メルヘンメイズ

【めるへんめいず】

ジャンル アクションシューティング

対応機種 アーケード
発売元 ナムコ
開発元 NHシステム
稼動開始日 1988年
配信 バーチャルコンソールアーケード
【Wii】2009年9月29日/800Wiiポイント( ※サービスに終了につきDL不可
アーケードアーカイブス
【Switch】2025年2月6日/838円(税10%込)
【PS4】2025年2月6日/837円(税10%込)
判定 なし
ポイント メルヘンチックなファンタジーアクション
見た目に反して鬼難易度


概要

1988年にナムコ(現:バンダイナムコエンターテインメント)からアーケードにてリリースされた斜め見下ろし型アクションシューティング。
童話「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」をモチーフとしており、時計うさぎによって鏡の世界に導かれたアリスが、世界を支配する闇の女王を倒すべく、シャボン玉を噴き出す魔法のストローを手に9つの世界を冒険する。

当時のアーケードゲームとしては極めて珍しいと思われる、クォータービュー視点のステージ構造が特徴で、メルヘンな外観とは裏腹に、玄人ゲーマー好みの高い難易度を持つ。全9ステージ構成。

キャラクターデザインは『銀河任侠伝』(ジャレコ)を手掛けた漫画家のANO清水氏*1

開発を手掛けたNHシステムはアルファ電子で『チャンピオンベースボール』の企画を担当した早川弘一氏らによって立ち上げられたデベロッパーで主にナムコ作品の下請けをメインとして活動していた会社である。*2

ゲーム内容

主なルール

基本操作
使用コントローラーはレバー+2ボタン。レバーでアリスの移動操作、ボタンはそれぞれシャボン玉攻撃とジャンプに使用する。
概要に述べた通り、本作はクォータービュー視点でありレバーの入力方向と自キャラの動きが一致しない*3ため、レバー操作に慣れがいる。

  • 攻撃ボタンを押すと、レバーとの組み合わせによってアリスが向いている8方向のいずれかにシャボン玉攻撃を放つ。連射すれば攻撃を連続で放つ事もできる。
    • 攻撃ボタンはボタン押しっぱなしにより溜める事が可能。溜め中にボタンを離すと攻撃判定と攻撃力が増した巨大シャボン玉を放つ事ができる。但し、溜めすぎるとシャボン玉が破裂して一からの溜め直しとなってしまう。
      • 溜めている最中でもアリスを動かすことは可能。また、溜めている最中にアリスの前方に攻撃判定が発生する為、溜めながら敵に体当たりというテクニックもできる。
      • ノーマル連射及び中途半端なタメ攻撃では射程が中途半端なところで弾が消えてしまうが、最大ためで放つことで弾がアリスの立つ位置から画面外へ到達するようになり、更に貫通性能が付加されて大量の敵を1度に巻き込めるようになる。
    • ジャンプボタンを押すとアリスがジャンプする。ジャンプは浮遊している地形を飛び越えたり、敵や敵弾を交わす効果があり、クリアするのに要必須な基本アクションとなる。また、ジャンプ中のレバーの組み合わせにてアリスの空中移動制御も可能である。
      • ただし、ジャンプ中は一切攻撃できず、攻撃中にジャンプすると攻撃キャンセルとなってしまう*4

