キュイジニア ポムとまんぷくダンジョン

【きゅいじにあ ぽむとまんぷくだんじょん】

ジャンル ローグライトアクション

対応機種 Nintendo Switch
PlayStation 5
Xbox Series X/S
Windows(Microsoft Store/Steam)
Linux(Steam)*1
発売元 【Switch/PS5】ハピネット
【XSX/Win(MS Store)】Marvelous Europe
【Steam】XSEED Games, Marvelous Europe
開発元 BattleBrew Productions
発売日 2023年11月20日(Steam版)
2025年1月28日
定価 【Switch/PS5 パッケージ版】4,400円
【Switch/PS5 DL版】3,300円
【XSX/Win(MS Store)版】3,500円
プレイ人数 1人
レーティング 【Switch/PS5】CERO:B(12歳以上対象)
【XSX/Win(MS Store)】IARC 7+
判定 なし
備考 Steam版のみ『Cuisineer(キュイジニア)』と、タイトル表記揺れあり。
ポイント レストラン経営×ローグライトARPG
可愛い世界観と硬派な難易度のダンジョン(そして飯テロ)
雰囲気は良好だがそれ以外は粗削りな点多し


概要

シンガポールのインディーゲームスタジオ「BattleBrew Productions」によって、2023年11月にWin(Steam)にてリリースされたインディーズゲーム。
その後2025年1月にSwitch / PS5 / XSX / Win(MS Store)版が発売された。本稿ではSwitch版を基準に紹介する。

アクションアドベンチャー形式のローグライトと、レストラン経営を掛け合わせた独特のゲーム性が特徴。


特徴

  • ストーリー
    • 主人公は冒険好きで料理が得意な猫耳の少女・ポム。
    • ある日ポムが長旅から故郷の町パエルに帰ると、彼女の実家であったレストランは閉店しており、店主であった両親はその借金を残して出奔していた。ポムは愛するレストランを自身の手で立て直すべく、ダンジョンで食材を採取し、店にて調理・提供する生活に乗り出す。
  • ダンジョンパート
    • 世界各地のダンジョンに乗り込んで探索し、モンスターからの食材や建築用の資材を集めていく。ダンジョンは主に全4か所あり、借金を返済してストーリーを進めることで順次解禁されていく。
    • ポムは2種類の武器を装備し、XボタンとYボタンで直感的に使い分けることが可能。片方のボタンを連打することでコンボを繰り出せる他、Aボタンのダッシュの終わりから派生するダッシュ攻撃、ZR / ZLボタンで繰り出せる特殊攻撃(強力な範囲攻撃だがクールタイムあり)などが存在する。
    • 入る度に構造の変わるダンジョンは基本的に6階層あり、各階層のどこかにある階段を見つけて進行していく。3層目に中ボス、6層目にボスが待ち構えており、倒すことで装備や食材が多く入ったチェストをドロップする。
    • 装備には一つ一つ異なる特殊能力(パッシブスキル)が付与されている。ダンジョンでのドロップの他、町にある「醸造屋」で料理を素材とすることにより付け直して厳選することが可能。
  • レストラン運営パート
    • ダンジョンで持ち帰った食材から料理を作り、レストランに訪れる客に注文の品を提供していく。料理は各種調理器具にインタラクトすることで自動で作られていき、殆どの客は完成した料理の並ぶカウンターから自分の注文したものを自動で取りに来てくれる。
    • 店の客は種類ごとに特性がある。例えば子供や兵士は「安価な / すぐ完成する料理を注文するが、長時間待つのが苦手」、貴族は「高額な料理を注文するが、ポムが直接席まで料理を運ぶ必要がある」など。これらの特性を理解することで、より効率的な接客が可能となる。
    • 料理のレシピは町でのサブクエストを達成することで報酬として得られる場合が多い。営業時間外でも調理し、ポム自身が食べることによりその日に限って使用食材によるバフを得ることができる。
  • 主人公のポムは朝9時に起床して、ベッドを調べるか夜12時になると睡眠へと向かいその日は終了となる。レストラン経営は朝9時から夜11時までの時間なら何度でも開け閉め可能で、途中1時間だけ休憩を取るなどのロールプレイも楽しめる。
    • 一方ダンジョン探索は朝早くに出てすぐ帰還選んだとしても帰ってくるのは夜10時である。ダンジョン内では時間の概念がなくどれだけ時間をかけて探索しても日を跨いだりはしない。ただし出発できる時間が夜6時前までであり6時以降は探索には向かえない。先に店の経営をすることは可能だが長く時間がたつにつれ疲労度が蓄積して、最大30%のHP減少が起きる。

