スターコントロールII

【すたーこんとろーるつー】

ジャンル シミュレーション・アドベンチャー他
対応機種 3DO interactive multiplayer
発売元 バイス
開発元 クリスタル・ダイナミックス
(原作:Toys For Bob)
発売日 1995年3月24日
定価 9,680円
プレイ人数 1人
(対戦モードは1~2人)
レーティング 3DO用審査:E 一般向
備考 MS-DOS用ソフト(日本未発売)の移植
DOS版はSteamで『I』とカップリング配信中
PC向けにオープンソース化されたリメイク版を無料入手可能
判定 良作
ポイント 英語圏で90年代初期の最高傑作に度々挙がる伝説のゲーム
初代『ゼルダ』ライクな先進的オープンワールド
終末の宇宙文明を舞台に、たった一隻の船から始まる逆転劇
当時としては破格の、広大かつ濃密な世界観
綿密な情報収集が求められるシビアな難易度


概要

1992年に北米で発売された宇宙探索アドベンチャー。ないしはシミュレーション。
初出はDOS用ソフトだったが、1994年には3DOに移植され、日本でも翌年にローカライズ販売された。
副題は「ア・クアンマスターを打倒せよ!(The Ur-Quan Master)」。

日本での知名度は低いが、英語圏においては「史上最高のPCゲーム」の話題でしばしば名前が挙がる伝説の作品となっている。
同様に、唯一CS移植された3DO版は同ハード前期の数少ないキラータイトルとなり、英語圏で「最高の3DOソフトは何か」という話題を扱ったウェブサイト・レビュー動画においては必ずと言っていいほど今作が上位(多くは最上位)に挙げられている。
後年の様々なオープンワールドに与えた影響は大きく、90年代における欧米のビデオゲーム文化を知る上で外せないタイトルの一つでもある。

2002年にオープンソース化しているため、2025年現在もソフトをネット上からダウンロードすることにより、無料かつ合法的にプレイできる。
このフリーソフト『The Ur-Quan Master』(以下『UQM』)は本ウィキで扱うソフトの対象外ではあるが、一番手に取りやすいバージョンには間違いないので、参考記述として一部言及する(詳しい変更内容は記事末尾に掲載)。
ちなみに『UQM』は日本人の有志による翻訳パッチが存在し、これから日本で遊ぶ場合には一般にこちらの訳を目にすることが想定されるので、訳語が公式と異なる場合はそちらも併記する。
(以下、〈〉で囲まれている単語が有志翻訳版)

本記事は日本で唯一商用販売された3DO版をベースに解説する。

1作目との関係

本記事で扱うのはナンバリングタイトルの2作目だが、単体でも問題なくプレイ可能であり、シリーズ作品の代表格としても1作目を差し置いて語られる機会が多い*1(ビデオゲームではよくあること)。
1作目と『II』は戦闘システムが共通していることを除き、全くの別ゲーとなっている。
本項は1作目を参考程度に軽く解説する。

1作目にあたる『Star Control』(日本未発売)はDOSとGenesis(海外版メガドライブ)で展開され、現在ではSteamにて『II』とともにカップリング販売されている(日本語未対応)。
ジャンルはシューティングゲームで、「トップビューの画面で宇宙船を操縦し、自チームの艦隊で敵チームの艦隊を落とす」というものであった。

背景ストーリーは説明書で語られているが、ゲーム内の描写はほとんどない*2
代わりに「戦略SLGの要領で、戦争の特定の場面を再現したシチュエーションを一つ選んで戦う」というのがメインコンテンツとなっていた(日本の有名なゲームで言うと、『パワプロ』のシナリオモードや『スマブラ』のイベント戦のようなイメージ)。
副題も『Famous Battles of the Ur-Quan Conflict, Volume IV(ア・クアンとの名高き闘争 第4集)』となっており、"壮大な宇宙戦争の一端を切り取った物語"というコンセプトが窺える(おそらく『スター・ウォーズ』1作目のオマージュ)。

この他、編成を自由に決めて対戦できるMeleeモードも実装されている。

以上が1作目の内容だが、そちらから引き継がれたのは戦闘システムとMeleeモードのみ。
『II』はこの内容から大幅なボリュームアップを遂げ、約5年にわたる地続きの宇宙戦争を模したストーリーモードが本編となっている(先のゲームで例えるなら「サクセスモード」や「亜空の使者」が追加されたようなレベルの大進化と言えるだろうか)。
背景設定でしか無かった世界観はプレイヤーが実際に体験できるようになり、当時のテキストアドベンチャーに劣らない膨大なテキストも用意された。

ちなみに『II』の時系列は1作目の後日談にあたり*3地球を含む同盟軍が敗走して滅亡寸前に追い込まれたところから物語が始まる。
敗北ルートから続きが描かれるゲームというのも中々珍しい。

あらすじ

西暦2134年、全宇宙を支配せんとする巨大勢力ア・クアンの手により、地球を含むあらゆる文明は終わりを迎えつつあった。
ア・クアン率いる戦闘部隊「ヒエラルキー」に対し、地球人を含む反乱軍「自由星同盟」は激しい戦いを繰り広げていたが、結果は惨敗であった。
自由星同盟のある種族は敵の手に落ち、ある種族は壊滅し、ある種族は逃走、ある種族はア・クアンに監禁される道を選び、もはや戦える種族は残っていなかった。

時を同じくして、地球からのある一団が宇宙の片隅にある星・ベラ〈ヴェラ〉に漂着し、取り残された。
地球との交信が途絶えて以降、残された者たちは惑星の地下に巨大な工場を発見した。 それは数万年前に栄えた謎の種族が遺した最後の技術だったのだ。

漂着から20余年、人々は限られた資源を全て工場につぎ込み、空洞だらけのスターシップを建造し、最低限の燃料を詰めこんで地球へと出発した。
運用を任されたのは、ベラで生まれ育ち、類稀なるメカニックの才能をもって技術のサルベージに貢献した青年・イサム〈ゼルニック〉。つまりあなたである。 スターシップはカムイ〈ヴィンジゲーター〉の名を授かり、地球へと飛び立った。

地球に辿り着くと、そこは変わり果てた姿となっていた。ア・クアンの手によりあらゆる遺物を焼き払われ、人類が築き上げた全ての歴史が失われていた。かつて青かったその星は真っ赤なシールドで覆われ、人類はその内側へみじめに監禁されていたのだ。
自由星同盟が生き残る道はただひとつ。空っぽのスターシップだけを頼りに、再び仲間と資源を集め、ア・クアン打倒の鍵を見つけ出すしかない。

