式を取る。そのため会話中の登場人物の感情の変化が読み取りやすい。
    • キャラゲー本筋の評価点ではないかもしれないが、爽子を着せ替えられる。また特定のイベントを起こすことで爽子の余所行きのバリエーションをだんだんと増やしていける。
    • 立てた一週間の目標(思考、行動)にしたがって、漫画調の演出方法でデフォルメ調の爽子がいろいろな行動をしてくれる。
  • 原作をつぶさないオリジナル展開
    • 短めのイベントを単発で見続ける構成にはなっているものの、本作の文量を相当なもの。
    • 主人公の爽子の心の声はテキストとして表示されるだけでなく、アニメCVを務める能登麻美子氏のボイス吹き込みがなされている。
    • 原作の場面場面で、爽子のリアクションを選ぶ場合もある。このとき原作とは異なるタイプの選択肢を選択することで、原作にはなかったifストーリーへと一定期間分岐する工夫がある。もちろん原作どおりの展開を選んで原作を追体験してもいい。
    • 原作にはなかったオリジナル展開も繰り広げられるが原作のキャラクターの性格を損なうタイプのものではない。
  • おまかせ機能が便利
    • きっかけ種の配置をおまかせにする場合、原作で起こったイベントのようなゲームの攻略上に重要なイベントが起こるように種を配置してくれる傾向が強い。
    • しらみつぶしに「きっかけ種」を配置するよりはいくらか効率がいい。自分で決めたいなら使わずに封印することもできる。
    • 「思考」「行動」も自動で選択してくれる機能がある。特に配置したきっかけ種が求めてくる思考、行動は優先して選んでくれる。
  • その他
    • 冬季では、キャラクターの足音が雪を踏む音になる。初詣に行くシーンでは、BGMが神妙なものとなり除夜の鐘のSEもつく。

賛否両論点(育てる想い)

  • キャラエンドについて
    • 本作のオリジナル展開であり評価点のとおり原作との大きな矛盾はないのだが、裏を返せば無難にまとめすぎている。
    • 一般のADVゲーと比較するといまいち内容に迫力がない。恋愛や告白にせまる内容も多いのだが、いまいち登場人物の感情描写や人間関係に関するメッセージが少なく、日常の1シーンを見ているような気分に成りかねない。

問題点(育てる想い)

  • プレイ履歴のコンプリートが難しい
    • 評価点の裏返しになるのだが、文量が多いために一周するまでにかなりの時間が必要になる。エンディングはキャラエンド8種類+ノーマルエンド1種類なので網羅するにはかなりのプレイ時間が必要。
  • 難易度はあまり高くない
    • 原作の雰囲気からして、特定の登場人物がひどい不幸に合うような展開がつくりにくい。そのため明確なバッドエンドはなく、適当にプレイしていても一応クリアは可能になっている。
    • 文量があることは確かに評価点なのだが、それらを読みきるのにはかなりの時間が必要なので、若干作業的な気がしなくもない。
    • ADVゲームではあるものの、1周のうちに物語の分岐点となる箇所が3箇所程度しかない。
      • なお爽子のパラメータが一定値以上になっていることが求められたりもするが、ノルマが特にシビアではない。4種類の偏りがないように増やしていけば恐らく足りなくなることはない。
      • 爽子の余所行きのバリエーションを増やしたいときに、高い「まえむき」値を要求する程度。
  • ADVゲーとしての基本部分
    • クイックセーブ機能、バックログ機能がなく、イベント中にDSの電源を落とせない。
    • イベントにもよるが、長い場合はイベントを終了するのに3分ほど時間を要するものもある。
    • 既読スキップ機能もない。前回の周回プレイで回収したイベントフラグは次回の周回に持ち込むことはできない。よって原則キャラエンドを見たい場合は重要なシナリオは省略できず、きちんと見ていかなくてはならない。
  • CV関連
    • アニメ版の声優によるキャラボイスが導入されているが、普段のADVパートでしゃべるのは爽子だけ。膨大な分量があるため仕方なかったかもしれないが…。
    • 爽子以外のキャラとしては風早にもボイスがあるが、夏の特殊イベントおよびキャラエンディング時のみ。
  • 好感度がいまいち確認しづらい
    • 好感度は「友好値」「興味値」と分かれているが、体感的にどうシナリオに影響するのかわかりにくい。
    • 爽子に対する噂話を見ることもできるが、現在進行中のシナリオを反映していないケースが殆ど。
  • 三浦・遠藤・平野の3キャラの扱い
    • 当3キャラは、実質、爽子と取り留めの無い会話をするだけの存在。
    • 遠藤・平野は原作でもあまり影が濃い存在ではなく、三浦は2年時以降の重要人物であるためか。

総評(育てる想い)

原作にあった物語をかなり忠実に再現したADV+育成ゲーム。原作をトレースするだけでなく、上手にオリジナル展開を挟むことで学校を生活する臨場感もプラスされている。ただし難易度を上げないための措置か、ゲーム性はいまいち弱めで、かつ1周(=爽子の高校1年生)がわりと長いためどこか作業的になってしまうきらいはある。


