Plague Inc: Evolved

【ぷれいぐ いんく えぼるぶ】

ジャンル シミュレーション
対応機種 Windows
MacOS
Linux
発売・開発元 Ndemic Creations
発売日 2016年2月19日
定価 1,680円(税込)
判定 なし
ポイント スマホアプリの移植+α
病原体を使って全人類の滅亡を目指す
マルチで対戦や協力も可能
備考 海外ではSwitch/PS4/One版も発売


概要

病原体を作り出し、地球上の全人類に感染させ滅亡させることが目的となるシミュレーションゲーム。
2012年にAndroid・iOSアプリとして配信された『Plague Inc.』(日本語版副題『伝染病株式会社』)のSteam移植作品。
移植にあたって、原作+全拡張パックの内容に加え、演出の強化、マルチプレイ、カスタムシナリオの機能が追加されているほか、一部のBGMやSEが差し替えられている。
人類を滅亡させるというテーマこそぎょっとさせられる本作であるが、本作における感染拡大のモデルはアメリカ疾病予防管理センターからも評価されている。
海外ではXbox One、PS4、Switch版もDL配信されている。

特徴

  • 本作ではプレイヤーは第三者目線となって病原体の性能をコントロールしながら、全ての人類に病原体を感染させ、死亡させることが目的となる。
    • ゲーム画面には世界地図が表示され、リアルタイムで時間が経過していく。時間経過は任意のタイミングで一時停止可能であり、プレイヤーが出来ることは病原体を進化、あるいは退化させることや、データを確認すること、後述するバブルをクリックすることである。
    • 病原体には「バクテリア」「ウイルス」など数タイプがあり、プレイ開始時にひとつ選ぶ。それぞれ性質が大きく異なり、ゲーム展開も多少なりとも変わってくる(詳しくは後述)。
    • 病原体の進化にはDNAポイントが必要となり、進化によって「感染力」「危険度」「致死率」が変化していく。
      • DNAポイントは感染者、死者を増やすことで多少得られるほか、感染国を増やした際に世界地図に表示されるレッドバブルや、感染国からたまに表示されるオレンジバブルをクリックすることで入手できる。
  • 全人類を滅ぼせば勝利となる。一方、病原体の特効薬であるCureが開発されてしまうと感染者が減っていき敗北となる*1
    • また、本作では死者から感染するという概念は基本的にないため、全人類が感染する前に感染者が全員死亡してしまった場合、たとえ70億人の内の大半を滅ぼしたとしても敗北となる。
    • 各国には「貧富」「寒暖」「陸路、海路、空路の有無」といったパラメータが設定されており、それによって感染しやすさ等にも違いが出る。
      • 病原体の進化の際にはこういった国ごとの特徴を意識しながら感染力を高めていくことが重要となる。
  • 最初、病原体はプレイヤーが選んだ任意の国の1人に感染した段階で始まる。
    • 病原体は最初は何の脅威ももたらさず、世界で発見されていない状態であるが、危険度が高まると認知され、その危険度次第では空路や海路の封鎖、鳥や家畜の駆逐、Cureの開発といった対策がとられるようになっていく。
    • なお、本作において自然治癒はないため、時間がかかったとしても問題はない。