仲間も資源も失われた地球、残されたのは空洞だらけのスターシップのみ。
だが宇宙を救うには十分だ。
この船の艦長はあなたなのだから……

  • ちなみに3DO版以外のバージョンでは、主人公・スターシップの名前を変更可能。
    • 日本語版は独自のデフォルトネームが使用されている。

特徴

  • ゲームジャンルについて
    • 今作のジャンル定義は諸説あるが、具体的に例えるなら「シミュレーションゲームの要素を強めた初代『ゼルダの伝説』式オープンワールドアドベンチャー」といった内容である。
    • ゲームを始めると、プレイヤーが操る宇宙船が太陽系の外周に放り込まれた状態で物語が始まる。このあとプレイヤーは宇宙を自由に旅し、ア・クアン打倒の鍵となるアイテムを揃え、最終イベントを消化すればゲームクリアとなる。
    • ここまでの説明だけだとADVに近いが、今作では「資源を集めて宇宙船を強化し、探索範囲を広げていく」といった要素があり、シミュレーションゲームにも近い。
    • 加えて、RPGでいうシンボルエンカウント制を採用しており、宇宙空間で敵に出会うと戦闘になる場合がある。
      • 接触相手が味方陣営や中立陣営だった場合や、対話を上手く行った場合には戦闘回避可能。
      • このとき行われる戦闘は、前作同様のトップビューによるシューティングとなる。
    • 以上のように、今作のベースはアドベンチャーではあるのだが、シミュレーションの要素にRPG・シューティングといった様々な要素も複合しており、独自性の強いゲームに仕上がっている。
  • ゲームの進行
    • プレイヤーはスターシップを操り、大宇宙の星々を探索する。最終的にア・クアンを倒すための条件を揃え、本拠地を破壊するのが最終目的となる。
    • ただし宇宙を巡るには燃料や人員が必要であり、初期状態ではまともなリソースが手元に無い。
      • そこで星々から資源を集め、スターシップを改良し、探索範囲や資源回収効率を少しずつ上げていく必要がある。RPGで言うところのレベル上げのようなものだろうか。
    • スターシップの改良は、本拠地の地球でしか行うことができない。
      • このため、今作の流れは「資源や情報を集めに遠征する」→「地球に帰還してスターシップを改良する」→「改良されたスターシップで更に遠く・または多くの星を探索する」→「また地球に戻ってさらに改良する」→……の繰り返しとなる。
      • なお燃料補給は地球に戻らなくても別の手段から代替可能なので、ゲームが進むと帰還すら必要なくなるケースも。
    • 画面右には現在の日付が表示されており、少しずつカウントが進む。一部のイベントは時間経過に伴って進むようになっている。
      • そして今作には時間制限が存在する。ある日時になると様々な種族が滅亡していき、最終的には地球も滅ぼされてゲームオーバーとなる。
      • よってプレイヤーは、その日までにア・クアン打倒の手筈を見つけ、打ち破らなければならない。
      • この具体的な日時はゲーム内のヒント(もしくは3DO版説明書巻末のヒント)から確認可能(『UQM』は確認不可、評価点で後述)。イベントの進行によっては発生が延長する場合もある。
  • 資源集め
    • 宇宙に散らばる星からは、様々な鉱石を回収できる。
    • 集めた鉱石を地球に持ち帰ると、様々なエネルギーをゲーム内通貨のように画一化した単位「RU(リソースユニット)」に変換してもらえ、この量に応じて改良や人員投入ができる。
      • 一度装備した部品・人員等は等価なRUに戻すことが可能。あれこれ試せるので融通が利く。
    • RUの取得は鉱石集めだけでなく、宇宙空間でエンカウントした宇宙船を撃破することでも入手可能。
      • この場合は地球に帰る必要はなく、直接その場でRUが得られる。
  • 移動
    • 星々を旅するにはもちろん移動が必要。今作の星間移動はプレイヤーが実際にマップ上でシップを動かして進めていく。
    • マップは「星系周辺」「ハイパースペース〈超空間〉」の2種類が存在する。
      • いずれもトップビューで、画面に映るスターシップをラジコンの要領で操作し、目的地に進んでいく。
    • このゲームには大量の星系が存在するが、その内部にいる間は星系周辺用のマップとなる。
      • ゲーム開始時は、太陽系内部を模したこのマップがスタート地点となる。
      • この画面では目的の星までスターシップを動かすことで、その星を探索できる。
      • マップは惑星周辺や恒星付近に近づくほどその周辺にズームされる。惑星付近にいる場合は近くの衛星も視認でき、降り立つことが可能である。
      • 無重力空間ゆえ、宇宙船は強い慣性が働くようになっている。スターシップの改良に伴って操作性は改善できるが、慣れが必要。
    • 星系周辺から外に出ると、星系の間を高速でワープできる「ハイパースペース〈超空間〉」画面へと移行する。
      • 慣性がかからないこと、シップが大きくズームされることを除き、操作はほとんど同じ。
      • この空間では通常よりも極めて速いスピードで時間が経過するので、星との間を移動していたら数ヶ月経ってしまう場合も。
    • 世界全体のマップ(スターマップ)はメニュー画面からいつでも開くことができる。
      • ここで好きな星系を選んで決定ボタンを押すと、その星系まで自動で移動してくれる「自動操縦」が開始する。
      • 選択時には要する燃料も表示してくれるので、これを参考に探索を進めていけば良い。
    • 宇宙空間は特定の種族の縄張りになっているエリアがあり、その周辺では該当する種族とエンカウントする場合がある。
      • いずれの場合も敵アイコンはシンボル表示されており、接触することでエンカウントが発生。
      • 味方や中立の艦隊であれば会話画面に移行し、敵艦隊であれば艦隊数が表示されたあと交渉に移るかすぐ戦闘するかを選べる。
      • 敵艦隊の場合はセーブも可能だが、3DO版では非推奨(問題点で後述)。
    • マップ画面の移動速度はスターシップの改造に応じて向上できるが、移動に要する燃料は変わらないので注意。
      • ただし速度が速いほど、敵機を振り切りやすくなる。
  • 資源の回収
    • 惑星や衛星の軌道に突入したあと、その星から資源の回収ができる。
    • 画面下にマップが表示されるので、燃料の消費して好きな場所に着陸船を下ろし、星に落ちている鉱物を回収することができる。
      • これもトップビュー・ラジコン操作で進行。
      • 着地位置は星の環境によりブレが生じる。
    • また星によっては生物がはびこっており、これも回収可能。
      • ボタンを押すことで正面に冷凍光線を打ち込み、一定のダメージを与えるとコールドスリープによってカプセルに閉じ込められる。このカプセルに触れることで、その生物を入手できる。集めた生物はRUにはならないが、後述する買い物でまた別のゲーム内通貨に変換できる。
    • 一度回収した資源は復活しない。
    • 着陸船が一度に持ち歩ける資源の量は制限があり、ストックが埋まったら一旦スターシップに帰還する必要がある。
      • 一度にストックがどれくらい埋まるのかどうかは、拾うまでわからない。所持制限を超過した分の回収物は破棄されてしまうので、制限のギリギリ手前で帰還するのがコツとなる。
    • 一部の星は環境が悪く、以下の現象がランダムに発生する。資源回収中に着陸船が接触するとダメージを受ける。
      • :星のどこかで長距離状に伸びる稲妻が一瞬だけ発生する。
      • 地震:星のどこかから同心円状に振動が広がり、これに接触してもダメージ。
      • 熱波:炎の線が突然発生し、地面を這うように星中を動き回る。
      • 星によってはこれらが激しすぎてまともに探索できない場合がある。それらはゲームを進めることで機体を増強し、防御性能を上げることで探索が可能。
    • この他、生物に衝突してもダメージを受ける。特に高速で船を追ってくる生物には注意が必要。
    • 着陸船は一定のダメージを受けると破壊され、二度と使えなくなる。
      • これは地球にて量産ができ、スターシップ内に10隻までストックすることも可能。
      • ただしこまめにセーブとロードを行っていれば、着陸船を複数生産する必要はない(壊れた直後にやり直せば問題ないため)。
    • 探索開始前には星のスキャンが行われ、星の気候や資源の配置を確認できる。
      • この時点で、着地に要する燃料が確認可能(重力の2倍の値を消費)。
      • それ以外にも天候・地震の危険度から雷や地震の頻度を確認でき、星の気温から熱波の発生頻度も予測できる。あまり危険そうな星であれば、降りるのを回避するのが吉である。
    • 到着した星が木星や土星のようなガス型惑星だった場合、着陸できない。
  • 体力(いわゆるHP)について
    • 上述の惑星探索や戦闘シーンでは共通した体力の概念が存在する。今作では乗組員の数が体力として扱われるのである。
    • 乗組員は地球から1人3RUで支給でき、戦闘に使う宇宙船や着陸船着陸後の人員として載せることができる。
      • 宇宙船の乗組員数は船の種類によってまちまち。
    • スターシップにはデフォルトで50人まで乗組員を乗せることができ、探索の際は最大12人を着陸船に乗せることになる。
    • 戦闘・探索それぞれの場合において、船がダメージを受けるたびに人が減っていく。着陸船や宇宙船の乗組員が0になったとき、その船は破壊される。
    • 航行中は、宇宙船とスターシップの間で乗組員の移動がいつでも可能。
      • よって宇宙船は単なる戦闘機としてでなく、乗組員を持ち歩くためのタンクとしても活用できる。
    • 人の数がそのまま体力の値に換算される都合、今作は命の価値があまりにも軽く、ただの数値としか扱われていない。ピクミン』も『レミングス』も比べ物にならない無常っぷりである。
      • もし「最も命の価値が軽いビデオゲームランキング」なるものを作ったら、今作は間違いなく上位にランクインするだろう……
      • 『ピクミン』でありがちな不殺プレイは困難を極めるのでおすすめしない。*4
    • 3RUというコストも相場としては極めて安く、多少乗組員を犠牲にしてでも資源の回収や戦闘に力を入れるのが最適解となる。
      • とはいえゲームの進行次第では、乗組員のぞんざいな扱いが判明してRUが増加してしまうので要注意。人事は大切。
  • ホームワールド
    • 一部の惑星は特定種族の本拠地となっており、作中では「ホームワールド」と総称されている。
      • ここでは種族のリーダーと対話ができるため、シナリオの進行においてしばしば重要な星となる。
    • 敵対する種族と相対した場合は強制的に戦闘が発生する。
      • この場合は敵機が無限に沸いてくるため、逃げる以外の対処法は存在しない。
  • 買い物
    • 舞台となる宇宙ではメルノームと呼ばれる種族が各地を巡航しており、様々な"情報"を買い取ることができる。
      • ゲーム攻略のヒントはもちろん、着陸船やスターシップを強化するための"技術情報"も購入できる。前者は悪天候などのダメージを無効化でき、後者は新たな装備を搭載できるようになるので、重要度は大きい。
      • この他、燃料も購入可能。
    • 購入にあたっては「クレジット」というゲーム内通貨が必要になるが、これは捉えた生物1体につき2点分と交換できる。
      • 生物がいる星は限られているので、メルノームとの交易をこなすためにはどんどん生き物を集めたほうが良い。
    • メルノームは特定の星に常駐している他、特定の条件を満たした場合は即座にかけつけてくれる。
      • 後者に気づいてしまうと、攻略がグッと楽になる。
    • なお情報を聞くだけ聞いて支払い前のデータをロードしてもペナルティは特にない。
      • プレイヤーにしか使えない手段を通じて商品を強奪される、何とも不憫な商人である……
  • 対話
    • 出会った異星人とは様々な会話ができる。ゲームクリアのためには、対話を通じて様々な情報を引き出さなければならない。
    • 会話中は選択肢が表示され、何を選ぶかによって進行が変化する。
      • 友好的に接するか、敵対するかはプレイヤー次第。
    • 会話の内容に応じ、デバイスと呼ばれる進行必須アイテムがもらえる場合もある。
  • 戦闘
    • 前作からほぼそのまま引き継がれている要素。トップビューの宇宙空間で宇宙船を360度動かす2Dシューティングとなっており、敵機に一定のダメージを与えれば撃墜できる。
    • 無重力空間が舞台となるため、移動時は無限に慣性が働き、氷の上を滑っているかのような難しい操作感が待ち受ける。上キー入力によって前進しない限り、衝突や攻撃の反動であらぬ方向に飛んでいく。
    • 攻撃にはエネルギーを消費する。
      • これはゲーム開始時に満タンとなっており、時間経過に応じて回復する。
      • 普通のシューティングゲームのように弾を好きなだけ撃てるわけではないので、敵に近づいた時にのみ慎重に撃たなければならない。
    • この戦闘は、1vs1の戦闘を繰り返すチーム戦として行われる。
      • プレイヤーは地球から前もって宇宙船を用意することができ、この中から一機ずつ選んで戦いに臨む。
      • その他、スターシップ自体も戦闘に参加させることができ、地球で整えた装備を使って戦闘に臨むことができる。
      • 敵機を全て撃墜すればプレイヤーの勝ちで、スターシップが撃墜されればゲームオーバーとなる。
    • 宇宙船の性能は、登場する種族によって個性豊かな性能を持つ。
      • 一定確率で自動復活したり、ホーミング弾を撃ったり、途中まで姿を消せるなど千差万別。
    • 戦闘中にBとRを同時押しする(PC版はescキーを押す)ことで、緊急脱出装置が発動する。作動から一定時間で戦闘から脱出し、宇宙船であれば機体を選び直して仕切り直し、スターシップであれば戦闘からの離脱ができる。
      • 要はRPGで言う「にげる」コマンドに近い。
      • 作動中は無防備となるので注意。
  • 本編とは別に、スーパーバトル〈スーパーメイレー〉と呼ばれる対戦モードも実装されている(前作から引き継がれた内容)。
    • ここでは様々な艦隊を編成して1対1で対戦ができる。CPU対戦と対人戦の両方が可能。
      • 本編での戦闘を練習する目的にも使用できる。
    • 各機体には性能に応じた点数がつけられており、格闘ゲームで言うレシオ制を取り入れた編成を行うことが可能。

