本記事は『神機世界エヴォリューション』と、その続編『神機世界エヴォリューション2 遠い約束』を解説します。判定はいずれも「なし」です。
神機世界エヴォリューション
【しんきせかいえヴぉりゅーしょん】
| ジャンル | RPG |  
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| 対応機種 | ドリームキャスト | 
| メディア | GD-ROM | 
| 発売元 | エンターテインメントソフトウェアパブリッシング | 
| 開発元 | スティング | 
| 発売日 | 1999年1月21日 | 
| 定価 | 6,800円(税別) | 
| プレイ人数 | 1人 | 
| 判定 | なし | 
 
概要
ドリームキャスト初期に発売された『トレジャーハンターG』の流れを汲むスチームパンク風の世界観をモチーフとしたRPGソフト。
キャラクターデザインはウエクサユミコが担当。
プロローグ
先史の超文明が滅んで何万年も過ぎた後の世界。
後発の人類の文明が、潜水艦や航空機などを作ることができるまでに進化した西方歴930年代も終わり頃。
先史文明の遺跡から発掘された道具―サイフレーム―を持つ者は「冒険家」、あるいは「サイフレーム使い」と呼ばれ、
先史文明の調査機関「ソシエテ」の依頼を受けながら遺跡の発掘を生業としていた。
代々著名な冒険家を排出し、名門を誇っていたランチャー家。
しかし、かつての名声は消え、今は没落してゆく一方だった。
主人公のマグはそんなランチャー家の一人息子で、両親のような一流の冒険家になることを夢見ていた。
両親が冒険に出たまま行方不明となって一ヵ月たったある日、一人の少女が父からの手紙を持ってマグの元を訪れた。
手紙には、「私が戻るまで、この子、リニアを守ってやってくれ。頼んだぞ、マグ。」とだけ書かれていた。
こうして執事グレの見守る中、マグとリニアは遺跡を探検する毎日を送っていたのだが、第8帝国軍が現れたその日から、マグの本当の冒険が始まった。
主要人物
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マグ・ランチャー
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本作の主人公でサイフレーム使い。冒険家の名門であるランチャー家の一人息子で、著名な冒険家である両親にあこがれて自身も冒険家にあこがれている。16歳。
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短気で挑発に乗りやすいが、快活でどんな困難にもめげない頑張り屋。
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使用するサイフレームは状況に応じて巨大な手が飛び出す「エアラコメット」。攻撃・補助・回復と汎用性に富む。
 
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リニア・キャノン
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本作のヒロインでランチャー家に居候している少女。3年前にマグの父親のアスロックからの手紙を携えてランチャー家を訪れ、それ以来居候としてランチャー家で暮らしている。年齢不詳(17歳前後?)。
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表情変化に乏しく無口ておとなしい消極的な性格。枯れた花をよみがえらせることができるなどの不思議な力を持つ。自分が他の人たちと何かが違うことを気にしている。
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サイフレーム使いではないが、多彩な回復・支援能力を用いてマグの冒険を支援する。武器はフライパン。
 
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グレ・ネイド
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ランチャー家につかえる老執事。両親が行方不明になっているマグにとっては親代わりともいえる存在。58歳。
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容姿とは裏腹に戦闘能力も高く、危機管理能力も非常に高いが、一度始まると長くなってしまう説教が玉に瑕。
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サイフレーム使いではないが、サイフレームのカスタムや料理を使った支援などを得意とする。武器は猟銃で、飛び道具属性ゆえに威力が距離に影響しない。
 
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チェイン・ガン
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ランチャー家のライバルであるガン家の一人娘。ガン家には男子が生まれなかったために幼少の頃より冒険家としての英才教育を施されてきた。15歳。
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気性が荒くわがままな性格。マグのライバルを自称しているが、本人はマグに好意があり、それゆえいつもマグと一緒に行動しているリニアに嫉妬している側面も。
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使用するサイフレームは飛行可能で巨大な斧のような刀身を持つ「フラミンゴ」。攻撃に特化しており一撃必殺や高速飛行を利用した戦法を得意とする。
 
