あしたのジョー
【あしたのじょー】
ジャンル
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アクション
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対応機種
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スーパーファミコン
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メディア
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8MbitROMカートリッジ
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発売元
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ケイ・アミューズメントリース
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開発元
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WAVE
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発売日
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1992年11月27日
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定価
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8,900円
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プレイ人数
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1~2人
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判定
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クソゲー
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ポイント
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全体的に簡素かつ雑 試合の再現度だけは中々のもの エンディングは2種類
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少年マガジンシリーズリンク
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概要
「あしたのジョー」は1970年台に大ブームを巻き起こし、TVアニメ化も2回されたボクシング漫画である。
1990年に同名タイトルのゲームがタイトーから、それから翌年の1991年にMVSで『あしたのジョー伝説』がSNKからと
2度もACでゲーム化
されており(開発元も同じWAVE)、FCでは不可能だったゲーム化がSFCで実現したとの事。
本作にはACにもなかった魅力的な要素もあるが、全体的に作り込みが足りずにノックアウト判定でクソゲーに沈んだ……
テンカウントによるKOがなく相手の体力を削り切って勝つという前2作品でいう後者のようなシステムを取っているため、すべてリングファイトによるボクシングの試合を行っているがボクシングゲーム(スポーツゲーム)ではなく対戦格闘アクションゲームに近い。
特徴
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ストーリーモードでは主人公・矢吹丈を操り、原作で戦った代表的な選手達と死闘を繰り広げる。
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また、2Pは対戦モードで色々なキャラで戦う事が出来る。
対戦相手
※本作の画面上ではローマ字で表記されているので、ここでは正確な人物名を併記しておく。
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S.INAGAKI(稲垣正平)
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V.KANAGUSHI(ウルフ金串)
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T.RIKIISHI(力石 徹)
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T.OZAKI(タイガー尾崎)
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C.RIBERA(カーロス・リベラ)
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R.KIN(金 竜飛)
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HARIMAO(ハリマオ)
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H.MENDOZA(ホセ・メンドーサ)
ルール
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相手から3回ダウンを取れば勝ち。
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HPゲージは青、黄、赤の3本用意されており、無くなるごとにダウン。HPが尽きたら3回目のダウンを取られる。つまりボクシングのルールで言うところの3ダウンのKOである。
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操作はパンチボタンと十字ボタンの併用でジャブ・ストレート・アッパー・ボディーブローの4種に打ち分けられる。ガードボタン1つでガード、ガード+左キーでパンチをかわすスウェー、そしてガード+下キーでジョーおなじみの戦法「両手ぶらり」が使える。
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そして相手のストレートに合わせてジャブを繰り出す事で伝家の宝刀「クロスカウンター」が発動、相手に大ダメージを与えられる。特定の相手はクロスカウンターに対するカウンター「ダブルクロスカウンター」を使ってくるが、それにストレートを合わせると最強の必殺技「トリプルクロスカウンター」が発動する。
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OPTION項目では難易度選択、ボタン操作の選択、MUSIC再生も行える。
評価点
原作要素
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基本的に「試合の」原作再現はかなり良好な部類。
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「ジョー」の代名詞であるクロスカウンターが決まると大迫力かつ爽快。
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2試合目にして早速「ダブルクロス」を使ってくるウルフ金串戦、力石とのトラウマから顔にストレートを打つとダメージが殆ど与えられず、逆にジョーが吐いて大きな隙が出来てしまうタイガー尾崎戦などはゲームとしては面倒だがかなり細かい。
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ジョーがリング際に追い詰められると「舞々(チョムチョム)」を使ってくる金竜飛、リングを飛び回り回転パンチをしてくるハリマオ、強烈なコークスクリューパンチを打ってくるラスボス・ホセ等原作の必殺技も取り揃えている。
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見事勝利した際も、ウルフはトリプルクロスを決めて勝ち、カーロスはお互い反則でただの喧嘩に発展しだす、ハリマオの回転パンチを殴りおろしパンチで倒すなど芸が細かい。
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特に最大のライバル・力石との戦いは力が入っている。
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力石のゲージを最終段階まで削ると、力石が「両手ぶらり」をしだす。そのまま「ゲーム上勝利」すると、原作通りダブルクロスを狙ったジョーを見切り、強烈なアッパーでジョーを沈める力石で試合が終わる。