評価点

今作が絶賛された最大の理由は、92年のゲームとして規格外な規模の世界観・自由度にある。

  • 「宇宙を探索してラスボス打倒の鍵を見出す」というのが本作の目的だが、その過程でどこを旅するかは基本的に自由。ゲーム開始時に地球に向かい、一通りのチュートリアルを済ませた後は、プレイヤーは本当に何をしても構わない。
    • ゲームの最終目的は、ア・クアン率いる敵軍を打ち滅ぼし、地球に平和を取り戻すこと。このゴールにさえ辿り着くならば、その過程で基本的に何をしても良い。
    • 一般的なJRPGのような一本道の攻略順序は決まっておらず、必要なアイテムを好きな順番で回収することができる。
      • レベルの概念は無いのでどこから回っても問題なく、様々な情報を推理して気になる場所から探索を始められる。
    • 相対する異星人とは仲間にも敵にもなれる。これもプレイヤーの自由。
      • ひたすら喧嘩を売ってRUを稼ぐもよし、慎重に話を進めて情報を引き出すもよし。
      • あまり対立してばかりいるのは一見デメリットにも見えるが、異星人の中には対立したほうが良い情報を教えてくれる者がいたり、むしろどんどん戦った方が有利になるケースも見られる。決して不利一辺倒になるわけではない。
      • このシステムは今で言うフリーシナリオに近いが、そのルーツにあたる『ロマンシング サ・ガ』は今作と同年。ジャンルとして成立する前に似たシステムを取り入れていた先進ぶりである。
      • ついでに、広大な世界の領地がプレイヤーの行動に応じて次々変化していくシステムは『ロマサガ2』をも先取りしている。
    • 詰み対策も整っており、攻略に有利な情報の大半は複数のルートから入手できる場合がほとんど。
      • フリーシナリオ制ゆえ取り返しの付かない要素は多いものの、フラグ管理による詰みは無く、大抵の状況において*5理論上は必ずゲームクリア可能。必要なアイテムが入手できなくなっても、ゲーム終盤のとあるイベントで強引に回収することができる(意図的に狙う場合はゲームを長時間放置しなければならないが……)。
  • その自由度が活きてくるのは、広大な世界観あってこそ。今作の冒険の舞台はとにかくだだっ広い。
    • その世界の広大さたるや、ビデオゲームが3D化して以降のよく知られるオープンワールドにも引けを取らない。目一杯の大きな銀河がプレイヤーの庭となる。
      • 登場する惑星の数は約3000にも及び、星系で言えば100以上。その一つ一つが探索の対象となる。
    • 以下、今作の世界観の広さを視覚的にわかりやすく解説する。
+ 詳細

画像は『UQM』のものを使用。

今作では、地球からスターシップを飛び立たせ、以下のような星を舞台に資源採集を行う。
画面上部が探索画面、画面下部が全体マップで、丸いアイコンが回収する資源となる。
(星によっては生物やその他の物体が発見できる場合あり)

この探索マップは、下記画面のように表示される惑星や衛星それぞれに対し、中身がひとつずつ用意されている。

上の図のような惑星系は各星系に1〜9つ用意されている。
下記画像は星系の全体像で、惑星に近づくことで上記のような拡大図が表示されるようになっている。
(惑星に近づいてみると、下記の画像からは視認できない衛星が周っている場合もある)

そんな星系は宇宙空間に多数。
下記画像はスターマップのうちプレイヤーのいる星系周辺を映したものだが、この小さく光る星一つ一つが先ほどの星系に相当し、プレイヤーはそれぞれに訪問できるようになっている。