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ペッパー・ボックス
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第3帝国からやってきた女流冒険家。24歳。
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明朗快活な姉御肌の性格。酒豪。
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使用するサイフレームは大砲型の「モラーヌ・ソルニエ」。射撃系に特化しており、多数の敵の対処や遠距離攻撃に特化している。飛び道具属性ゆえに威力が距離に影響しない。
 
システム
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基本的にローグライクのランダム生成ダンジョンを探検、最下層にいるボスを撃破し、次のダンジョンに向かうという流れ。
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ダンジョン内では踏破した部分はマップも自動作成され、自分の周囲の状況を確認可能。
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ダンジョンを途中離脱した場合は再挑戦時には踏破したフロアから再開することも可能。
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シンボルエンカウント方式。敵の後ろから触れることでこちらの先制攻撃とすることもできるが、逆に敵に後ろから触れられるとこちらが奇襲攻撃を受けることになる。
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戦闘はパーティの前後の位置取りが重要。前後で攻撃力・防御力・素早さが変動。
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FPを消費することで必殺技を使用可能。FPはアイテムで回復のほか必殺技を使わずに戦闘を行った場合に少しずつ回復。
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敵を倒すと得られるTPを消費することで新たな技を習得可能。
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行動をとった後は必ず待ち時間が発生、同じ行動であっても前列にいるほど待ち時間が短くなる。
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待ち時間は「防御」・「アイテム使用」・「通常攻撃」・「必殺技」の順に長くなっていく。基本的に必殺技は強力な技ほど待ち時間が長くなるが、一部の技は待ち時間の極端に短い技も存在する。
 
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ローグライクRPGとしては珍しく、ダンジョンをクリア・離脱してもレベルはそのまま。
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ダンジョンで出現する敵のレベルはダンジョン突入時のマグのレベルに依存している。
 
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サイフレーム使いには武器であるサイフレームにダンジョン内で見つけたサイフレームに応じた強化パーツを装備することで様々な技を使うことが可能。
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強化パーツはスロット数が装備できるパーツの最大数となっており、強化アイテムで最大5つまで増やすことが可能。
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パーツ自体もレベルを上げることで技の威力と燃費を向上させることが可能。
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強化パーツには能力値のみを上昇させるパーツも存在。
 
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ランチャー家はソシエテに多額の借金を抱えており、これを返済していくのも目的の一つとなる。
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ダンジョンをクリアした際には報酬が得られるが、ソシエテに借金が残っている場合は一部を天引きされるほか、ランチャー家以外のメンバーをパーティに加入させた場合は報酬から取り分として渡すことになる。
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ダンジョンで全滅した場合は救出費用としてさらに借金が追加される。
 
 
評価点
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王道で親しみやすいストーリーと世界観
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旧時代の遺跡を巡っての冒険活劇ということで王道展開で親しみやすく、各登場人物のキャラ立ちもしっかりしているのでとっつきやすい。
 
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キャラクターの造形の完成度の高さ
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プラットフォームが本作の2ヶ月前に発売されたばかりの次世代機ドリームキャストであることも活かして3Dモデルがハイクオリティ。同時期のソフトと比較しても造形の完成度の高さは突出していた。
 イラストと3Dモデルとの差がほとんど感じられないレベルにまで上がっており、キャラ立ちもしっかりしているので物語に入りやすい。
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特にメインヒロインのリニアの造形の高さは評価が高く、キャラ設定や神秘性も相まってかなりの人気。
 
 
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戦闘面は比較的とっつきやすく、難易度も低め。
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初期RPGとしてはオーソドックスでとっつきやすく、ローグ系としてはブロック当たりの移動範囲が広いことも相まってトラップにはかかりにくく遊びやすい部類。
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戦闘システム自体もとっつきやすくルールの把握も容易なのでRPGの入門としては十分。
 