ゲームの流れ

  • まず、病原体のタイプを選ぶ。病原体によって固有能力を持っているため、その性質を見極めてプレイすることが重要となる。なお、病原体タイプは新たに解放された病原体タイプで難易度Normal以上をクリアすることでどんどん解放されていく。
    • バクテリア:最初から選択可能な病原体。特段のクセもなく扱いやすい病原体で、固有能力「バクテリア抵抗力」はあらゆる環境での適応力を高める。
    • ウイルス:突然変異しやすい病原体。突然変異しやすいため、DNAポイントを使わず進化も出来るが、変異の内容次第では序盤から人類に気づかれることもある。また、退化に必要なポイントが多いため、制御不可。固有能力「ウイルス不安定度」は突然変異の割合を更に増やすことが出来る。
    • 真菌:長距離の移動が難しい病原体。その性質から空路や海路を使った感染が難しい病原体。固有能力「胞子破裂」によって非感染国をランダムで感染させることが出来る。
    • パラサイト:病気に気づかれにくいが、感染拡大によるDNAポイントが得られないため、進化が難しい。固有能力「共生」は危険度を下げる効果がある。危険度を0にすればHARD以下であれば全人類感染させるまで存在を隠しきれる。
    • プリオン:進化が遅く発見や治療が難しい病原体。その代償としてか致死率が上がりづらいという特徴がある。固有能力「神経萎縮」はCureの研究を遅らせる効果がある。ただし、未進化での開発速度はむしろ早め。
    • ナノウイルス:研究所から逃げ出した人工生命体という設定。最初からCureの開発が全力でスタートするが、Cure開発を妨害する「コード断片妨害」などを持ち、症状形質及びCure開発を遅らせる能力のコストが低い特徴を持つ。
    • 生物兵器:時間経過とともに致死率が勝手に高まる病原体。そのままでいると感染拡大する前に感染者を全滅させることもあるが、固有能力「遺伝子圧縮」等を用いることで致死率の増加を抑えられる。また、関連能力を最大まで進化させると致死率を一気に極大化できる。
    • 脳食い虫:人類の脳に潜み宿主となる人をコントロールする特殊病原体。ここから症状の内容がごっそり変化する。固有能力「トロイの飛行機」を使うことで任意の国に感染を広めることが出来る。また、全人類を奴隷化するという勝利条件もある。
    • ネクロアウイルス:ウイルス同様突然変異しやすい病原体だが、「細胞変異蘇生」を取得することで死者をゾンビ化させることが可能となり、ゾンビ化した死者に生者を襲わせることも可能だが、対抗組織としてZCOMが結成される。勝利条件として「全ての人類を滅ぼすか、ゾンビ化させる」が加わる。ゾンビに殺された者もゾンビになれる性質上、Cureが100%になっても終了とはならない。
    • 猿インフルエンザ:同じくウィルスタイプで、猿の惑星を元にしている。人間だけではなく猿にも感染させることができ、知性を持たせることができる。コロニーを形成してポイント獲得やCure研究所の襲撃などが可能。
    • 影の伝染病:まずバンパイアロードが1人産みだされ、このバンパイアが人類を殺害してポイントを獲得したり病原体の宿主として任意の国に感染拡大させることができ、脳食い虫同様奴隷化も可能。バンパイアには体力の概念があり、人類の対抗組織との戦闘などで減少して0になると死亡してしまう。
  • 病原体タイプを選んだら難易度を選択する。難易度による違いの説明は以下のとおりだが、概ね感染の拡大しやすさに違いがある(当然、高難易度の方が感染拡大しづらい)。
    • Easy:「全ての人類が手を洗わない」「研究医は仕事しない」「感染者はハグされる」
    • Normal:「67.3%の人類が手を洗う」「研究医は週3日で仕事をする」「感染者は無視される」
    • Hard:「全ての人類が強迫的に手を洗う」「研究医は毎日仕事をする」「感染者は投獄される」
    • 超Hard:Hardの状況に加え「ランダムで健康診断が実施され病原体が発見されることがある」「更にCureの開発が早くなる」といった違いがある。
  • 次に病原体の名前を決める。名前による差は特にない。
  • 病原体に遺伝コードを注入する。遺伝コードはゲームクリアごとに解放されていく。
    • 遺伝コードは大まかに「DNA遺伝子」「変異遺伝子」「トラベル遺伝子」「環境遺伝子」「進化遺伝子」の5つに分かれそれぞれに1つの遺伝子を注入することが出来る。これによって特定の状況での感染力拡大などのボーナスを得ることが出来る。
  • 最後に最初の感染者を生み出す国を選ぶ。
    • 最初の国が暑い場所だと病原体が多少は暑さに強くなる(寒いところであれば逆)といった特徴がある。
  • メインモードの他に、シナリオモードも存在する。シナリオモードによっては病原体が固定されているものもある。

