99のなみだ

【きゅうじゅうきゅうのなみだ】

ジャンル 涙でこころ洗浄ソフト
対応機種 ニンテンドーDS
メディア DSカード
発売・開発元 バンダイナムコゲームス
発売日 2008年6月5日
定価 3,990円(税込)
プレイ人数 1人
レーティング CERO:B(12歳以上対象)
セーブデータ 1個
判定 クソゲー
ポイント 読み物ゲーにしては不便な点が多すぎる
10分シナリオで泣かせようというコンセプトに無理がある


概要

読み物主導型のADVゲーム。 物語の分岐はなく、泣けることをコンセプトとした10分程度の小話を次々と読んでいくというゲーム構造である。

システム

  • ゲームの流れ
    • 生年月日プレイヤー名を入力し、大人しい雰囲気のナイトバー風の店に入店できる。
    • 店のマスターの質問に答えると、「ナミダノモト」と呼ばれるアイテムを受け取れる。
      • マスターの質問には、必ず今日の気分を5段階形式で答えさせるものがあるほか、「犬派か猫派か」といった質問が加わる場合もある。
    • 「ナミダノモト」を使い泣けるストーリーを視聴し、ストーリーを5段階評価したあとに20文字程度の感想文(白紙提出可)を書いてまた次のナミダノモトを受け取る…といった流れ。
      • また「振り返る」というメニューで一度読んだシナリオを再度読み返すことも出来る。
  • ナミダノモト
    • 外観は香水瓶のようなデザインのアルコールランプである。
    • タッチペンを使って点火することで、5~10分程度の泣けるストーリーの放映が始まる。ストーリーが終了したときはマイクに息を吹きかけるかタッチペンでさわることで点火した火を消すことになる。
      • ストーリーはテキストで表示される。テキストの一時停止は可能だが送り・巻き戻しはできず、一定時間がたつごとに次のテキストが順々に表示されていく。
      • テキストが表示される背景には、写真が表示される。
    • 2本以上を同時に受け取ることは出来ない。また1本受け取った後に必ず自動でセーブされるので、ストーリーを選びなおすこともできない
    • ナミダノモトで視聴できるシナリオ製作には多数が参加している。『テイルズ オブ シリーズ』のシナリオを手がける名取佐和子氏、AKB48のプロデューサーとして有名な秋元康氏が手がけるシナリオもある。
    • ナミダノモトは実に200種類以上用意されている。
  • その他
    • 1日1話の視聴を推奨されてはいるが、複数の話を立て続けに視聴すること自体は可能。
    • ゲームの進み度合いに応じて、若干店内の様子が変わる。
      • OLや幼稚園児など、プレイヤー以外にもお店にお客さんがやってくることもあり、そういった登場人物の身上にまつわるナミダノモトを視聴できる場合もある。こういったタイプのシナリオは『世にも奇妙な物語』のシナリオに参加経験のある田辺満氏が担当。
    • 50話以上見ているとマスターがその旨を話す。
    • 「体験版」を遊ぶことも出来るが、こちらは「お父さん」という話が固定で視聴できるだけ。こちらはナミダノモトを受け取ってもセーブされず中断可能。