問題点
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ボリュームの薄さ
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巡回できるダンジョンは5つのみでダンジョン内はボスとの対決以外の道中のイベントはなく、あとはシナリオ最終盤での固定ダンジョンのみであるため、当時としても若干物足りない。
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ゲームバランス的にも道中の雑魚は力押しできる局面も多いのもこの傾向に拍車をかけている。
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各所のボスのみはそれなりに強めではあるが、強さはダンジョン突入時のマグのレベルに依存するためこちらも道中のレベル上げである程度緩和可能。
 
 
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ラスボスがかなりの強さ。
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本作のダンジョンの敵のレベルは前述の通りダンジョン突入時のマグのレベルに依存だが、ラスボスのみ戦闘突入時のマグのレベルに依存するため、単にレベルを上げるだけでは苦戦することが多い。
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おまけに状態異常技や高威力技も多く回復アイテムが十分にないと厳しい。
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耐久力による行動パターンの変化があるとはいえ、キャンプなしの連戦や形態変化がないのが救い。
 
 
    
    
        | + | 終盤ネタバレ | 
リニアがある秘密のために第8帝国軍に拉致され、エンディング後までパーティに復帰しなくなってしまう。当然ラスボス戦には参加できない。
ここまではマグとリニアが固定となっていたため、この最終局面においてのみ戦術を練り直す必要がある。
また前述の通りリニアは回復・支援に特化しているため、彼女の不在が高難易度化に直結している。
グレもサポートタイプだがリニアほどではなく、マグに回復系のサイフレームパーツを装備させてもリニアほどの回復力は得られない。
必然的にサイフレーム使いのチェインやペッパーが有用な技を覚えているかで難易度が大きく左右されるようになっている。
借金返済を気にしてグレばかりパーティに入れていた場合、彼女らの運用を把握できないままラスボス戦に挑むことも起こり得る。
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総評
ストーリーの展開は典型的な王道で癖も少ない本作はRPGラインナップの少なかったDC初期としては十分な評価。
キャラデザインもかなりとっつきやすく、気軽に楽しめることもあって間口の広さは十分。
反面、ボリュームはこの当時のRPGとしては若干物足りない面があるのが惜しまれる。
神機世界エヴォリューション2 遠い約束
【しんきせかいえヴぉりゅーしょんつー とおいやくそく】
| ジャンル | RPG |  
 | 
| 対応機種 | ドリームキャスト | 
| メディア | GD-ROM | 
| 発売元 | エンターテインメントソフトウェアパブリッシング | 
| 開発元 | スティング | 
| 発売日 | 1999年12月23日 | 
| 定価 | 6,800円(税別) | 
| プレイ人数 | 1人 | 
| 判定 | なし | 
 
概要
前作が好評を博したことで制作された続編。
本作では前作から半年後、マグ一行がソシエテ本部の依頼を受けて本部のあるミューゼヴィルの街にて遺跡の探索発掘調査を依頼されることから始まる。
システム
前作から変更が入った点は以下の通り。
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一部の回復アイテムは3つまで合成して1つにまとめたアイテムにすることが可能となった。
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また、一部の回復アイテムを合成して複合した効果を得られるアイテムにすることが可能となった。
 
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鑑定品についてもより高額で買い取ってくれるレア鑑定品という分類も追加。
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また、鑑定品を組み合わせることによってより高額なレア鑑定品にすることができるものもある。
 
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本作はストーリーで必ず入るダンジョンはすべて固定ダンジョンとなり、ランダム生成のダンジョンはディスペアの塔1つだけ。
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なお前作のクリアデータがある場合は二周目以降はランダム生成のダンジョンの構成が変わり、独自のアイテムを入手可能となる。
 
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移動の際に先頭に配置したキャラクターがサイフレーム使いの場合、そのキャラに応じたアクションが取れるようになった。
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また、戦闘時にもキャラ固有の特殊能力を発動することが可能。効果は高いが一度使用すると戦闘を一定数こなさないと再使用できない。
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この特殊能力も使用回数が一定値になるごとに最大3段階までランクアップさせることが可能。
 