このマップをズームアウトしていくと…

上記画像で光っているドット部分すべてが冒険の舞台である。

  • ゲームを始めてマップを開いてみれば、思わず声をあげたくなるような広大さが待ち受けている。
    • ただしこれらの星全てを探索するわけではなく、プレイヤーは断片的なヒントを頼りに手がかりのある星だけを見つけ出す必要がある。文字通り、藁の山から針を探す覚悟で挑まなければならない。
  • この広大なフィールドにおいて、プレイヤーが異星人との遭遇を果たすたび、その種族の勢力圏が地図にマッピングされていく。
    • 始めは全貌の見えない世界観だが、遊ぶにつれて彩りが増していき、達成感と高揚感を得られる。
  • 後述する複雑な仕様も相まって、そのボリュームは3DOソフトとしても最高峰。
    • ノーヒントで挑むなら、エンディングに辿り着くまでに40〜100時間は想定されるので、腰を据えて遊ぶことができる。
    • 長丁場ゆえ、エンディングにたどり着けた際の感動もひとしお。
  • 今作を語る上でもう一つ欠かせないのは、徹底的に練り込まれた世界観である。
    • このゲームの舞台は『スター・ウォーズ』や『スタートレック』を彷彿とさせる綿密な世界観が構築されている。
      • 後年の開発者インタビューによると、今作は多数の著名なSF作品からインスピレーションを受けたとのこと。
      • 方向性としては『D&D』『ウォーハンマー』といった、欧米の非電源ゲームに見られる徹底的な背景設定に近いだろうか。
    • ストーリー自体も、単純明快ながら燃える内容。
      • 「たった一機しか残されていない絶望的状況から、かつての仲間たちを見つけ出し、勝利を手にする」という熱い背景設定に始まり、ラスボスの倒し方もまた、このゲームへの愛着に比例した葛藤が待ち受ける。
      • 人命の軽さが見えるゲームシステムも、「人員を使い捨てなければ攻略できない戦争」というシビアな世界観を表現するのに一役買っている。
    • 作中の種族は攻略の範疇にとどまらないレベルで背景設定が作り込まれており、聴いているだけでも楽しい。
      • 宇宙の存亡をかけた物語なのに、出会う種族は地球人と同じ「人間臭さ」を持つものばかり。他種族との軋轢に葛藤するもの、自らの哲学を信じて敵に立ち向かうもの、自らが状況を利用して悪事にいそしむ者もいれば、卑屈さに喘ぐもの、好きなスポーツの話をして仲間に止められるものなどなど……「巨大勢力によって滅びかけた世界」というシリアスなイメージと裏腹に、登場する種族からはお茶目な一面が垣間見える。
      • 節々に見られる、欧米らしい小気味なジョークも印象的。
      • 次はどんな異星人に逢えるのだろう?という好奇心は、このゲームを進めるための大きな動機づけとして機能している。
    • 以下、今作の雰囲気を知ってもらうための解説を兼ねて、登場する印象的な種族の一部をここで紹介する。
      • ただし今作は未知の種族との遭遇も魅力の一端であり、ゲームを楽しむうえでは大きなネタバレになりかねないため、これから遊ぶ可能性のあるプレイヤーは無理に全部読まないことを推奨する。
+ 詳細
  • ゲームを始めて序盤に会える種族・スパティは、別種族(後述)のイタズラで意図せずラスボスとの同盟を結ばされたかわいそうな背景の持ち主。
    • 高めのボイスに加え、『寄生獣』のミギーを彷彿とさせる単眼の見た目は愛嬌があり、今作序盤の癒しと言っても良いキャラ。
    • そんな愛嬌に反し、酷い臆病さから卑屈な言動を繰り返してプレイヤーを振り回す一面もあり、ゲーム早々にして壮大なストーリーと対照的な人間臭さに戸惑うことになる。
      • そして彼らとのイベントを最後までこなすと、その印象が変わってくることに……
  • 特徴の項で触れたメルノームは「情報」に強い価値を見出す種族であり、売買するのは実体のない「情報」がメインとなる変わった商人である。
    • 商人らしくやりとりは礼儀正しく、低くて落ち着いた声で語りかけてくるのだが、堅苦しそうな設定に対して見た目は愛嬌があって何とも憎めない。洋ゲーらしいクリーチャー感はあるものの、星形の体に単眼という、ともすれば『星のカービィ』に出てきそうなデザインが特徴*6。見た目とのギャップが激しい。
      • 彼らもまた、ライバル業者のネガキャンをジョーク混じりに話すという、どこか憎めない一面がある。
  • そこでネガキャンされた商人・ドルーグ〈ドルージュ〉にはゲームを進めると出会えるが、ストーリーが進むにつれメルノームのネガキャン行為に納得せざるを得ない悪辣さが浮き彫りになる。
    • 場合によってはプレイヤーも彼らの悪事に加担できる。今作の自由度の高さが生きる場面である。
  • 先述のスパティを陥れた種族・ウンガはジョークに定評のあるイタズラ好きの種族ということで、銀河中で一目置かれている。
    • しかしそのイタズラというのは上述のように一種族を戦争に巻き込むことに始まり、邪教を信じている種族に神を騙る通信を送り大虐殺・紛争を引き起こすなど、ジョークと言えば何をしても良いと言わんばかりのお茶目さを持つ。
      • ある種族に対しては今作の戦争の原因になった危険生物を送り込もうと企んでいた。
      • 幸い、その生物にウンガが種族ごと洗脳されてしまったことで未遂に終わる。当該の生物もウンガを乗っ取って好き放題始めようとするのだが、ジョークのキレが悪くなっていることを理由に洗脳がバレる。
    • 紆余曲折してウンガを助け出すと、ジョークと称して主人公に「最大の敵」という名誉を与え、遭遇するたびに面白がって攻撃してくるようになる。ゲーム的にも性格的にも関わり合いになりたくないタイプの種族である……
  • 宇宙のジプシー・サイリーンは人間の女性に近い姿をしており、その隊長は今作のメインヒロインと言うべき立場。
    • ゲームを進めると母星を滅ぼした種族に復讐すべく立ち上がる。シリアスな背景の持ち主。
    • ところがそんな背景設定とは裏腹に、彼女と話す際は露出度の高い格好に突っ込みを入れられたり、セクハラじみた選択肢が選べたりする悪ふざけっぷり。同ハードの『ポリスノーツ』のようなノリである。
    • 特にゲームを進めると攻めた選択肢が待ち受けており、主人公のキャラ崩壊っぷりは必見。
      • 今作は今で言う全年齢レーティングが付けられているが、Steamのストアページでは彼女のせいで性的表現周りの注意書きが記されている。
  • 日本人をエスニックジョーク全開で擦りまくった、濃すぎるアライグマ・ショフィクスティ〈ショフィックスティ〉
    • おそらく元ネタはマーベルヒーローのロケット・ラクーン。2025年現在でこそそれなりに知られているアメコミキャラクターだが、映画『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』(2014)で銀幕デビューする以前は知名度が低く、後に『MVC3』へ参戦した際は世界のプレイヤーから「誰?」と言われたほどだった。スタッフの先見性おそるべし。
  • たまたま容姿をバカにしたのがバレたのをきっかけに、人類と絶縁状態を貫く種族・VUX
    • 作中に登場する司令官は唯一友好的な姿勢を見せるのだが、海外のファンをして「ア・クアン以上に地球に来てほしくないヤバい奴」と評される変態である。その抜け目のなさから末路までキャラが濃く、何だかんだで人気者。
  • 戦闘民族……と言えば聞こえはいいが実質おバカ枠の脳筋・スラダッシュ
    • リーダーが交代するたびに「第(数字)文明」と適当な名前を付けたり、「忘れ物したから取りに行かせてくれ」と言われて危うく種族の宝を奪われそうになったりと、現在まで生きているのがある意味すごいオツムの弱さ。
    • 作中では彼らのおマヌケっぷりを活かして宝を強奪することになるが、別種族のマイコンは似たような行動を取るにもかかわらずしっかり警備しているのに、こっちは警備を全部放置するという、これまた丁寧なキャラ描写がある。
  • いわゆる"現場猫案件"で全宇宙に殺戮マシンを繁殖させたガス型生命・シランドロ〈スライランドロ〉。
    • このマシンはメルノームが売却したものだが、彼らは契約時の免責事項を盾に責任を逃れている。
  • 短足が生えたキノコのようなかわいい見た目をしていながら、地球型の青い惑星を次から次へと溶岩まみれにする破壊爆弾をばら撒く害悪種族・マイコン。見た目とのギャップがすごい。
    • 関連イベントは攻略必須なのに取り返しがつかず、それでいて正規ルートがわかりづらいので、最終手段としてラスボスに絶滅させてもらったプレイヤーは少なくないと思われる。因果応報?
  • レイマンを小学生並みのセンスでデッサン崩壊させたような、凄まじい見た目の種族・プカンク。ゲーム画面からデッドスペースを徹底排除したルックスは必見。
    • しかもその性格を有体に言えばスピオタ。勝手な預言を受け取って自滅へと向かい始める。
    • そんな彼らの船は破壊されても一定確率で復活する脅威的な能力を持っており、性格の電波っぷりに反してプレイヤーからの人気は高い。
      • いちいちハレルヤ(讃美歌)が流れるのも強烈なインパクトを誇る。
  • 高いプライドを持ちながら、自軍の臆病ぶりとショフィクスティの恐るべき行動力に苦心し、対立しながらも主人公たち地球人を気にかけてくれるイエハット
  • 3人1組で現れ、他愛のない掛け合い漫才を披露するゾック・フォト・ピック
    • 彼らもメルノーム同様の一頭身。かわいい。
    • 1人が好きなスポーツを布教しようとして別の1人にウザがられたり、真ん中の奴だけ絶対に喋らないので主人公に突っ込まれたりと、彼らもまた癒し要員となってくれる愛嬌の持ち主である。
  • そしてタイトルにもなっているア・クアンさえも、ゲームを進めていくと単純な悪ではないことが判明する(説明書のヒントでネタバレしているが)。
    • 「全宇宙種族の奴隷化」を目標に動いていた彼らは地球人たちにとって絶対悪でしかないのだが、実はもっと危険な種族と戦っており、ア・クアンはそれを抑え込めていたことが発覚する。
      • その種族コー・アーは全種族の殲滅が目標で、しかもア・クアンよりも強大な勢力。早くクリアしないと彼らがア・クアンを打ち滅ぼし、作中の種族をひとつずつ順を追って根絶やしにしてしまう
      • 最終的に、その魔の手が地球に及ぶとゲームオーバー。今作最大の敵はア・クアンではなく、後から登場するコー・アーなのである。
    • そんな2つの種族だが、ある惑星に住む種族から話を聞くと、その動機も知ることができる。
      • 単なる快楽で暴力を振るっていたわけではなく、屈辱に満ちた歴史が明かされ、単なる善悪二元論では収まらない世界観を垣間見ることができる。
  • 3DO版は先に出ていたPC版に比べ、様々な要素が改良されている。
    • 惑星探索時、PC版では資源・生物・攻略関連施設を別途手動でスキャンする必要があったのだが、3DO版ではまとめて実施してくれるようになった。
      • スキャン時の演出をスキップし、結果だけ見ることも可能。
    • 惑星探索時のカメラの視野が大きくなり、プレイが快適になった。
    • ハード性能向上によりドットの拡大縮小が容易となったため、戦闘シーンでカメラのズームがスムーズに行われるようになった。
    • CD媒体になったことでボイスが追加された。
      • ありがたいことに、昨今のフルボイスゲームでもなかなかお目にかかれない早送り・巻き戻しを実装。聞き逃した際の再確認やロード後のスキップを快適に行える。
      • 日本語版は青二プロダクションの声優陣による吹き替えが行われ、すべてのボイスが日本語化されている豪華仕様。
      • 中でも、あの塩沢兼人氏が一人で6役も演じているのは語り草となっている。各種族を細かく演じ分けたうえでボイス加工も加わっているので、全部当てられたら相当なマニアだろう。
      • なお塩沢氏のインパクトに隠れがちだが、今作は複数役を演じたキャストが他にも数名おり、郷里大輔氏も5役演じていたりする。
    • 同じくCD媒体の採用により、ムービーが追加された。
      • オープニングやエンディングは3DCGによるプリレンダリングムービーが実装されている。
      • 注目すべきは、スーパーバトル〈スーパーメイレー〉に各機体の簡単な紹介ムービーが追加されたこと。本編では小さくデフォルメされていた宇宙船がCGでリファインされ、ドット絵からは想像もできないカッコ良さになっているので、一通り遊んだらふと立ち寄って見てみるのもおすすめ。
    • BGMはCD音源を活かして大きく強化。DOS特有の音質から大きくグレードアップしている。
      • 中でも、作中で聴く機会の多いHYPER SPACEは壮大で耳に残る名アレンジとなっている。
    • 日本語版に限り、原語版でカットされた重要な会話が吹き替え付きで正しく収録された。
      • PC版では、ある日時までにクリアしないと全種族が滅亡するイベントの存在をメルノームが教えてくれたのだが、重要度の高さにもかかわらず英語版では聞けなくなっている。
      • 『UQM』でもこの点は改善されていないので注意(もちろん翻訳パッチを当てた場合も同様)。
      • とはいえ、3DO版では説明書巻末のヒントとしてもこの事実が掲載されているので、全部自力で解きたいというプレイヤーでなければ実害は小さい。