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そして「まいったぜりきいし…」とSFCの粗いながらもボイス付きで握手しようとするジョーの前で倒れる力石。ここら辺の大事な所はきちんと再現している。
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キャラの選出も8体と少なめながら概ね妥当で、この手のゲームにありがちな「なんでこのキャラがいてこのキャラが居ないのか?」といったのは殆ど無い。強いて言うなら、1面の相手でプロテストの相手だった稲垣がややマイナーな位か。それでも喧嘩屋ジョーでなくボクサー・矢吹丈の最初の相手としてはまあ妥当である。
グラフィック
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数枚の一枚絵
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タイトルでは4種類の画像と、真エンドにも一枚絵が用意。
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対戦相手
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高品質で大サイズの顔グラは高品質であり試合前には両者とも回転してSFCの機能を活用した演出になっている。
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BGMも8名それぞれ異なる曲が用意されている。例えばハリマオは野生が表現されている。
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リングの構成
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リングの床の絵柄はラスタスクロールして 両脇のロープは立体感があり、奥には多くの観客たちがいる。これにより奥行き感と立体感で臨場感を感じ取れる。
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音声も用意されており、レフェリーのファイト、ダウンを取った際は歓声などが盛り上がる。
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このようにACと比べて見劣りしないどころか、むしろ上回っている要素も数多い。
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ゲームとしては成立している
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8人のボクサーを倒すとエンディングでスタッフロールが流れてくる。フリーズなどの大きなバグや不具合も無い。
賛否両論点
難易度は高い
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最初の相手・稲垣はまだ攻撃も控えめで倒しやすいが、上記の通り2戦目のウルフ戦からダブルクロスを使ってくる。しかしこれも慣れれば倒しやすい方。
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しかし3戦目は宿命の力石戦という事もあってか、3戦目にしては異様に難易度が高い。原作でジョーを倒したアッパーを最初からこれでもかというほど乱発してきて、まともにヒットするとゲージの半分程を軽く持っていかれる。しかもガード不能。
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カーロス戦以降は純粋に相手が高火力で隙がなく、特定の条件下で強烈な必殺技を放ってくる。必殺技を喰らえばほぼ一撃でリングに沈む。
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ラスボス・ホセに至っては一撃一撃が殆ど必殺技の様なものである。しかも真エンドを迎えるには下記の通り時間切れまで耐えなければならない。
エンディングは2つ用意されている
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普通に倒せばBGMも変わらずにそのまま通常エンディングに移行。
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全くイベントはなく、顔グラとともにスタッフロールが流れるタイプで、最後に英文で別なエンディングにも挑戦するように言われるがノーヒント。
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真エンドはホセ・メンドーサを倒すのではなく3分経過が条件。
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しかも本作では上記の通り3分経過するとゲームオーバー扱いなので、あえて狙わなければ非常に気付きにくい。実は「ホセが判定勝ちする」原作を知っていれば気付くことができるかもしれないが…
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ホセは原作通り強烈な攻撃を繰り出してくるので、3分耐える方が難しい。
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真エンド
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いわゆる原作通りのジョーが「真っ白な灰に燃え尽きる」エンド。ホセ・メンドーサが判定勝ちするものの髪が真っ白になっており、有名な燃え尽きて座り込むジョーの一枚絵で締められる。
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このEDのみ、一枚絵が用意されていたり、エンディング曲が用意されている。
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丹下段平がまともに出て来るのはここのみで音声で「惜しかったな ジョー…」と言ってくれる。
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ジョーが試合後に自身のグローブを白木葉子に渡すシーンもあるが、台詞だけの登場。
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問題点
原作要素の扱い
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ストーリーは説明不足
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上記の通り試合の再現は高いが、ゲーム内容としてはひたすら試合を繰り返すだけで、試合間の相手キャラクター・ストーリー解説等は完全に放棄している。そこら辺の人間ドラマもあしたのジョーの魅力なのだが。
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試合の再現も原作を完全に読了していればニヤリと出来るが、知らない人には上記のタイガー尾崎戦等、難易度レベルで不親切な部分もある。
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しかも、リザルト画面の裏で行われており更に画面が暗くなる仕様なので余計に分かり辛くなっている。
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総じて、「あしたのジョーを読んでからプレイしろ」とでも言いたげな内容。漫画原作ゲームとしてはそんなに間違った姿勢でもないが、やはりゲームとしては物足りない。
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前述の試合勝利後に行われる原作再現は確かにこだわりが見えるが、「知らない人からすればわけがわからない」は「原作ファン向け」ということで仕方ないとしても、カーロスに至っては再現の仕方が全然なっていない。
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それというのも、「ゲームとしてのジョーの勝ち」が確定すると何故か蹴りまでガンガン繰り出した喧嘩が始まって、そのまま殴る蹴るの喧嘩を繰り返して終わるという、わかってるようでまるでわかってないデモをする。