評価点

  • 可愛らしく暖かみのある世界観・グラフィック
    • 獣耳の住民たちが生き生きと暮らし、自然に満ちたダンジョンが広がる様は、さながら絵本の世界のよう。
    • 料理をテーマにした作風ということで、食材となる作物や動物が可愛いモンスターとして襲い掛かり、調理器具を武器にそれを撃退する、という発想はビジュアル面でも殺伐さを感じさせず秀逸。フライ返しを片手剣、出刃包丁を大剣、などのように見立てたモーションも面白く、見ていて飽きない。
    • 料理のグラフィックもイラストによって丁寧に描かれており、見ているだけで食欲がそそられる程。
      • 開発元の国柄もあってか、「カヤトースト」「パッピンス」「ラクサ」「ミー・ルブス」など聞き馴染みの無い料理もエスニック方面中心に少なからず実装されており、料理への興味もまたそそられること請け合い。
    • BGMのクオリティも良好。主張こそ決して強くはないものの、優しい響きで世界観の美術に合う旋律の曲が多い。
  • 経営系ゲームにありがちな煩雑な要素がかなり削られており、遊びやすいレストランパート
    • レストラン客の待ち時間は(子供を除き)かなり猶予がある設定がされており、食材さえあれば一つのボタンを押すだけで簡単に料理を作り、提供することが可能。「数行程を要する料理」「一人ひとりの客に配膳」など、面倒だったり理不尽だったりする要素は悉く撤廃されており、(貴族への配膳を考えない場合)プレイヤーのすべきことは料理の予約とこれまたワンボタンで済む会計のみ。総じてワンオペで店を切り盛りする系のゲームとしては非常にとっつきやすい出来となっている。
    • 同時に上述したような客の個性、とりわけ作業を増やす代わりに多くの額を払ってくれる貴族、ラッシュ時間の戦略的な調理順の思考、そして時たま出没する食い逃げ犯への対処など、単純作業に終始させない工夫がなされているのもミソ。
    • 加えて内装の模様替えも家具単位で割と自由度高く行うことが出来るため、これらの要素がハマれば長く楽しめるゲームたりえるであろう。
  • 難易度調整を筆頭としたオプション
    • 難易度は「ふつう」を最高難易度とした4段階からいつでも変更可能。UIにさりげなくアイコンが追加されるのみで、ペナルティらしいペナルティも無い。
      • 変化点はポムの受けるダメージが25%刻みで変化するだけだが、「事故要素を減らし周回を容易にする」「ボス戦を低難易度で練習する」など柔軟な遊び方へと対応できるのは有難い。
      • ただし後述のようにかなり粗のある難易度であり、それにもかかわらず最高難易度の「ふつう」がオススメとされている。アクションの腕に覚えがないなら、躊躇わず低難易度でプレイすることを推奨。
    • また、料理を食する際の咀嚼音のSEも、設定により有無を切り替えることが可能。料理を軸としたゲームにおいて、どうしても生理的に好みが大きく分かれる部分なので、そこを任意に設定可能なのは地味ながら良いオプションと言える。

