僕が天使になった理由 LOVE SONG OF THE ANGELS.

【ぼくがてんしになったわけ らぶそんぐおぶえんじぇるず】

ジャンル ADV
対応機種 Windows XP/Vista/7
発売・開発元 OVERDRIVE
発売日 2013年2月28日
定価 8,800円(税別)
レーティング アダルトゲーム
配信 2014年10月3日/6,076円
判定 良作
ポイント 一筋縄ではいかない恋愛
何かを得れば何かを失う
オバイブらしく力の入った音楽

すべての愛に意味がある。


概要

『キラ☆キラ』や『DEARDROPS』など音楽を題材にしてきたOVERDRIVEブランドのオリジナルタイトル。
本作でも音楽がテーマに関わっている。

タイトルの「理由」は「わけ」と読む。


ストーリー

山と海に囲まれた異国情緒豊かな港町・伊乃郷市。
山頂の教会が見守るこの街で、少年と少女は出会った。
少年の名は桐ノ小島巴 (きりのこじま ともえ)。 恋も幸せも信じず、孤独を貫く少年。
少女の名はアイネ。 愛を唄い、幸せをもたらすために生まれた……天使。
桐ノ小島巴の人生は、他人の目にはおそらくとてもつまらないものに見えていただろう。
友達は作らない、彼女なんてもちろんいない。 趣味らしい趣味もない。
寝て起きて登校して帰って寝る。 ただただ平凡なルーチンを繰り返すだけの日々。
ただそれでも、その生活は彼にとって全然不幸ではなかった。 “何もない” ということは “失うものもない” ということだから。
何かを望んだところで、最後にはひどく傷つくハメになるに決まっている。
この世界の残酷さを、彼はいやというほど味わったのだから。
そんな彼の平穏な生活は天使の登場によって終わりを告げた。
“天使”。 人々の恋の護り手。 “赤い糸” を紡ぎ、奏でる者。
「恋が人を幸せにするなんてこと、あるわけがない」 と巴は言った。
「そんなことありません! 恋をすると心がほわぁってなるじゃないですか!」 とアイネは言った。
意見が折り合わないまま “天使代行” として彼女の仕事を手伝うことになった巴は、アイネと共に他人の恋愛に深く関わっていく……
目の前を通り過ぎていく “恋” という現象に込められた様々な思い、そして様々な幸せの形。
それは、幸せというものの本当の意味を探す旅。 そしてその果てに、彼は歩み続けた理由を見つけ出す。
(公式サイトより抜粋)

特徴

  • テキストを読み進めるノベルゲーム
  • 強い精神的ショックを受けた人物は物理的にも心が欠け、「心の欠片」を落とすという設定がある。例として第三話を挙げる。
堂崎文子は自信の容姿に自信がないが、ネット上の匿名チャットでクラスメイトの小ヶ倉章吾と親交を深めていた。
そんな中で文子の友人である美里が章吾に恋をしたと知り、二人を引き合わせるが、文子自身は複雑な心境。
文子は勇気をもって匿名チャットの正体を明かして章吾と現実で会話するが、章吾が一瞬ガッカリした顔をしたことにより、自身のコンプレックスを刺激されて「心の欠片」を落とす。
  • 第一話~第六話まではサブキャラの恋愛模様を見届ける。
    • 第一話は自動で進行するが、第二話からはプレイヤーが天使代行として「心の欠片」を返すかどうかを選択する。
    • 返した回数によって個別ルートの相手が決まる。
    • 個別ルートでは一箇所のみ選択肢がある。ここでは主人公自身がどう行動するかを選択する。
    • 3人の個別ルートを終えると物語途中に選択肢が増え、それを選ぶとロックされていたアイネルートに入る。このルートのみ選択肢はない。
  • 基本的には重い話だが、エンディング後に解禁されるおまけモードは例外
    • SD絵のヒロインがCG回想コーナー等をボイス付きで案内する緩い雰囲気である。ボイスを切るのも可能。