賛否両論点

  • ファミコンソフトばりの突き放した難易度設計
    • 92年の洋ゲーだけあって、今作は自力でのクリアがかなり難しい。システム面を正しく理解しないと攻略がほとんど進まず、謎解きについてもプレイヤーの的確な記録スキルが求められる。
      • もし今作を自力だけでクリアするなら、場合によって最初からやり直し、2度目や3度目の周回プレイをする覚悟で臨まなければならない。
      • 一気にクリアするのは現実的ではなく、手を付け始めて何年もたってようやくクリアした……というプレイヤーの声も少なくない。
    • まずシステム面からしてややこしく、ゲーム開始まもなくは仕様の理解に苦労する。
+ 以下、始めたてのプレイヤーがつまずきやすいポイント(攻略のネタバレ注意)
  • クリアへの導線が全然見つからない
    • 燃料をケチって資源集めに精を出すと引っかかりやすい。
    • 今作でヒントを得るには、遠出して宇宙人と遭遇する必要がある。太陽系周辺をうろついていてもヒントのある星はほとんどなく、燃料を一気に使って遠出しなければゲームは進まなくなっている。
  • 戦闘が難しい
    • まずシステム面には複雑な部分がそれなりにあり、きちんと説明書を読まないと痛い目を見る。
    • スターシップでは武器を追加できるのだが、特定の位置にしか積めないため存在を見落としやすい。
      • 具体的には先頭3列と最後尾にのみ搭載できるのだが、ここにしか選択肢が出現しないので気付かないままゲームを進めてしまうことも。
      • この仕様は説明書にも記載されているのだが、日本語版ではこの装備だけ記載ページが一つ後ろとなっており、見落としやすさを助長している。
    • 逃走システムが実装されているが、これも初心者のうちは見落としやすい。
    • そして序盤からエンカウントする敵が極端に強く、強化版スターシップや特定の宇宙船以外では突破が困難。
    • まず今作はゲーム開始時から無限湧きする雑魚敵・シランドロ〈スライランドロ〉が存在するのだが、ある程度強化したスターシップを使わない限り勝つのはほぼ不可能。
      • 『ドラクエ』で言うスライムのような雑魚敵が、今作はゲーム最初の中ボス並みの強さで襲いかかってくるのである……
      • より具体的に書くと、この敵は不規則に動きつつ自機を拘束して体力を削るというもので、正面から戦うとまともに反撃できず殺される。
    • 太陽系の近くにいるせいで序盤から戦える種族・イルラスも規格外の強さ。
      • こちらは近づくまで消滅して反撃を許さず、近づいたら大量の弾を打ち込んで即死させてくる。ゲームをある程度進めないとまともに戦うことはできない。
      • ただしこちらは基本的に戦いを避けるべき相手として調整されているとも言える。
    • とはいえ機体の選択や戦法の調整などを駆使することで、方針次第ではこちらの勝利も狙えるようになっており、その戦略性はユーザーから高く評価されている。
      • 後述するように3DO版は戦闘前会話画面でのセーブが非推奨のため見落としがちだが、エンカウント直前にセーブするなどして自機を失わないよう何度もリトライすることで勝機が見える場合もある。
  • RUが枯渇する
    • 実は上述の戦闘で律儀に敗北後もセーブし、いちいち宇宙船を作っていると、RUが足りなくなってつぶしが効かなくなる。
      • よって戦闘前には機体を失わなくなるまでトライ&エラーを繰り返すのが正攻法
      • どの宇宙船も逐一作り直す前提では見合わないコストが設定されており、いちいち製造しなおすのは大きな罠である。
  • 星を見落とす
    • 詳しくは問題点で後述。
  • この他、乗組員を移し替えられるシステムの存在は見落としがち。
    • これを知っているか否かで探索や戦闘の快適さが大きく変わるので、初心者はしっかり覚えておく必要がある。
  • そして謎解きの難易度がそれなりに高い。たとえ商人メルノームから全部の情報を引き出しても、プレイの段取りやメモの記録を間違えればわりと手詰まりに陥る。
    • 攻略に必要な情報を手に入れるには様々な会話を引き出す必要があり、一度チャンスを逃すと聞けないものも多い。
    • 3DO版は説明書巻末にヒントが載っているが、これを読むのはほぼ必須。ここで掲載されているホームワールドの一部は攻略上重要でありながら、作中にヒントがほとんど無い。
    • 中でも、種族の一つであるスポックスは攻略上絶対遭遇しないとクリアできないのだが、領地が狭いせいで自力で会うのが難しい。
  • ごく僅かではあるが、ガセネタや誤情報、意味がありそうに見えて何の収穫もない会話もある。
  • 今作でも特に意地悪なのは、ある生物の所在地のヒントとして出される星座だろう。
+ ネタバレ注意
  • このイベントでは、ある宇宙人に珍しい生物を渡すことで重要アイテムと交換するのだが、その際に伝えられる生物所在地のヒントは「生き物を喰らう細長い生物を示す星座の黄色い星」*7というもの。しかし該当する星座であるDraconis〈りゅう座〉の黄色い星に行っても何もなく、完全な罠。
  • 要するに、上述したガセネタのひとつである。これはあくまで「古代人の記録」という体裁なので、記録が間違っていたというものらしい……
  • 今作には「りゅう座」以外に「うみへび座」「きりん座」などが存在するが、この状況でやまねこ座が正解と言われて納得できるだろうか…
  • また3DO版では星座がラテン語なので、日本人にとって不要な翻訳を強要される。実際は全星座を訳したところで何の意味もないので注意。
  • 実は別件でヒントがもらえる会話があるので、そちらに従うのが正解である。その会話を見る条件は「ある宇宙人に喧嘩を売ってわざと敵に回す」または「ある宇宙人を25体倒して仲間になってもらう」のいずれかなのだが、どちらにしても厄介。
  • 敵対することでヒントを得られるという発想にはどうしても届きづらいのは言わずもがな。後者は作中のヒントから推測は可能だが、何体倒せば仲間と認めてもらえるか説明がなく、倒した数に応じてテキストが変わるなどの導線もないので、やはり条件に気付きづらい*8
  • ちなみに指示通りの星に行くと後者の宇宙人に遭遇できるので、おそらく本来は後者を通じてヒントを得るのが正規ルートと見られる。
  • ただし今作は「ノーヒントで総当たりしないと絶対に突破できない」という場面がほぼ存在せず、どう攻略するにしても何かしらヒントを得ることができる。
  • 何度も遊んでいればクリアに辿り着けるため、じっくり情報を集めて攻略の快感を味わう、昔ながらのゲームさながらの魅力が詰まっているとも言える。