賛否両論点

  • 良く言えば硬派で遊び応えもあるが、やや不親切度の高いダンジョンパート
    • レストラン経営と並び、本作の根幹を担うダンジョンパートだが、これが意外にも世界観やビジュアル以上にシビアかつ粗削りな設計がなされている。難易度選択次第でローグライト特有の硬派さを求める層にも応えている一方、そこが肌に合わないと「食材を調達する実質唯一の手段」として(人によっては決して楽でない)作業感が強くなってしまうという難点も抱えている。
    • あくまでRPGではないということなのか、経験値とレベルの概念が存在せず、いくら戦闘してもポムの能力が強化されることは無い。その為装備や料理のバフを組み合わせることによってしか攻撃力・耐久等を上げることが出来ず、面倒になりがちな戦闘を楽にする手段に乏しい。
    • ダンジョンにはダメージギミックやモンスターハウスが数多く設置されてあり、特に後者は敵からの被弾を防ぎ切れない構成も散見される。一方でプレイヤーが狙って有利に活用できる設備はランダムで配置される「1回限りHPを50回復できる泉」「お参りすることで一定時間近くの敵に燃焼ダメージを与えるバフをもたらす像」くらいしかなく、回復手段が他にドリンクしかないことも相まって慎重な立ち回りが常に要求される。
      • またダンジョン内の設備もこの2種しかなく、商店など後付けでダンジョン攻略を楽にしてくれるような設備や探索欲を掻き立てる構成は存在しない。精々資材を得られるオブジェクトが群生する小部屋がある程度。にもかかわらずモンスターを探して倒す為に隅まで探索することを強いられる為、作業感がより強まっている。
    • ダンジョン内にはダッシュで渡る必要のある地面の切れ目が点在しているのだが、渡れる隙間と渡れない隙間の(目視での)判別がかなり困難。各ダンジョンでの隙間の大きさが均一でない為に、「近道しようとして渡れたと思ったら渡れず落下する」という事態がしばしば起こる。
      • それ以外にも「氷結フィヨルド」の冷水が噴き出るギミック、「コンペイトウ沼地」の倒れ込んでくる棘のある植物など、風景に同化し視認性の悪いダメージギミックも少なからず散見される。
    • 中ボスやボスの多くはこちらが攻勢に出られる隙が思った以上に少なく、長い間こちらが逃げ回らねばならない攻撃を行ってくる。その為「大振りだが瞬間火力だけは高い武器」よりも「手数で攻められる武器」が重宝され、利便性を追求するなら使用武器種は自ずと狭まっていく。
    • 状態異常を付与して隙を増やす、またはコンスタントにスリップダメージを与えることも重要となる。むしろ瞬間的に大ダメージを与える手段がほぼ無く、後述のバフ仕様も踏まえると 「状態異常ゲー」 とも言える環境が構築されており、突き詰めると「逃げ回りながら小技と毒・燃焼ダメージでちまちま削る」という、よく言えばストイック、悪く言えばあまりに地味な戦闘になりがち。
      + これらを踏まえた詳細な武器のバランスについて
    • ロマンやビジュアルの好みを考慮しない場合、最終的な武器構成は「コンペイトウの拳」+「ドリアン爆弾」or「投げ皿」でほぼ固定されがち。
      • 「コンペイトウの拳」は手数で攻める手甲タイプの武器で、敵の僅かな隙でも少しずつ攻撃を確実に入れられるのが強み。加えて「隙の少ない範囲攻撃」「クールタイムが5秒と非常に短い」「パフィー、チキン等小粒で鬱陶しい敵をちょうど一撃で一掃できる威力」と三拍子揃った特殊攻撃が魅力的で、メインウェポンがこれかこれ以外かでダンジョンでの立ち回りはかなり変わってくる。
        • 加えてコンボの終わり際に出る5連撃は1発ごとに「コンボの最終段」判定があるため、「コンボの終わりに○○を付与する」系の特性とも非常に相性が良く、瞬く間にスリップダメージや異常を複数付与することができるのも強み。
      • 「フライ返し」「スマカレル」の片手剣タイプも隙が少なく決して悪くは無いのだが、前者は攻撃範囲に対するクールタイムの長さ、後者は制御が難しくダメージギミック等にも突撃しかねない突進と、特殊攻撃の性能に難があり一歩劣る性能。
      • 対して「肉叩き」「出刃包丁」の大振りなタイプは不遇寄り。どちらも小さな敵を対処するには有用だが、中ボス以上を相手取ると隙の多さが目に余り使いづらさが露呈してくる。特に後者は特殊攻撃も非常に当てにくい。瞬間火力だけは随一なので、光る所は確かにあるのだが。
      • 「メカジキの槍」や「ケバブ串」といった槍系は通常コンボこそやや火力不足だがリーチが少し長く、ダッシュ攻撃も移動に回避にと使いやすく拳に次いで高性能といえる。拳系はダッシュ攻撃の隙が大きく難がある為、相互互換的に十分メインとして使える性能は有している。特にメカジキは特殊攻撃も前方広射程に素早く水流を放つもので強力。