基本ルール

  • アリスが敵や敵弾に接触しただけではミスにならず、後方へ弾き飛ばされるだけですむ。
    • アリスが移動するフィールドは空中に浮いており、敵などに触れて弾き飛ばされてフィールドから落ちたり、着地ミスで空中に落ちてしまうことでミスとなる。
      弾き飛ばされた直後は無防備であるため、タイミングが悪いと連続で弾き飛ばされてしまうので常時、気を抜けない。
    • レバーでの移動だけではフィールドから落ちることはない。ミスの条件はあくまで「ジャンプによるフィールド外への落下」と「敵の攻撃で弾き飛ばされて落ちること」のみである。
      • 通路に押し付けるようにしてアリスを歩かせることで、アリス1人分の幅しかない通路に転がる敵弾をギリギリすり抜けて避けていくなど、地形に応じた敵の攻撃の軌道の見極めも肝心。
    • なお、本作の敵の弾は「地面を転がるキャンディ」という設定となっているため、一部の飛行敵はジャンプを妨害する障害物扱いで弾は放ってこない。
  • アリスの攻撃は基本的に相手を弾き飛ばす効果しかなく、シャボン玉で敵を弾き飛ばしてフィールドの外や穴に落とすことで初めて倒したことになる。
    • 例外として、ボスや一部の耐久力の設定された敵に対しては、他のシューティング同様に玉を撃ち込んで破壊する。
  • ときおり進む先に浮遊して常に動いている床があり、ジャンプボタンでそこに着地する必要がある。もちろんタイミングを誤ってしまうとミスとなってしまうので、慎重にジャンプしなければならない。
    • 通常のフィールドの特定地点及びフィールドの終点とボスエリアの間に存在する白黒の格子模様の浮遊床は、通常の浮遊床と違い、ジャンプした際のアリスの影が映らないようになっている。
  • 足場が途切れている所では、地面を転がってくる敵弾は物理法則に従って転がり落ちていくが、宙を飛んでいくシャボン玉はそのまま通過していく。地形によっては、これをうまく利用して一方的に攻撃可能。
    • 救済措置というよりは必須テクニックの一つだが、アーケード版には時間制限があるので過信は出来ない。
  • 道中に「?」のマークの付いたアイテムボックスがあり、攻撃で破壊するとアイテムが出現する。
    赤水晶 スコアボーナス。配置は固定だがランダムで配点が変わる(値は500点から7650点まで)。
    青水晶 一定時間、溜めなしで最大攻撃ができるようになる。緑水晶と併用可。
    緑水晶 一定時間、シャボン玉が前方三方向(3WAY)攻撃となる。青水晶と併用可。
    紫水晶 一定時間、アリスの移動スピードが上がる。
    黄水晶 一定時間、敵の動きが止まる。
    風船 弾き飛ばされて足場から落下した際のミスを1度だけ回避した上でその場復活。
    次ステージへの持越しはできない。
    うさぎのぬいぐるみ 一定時間、アリスの周囲にバリアが張られて完全無敵状態になり、
    体当たりで敵を弾き飛ばせる。ただし、落下のミスは防げない。
    ブーツ 一定時間アリスのジャンプ力が増す。
    ミニ時計 制限時間が一定量回復する。

特定のステージでは敵が出現する罠のアイテムボックスも登場する。

  • 残機制の戻り復活。残機0でゲームオーバーでコンティニュー後はステージ冒頭からのやり直し。
    制限時間は全ステージ一律で3分間でリトライ時は3分から再スタートとなる。
    • ミス条件は「アリスが敵などに弾き飛ばされて足場や穴から落ちる」「浮遊床の着地を誤り穴に落ちる」
      「制限時間経過後に出現する永久パターン防止キャラに触れる」のいずれか。
      • 永久パターン防止キャラは凄まじいスピードで迫ってくることもあって回避が難しいため「出現=実質的にミス確定」といって差し支えない。

評価点

  • グラフィックの質が高い
    • アリスシリーズの童話をモチーフにしたメルヘンチックな世界観の雰囲気が非常に上手く表現されている。
    • 各ステージは「おかしの国」「おもちゃの国」「そらの国」などのメルヘン節全開な構成となっており、ステージによって様々な個性を持っている。
      • また、見下ろし視点による背景は空間の高低差の表現が突出しており、擬似的な2Dグラフィックの表現ながら本当に高い足場で移動している感覚を味わわされる点も評価されている。
  • 世界観にぴったりマッチしたBGM。
    • コンポーサーは当時NHシステム所属の出会った川瀬知香(小林智名義)が担当している。
      • 煌びやかかつ柔らかい音色によるクラシック調の音楽性で、メルヘンな世界を表現しており、80年代のナムコアーケード作品の中で例にもれず高い評価を得ている
  • 個性的なキャラクター
    • 主人公のアリスは当時のナムコヒロインの中でも人気が高く、ワンダーモモ、ワルキューレと並ぶ、80年代のナムコット三大ヒロインとして(主に大きなお友達から)支持を得ていたという。
      • また当時のAC業界史上最年少のお子さまキャラとして触れ込まれてもいたようである。
    • その他にも、童話のアリスをモチーフにした敵キャラや威圧的ながらも童話らしいユニークな外観の大型ボス等、どのキャラクターも個性的なデザインとなっている。

問題点

クォータービューによりプレイヤーの視点・レバー操作と実際の移動方向が一致していないため操作に慣れが必要で、下記の要因もあってかわいらしい見た目とは裏腹に難易度の高さはかなりのものとなっている。