問題点

  • テンポが悪く、地道な作業を求められる場面が多い。
    • 今作最大の問題と言っても過言ではなく、1992年のPC洋ゲーだからこそ許されていたゲームスピードと言っても良い。
    • 移動のテンポは悪く、プレイ時間の多くをそれに費やすことになる。
      • 星系から星系への移動はリアルタイムで数分かかることもあり、手元で時間を潰すための準備は必須。遊んでいるうちに漫画の数冊は読めてしまうし、PCで遊ぶならブラウザを隣で開いてアニメを何本か消化できるレベル。
    • 星系に入った後は、惑星と惑星の間を宇宙船で航行する必要があるのだが、これも少し煩わしい。
      • 宇宙空間ゆえに慣性が強く働くので、操作性もよろしくない。
      • 星系によっては惑星が最大9個あり、場合によっては複数の衛星が含まれている。資源や情報を求めて地道に探索しようと思うと、相当な時間がかかる。
      • 星系内の移動は操作をする都合、本を読んだりもできない。現代ならPCのブラウザで動画を見ながら遊べるのが救いだろうか。
    • 補足しておくと、ある条件を満たすことでファストトラベルに近いワープ機能が使えるようになる。
      • ただし情報を手に入れるには様々な手順を踏む必要があるので注意。
      • 3DO版では、入手条件の大部分がわかるヒントが説明書に掲載されている。
  • 一部の星が小さくて見づらく、攻略の妨げになる。
    • 移動シーンの背景は遠くの星がまたたいているのだが、小さい惑星はこの背景と同化してしまい、ゲームに慣れないうちは星を見落としやすい。
      • ただし惑星の周回軌道ははっきり見えるので、ここに注目すればある程度確認しやすくなっている。そこに気づくまでが問題だが……
    • 酷いことに、ゲーム序盤の重要地点である冥王星でこの問題が発生する。
      • ここにはある異星人が駐屯し、ゲーム序盤のチュートリアルを兼ねたイベントが発生するのだが、画面上での表示が小さすぎてスルーしやすくなっている。
      • ゲーム序盤でヒントはもらえるうえ、まず発売当時は太陽系の一つであったため立ち寄りやすくはなっているのだが、それでも小さすぎてわかりづらい。
      • 特に現代の若年プレイヤーが『UQM』などで遊ぶ場合、「発売当時はまだ冥王星が惑星の一つだった*9」ということを知らないと殊更見落としやすいので注意。
    • 現代のPCは画質が向上しているのでこの問題は多少マシになっているが、基本的にアナログ出力しかできない3DO実機はドットが潰れやすいので要注意。
  • 3DO版は全言語共通で、マイコンという種族のホームワールド位置のヒントが欠落している。
    • 元々PC版ではマイコンに接触すると具体的な座標を教えてくれたのだが、3DO版ではこれが欠落し、『UQM』でも修正されていない。
    • この星の訪問は、ゲーム終盤のある救済策イベントを利用するのでない限りは消化必須となっている。
      • 厄介なことに、マイコンの領地はもう一つ重要なイベントの含まれる星があるため、そこと誤解して重要イベントが発生せず詰まる事例が跡を断たない模様。
    • 3DO版は説明書に全ホームワールドが掲載されているため、自力で解くのを諦めてこれに頼れば辿り着けるようにはなっている。
      • 『UQM』で遊ぶプレイヤーは要注意。
  • 攻略に必要な惑星の情報を手に入れた場合、広大なマップから自力で惑星の位置を突き止めなければならない。
    • 現代ではインターネットで攻略情報を見ることで対策可能。 こればっかりは自力でやっても意味がないので、素直に調べることを推奨する。
      • 特に『UQM』の日本語化パッチ配布サイトでは、スターマップ(攻略のネタバレなし)まで配布されている。
    • もしネットを使わない場合、100以上の星に一つずつカーソルを合わせ、どこにどの星があるかいちいち調べないと目的地に到達できない。
      • できれば手元にメモを用意して「どの星座がどのあたりにあるか」を管理するのが望ましい。
    • 星の配置はまばらなので、いちいち調べるのも大変。
    • 酷い罠として、マップをズームしないと見つからない星がいくつかある。
      • あろうことか、攻略に必須だと誤認させるような星がそのひとつに該当する。
+ ネタバレ注意
  • その星は、主人公の故郷であるVela。
    • 大きく輝く星のすぐ近くにあるため、ズームしないと絶対カーソルが合わせられず、そもそも視認すら困難になっている。
    • 故郷、それも今作のスターシップの設計図が置かれていた星ということで重要地点に思えるのだが、いざ行ってみると「故郷が征服された」という事実を突きつけられて戦闘になるだけで、攻略に必要なイベントは一切存在しない。
    • 見つけづらい星を攻略から外した、という意味では良心的なのだが、頑張って探した末に何の意味もないという、一種のぬか喜びを味わうことにもなる。
    • ちなみにこの星はオープニングで「宇宙の彼方にある」と明言されているのだが(原語版も同じ内容)、実際はスターマップ上では地球からそこまで離れておらず、これより遠い星の方が多い。鵜呑みにすると絶対見つからない始末である。
  • 通常のスターマップの他にも、ゲームを進めると訪問できるファストトラベル用地帯・クアシスペース〈準空間〉も不便。
    • ここでは特定の空間に到達することでスターマップの所定の位置にワープできるのだが、どこに入るとどの座標にワープするのか入ってみるまでわからず、自力で遊ぶ場合には全遷移先を手作業でマッピングする必要がある。
    • ワープ先は15箇所もあるので、こちらも自力で管理するのは面倒。ストイックに遊びたいという人でなければ、素直に攻略情報を読むことを推奨する。
  • 会話シーンは字幕が無く、内容を把握するにはボイスを全て聞かなければならないのでテンポが悪い。 『UQM』では改善済み。
    • ちなみにPC版は自動で流れる字幕を眺めるというものだった*10ので、ボイスが付いて豪華になった分これでも改善されている。
    • 厄介なのは、当時の媒体による音質の悪さ。固有名詞を聞き取りづらく、メモを取る際に一苦労である。
  • 3DO版はセーブデータの管理に関する不備が多い。 いずれも『UQM』では発生しない。
    • カーソルのデフォルトが1番目固定なうえ、セーブは確認なしに即実行される。
      • 今作は多数のセーブを同時進行させるのが有用となるが、この仕様のせいで1番目のデータを上書きしてしまうリスクがある。プレイの際は先頭のファイルを使わない(もしくは消してもいいデータだけ残す)ことを推奨する。
    • 3DO本体で管理されるセーブファイル名がゲーム内表記と合っていない。
      • 今作のセーブデータはゲーム中で1〜10の番号が振られているのだが、3DOのファイル管理画面ではなぜか0〜9が振られており*11、1ずつズレている。
      • 空き容量を確保する際、ファイルの誤削除を引き起こしやすいので要注意。
    • 敵戦闘前等の会話画面でセーブするとデータが破損する恐れがあり、実質セーブ不可。
      • 説明書には別紙で警告用の紙まで同封されていた。『ザ・ホード』の時といい、何ともお騒がせな会社である……
      • 説明書なしのソフトを中古で買う人や、説明書を読まないで始めるタイプの人は気をつけるように。
      • 戦闘前というのは最もデータを保持しておきたい場面なのは言うまでもなく、かなり厄介な仕様である。
      • 今作の戦闘は難易度が高く、トライアンドエラーを前提とした難易度になっているため、この仕様はかなり厄介。
      • 特にしわ寄せが大きいのはラスボス戦。難易度の高い戦闘シーンが存在し、本来は途中のインターバルでセーブを挟めるのだが、これができなくなった事で難易度が上がっている。
    • 空き容量の計算にバグがあり、容量オーバーではないのに3DO本体のデータ整理を強要されることがある。
  • PC版では各種族の後日談(メタ発言含む)がエンディングで見られたのだが、3DO版では削除されてしまった。 『UQM』では改善済み。
    • 散々な扱いを受けたあるキャラがちゃっかり生存している描写や、滅びかけていた種族が再興を目指すことが示唆される描写など、世界観の掘り下げにも一役買う部分があったためなんとも惜しい。
  • 3DO版のローカライズは吹き替えこそ豪華なのだが、翻訳の質には多数の問題がある。
    • 翻訳スタッフ同士の意思疎通が不十分なのか、一部の訳語がまともに統一されていない。
      • 作中の星座は全て右上に英語で表示されるのだが、作中で別の発音で読み替えている部分がいくつか出てくる("Pelsei"(ペルセイ)をペルセウスと呼ぶなど)。
    • 発音も統一されていない。
      • たとえば種族名の"Orz"は字幕で「オーズ」と表示されるのに、吹き替えだと「オルズ」になっている。
      • ゲーム終盤のカギとなる種族"Chmmr"(チマー)に至っては、音声では「クムル」という全く別の読み方になっており、シナリオの理解にも支障が出る。
      • いずれも字幕の方が正しい発音で、『UQM』もそちらの訳が使用されている。
    • 以下の会話はゲーム序盤から聞ける事もあり、特に目につく内容である。
+ 詳細

主人公:お前たちに危害は与えない。落ち着け

異星人:楽にする?そうか、つまりそれはストレスを解消せよというわけだな。ならば我々はお前らを殺すことでこのストレスを解消しようではないか!

  • 字幕担当と吹き替え担当が互いの翻訳内容を把握しておらず、しゃべってもいない単語を聞き返している。
    • いずれも原語は"relax"。
    • 『UQM』の有志翻訳だとこの問題は生じていない。ちなみに日本語で自然に訳すのが難しいためか、『UQM』の該当シーンは発言者の性格に沿って大胆に意訳されており、3DO版は原語版のニュアンスにより近いものとなっている。
  • この翻訳のチグハグさは説明書にも及んでいるのが厄介である。
    • 武器名はゲーム中だと一貫して英語表記なのだが、説明書ではわざわざ日本語訳されているせいで、どの武器を説明しているのか分かりづらい。
  • メルノームからもらえるヒントのうち、スラダッシュに関するものが原文よりわかりづらくなっている。
+ 攻略のネタバレ注意

スラダッシュを仲間にするには全員ではありませんが、ほとんどを殺害することを考えるべきでしょう。

(有志翻訳版より。原文もほぼ同じニュアンス)

スラダッシュを友人にするには、力に訴えるのがベストです。

(3DO版より)

  • 原語の方は大量に倒すことで仲間になることが明言されているのだが、3DO版は曖昧な表現になっている。
    • スラダッシュを仲間にすることにより、賛否両論点で先述した重要アイテムのヒントを入手できるため、この改悪は地味に厄介。
  • 極め付きは、クリアに必須となるトーキングペット〈話すペット〉入手イベント。攻略の妨げになる致命的な誤訳がある。
    • 該当イベントの訳文は会話の背景にある状況がくみ取られておらず、攻略の導線が失われ、自力での突破が厳しくなっている。
    • 『UQM』の有志版翻訳は原語版を忠実に訳しており、特に問題は起きていない。
+ 詳細

このイベントを簡単に説明すると「洗脳能力を持つ生物に対し、洗脳を無効化するアイテムを所持して対話を試みる」というもの。
進行に必要な条件が満たされている場合、本来であれば以下の会話を挟んで戦闘が開始し、敵機を全て倒せばゲームが進行する。

何ぃ! お前を操れない!?
お前の精神は閉じている.. いったいどうやって?!
ならば... もっと直接的な方法だ
ウンガの司令官、戦闘艦を10隻出撃させ この侵入者を今すぐ攻撃しろ!

(有志翻訳版より。原文もほぼ同じニュアンス)

ところが3DO版では…

あぁ…お前は私に対して心を閉ざしている!
こうなったら、もっと原始的な手段に訴えねばならなくなった!
司令官よ!ただちに攻撃せよ!