      • 投擲武器について、「ドリアン爆弾」は貫通性能に加え敵に毒を付与する性能を標準装備している為、硬い敵の体力を安全に削るのに役立つ。「毒状態の敵へのダメージ増加」のパッシブを活用する構築を用意しやすいのも利点。「投げ皿」は飛距離にムラがあり一見扱いにくいが、「プッシュバック」「コンカッションプッシュ」等の構築で使用するとかなりのダメージを特殊攻撃で叩き出せるポテンシャルを秘めている。
  • 食材と料理の選出について
    • 食材は肉類・魚介類が「牛肉 / 鶏肉 / 豚肉」「魚 / エビ / カニなど」のように細分化されて別個に存在する一方、野菜は「葉物野菜」と雑に括られていたり*2、乳製品が「チーズ」、果物が「トロピカルフルーツ(ココナッツ)」しか存在しない、何故か「氷(アイスクリスタル)」が食材として独立しているなど、それらの選定に関しては首を傾げたくなる点も少なくない。
    • 食材の一つに「イカやタコなどの足」がある。その野暮な名前はともかくとして、ドロップする敵はタコ型の「オラクトパス」一種のみであり、「イカ」「など」から得ることは無い。キービジュアルに大きく描かれているイカ型モンスターも、どういうわけか登場しない。なら単純に「タコ足」でも良かったのではないか。
    • 低ランクの料理の中には「ブレンドした香辛料」「カヤ(ココナッツミルクと卵を和えたジャム)」など、それは料理じゃないだろと突っ込みたくなるような品も一部ある。特にこれらの品種はグラフィックも瓶詰めそのもので、注文した客もそのまま美味しそうに食べるのだが……バカゲー的要素として受け入れるか、「他の料理を押しのけてまで実装すべきものだったのか」と感じるかはプレイヤーによる。
    • 拠点となる町「パエル」の語源は料理のパエリアから、という設定がNPCからも語られるのだが、当の料理はゲーム中に未実装。恐らく「米+魚介類」の組み合わせの料理として寿司系のそれと立場が被ってしまう為だと考えられるが、「鶏肉」なども使えば差別化・実装する余地はあったと思われる。
    • フルーツやクリーム等の食材が無い為、甘味系のメニューが非常に少なく、上述したアイスクリスタルを使用したかき氷系を除くと「ココナッツミルク」「キャラメルケーキ」くらいしかない。
    • 最高位であるレベル4の料理は、要求素材もグラフィックもそれまでの料理を組み合わせたようなものがほとんど。完全な新規料理は2種しかなく目新しさに欠ける。
      • 一応「そばとエビ天セット」も前段階に当たるランク3料理がエビ天うどんであり、そばが登場する唯一の料理であるため新規とも言えるか。
  • かなり薄味な町の住人との交流要素
    • 町には多くの住人がおり、施設の店員を務める者には固有グラフィックも用意されている。
    • 彼らはほぼ例外なくポムに対し友好的で、レストランの再建も応援してくれるのだが、親密度を深めるイベントなどというものは実装されていない。精々料理のレシピを貰えるサブクエストを1~2つ提示する程度であり、どうしても今一歩愛着が沸く決め手に欠ける。
      • 台詞パターンも進行状況と年の行事によるものが数種ある程度で決して多くはない。メインストーリー制覇後はごく数種への固定になってしまうのでより寂しく思えてしまう。
    • また店を営む住人には曜日に応じた定休日があるが、特にその曜日特有のイベントがあるわけでもなくただ不便なだけである。せめて「休日はレストランに顔を出してくれることがある」などの要素があれば好意的に受け入れられただろう。
    • 彼らもまた可愛らしいデザインであり、特にタピオカティー屋の「ナイチャ / ゼンズー」姉妹や大工の「アルダー」は内面も含め好評。それだけに交流要素の少なさは非常に勿体ない印象を受ける。
  • セーブは自宅で寝て日付が変わった時に自動でされるのみ。
    • 手動でのセーブや何かあった場合のオートセーブなども一切なく、後述のエラー落ちが発生した場合はその日一日のプレイがすべて無駄になる。ちなみにセーブデータは3つあるがデータのコピーや移動はできない。
      • 一応、この仕様が幸いして、多少の時間を惜しまないなら醸造屋での特性付与を所謂リセマラによって最低コストで厳選出来るという利点もあるにはある。とは言え手動でより手軽にセーブできる機能は欲しかったところ。
  • 翻訳について
    • 日本語訳は比較的良好な出来で、台詞や各種解説文を読む限りにはほとんど違和感は無い。
    • 一方でサブクエスト報酬のレシピを解説する下りがやけに説明台詞じみていたり、ユーモア的な言い回しを訳しきれていないなど、人によっては気になるであろう点もちらほら見られる。