問題点

  • 読み物ゲーとして不便すぎる
    • ADVゲー形式の体裁を保っていない。
    • 実質スライドを視聴するためのツールである。システムの項でも述べたが、巻き戻しはおろか、自分の好きなタイミングで文字を次に送ることすら出来ない。
    • 一度視聴した物語もプレイヤー側が何かしらのメモを残しておかない限り、誰が書いたのか、どんな話だったのか分からないので、もう一度読み返したいときに非常に不便。
      • 感動効果を高めるために、初見時に物語の内容を伏せておくというのなら分かるが、読んだ後にまで伏せ続ける意味は無い。
  • 泣けるストーリーというコンセプトについて
    • やろうとしていることは決して悪くはないが、如何せん10分程度の物語を読んで涙まで流せる人は少ないと思われる。
    • 当然ながら長編のストーリーと比べて、登場人物に関する情報が少ない分、感情移入は必然的に難しくなる。
    • 収録されているストーリーも数こそ多いが、結局「人情もの」「親しい人・動物との別れ」「闘病もの」「家庭不和」の4テーマに大別されるほか、似たような話も多い。
      • この中で、比較的後腐れなく泣きやすいと思われるのは人情もの限定。
    • 闘病・死別関連はさすがに10分にまとめるのは難しいと思われる。登場人物がとってつけたような病気設定で呆気なく死ぬ場合もあり、余韻もクソもないシナリオもちらほら。
      • ストーリー自体短くまとめなくてはならないので、闘病過程や遺族の心情などが非常にあっさりと語られてしまう事が多く、設定づくりを雑に思えたり登場人物そのものが薄情に思える場合もある。
  • 物語の質
    • 70名以上の作者が関連しているためか、物語の質は玉石混交。
    • 悪くない話も多いものの、ほぼ無名の作者に作らせている話だと、感動どころか嫌悪感・不快感を抱かざるを得ない場合もある。
      +
      • 姉がガンで余命わずかなのに、死ぬ間際まで優等生の姉へのコンプレックスから冷たく接する妹。
      • 結婚していない闘病中の彼ととりあえず性交はしていた登場人物。
      • 読者の同情を誘いたいからだろうが、総じて本作における動物の扱いは悪い傾向。容赦なく車に轢かれたり、怪我をしていても周りの人間に冷たくあしらわれたり。
  • マスターの質問にあまり意味がない
    • マスターの質問にどう回答するかで、マスターがすすめてくるナミダノモトに差異が生じるというシステムがあるが、あまり機能していることを実感できない。
    • ナミダノモトに収録されているストーリーがどのようなものかは読んでみないことには分からないし、マスターへの質問の回答で嫌いなジャンルのシナリオを避けるといった対策もとれない。
    • 200種類もシナリオがあるものの、上記の通り「泣けるテーマ」は4つ程度に大別されてしまうので、どうしても似ている話というものが多く存在する。そのため、質問にどう答えても似たような話を読まされている感覚になりやすい。
    • ペットが好きかという質問に「はい」と答えていても容赦なく動物が死ぬ話を読ませてくることもあるし、今の気分を「とにかくつらい」としたところで、慰めてくれるような話が出てくるとは限らない。

評価点

  • 人情もののシナリオに関しては、比較的突っ込み所が少ない話にまとめられている傾向。
  • DSタッチペンによる文字認識システムはしっかりしており、色々な漢字交じりの感想を書ける。各ストーリー20文字程度とはいえ、うまく利用すれば作者名やどんな感じの話だったのかメモしていくことも可能。
    • ただし感想文を書けるのは1つのストーリーにつき1回のみなので注意。
  • 価格に対してボリューム自体はある。
  • 演出
    • ナミダノモトを使用する際の、アロマテラピーを点火・消灯するような演出は見ていて心が安らぐ。
    • ナミダノモトを提供するお店のシックな雰囲気や、シナリオが流れているときのBGMも落ち着く類のもの。

総評

とにかくADVゲーとしてプレイするうえでの制約が多すぎる。基本的なバックログ、ジャンプ機能、シナリオの選定機能が当たり前のように搭載されておらず、読んだシナリオもタイトル以外は記録されないので、プレイヤー側で何かしらのメモを残さないと好きなシナリオの好きな部分すら読むことすら苦労する。
また泣けるストーリーを集めるというコンセプト自体は悪くないのだが、平均的にみると作家たちの技量が追いついていない。プレイヤーにもよるだろうが、泣けるシナリオの方が稀でひどいと嫌悪感を抱くような類もあり、あらかじめ嫌いなシナリオを選別もできない。

最終更新:2021年11月14日 21:31