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サイフレームパーツは強力なパーツに関しては複数のスロットを使うものも登場。基本的に高威力の技があるパーツほど占有するスロット数も多い。
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クリア時にはプレイ時間や戦闘回数などの集計からプレイヤーのランクが評価される。
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一部の要素は周回プレイ時にも引き継がれるため、周回を重ねるごとに高ランクを取りやすい構成となっている。
 
評価点
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前作に比べストーリー性が強化。前作では語られなかったリニアの背景も語られ、終盤の展開もよりドラマチックに。
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ボイスイベントもさらに追加され、各種イベントシーンは前作に比べよりドラマチックに。
 
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固定ダンジョンになったことにより、最低限入手できるサイフレームが実用性の高いものをそろえやすくなった。
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前作では固定で入手できるパーツは1つだけだったのでこの点でもありがたい。
 
賛否両論点
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自動生成ダンジョンは1つだけ。
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前作がローグライクRPGということもあってバリエーションある自動生成ダンジョンがあったものの、今回はディスペアの塔1つだけに削減されたためにどうしても物足りない。
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訪問が必須でもなくシナリオ上で手に入る装備やサイフレームパーツだけでもクリアは可能なので行く必然性も落ちているのもマイナス。
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とはいえ前述のようにここでアイテム探しをしなくても十分クリアできるバランスにしているのは評価できる。
 
 
問題点
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ボリュームの薄さ
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前作に比べボリュームは多少向上したものの、それでも短さは否めない。
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固定ダンジョンの道中も基本的に最深部にしかイベントがないものが大半なのもそれに拍車をかけている。
 
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終盤のパーティ編成の制限
    
    
        | + | 終盤ネタバレ | 
本作でもリニアが終盤、ある秘密のためにパーティから離脱し、エンディング後までパーティに復帰しなくなってしまう。当然ラスボス戦には参加できない。
こちらに関しては前作同様ではあるのだが、本作では前作と異なり周回時にレベル・スキルがリセットされるため、クリア後にそのままのレベルで復帰しないままとなる。
また前述の通りリニアは回復・支援に特化しているため、前作同様彼女の不在が高難易度化に直結している。
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周回プレイ時に入手した装備・サイフレームパーツが引き継がれない
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固定ダンジョンだけで最低限攻略に必要な装備やパーツが入手できるとはいえ、それ以外でのレア装備の入手はディスペアの塔でのランダムドロップに頼る必要があるため、再入手が非常に面倒。
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前作は周回状態でもパーツは残る状態だったためじっくりスキルの育成やパーツの収集もできただけにつらいところ。
 
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システム的にスキルやブースターパーツの兼ね合いでこの方針にしたのかもしれないが、再入手の手間を考えるとブースター系以外のサイフレームパーツの引継ぎだけでも残してほしかったところ。
 
総評
前作に比べストーリー性を強化し展開はドラマチックになったものの、ボリュームや難易度に関してはまだ食い足りない面が残る。
とはいえ手堅く遊べることには変わりないので、前作を気に入ったプレイヤーであれば引き続き安心して楽しめる。
その後の展開
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翌年の2000年2月10日にはネオジオポケットカラーにて1のアレンジ移植版『神機世界エヴォリューション はてしないダンジョン』が発売された。
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更にその後の2002年7月26日にゲームキューブにて1と2をカップリングした『神機世界エヴォルシア』が発売されたが、同作以降はシリーズ作品は発売されていない。
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1のシナリオは2のシナリオの序章的な扱いとなっているためか攻略対象のダンジョンが減少しており、1のメインシナリオの進行も非常に早く、入手アイテムや技の性能が2準拠となっている。
 
余談
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本作の主要登場人物およびサイフレームの名前は実在・架空を問わず兵器・戦闘機・艦船などの名前からとられている。
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本作はDC初期のRPG作品ということもあり、ドリームキャストマガジンでは本作の漫画がウエクサユミコ氏によって長きにわたり連載されていた。
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ギャグマンガということもあってキャラ崩壊も結構激しかったものの読者からはかなり好評だった模様。
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連載終了後もウエクサユミコ氏はそのまま引き続き同誌で『ぐるぐるクリーチャー』の連載を行っていた。
 
最終更新:2025年05月25日 04:33