となっており、洗脳が無効化されたという描写と、敵機が10隻あるという重要な情報が抜けている。

しかも上記会話の前には、この生物が洗脳によって自殺をそそのかす描写が入るのだが、3DO版翻訳班は単に「死ね」というニュアンスの煽りと誤解して訳し*12、一部会話に至っては文章そのものを不要とみなしてカットしている。

  • 本来は「お前を操れない!?」というテキストのおかげで「敵の洗脳を打ち破った」→「洗脳無効化アイテムに関するフラグが消化される重要イベントを進めた」と気付けるのだが、日本語3DO版は「生物が主人公をあおり散らかして勝手に逆ギレし、敵対的な態度を察知して攻撃してくる」という解釈になっており、重要なイベントだとわかりづらくなっている。
    • どうやらこの翻訳担当者は、この生物が洗脳能力を持っている前提情報を認知していなかったようである……
    • 幸い、勘のいい人ならば「心を閉ざしている」が洗脳のシャットアウトと解釈できるのが救いだろうか。
  • さらに本来の会話であれば「敵を10機壊せばゲームが進む」と自然に読み取れるのだが、この部分を削ったせいで無限湧きと誤解しやすくなっており*13、戦闘に入っても次に採るべき行動を見落とす羽目になる。
+ ネタバレはしたくないけど攻略情報だけ見たいという人向け

作中「デンヤリー」という生き物から戦闘を仕掛けられた場合、敵を10機倒すことでゲームが進行する。 会話からはわかりづらいが、洗脳を阻止するアイテムはここで活用されている扱いになっているので参考に。

  • ゲームの進行に影響は無いが、なぜか種族名の読み方が変わっている。
    • "Arilou-Lalee'lay"(アリロウラリレイ)が「アリロウラレイ」になっているのはまだ良いとしても、I(アイ)とl(エル)を誤読したと見られる"Slylandro"(スライランドロ)→「ランドロ」、もはや別の言葉になっている"Mmrnmhrm"(マーマハーム)→「マハノマハルモ」は原型をとどめていない。2文字目のハはどこから来たのだろうか。語感の良さは魅力的?
    • 原語版の音声を聞けば正しい読み方がすぐわかるはずなので*14、その発売より前に吹き替え台本のみ急ピッチで訳したのだろうか。そうだとすると訳語のすれ違いも説明がつくが……
    • 3DO版プレイヤーがこちらの名称で書くと『UQM』のプレイヤーに伝わらない可能性があるので要注意。
  • ほかにも純粋な誤訳として、Precursor(先人)を固有名詞と誤解して「プレカーソル人」と訳している。
    • シナリオ上も重要な種族であり、ゲーム序盤からテキストで頻出するため、中々に悪目立ちしている。
  • フォローしておくと、オープンソースの有志翻訳版とは一長一短と呼べる違いもあり、全ての訳が破綻しているわけではない点に注意。
    • 全体的に直訳気味で不自然な文章もいくつかあるが、そもそも原文からしてスラング混じりの凝った文体なので、日本語訳の難しさによる限界もいくつかある。
    • 特にマイコンやオーズといった種族は原文からしてトリッキーな言い回しを繰り返しており、何とか翻訳にこぎつけたことは評価できる。

総評

今作を日本の有名作品でざっくり例えるなら、「ドラクエ3ばりの開けた世界に大量のテキストを加えた初代ゼルダ式ADV」と言ったところだろうか。
作中、自由な旅の先には様々なユーモアとスリルが待ち受けており、遊びながらSF小説を疑似体験できるのが今作の魅力。
JRPG不毛の地だった欧米市場に生まれながら、日本の大作RPG並みの冒険活劇を濃密に詰め込んだ今作は、海外のPCゲーマーから絶大な支持を集めるに至った。

ゲームテンポや難易度の都合、現代だと遊びづらい側面もあるものの、その自由度や広大さの魅力は今でも健在。
現在ではオープンソース化して気軽に遊べるので、レトロゲーらしい硬派な冒険に挑みたい人や、海外PCゲームの歴史に触れたい人は是非遊んでみてほしい。


オープンソース版『The Ur-Quan Master』

2002年より、3DO版は当時のスタッフによりオープンソース化され、誰でも自由にダウンロードして遊ぶことができるようになった。 今作の版権を持っていたAccoladeにゴタゴタが生じ、契約が消滅してしまったため、生みの親である2名がコンテンツを残すべく発起人となったことで実現したようである。

原作タイトルは権利上の都合で使えなかったため、代わりにサブタイトルが正式タイトルに使用されている。

基本的な内容は過去バージョンと変わらないが、細かい部分はPC版とも3DO版とも異なる独自の内容で、端的に言うと両バージョンの良いとこどりとでも言うべきもの。 特徴としては以下の通り(2025年5月現在の最新版・v0.8時点)。

  • UIは3DO版準拠。
    • 探索シーンが楽になり、スキャンも一括して三種類分行なってくれる。
  • 会話シーンは3DO版のボイス再生仕様に加え、PC版と同じく字幕も流れるようになった。
    • センテンス単位で一つずつボイスを飛ばせるため、テキストの読み取りは3DO版と比べてかなり快適になっている。
  • スターマップ表示時、特定の種族が勢力圏を移動すると長いアニメーションが入りテンポが悪かったのだが、これが一瞬で終わるよう改善された。
  • スターマップで"/"を入力すると、目当ての星が検索できるようになった(翻訳パッチ使用時はうまく機能しないようなので注意)。
  • セーブ容量はPC版と同じ50個。
    • 3DO版は10個しか無く、他のゲームのデータを圧迫していたが、心配無用となった。
  • セーブデータに名前を付けられる。
    • 今作は取り返しのつかない要素が多く、小まめなセーブがどうしても必要になるが、「何をどこまで進めていたか」をメモ帳なしにゲーム内で記録できるのは大変ありがたい。
  • 主人公やスターシップの名前を自由に決められるようになった。
  • エンディングの後日談も収録。
    • PC版固有の要素だったため、ボイスは付いていない。
  • これらの特徴に加え、そもそも3DO自体があまり普及しなかったことを考慮すると、遊ぶための敷居が大幅に下がったのも長所に挙げられる。
  • なお、日本語で検索上位に出てくるv0.7の感想記事で「スターマップが拡大縮小できない」「Meleeでシップの削除ができない」とあるが、少なくともv0.8では問題なく可能。

記事内で何度か触れたように、日本人の有志が2022年より翻訳パッチを作成しており、これを使えば作中のテキストを日本語にして遊ぶことができる(リンク)。*15
特徴は以下の通り(2025年5月時点)。

  • 翻訳内容は3DO版と異なっており、星座は日本語名で統一され、固有名詞の訳し方も変わっている。
  • 3DO版と違って訳文が全てのシーンで統一されているため、問題点で先述したローカライズの不備は解消された。
  • 3DO版に散見されたような、ゲーム進行に重大な影響のある誤訳は特にない。
  • サイリーンという異星人がある場面で与えるヒントは、原語版や公式日本語版よりわかりやすくなっている。
  • 文体の方向性は3DO版と異なり、どちらが好みに合うかはプレイヤーによって異なると思われる。
  • 星座を日本語に統一したため、海外の攻略サイトを見ながら遊ぶ場合に二度手間となり、ちょっとしたデメリットになる。
  • 同様の理由から、英語版の星座名を元にしたヒントが成立しなくなった場面もある(ただしこちらは星座名をネット検索することで対応可能)。
  • 吹き替え音声は未収録。
  • 英語版は種族によってフォントが変わる仕様があったが、流石にそこは再現されていない。

総合すると、遊びやすさの観点や誤訳の回避という観点から、現在では基本的に『UQM』でのプレイが推奨される。可能であれば、3DO版のマニュアルに収録されたヒントブックを手元に置いて遊ぶと確実。
一方、3DO版は日本語の吹き替え音声を楽しめるメリットがあり、誤訳に目をつぶれば有志版とは違った良さがあるので、もし訳語の違いを味わいたい人は敢えてこちらを手に取るのもあり。