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確かに原作でのカーロス戦(アニメでは1期の最終回)で途中からゴングもレフェリーも無視しての喧嘩になっていたが互いに憎しみあっているのではなく殴り合いを二人だけで楽しんでいるという感じだった。観客も最初はその異常な行動にブーイングしていたが、やがてそんなボクシングという小さな世界を超えた男の奇妙な友情に感動し最大の拍手で褒め称えた。そんな大声援に包まれて二人とも力尽きて倒れるというまさに「精魂尽き果てるまで友情を全うした」という結果であり、あくまでもボクシングの延長として互いに殴り合いという基本的な概念は忘れておらず足を使ってのキックなどは一切していなかった。
単純に「ボクシングから喧嘩になった」をわかりやすく表現したかったのかも知れないが的外れも甚だしい形にしてしまっている。その上肝心な「二人が力尽きてともに倒れる描写」もなく終わる始末。
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更に原作では常に機械的なボクシングをしていた金竜飛まで何故か勝利後デモで何故かキックをする。そして、この蛇足なデモのためだけに蹴りのモーションを入れるという更にムダな手間をかけている。
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登場人物が少なすぎる。
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上記の通りひたすら試合の内容な為ボクサー以外は殆ど登場せず、パッケージに載っていたドヤ街のちびっ子達は出てこないし、マンモス西も全く出てこない。白木葉子も真エンドで台詞のみの登場しかない。
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この漫画でジョーに並ぶ名キャラ「丹下段平」ですらも真エンドでしか殆どまともに姿もセリフもない。せめてダウンした時に名セリフ「立つんだジョー!」位言わせても良かったのでは。
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文章
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少ない文章も質が良いとは言えず、フォントはファミコンレベルの平仮名のみである。
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対戦相手が出る際は、名前も全てアルファベット表記で分かり辛い。そして、Vが丸みを帯びてしまっており、UとVの見わけが付きづらい。
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名前の誤字。タイトーのアーケード版でも同じ間違いをしているが、こちらはさらにウルフ(Wolf)をVに間違えている。
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他のボクサーでは会話も一切なく説明不足になっている。
ゲーム性
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ボリュームが少ない。
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ストーリーもなく8キャラとの8試合のみである為、純粋にボリュームは少ない。
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勝ち方が3ダウンによるKOしかない。
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基本的に制限時間3分までに相手のゲージ3つを削り切る事でしかステージクリア出来ない。テンカウントによるKOは無く、時間切れになると強制的に判定負けする。
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因みに原作では3ダウンで決着した試合は1つもないので原作らしさを損ねている。
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しかしホセ戦でのみ時間切れで真エンドを迎えられるというトラップがある。
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基本的にこちら側がやれる事が少なく、原作再現要素と「クロスカウンター」を除くと至って平凡以下なボクシングゲームとなっている。KOや判定狙いもないので、ボクシングと言えるかも怪しい。
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そのクロスカウンターもゲームシステム上、クロスとトリプルクロスは出来るが、ダブルクロスは使えない。
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2P対戦
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選択画面では顔グラが並んでいるのではなく上下キーで別なキャラに変わるというもので不便。
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ステージも使い回し
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1人目~8人目まで全て同じリング。1面の(原作では)稲垣とのプロテスト戦からバンタム級世界タイトルマッチであるホセ戦まで全て同じリング・同じ背景である。システム上は困る事は無いが、手抜き感は強い。
総評
真エンドでジョーはビシッと燃え尽きているのだが、本作が原作要素・ゲーム内容ともに不完全燃焼なのは火を見るよりも明らかである。
演出は光る点もあり、しっかり作り込んでさえいれば良質なキャラゲーになりえたかもしれないのは勿体ないところである。
余談
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ちなみに、同日には『餓狼伝説 宿命の闘い(SFC)』も発売されており、格闘クソゲーのダブルパンチとなってしまった。
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ケイ・アミューズメントリースは、本作以降は、餓狼の関連作品である『龍虎の拳(SFC)』でSFC最終作として有終の美を飾る、それなのに後の97年には倒産を迎えてしまう。発売元会社に明日が無かったのは本当に残念なところである。
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『あしたのジョー伝説』はAES(家庭用NEOGEO)版もAC版稼働開始から1ヶ月後に発売された。但し、現在はプレミアにより高騰化しているが…
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偶然と思われるが、本作にとっては好都合なことに本作発売の少し前からTBSの深夜枠でアニメ『あしたのジョー』(一期)の再放送が始まった。
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週1回のみの放送ながら3~4話ずつ放送されたため展開は速かった。同枠は1993年6月までかけて一期目分が終わるとそのままのペースで二期目分まで全話放送した。
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画面構成やキャラクターの描画はタイトーの『ファイナルブロー』に酷似している。
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単なる偶然か故意によるものかは断定しようもないが、過去に同じWAVEが開発を手がけたアーケード版2作品でも任天堂の『Punch-Out!!』とカプコンの『ファイナルファイト』とのゲームコンセプトの類似性が色濃く表れていたので、黒に近いのではないかと疑わざるを得ない。
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2000年あたりには、コナミからGBAやPS2で色々発売されているので、そちらをあたると良いだろう。
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尚、ACでは大型筐体の『ボクシングマニア あしたのジョー』が2001年に稼働を開始したが、現在では筐体ですら現存しているかわからないという状況である。
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2001年9月には奥村遊機(2015年に倒産)からパチンコ化もされた。
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それ以降はしばらく途絶えていたが2010年に京楽産業からパチンコ、サミーからパチスロ化され、それ以後は主にサミー系で時折パチンコやパチスロ化されている。
最終更新:2024年04月13日 14:05