評価点

  • 切ない恋物語
    • 常に二者択一を迫られるが、何かを得れば何かを失う話がほとんど。
      • 恋の代償として提示されるのは「音楽活動」「相手の気持ちが自分に向いていない」「友人」等様々だが、そのどれもが恋愛と釣り合うほどに大切にされていることが十分にプレイヤーに伝わってくる。
    • 上記で例に挙げた第三話では、心を欠いた文子は美里の恋を応援するのを決めるが、「文子自身の気持ちを押し殺してでも友人の恋を応援すべきなのか」「文子の意思を尊重すべきなのか」等はプレイヤーが考えて心の欠片を返すかを選択する。
    • どちらのルートも作り込まれており、どちらを良いとするかはプレイヤー自身の倫理観や恋愛観によるところが大きい。切なさを残す恋愛の幕切れは本作の大きな魅力であり、双方がビターエンドとして成り立っている。
      • 初プレイで選ばなかった方のルートはどうなっていたかを確かめられるのも、ノベルゲームならではの利点と言えよう。
  • グラフィック
    • メインキャラは主人公を含めて5人だが、20人以上のサブキャラにも立ち絵が用意されている。
      • 背が低いのがコンプレックスの男は女性と目線があうような立ち絵、外見にコンプレックスを持つ女子は相応の顔と、きっちりテキストに調和しており、違和感を抱かせない。
    • ワイド画面を生かした迫力のある構図の一枚絵は特に評価が高い。
      • この手の作品には珍しく、男性の一枚絵もそれなりにある。男性を主軸とした話では大きな見所となっている。
    • アイネルートでは一気に新規CGが使われるため、ラストを大きく盛り上げている。
  • 音楽
    • OVERDRIVEらしく力が入っており、ボーカル曲9曲と大盤振る舞い。エンディングごとに違う曲が流れる。

賛否両論点

  • 好みの問題はあれど概ね第五話までは好評だが、第六話以降は特に賛否が分かれやすい。
    • いずれも並以上のクオリティは保たれているが、手放しには褒めにくい要素を含む。以下ネタバレ。
+ 第六話
  • レイプされた少女の救済という作中で一番重い題材
    • 「大切な物はどちらか?」を選びどちらかを得るのが第五話までだが、この話だけはどちらを選んでも悪い終わりである。
      • そのため、ここだけは自分の選ばなかった方が正解かと思い、反対の選択肢も選んでみたがそちらも嫌な展開で心が折れたという人もいる。
    • ……と思いきや3人の個別エンド後には、第三の選択肢が追加されそちらが救済となっている。実質的な正解が用意されているためそういう意味でも異色な話である。
+ 久賀 百合
  • 歪んだ久賀姉妹の関係を正そうとするシナリオ
    • ……なのだが、どちらのルートでも失うものが大きすぎて、「どちらを選べばマシか」という第六話に近い選択肢。さらに第六話と違いこちらは救済がない。
    • どちらもインパクト自体はあるエンドだが、妹の描写が薄いため唐突感も強い。
+ 若松 みなも
  • 芸能人との恋愛
    • この題材で大抵の人が思い浮かぶであろう展開であり、先読みしやすく意外性が薄い。
    • 音楽か恋を選ぶ第二話と近いため、人によっては既視感を覚える。
+ 奈木崎 奈留子
  • 詳細は省くが、両想いの幼馴染から恋人に発展するか友人を維持するかの二択を迫られる。
    • 第五話までのようにどちらかしか選べない切なさは実に本作らしいが、設定に振り回されているとも言われる。
+ アイネ
  • 最後に解禁されるルート
    • これまでは個人の恋愛感情を扱っていたのに対して、地球の救済と規模が急に大きくなるため、困惑されやすい。
    • 伏線自体はあり、前述のように派手な演出は評価されている。

問題点

  • 感情移入しにくい個別ルート
    • 第六話まではサブキャラの恋愛を見守るため、メインキャラ同士の絡みが少ない。
    • そのため、百合とみなもの二人は急に個別ルートに入ったという印象になりやすく、感情移入しにくい。
      • 幼馴染の奈留子は主人公と距離感が近く、この批判は見当たらない。
    • 「欠片を返す」「欠片を返さない」だけで分岐するので個別ルートの入り方が分かりにくいのも難点。
  • アイキャッチの演出
    • 日付が表示されて白い羽が落ちてくるという演出だが、設定でカット不可能。
    • 軽い会話だけして日付が変わるような場面でも数秒待たされるため不評である。

総評

恋を取るか他の大切な物を取るかの二択を迫られるため、一筋縄ではいかない恋愛ゲーである。
どの話もどちらが正解ということはなく、読み手の倫理観や感情が揺さぶられるストーリーに仕上がっているため、ビターエンドを好む人にうってつけ。

これからプレイされる方は是非とも1周目は自分の意思で選択肢を決めて欲しい。


余談

  • 体験版が配信されている。
  • 2022年10月2日まで定額クラウドゲームプラットフォーム「OOParts」対応タイトルで配信されていた。(参考リンク
  • 2019年12月19日にSteamで『Bokuten - Why I Became an Angel』のタイトルで配信された。
    • 日本語サポート対象外なので注意。
  • 『OVERDRIVE 10th Anniversary Complete Box』に本作が収録されている。
最終更新:2025年02月17日 12:14