評価点

  • リアルに計算された感染モデル
    • アメリカ疾病予防管理センターが評価したとされるだけあって感染拡大のモデルはかなり緻密に計算されている。
    • 国ごとのパラメータや感染人口等の様々な要素が感染拡大の状況に左右する。最初は拡大が穏やかであっても進化の内容や感染人口によって突然広範囲に感染していくということもある。
    • 逆に空路や海路が封鎖されてしまうと、1つの国だけが全く感染者が出ない、といったことも生じてしまう。慣れない内は1つの国以外は感染しているのに感染経路がなくなってしまってその国を除いて全滅、敗北ということも起こりうる。
  • 秀逸な演出
    • 所々で流れるニュースや世界地図が段々と赤く染まっていく事で、人間の文明が病原体によって脅かされていく様子が上手く表現されている。
    • BGMはアンビエント調の不気味な物が多いが、雰囲気にはよくマッチしている。
      • SEとして流れる子供達の歌もこれまた不気味な物で印象に残りやすい。
    • 病原体には名前を付ける事が出来る。
      • 実在する病原体から他作品由来の恐ろしい病名、果てにはネタまで、様々な病名を付けられるのも魅力。
  • 繰り返し遊ぶことが出来るゲーム性
    • 上述の通り、病原体タイプは複数あり、注入する遺伝子コード、開始する国のパターンも非常に多いためこれらを切り替えることで何度も遊ぶことが出来るスタイルとなっている。
    • ゲーム進行そのものはシンプルだが、特定の組み合わせをすることでコンボが発生することもあるため、コンボの発見を目指すのも楽しみ方の一つ。
  • 多彩なシナリオ
    • 上述したメインモードだけでなく、さまざまなシナリオモードも用意されている。
    • 根絶されたはずの黒死病や天然痘が現代に蘇ったという設定のシナリオや、変わったところでは病原体ではなく「面白いボードゲームを開発して全世界で大ヒットさせる」「フェイクニュースを伝播させて世界をウソの情報で染め上げる*2」などというシナリオもある(用語を置き換えただけで基本ルールは同じだが、性質変化や感染ルートなどの要素は別物となる)。
    • さらに、Steamワークショップではユーザーが作成したカスタムシナリオがダウンロードできるが、その数は1万をゆうに超えている。
  • 短い時間で手軽にプレイできる
    • 1回あたりのプレイ時間が数十分~長くても1時間ほど(プレイヤー次第)のため短い時間でプレイできる。また不本意な結果に終わった時も再プレイが容易であり、失敗から学んで上達する喜びを実感しやすい。
    • 複雑な要素が絡み合うシミュレーションゲームではあるが、操作自体はとても直感的でシンプルである。
    • このような手軽さ・シンプルさは、そもそも本作(の前身)がスマートフォン用に開発されたためなのだが、PCゲームとして見た場合、他のPCストラテジーゲームとは差別化された本作の個性として評価できる。

賛否両論点

  • 不謹慎な内容を扱うゲームである事
    • 演出が評価される一方で、不謹慎ネタが苦手な人にとっては不快に感じかねない物もある。
  • 実績が非常に多い
    • 本作では実績が211種類と非常に多く用意されておりやり応えがあるが、特定のコンボの発見に関わる実績が多いため事前情報無しではかなり難しい。
    • 繰り返し遊んで発見を目指すというコンセプトだと思われるが、後述の問題点もあるため、ただの数稼ぎと化しているという一面も否定できない。