余談

  • 今作は今日の様々なオープンワールドの先駆けとなり、英語圏のクリエイターに多大な影響を与えた。
    • 中でも、『Mass Effect』シリーズは今作の精神を大きく受け継いだフォロワー作品として知られている。
    • 日本でも有名な作品だと、『No Man's Sky』『Fallout』はクリエイター自ら今作に影響を受けたことを公言しており、『Starfield』の生みの親は一番好きなゲームとして今作を挙げている。
  • 英語圏で絶大な支持を得た一方、日本ではほとんど知名度を得られておらず、ただでさえマイナーな3DOにおいても隠れた名作どまりとなっている。
    • 言うなれば、日本国内と英語圏での『ドラゴンクエスト』の関係に近いだろうか。
    • 3DOマガジンの人気投票でも、総合ランキングには全く名前が挙がっていなかった。
    • 人気が得られなかった明確な要因は不明。
      • 考えられる原因としては「そもそも1作目が国内展開されていないのにいきなり2が出た」「発売元のバイスがそこまでプッシュせず、代わりに同時期発売予定だった『ゲックス』の方をプッシュしていた*16」「まずパッケージがよくわからない*17」などが挙げられるだろうか。
      • なお海外産3DOソフトでも『オーバードライビン』『リターンファイアー』などは日本でも高い支持を得ており、単に国外産だから不遇だったということは考え辛い。
  • 説明書が全92ページと分厚いためか、3DO版はDISC1枚組にもかかわらず、2枚組用のジャケットが採用されている。
    • 中を開けるとディスクケースの片側が空なので、中古ショップで買った際には店舗スタッフによるディスクの入れ忘れ*18を疑いそうになるが、元からそういう中身なのでご安心を。
  • 3DO版デフォルトネームの由来
    • 原語版主人公のゼルニックは、今作の発売元であるクリスタル・ダイナミックスの社長から名前を取ったとのこと。
      • ソースは当時のプログラマーによる回答(リンク)。
      • 英語圏では偉い人の名前を流用する文化が何かと多く、『遊戯王』に登場する「オシリスの天空竜」が向こうのアニメスタッフの名前になったという逸話はファンの間で有名。
    • 日本語版はアイヌ語のような名前が付けられているが、これはローカライズを務めた株式会社バイス*19が北海道にあるためと思われる。
      • 社長の名前かどうかは不明。3DOやクリスタル・ダイナミックスに対して大きく関わりを持った会社なのだが、詳細なソースはあまり残されていない。
    • 『UQM』でも3DO版のデフォルトネームは引き継がれている。
      • 有志翻訳では海外版の名前が引き継がれたため、今後は日本でも多くのプレイヤーがそちらを目にすると思われる。
  • Amazonの数少ないレビューにて「3DO日本語版は容量の都合でラスボス戦が削除されている」とあり、複数の動画サイトにてマルチポストと見られる書き込みが確認されるが、これはガセなので注意。
    • 日本語版でも該当のボス戦は実装されており、ネット上で見られるプレイ感想でもラスボス戦に触れているものがある。
      • 特に、ニコニコ動画にアップされている日本語版唯一(2025年5月時点)のクリア動画でもこの戦闘は確認可能で、サムネイルにすらその様子が使われている(リンク)。
    • そもそも当時のCD媒体のゲームであれば、2Dで進行するイベントひとつ程度で容量に抵触することはまずない。
    • 可能性として「レビュー投稿者がプレイした際、何らかの不具合でラスボス戦が発生せずエンディングが始まった」というのがありうるものの、マルチポストと見られる投稿を除いて具体的な発生例は挙がっておらず、それゆえ日本語版でのみ発生するのかも断定できない。
  • 作中、Twitterという名前のパイロットが登場する。
  • PC版のパッケージ裏には製品版で採用されなかった没アイテムが掲載されており、登場しないことを周知されないままあらぬ噂を立てられた。
    • 中には「実際に手に入れた」と称する嘘を流すプレイヤーまで現れ、英語圏のコミュニティでは頻出のデマとして定着したのだとか。
  • 今作に登場するアイテム「ウィンブリズトライデント」は後に同社も携わったソフト『ザ・ホード』にてカメオ出演を果たした。
    • 持ち主である「ウィンブリ」も満を持して登場している。
    • その効果の程はというと、『スターコントロールII』での扱いを知っていれば色々と考えさせられるものになっている。
+ 以下『スターコントロールII』攻略のネタバレを含むため折り畳み
  • このアイテム、元々『スターコントロールII』では商人ドルーグ〈ドルージュ〉が素晴らしい商品と称して押し付けてくるのだが、実際はゲーム内で何の効果もない玩具であり、言うなればプレイヤーを罠にはめるハズレアイテムとなっていた。
  • ところが『ザ・ホード』ではうって変わって、ステージ内に隕石を落下させて土地を焼き払う作中最強のアイテムとして登場する。
    • 今作は領地運営が題材のゲームであり、隕石の登場は世界観的にも型破りである。
  • ドルーグ〈ドルージュ〉は作中、ガラクタと思い込んでいた商品をある異星人に渡してしまい大損する羽目になるのだが、こちらもまた商品価値に気付かないまま損していたのだろうか……少なくとも、『ザ・ホード』の効果であれば『スターコントロール』の世界でも十分な有用性を持っていたのは間違いない。
  • 『スターコントロールII』を先に遊んでいれば、『ザ・ホード』での登場には度肝を抜かれるだろう。こんな物騒な物を持っているウィンブリは何者なのだろうか……

その後の展開

  • 今作はSteamでもDOS版が配信されている。
    • もちろん有料。値段はそこまで高くないが、『UQM』はタダで遊べる上、UIも改善されているので、コレクターでなければ基本的にSteam版『II』を手に取るメリットはあまりない。
    • ただし1作目もカップリング収録されているので、買うならば主にこちらが目当てになると思われる。
  • 本シリーズは生みの親と版権元でトラブルに発展し、一時はSteam等での配信が停止されていた時期もある(参考)。
  • シリーズ展開
    • 直系の続編としてはその後『3』が海外で発売されたが、生みの親は一切関わっていない。
      • 『2』に比べて自由度が大きく落ち、シナリオも劣化した挙句前作とも矛盾するなど、多くの欠点を指摘された続編となっており、旧来のファンからは激しいバッシングを受けている。
      • どれほど批判を受けたかと言えば、日本で言う『聖剣伝説4』『サンダーフォースVI』のように「存在しない続編」と扱う傾向があるようで、ファンからは真の続編を望む声が多数寄せられるまでに至った。
      • あまりにバッシングが相次いだためか、IPを引き継いだAccoladeに対し生みの親の2人が擁護寄りのコメントを残したことも……
    • 後に『4』の企画も検討されていたが、こちらは頓挫した。
      • 奇遇にも、このとき版権が宙に浮いたことでオープンソース化の実現に繋がっている。
    • 2018年に入り、久々の新作となる『Star Control: Origins』がWindows向けソフトとして発売された。
      • ゲームシステムは『II』に近く、リメイク作品のような側面がある。
      • 公式日本語版は存在しないが、こちらも有志により日本語化MODが配布されている。
      • 当初は名前通りシリーズ1作目の前日談を予定していたが、紆余曲折あって過去シリーズとは異なる世界観の作品となった。
    • 2025年内には、久しぶりに生みの親が関わる新作『Free Stars : Children of Infinity』の発売が予定されている。
      • これはクラウドファンディングにより企画が実現したもので、旧来のファンからは熱い期待を寄せられている。
最終更新:2025年08月25日 22:28

*1 誤解のないよう補足すると、1作目も1作目で評価は高く、海外では名作レトロゲームを紹介する記事で時折名前が挙がっている。

*2 当時の洋ゲーは本編でほとんど触れられていない壮大なストーリーが何かと詳細に書かれがち。これはビデオゲームに限らず、あちらのアナログゲームのマニュアルでしばしば見られる文化である。

*3 ただし厳密には2作の間で設定の齟齬が存在し、パラレル展開ともみなせる。

*4 その代わり、拠点から人員や宇宙船を一切供給しない縛りプレイをSpeedrun.comに投稿したプレイヤーが存在する(2025年5月現在走者1名)。

*5 あくまでフラグ管理の話であり、「リソースを回収する手段が尽きる」「敵異星人に囲まれて逃げられなくなる」などの理由で詰む場合はある。

*6 同シリーズのファン向けにわかりやすく例えるなら「口が付いて肌色になって威厳が増したダークゼロ」と言えば多分通じる。

*7 『UQM』有志翻訳版は誤訳あり。「長く巨大な獣を飲み込んだ細長い生物」となっているが、原文に最初の「長く」は無く、正しくは「巨大な獣を飲み込んだ細長い生物」である。ただし後述の理由から特に問題はない。

*8 しかも逃走した場合はカウントに含まれず、本拠地などで無限湧きする個体を倒しても全くイベントが発生しないという罠まである。

*9 冥王星は元々惑星の中でも特異な性質を持っていたが、2006年に入って似たような性質の星が3つも観測されてしまい、これらも惑星に含むか、冥王星を惑星から取り除くか議論された結果、後者が採用された経緯がある。

*10 非ネイティブにとってはかなりスピードが速いので、こちらで遊ぶ場合は注意。

*11 プログラミングの世界では数値を0始まりで表現するのが一般的で、これに倣ったものと見られる。

*12 例えば「殺される相手を探しに行け!」だったのが「あぁ、お前なんか死んでしまえ!」になっているなど。

*13 今作で同時に襲う敵は多くても6機程度であり、10機襲ってくる場面は他に無いので、これもわかりづらさを助長している。

*14 一応原語版は半年前に発売されているが、アフレコはゲーム発売のかなり前に行われるのが通例なので、翻訳までに間に合わなかった可能性は十分ありうる。

*15 一部サイトやニュース記事では「今作を日本語で遊ぶには3DO版を入手するしかない」と明記されているが、現在となっては古い情報なので注意。翻訳パッチはオープンソース化から20年経つまで作られず、それ以前は本当に3DO版でしかプレイできなかった。

*16 皮肉にも『ゲックス』は発売が数か月延期し、発売タイミングが被ることは無かった。

*17 原語版は「地球を謎の手と謎の触手が掌握する」というアートが描かれた縦長の外箱に入っていたが、日本の3DOソフトは外箱が廃止されてジャケットのみになっており、今作もパッケージの一部だけがトリミングされている。これによりほとんど地球しか映っておらず、何を表しているのかわかりづらい抽象画のようなイラストに……

*18 CD媒体のレトロゲームを購入した際(特に開封確認などを行わないネット通販で)割と頻繁に起こるトラブル。後で遊ぶつもりで積んでおくと返品期間を過ぎてしまうので、入手したら即座に中身を確認するのが望ましい。

*19 クリスタル・ダイナミックスによる3DO作品のローカライズを手がけていた企業。ネットの無い時代に原語版スタッフの監修を受けながら『ザ・ホード』の翻訳を数ヶ月で完成させるという早業っぷりを発揮していた。反面そのゲームではデータ誤削除を引き起こす重篤な誤訳を行ったり、『ゲックス』の説明書で大量の誤訳を訂正する羽目になったりと、不祥事もちらほら確認されている。特に『サムライショーダウン』『ゲックス』は3DOマガジンにおいて、説明書の出来を強く批判されていた。