問題点

  • ロード時間の長さ
    • 自宅と町の間を出入りするだけでも10秒ほどかかる他、ダンジョン突入時、及び階層移動時はフロアの生成という都合もあるとはいえ30秒~1分弱かかることもザラにある。
    • ちなみに外に出るボタンを「長押し」することで店を開店するのだが、このときうっかりボタンをすぐ離すと当然外に出てしまいロード、入るのにまたロードである。
  • 直感的でなく死に要素も多いバフ・特性関連
    • 装備の特性には「無条件で攻撃力アップ」のような分かりやすく使い勝手の良いものはほぼなく、「特定の状態異常を付与する」+「同じ状態異常の敵に与えるダメージが増える」「同じ状態異常のスタック数や持続時間を増やす」 というように、特定の状態異常を軸に複数組み合わせることが前提という環境が構築されている。それらを揃えるには(ドロップにしろ醸造にしろ)少なからず運が必要となり、ビルドとして一式揃えるには余裕の少ない序盤こそ苦労する造りを助長している印象が否めない。
    • その特性も「○○のダッシュ」系は雑に使いやすく有用だったり、上述のドリアン爆弾のお陰で毒主軸の構築は再現難易度が低い一方、「シールド」系のものは効果時間が短い上に防御できるのが飛び道具限定、「○○のスキン」系は攻撃を受けることが前提でゲーム性と噛み合っていないなど、明らかに使いづらいものも多い。まともな実用性を考えると構築の選択肢はかなり少ない。
    • また「タピオカティー屋」ではダンジョンに最大4個持ち込める使い切りのドリンクを購入・開発することができるのだが、開発によって解禁されるものはいずれも多少の回復に加え「数秒間微量ダメージと状態異常を与えるゾーンを展開」といったもので、使える個数に対して戦術へ組み込みにくく持て余しがちなものが殆ど。大抵の場合、特殊な効果のない代わりに即効性があり回復力もやや高い初期実装の「新鮮ミルクティー」で事足りてしまう。後述のようにドリンク開発がやや面倒な仕様になっているのもこれに拍車をかけている。
      • 一応徐々にHP回復のリジェネ効果を持つチーズミルクティー系は同レベルの新鮮ミルクティーよりも総合回復量が多く、最終レベルで新鮮が55に対してチーズは9×8の72回復するので作る価値はある。4スロットの合計で70近い回復差になる。
  • 単調かつ粗の多いストーリー
    • シナリオ序盤から中盤にかけては、「親の借金が発覚→(新たなダンジョンが解禁→)レストランの利益で返済→翌日更なる借金が発覚」という展開が繰り返される。借金先やその理由が異なるということもなく、流石に理不尽さと天丼感が否めない。
      + そして最終的に借金を返済すると……(ネタバレ注意)
    • 店に来訪した高慢なリーグ委員の女性「キャビア」との悶着を発端に、ポムは世界最高峰の料理人たちと腕を競う「料理人リーグ」へと挑戦することとなる。借金返済と同じ要領で参加費を支払った後、全3戦を勝ち抜く必要がある。
      • その対戦方式は、「コロシアムの四隅に各ダンジョンを模したモンスターハウスが設置されており、そこで戦って得た食材で注文の料理を作って審査員に提供しポイントを得て、制限時間内に多くのポイントを得た者の勝ち」というもの。因みに対戦相手のNPCは戦闘を免除されており、調理場から殆ど動かない。
      • ゲーム的な攻略面に関してだが、はっきり言って相手の調理ペースはそう速くなく、最低限揃えられる食材をある程度持った上で注文の品を提供していけばわけなく逆転し勝利することができる。食材が足りない注文を捨てる猶予も十二分にあるが、一方で「米」など多くの料理に使う食材があまり手に入らなかったり、一つの食材に注文が偏りすぎると事故に遭うケースも十分あり得る。総じて運が大なり小なり絡む点は否定できない。