問題点

  • 戦略がワンパターンになりがち
    • 様々な病原体が存在し、様々なシナリオが存在するといったものの基本的な目標がどれも「人類の滅亡」となっている。
    • 結果として「まずは人類に気づかれないように、ほとんど無症状のまま感染を拡大させる」「全人類を感染させたら一気に危険度と致死率を高めて全滅させる」という基本的な流れに一本化されてしまう。
      • 感染拡大と危険度を高めることを並行して行うと、非感染国が鎖国してしまい詰むことが多く、そうでなくともCureの開発が本格化してしまうと致死率を高めても間に合わないことが多い。
      • もちろん、病原体の特性によっては杓子定規で上の攻略法を当てはめればいいという訳ではないのだが、「可能な限り気づかれないように感染させる」「全人類が感染するまでは可能な限り脅威と感じさせないようにする」の2つがセオリーには変わりない。
    • 開始国についても選択肢こそたくさんあるが、突き詰めると、最初の感染がしやすく空路・海路が存在するエジプトやインド、寒冷地で海路しかない為感染が難しいグリーンランドにも感染させやすいロシア、陸路での感染が見込め土地が広大な中国等ある程度選択肢が絞られてくる。
      もっとも、こういう「最適解」を見極めるタイプのゲームであると言える。
      • だが、ネタなどの特殊プレイでもない限り、上記以外の国を選ぶメリットは殆どなく、ただただ選択肢が多いだけになってしまっているのは勿体ない所。
    • 故にせっかくやり込み要素が用意されていても、人によっては一度クリアしたら飽きてしまう事もあるだろう。
  • 超Hardは運の要素も絡む
    • 超Hardはランダムの健康診断によって病原体が発見されることがあるが、これが運の要素が強い。
      • 他の難易度の「気づかれないように全人類に感染させる」という戦略を封じたものだと思われるが発見される時期によっては詰む事もあるの理不尽と言わざるを得ない。

総評

全人類の滅亡を目指すという恐ろしいテーマであるが、シミュレーションゲームとして見ればゲームデザインは決して悪くない。
ただ達成感を得るだけでなく、感染症の恐ろしさを体感できるとしてスマホアプリ時代から好評を得てきた。

たが、シナリオが豊富な一方でゲームの大まかな進行はワンパターンになりがちで人によっては飽きやすい点、不謹慎なテーマを扱っている部分は人を選ぶ所。

とはいえ、シンプルながら秀逸な演出に加え、最初は数人程度しか感染していなかった世界地図が赤く染まっていき、文明が崩壊していく様を見ると妙な達成感を得ることが出来る。
1回のプレイ時間もそれほど長くないため、シミュレーションゲームは長時間かかって苦手というプレイヤーでも気軽に遊びやすい。

総じると、多少の難点もあるが手に取る価値はある一作と言える。

余談

  • 伝染病が世間を賑わす度に話題になるゲームでもある。
    • 特に2020年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大の際には中国をはじめとした複数の国でアプリ版がセールス上位を獲得する事態となった。
    • Steamにおいても同時期にレビュー数が増大しているため、セールスが伸びたものと想定される。
    • だが、2020年3月3日に中国のサイバースペース管理局から「違法コンテンツが存在している*3」と晒し上げを食らったことで、中国のSteam及びApp Store(iOS版)のサイトからは販売ページが削除された。
  • 各種音楽DL販売サイト、サブスクリプションサービスでサウンドトラックが配信されている。
    • スマホ版、Steam版のBGMに加え、上述した子供達の歌も収録されている。
最終更新:2022年11月16日 13:46

*1 Cureが完成した後も一応ゲームは続くが、既に「人類滅亡」が達成不可能になっているため、どう足掻いてもゲームオーバーである。

*2 2019年12月のアップデートで追加されたシナリオ

*3 デベロッパーであるNdemic Creationsの公式声明では「抵触した内容が何であるかをサイバースペース管理局が明かさないため全くわからない」とのこと。