君に届け ~伝えるキモチ~

【きみにとどけ つたえるきもち】

ジャンル 想いを伝えるピュアアドベンチャー
対応機種 ニンテンドーDS
メディア DSカード
発売元 バンダイナムコゲームス
開発元 バンプレスト、アクリア
発売日 2011年4月7日
定価 5,040円(税込)
プレイ人数 1人
レーティング CERO:A(全年齢対象)
セーブデータ 8個
判定 なし
ポイント スケールダウンした物語
システムの特徴は前作据え置き

概要(伝えるキモチ)

『君に届け』のゲーム化作品の第2作。
前作の風早のキャラエンド後の時系列を舞台とし、2年になった爽子が文化祭を終えるところまでのストーリー(丁度アニメ第2期で描かれた期間)をプレイすることになる。

爽子が風早に告白するタイミングは、原作では2年時の文化祭の1日目であったが、本作では1年時のバレンタインとなっている。

システム(伝えるキモチ)

  • キャラを模した植木鉢にきっかけ種を置き、計画を立てて爽子のこころのパラメータを変化させるシステムは前作と共通。

変更点・新要素

  • 時間経過
    • 前作と異なり、今作は1日単位で時間が進む。1日の計画を立て、また次の日に…という進行。
    • 春20日、夏20日分をプレイすることになる。
    • シナリオの大きな分岐点は夏の3日目。
  • 心の種の種類
    • がんばる、きがつく、いたわる、よくばるの4種類に名称変更。(前作はがんばり、やさしさ、きくばり、まえむきであった。)
    • 名称が変わったが、水遣りからイベントの起こし方は前回とおおむね同様。
  • 好感度
    • 前作よりもキャラエンドの条件として機能するようになった。
    • 一定値以上でないとたいていの場合キャラエンドを見られない。
  • 文化祭の設営
    • 本作では、爽子がいる2年D組の文化祭の出し物を充実させていく必要がある。
      • 出し物の種類は、山車、占い、壁画、仮想演技、壁新聞、カフェ、小物、衣装の8つ。
    • 前作の興味値が廃止され、代わりにこの文化祭の設営の進捗度合いがパラメータとして管理される。爽子がとった行動によっても多少変化がある。
    • エンディング時の文化祭の充実度合いに影響有り。
  • その他
    • キャラクターのカット、BGMは大方前作据え置き。本作になって新た木書き下ろされた絵や作られたBGMもある。
    • 前作同様、キャラエンドを見たことのあるキャラとは「おまけ」モードにてお出かけデートできる。

評価点(伝えるキモチ)

  • フラグ管理は前作よりも単調になった
    • 好感度が減少するイベントがまずない。イベントを極力起こさないようなプレイをしない限り、複数キャラに対するキャラエンドのフラグは維持できる。
    • そのため各キャラエンドの網羅も前作よりはだいぶしやすい。
  • くるみに関するイベント
    • くるみは爽子と恋のライバルであったキャラクターだが、きちんと彼女との仲を深めるイベントは用意されている。

問題点(伝えるキモチ)

  • 原作あるいは前作の知識が必要
    • 本作では爽子が高校1年時にどんなことを体験してきたのかが説明されないため、原作の知識あるいは前作のプレイ経験がないと主人公の爽子と周りの登場人物がどういった関係なのかはあまり分からない。
      • 同梱の説明書に若干は登場人物に関する説明はあるにはあるが、不十分な感は否めない。
  • イベントの物足りなさ
    • 原作ならではのイベントがほとんど存在せず、実質オリジナル展開のみ。
    • 前作は、肝試し大会、くるみの噂話、球技大会、ピンの看病、忘年会、初詣と原作に関するイベント盛りだくさんだったが、本作では実質文化祭の準備をしているだけ。
    • 原作では文化祭の最後に告白することになるのだが、本作では風早とももうカップルになっているので爽子と風早の心理的なすれ違いといった原作の持ち味のひとつがゴッソリ失われている。
      • ゲームでは、40日間にわたって文化祭の準備をするという、普通の学校ではまずありえない事態に。
    • 原作に対して大きな矛盾はないのだが、シナリオのテイストは青春物というよりは日常系になっている。
    • イベントスチルの数も減少。
  • 前作から据え置きの問題点
    • 中断セーブができないほか、既読したテキストをスキップすることもできない。
      • 植木鉢に種をセットするフェイズでイベントの取捨選択はできるものの、既読のイベントをすべて回避してしまうとキャラの好感度が足りずにエンディングに影響してしまう。
    • 相変わらず爽子の心の声しかボイスで表現されない。まれに風早がしゃべる程度。

総評(伝えるキモチ)

前作と同様にADV形式のゲームだが、ストーリー自体はかなり単調でシンプル。あくまで前作ゲームの余韻にひたりたいかあるいは原作キャラとの日常生活を楽しみたい人でないと、プレイして楽しめないと思われる。

余談

  • 原作漫画は2017年に爽子達の高校卒業(+数年後のエピローグ)を以って完結した。(その後、爽子の大学時代を描く『君に届け 番外編~運命の人~』が連載開始)
    • しかしゲームの方は、現在を以ても3年生編の第3弾は発売されていない。
最終更新:2021年06月07日 09:53