  • 先の足場への距離感が掴み辛い。
    • 離れた足場にジャンプで渡る際は足場に移るアリスの影を意識してジャンプ中の軌道を調整するのがコツだが、足場への距離感が掴み辛いため、慣れないうちは落下ミスが起きがち。
      • 3面以降から一定方向に移動する足場が登場してジャンプアクション色も濃くなっていき、精密なコントロールが要求されていくようになる。
  • 敵の攻撃が激しい
    • 全体的に敵の攻撃が激しく、全編に渡って切り抜けるのが難しい局面が多い。
      • 空中を飛行してジャンプを妨害するザコや一本道の狭い通路に陣取った敵が前進しながら弾を連続で吐いてくるなど、こうした敵の挙動が2面から既に表れている。
        3面以降、動く足場にジャンプを妨害する障害物やザコなどの複合によって難易度が急激に上がっていき、大量の弾をまき散らしてくる敵も相まって、弾き飛ばされることは死を意味すると言わんばかりの凄まじさになっていく。
    • 特に、終盤の8面『へいたいの国』と最終面の『女王の国』が最大の難所で、本作の鬼畜ぶりが如実に表れたステージとなっている。
    • 『へいたいの国』ではとにかく敵の群がりっぷりや設置された障害物の数がこれまでにない規模となっており、ショットだけで突破するにはかなりのキツさ。
      • 更に地続きでない足場の端に大量の敵が集合して群れ集まっておりすぐ近くの足場に配置された「うさぎのぬいぐるみ」によるバリア効果を得なければ突破が実質不可な箇所もある始末。
    • 『女王の国』では1面のマップを使いまわしているためマップ構成自体は平坦だが、通路や足場自体が全体的に狭いところに8面をはるかに上回るほどの大量の敵が配置されるという、マップ構成を逆手に取った非常に嫌らしいステージとなっている。
      • 自機2キャラ分しかない幅の狭い通路に陣取った大量の敵や砲台が処理落ちするほどの大量の弾を吐きまくりながら迫ってくるという理不尽きわまりない配置になっており、ノーミスで抜けるのは至難の業。
        うごく足場や落下穴が存在せず一本道で繋がったシンプルなマップであるため、直線的に弾を放つだけではザコ敵を完全に倒し難いのも嫌らしい(上述の通り、ザコは足場から落とさないと撃退できない)。
      • こうした点から時間の消耗はまず避けられず、苦労してラスボスにたどり着いてもまずタイムオーバーギリギリとなってしまう*5
      • 肝心のラスボスにしても、動きを止めてから放出してくるトランプ兵が大量な上にこれまた大量の弾を放ちながら追尾してくるため、弾と敵の壁との複合で攻撃をまともに放つことすらままならないという鬼畜ぶりである*6*7
    • ボスはさほど強くないのが救い。攻撃パターンも単純なので初見でも突破は比較的し易い。
      • ただ、2面以降から大量の弾をばら撒いてくるため、慣れないと攻撃を思うように当て難く、撃破に時間がかかり易い
  • 制限時間が短い
    • アーケードゲームなのでプレイ時間を縛ること自体は当然ではあるが、本作の難易度の高さを考慮すれば3分間は短すぎると言わざるを得ない。設定で時間をいじることもできない。
  • シャボン玉攻撃の仕様
    • ジャンプ中はシャボン玉を撃てず、タメ撃ちもキャンセルされてしまうため、攻撃がし辛い。
      さらに攻撃パワーアップの効果は一定時間で消えてしまう上に先に進むにつれて敵の攻撃が激化していき溜める余裕も無くなっていくため、ノーマル玉の連射一択となりがち。
  • スコアアップアイテムの配点がランダムで変化するため、稼ぎを意識してのプレイでは運が絡む。

総評

「可愛らしくメルヘンな外見に釣られてプレイしたら、そこは地獄という名の迷宮だった」…そんなゲームであろう。少なくともライト感覚でプレイしようものなら、泣きをみるというべき存在だったように思える。
ファンシーな皮を被った高難度ゲームというところは、いかにも80年代のアーケードゲームらしいといえようか。