        • また、こちらが習得していない料理も平気で要求されるので、低日数クリアを目指すなどでサブイベントを無視してきて覚えているレシピが少ないと途端に難易度が跳ね上がり、運ゲー具合が加速する。
          + そうして勝ち抜いた先には……(更なるネタバレ注意!)
        • ラスボスとして立ちはだかるリーグチャンピオンは、なんと物語冒頭から家を空け、姿をくらましていたポムの両親その人たち。
          • 曰く、家財まで売り払って店を空け、未納の税金諸共ポムに押し付けたのは「ポムに強くなってもらうため」とのこと。優し気な雰囲気こそある両親だが、いくらなんでもスパルタというか独善的というか……。
            • 因みに期間限定でNPCから聞ける台詞に「両親は料理人リーグとの提携を蹴った」という旨のものがあるが、明らかにこの展開とは矛盾が生じている。設定の摺り合わせが上手く行っていなかったのだろうか。
          • そうして直接戦闘することとなる両親だが、これがまた恐ろしく強い。行動ルーチンは完全固定のパターンなのだが、一撃一撃が重い上に一瞬でも判断が遅れると回避不能となる攻撃が多く、その上耐久力もそれまでのボスとは比にならない。フレーム単位でパワフルな攻撃への対処を求めてくるお母さん、俊敏な動きとノーダメ回避を想定していないレベルの弾幕が脅威のお父さん、そしてその(お母さん主導の)コンビと、回復・休憩無しでの3連戦を強いられる。回復用のドリンクは持ち込むこともできるが、一発一発が重い為ゴリ押しには全くといっていいほど使えず、フル活用しても初見撃破はほぼ無理ゲーレベル。
          • 何とか勝利すると、両親は料理人としても冒険家としても強くなったポムを褒めるだけ褒め称え、そして再び放浪の旅へと姿を消してしまう。エンディングらしいエンディングもなく、翌日リーグ側から記念品が郵便で贈呈されることでメインストーリーは幕を閉じる。 作中ぶっちぎりの最安値で買える美術品「お母さん / お父さんの手配書」を店内に貼り続けようと決意するプレイヤーもしばしば。
            • 一応ゲーム的に再戦することは可能で、勝利すると☆3の特性を持った装備を確定でドロップする。最低難易度で周回して 鬱憤を晴らす 装備を揃え、高難易度での勝利を目指すのも一考。
  • 一部設計ミスの散見されるUI
    • 食材・資材等を複数要求するサブクエストでは部分的な納品が可能で段階的に進めることが出来るが、同様に複数種・複数個の料理を要求するドリンクの開発に対してはそれが出来ない。開発用のレシピを店外で確認することもできず、覚えるか確認するかしながら自宅で必要数作って納品する必要がある。
    • また日本語版ではガイドから各料理の解説を閲覧すると、一部の料理で説明文が見切れてしまい最後まで読むことが出来ない。
  • Switch版の不具合
    • 「町を出てダンジョン選択画面に移った直後」「ガイドの各ページを開閉する時」など、画面が切り替わる際に稀に進行不能となるバグが確認されている。
      • 何よりたちが悪いのが「ダンジョンで帰還を選んでリザルト画面が出る時」のエラー落ち。当然その日にダンジョンで稼いだものが全て無に帰してしまう。出発前に店の営業もしていたらそれも無駄になる。
    • 他にもスリープを挟んで長時間起動していると、ガイドを始めとした各テキストのフォントが黒い四角に置き換わってしまい判読困難となる不具合も確認済み。

総評

ダンジョンへと潜り、そこで手に入れた物品で商売をし生計を立てる……というゲームの前例は決して少なくないが、「ダンジョンのモンスターと戦い、倒して得た食材でレストランを経営する」という発想は、ありそうでなかった見事なものと言って良い。同時に絵本のように可愛らしくほのぼのとしており、殺伐としがちな雰囲気を完全に中和している、その独創的かつ親しみやすい世界観の独特のテイストは、間違いなく評価すべき点である。
しかし一方で、ローグライトアクションとしての側面に目を向けると、ある種その世界観にそぐわぬ辛口さ・粗の多さはどうしても無視しきれない点も多い。よく言えば歯ごたえがある、或いはその大味さ・理不尽さもまたローグライトの醍醐味、とも言えるかもしれないが、隅から隅まで探索する楽しみが薄味で、どこか義務的な探検を強いられる点も相まって、全体的なライトな雰囲気とはどうにもチグハグな印象も否めない。
そのため、世界観やレストランの経営要素に加え、「粗削りでクセのあるダンジョン探検をどれだけ楽しんで行えるか」も含めて、ゲームとして味わえる楽しさが左右される作品とも言える。手放しに良作と言い切れないほどには惜しい点が多い作品だが、「ダンジョンから鞄いっぱいに食材を集めて持ち帰り、たくさんのお客さんに料理を振る舞う」というゲーム体験は、合う人にはとことん合うコクに満ちたものであろう。
ビジュアルのみでなくこのようなゲーム性に少しでも惹かれる部分があれば、是非とも食わず嫌いせず触れてみてほしい。


余談

  • CS版のパッケージ版初回特典には、YouTube等にて活動している料理研究家「リュウジ」氏によるゲーム中の料理「ローストチキン丼」「ラクサ」「チーズたっぷりベイクドポテト」のレシピカードが付属していた。
    • このうち「ローストチキン丼」は料理を実演する動画も公開されている。
最終更新:2025年05月24日 23:59

*1 Proton互換動作、ProtonDB - Platinum判定、SteamDeck「プレイ可能」判定

*2 厳密には「トマト」「ジャガイモ」「キノコ」もあるが、これらを野菜に含めるかは定義に左右される部分が大きい