家庭用移植

  • PCE Huカード版(1990年12月11日発売、ナムコ/NHシステム、ノバ)
    • PCE版最大の特徴としてはクォータービューが廃止されトップビューになった事が挙げられる。ゲーム自体もほとんどのステージが一新され、奇々怪界のようなトップビューの全方位アクションシューティングといった趣きになっているため、アレンジ移植といったほうが正確か。
      • クォータービューの廃止については「PCEのハードスペックの問題とPCEコントローラーが斜め入力し辛いため」と言われていたが、AC版の後期ゲームデザイン及びPCE版のプログラマーであった中村伸武氏はこれをきっぱりと否定しており、ナムコの営業サイドから「斜めスクロールは難しくて受け入れられないので縦スクロール仕様にしてほしい」という要望があった為だと後年のインタビューで述べている。
    • アイテムの風船が残機の役割に変更され、ミス時はその場復活で継続する。
    • 制限時間とスコアが廃止され、マップ構成もAC版に比べて平易になっているため難易度は下がっている。
      その反面、敵と接触した際の後方への弾き飛ばし距離がAC版よりも大きく、弾き飛ばし方もかなり勢いよくなっているため、それなりに死に易く、そこそこ難しい。
    • ステージ数自体はAC版と同じ全9ステージ。ただし、一部を除いてほとんどのステージがPCE版のみの新規ステージに差し替えられており、原作には無かったフィールド上の仕掛けや新規の敵キャラも多く追加されている。
    • ボスの攻撃パターンも多くが刷新されている。
    • オープニングとエンディングに会話デモが追加。ストーリー性が深められている。
    • PCエンジン版の開発も当初はAC版同様NHシステムが手がけていたが、1990年の2月にNHシステムが倒産。開発も一時中断となったが倒産直前時点でゲーム部分はほぼ完成していたため、同じくナムコの下請けなどを担当していたノバに開発が引き継がれた。当初の仕様からステージ開始時のグラフィックに変更が加えられている。
  • X68000版(1991年3月14日発売、SPS)
    • こちらはかなりAC版に忠実な移植となっている。AC版の開発メンバーである中村氏がSPS-NETの会員であったことからX68000版の開発を聞き、その際に素性を明かしたのがきっかけで外部アドバイザーのような形で関わっている。
      上記の経緯もあり、スタッフロールにはスペシャルサンクスとして中村氏の名前も載っている。
  • Wiiバーチャルコンソール版(※サービス終了に付きDL不可)
    • AC版の忠実移植。
  • PS4/Switch用『アーケードアーカイブス』版
    • 2025年2月6日より配信開始。AC版の忠実移植。
      • 「こだわり設定」にて十字キーの入力方向を45度調整(上に入力で右上に進むようになる)が可能。

余談

  • PCE移植版は前述の通り1990年12月11日だが、何の偶然かその8日後に本作と並びPCEの二大アリスゲーと称される不思議の夢のアリスが発売されている。
    • ジャンル自体は異なるが、どちらも「アリスが溜め攻撃を持つ」「高難易度なゲーム」という妙な共通点がある。
  • 2002年にアリカからリリースされたアーケードの音楽ゲーム『テクニクビート』がナムコのレトロゲーム楽曲とコラボした際、本作のBGMもアレンジ収録される予定だった。
    • しかし、権利問題で折り合いが付かず、ロケテストのみの幻の楽曲となった(家庭用ソフト及びサントラにも未収録)。
  • 2002年6月14日に旧ナムコから発売されたGBA用ソフト『ファミリーテニスアドバンス』で、本作のアリスが隠しキャラクターとして出演した。
  • ゲーム番組「ゲームセンターCX」でも有野課長がPCエンジン版に挑戦しており、今作の高い難易度に課長もかなり苦戦した。 その苦戦具合は、管プロデューサー(番組のナレーションも担当)から「よくメルヘンメイズという名前をつけれたな」と言われたほどである。
最終更新:2025年07月09日 07:32
添付ファイル

*1 ただし、ポスターやPCエンジン移植版のイラストはそれぞれ異なる人物が担当しているため、氏の直筆デザインによるアリスを拝めるのはインストカードやファングッズの缶バッジ等のみ。

*2 社名にある「NH」はナムコの「N」と早川氏の「H」から取られている

*3 レバー上(↑)を入力すると自キャラが右斜め上方向(↗)に動く。

*4 ある程度まで膨らましたシャボン玉は攻撃判定を維持した状態で前方へ発射される。

*5 倒しきれずに後方に残ったザコはそのまま後ろから弾を吐いてくるため、被弾時の弾き飛ばしを利用してわざと後ろから連続被弾することで一本道の細い通路を一挙に通り抜けるという時短テクニックも編み出された。

*6 実は足場の右端に安全地帯となる箇所が存在する。位置取り次第ではザコ敵がわずかに向かってくるため完全な安置とまでは行かないが非常に有用で、これを利用するのが攻略上のセオリーとなっている

*7 公式ビデオ『ナムコギャルズアイランド』のメルヘンメイズ編でも当然のように安置が利用されていたほどであった。