真田十勇士
【さなだじゅうゆうし】
ジャンル
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RPG
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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メディア
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2Mbit+64KBitRAMROMカートリッジ
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発売・開発元
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ケムコ(コトブキシステム)
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発売日
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1988年6月27日
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定価
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5,800円
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プレイ人数
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1人
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判定
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良作
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概要
講談や小説、映画で人気を博す題材「真田十勇士」をモチーフにした、一風変わった軍記(?)RPG。
プレイヤーは若き名将・真田幸村となり、父・昌幸の命を受け諸国を巡り十勇士を集め、強大な力を蓄えつつある仇敵・徳川家康の打倒を目指す。
システム
体裁的には一般的なRPGのように見えるが、以下のような特徴的なシステムを持つ。
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幸村や十勇士にはレベルの概念はなく、HPに相当する値が兵力であり、兵力が多いほど攻撃力も伸びるSLG的なシステム。
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兵力が0になると負傷してしまい戦闘や命令ができなくなるが、兵力を再補充することで復帰することができる。
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これとは別に兵士の忠誠度というのも存在し、兵糧を与えることで増加、忠誠度が高いほど攻撃力も伸びる。
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ただし忠誠度は戦闘をするごとに少しずつ減少し、忠誠度が0になるとその部隊の兵士が反乱を起こして戦闘になる。
兵士の数が多いほど必要な兵糧の数が多く、兵力の維持に費用がかかる。
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幸村や十勇士のそれぞれ率いる兵科は決められており、戦闘や後述の説得の相性に大きく関連してくる。
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相性が悪ければ最大の250人で攻撃しても敵部隊にほとんど被害を与えることができず、逆に反撃で大損害を被ることになる。
逆にこちらが有利な相性ならば少数の兵でも被害を抑えられ、敵に大ダメージを与えられる。
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兵力の補充は遭遇した敵部隊を話し合いで説得し、兵糧を消費して味方部隊に組み入れることで行われる。
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ただし先述のように説得に対しても相性設定があり、また説得した部隊と組み入れる部隊の兵科が異なっていた場合は兵糧のほかにも組み入れる部隊が利用する武器が人数分必要で、さらに訓練から脱落する兵士も出てくる。
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また敵部隊が家康の手下の場合は説得の成功率がかなり低くなるうえ、消費する兵糧も多くなる。
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「退却」コマンドで戦闘から逃げる際、誰かを「しんがり」に指定する。退却に失敗すると1ターン、しんがりが無防備に攻撃を受けてしまう。
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ゲーム内で売買される兵糧や武器の価格は変動相場制であり、時間経過で物価変動が発生するほか、場所によっても価格は異なる。
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資金稼ぎの手段としては賭博場の丁半博打もある。
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十勇士にはそれぞれ移動中の固有の特技を有しており、部隊の支援やシナリオの進行に必要となってくる。
評価点
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「とにかく先の町に進んで十勇士を集めていく」という、シンプルながらもわかりやすい目的のストーリー。少なくとも次の目的を見失ったり何をしていいのかわからなくなるといった事態には陥りづらくなっている。
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「真田十勇士」に触れていれば、町人の噂話の時点で次に誰が仲間になるのか予想しやすい。
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RPGにSLGの要素を取り入れたシステムの走りともいえ、大軍を率いている感覚は新鮮。
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特殊なシステムにしてはパラメータについても複雑ではなく、とっつきやすいのも評価点。
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レベルの概念が無いため、後から加入した勇士でもそれなりの兵数と忠誠度を揃えてやれば即戦力となる。兵種の相性の重要さもあり、寧ろ新しい兵種を持つ勇士をすぐに戦力にして敵兵種に対して幅広く対応できる様にした方がより有利になる。
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グラフィックは全体的に良質。
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幸村や十勇士のグラフィックや全画面グラフィックでのアニメーションなど、グラフィックや演出の完成度は当時としてはかなり高い。
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十勇士も扱える兵科や特技で個性を演出しており、会話の口調もあって親しみやすい。
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当時のゲームとしては大所帯のパーティゆえに埋没しやすい個性をカバーしており、十勇士それぞれに見せ場もあるので印象に残りやすい。
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特に「真田十勇士」モノは十勇士といいつつ猿飛佐助や霧隠才蔵といった有名どころの忍者の活躍ばかりというのがお約束であるが、本作は十勇士全員に活躍の場があるのは嬉しいところ。
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敵との相性も考える必要があるので、戦闘面でもシステム上加入後に即戦力にしやすいことも相まって個性は十分発揮しやすいこともプラス要素。
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BGMの曲数も多く、個々の曲の評価も高い。
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全体的に時代劇・軍記的世界観にマッチしており、渋いながらも格好良く纏まっている。
賛否両論点
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ケムコのゲームによくあるメタネタ。明らかに時代的に出てこないモノや事項が出てくるので、そういった類を嫌う人には向いていない。
またケムコの宿命(?)か、攻略に関係ない町人のセリフはお遊びや悪ふざけ的なのも少なくなく、案の定同時期のケムコのゲームの宣伝をする町人もいる。
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RPGに時代にそぐわないアイテムや物事が出るのは本作に限った話でもないが、本作は渋めかつシリアスに世界観をかためている為、余計そういったケムコのお遊び要素が目に付きやすいかもしれない。
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敵の一種「盗賊」が時代劇っぽい盗賊ではなく、何故か同じケムコの『SUPERMAN (FC)』に登場するスーツ姿の強盗。いわゆるセルフパロディなのだろうが、こいつだけ異質で雰囲気はブチ壊し。
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なお、この「盗賊」との戦闘時は専用のBGMが流れるのだが、こちらは『南国指令!!スパイvsスパイ』で使用された曲のアレンジである。
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三好清海が何故か「くの一」。
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大抵の「真田十勇士」ものでは、「三好清海入道」はメインキャラで伊佐の兄貴分の怪力僧兵として登場するが、本作では最後に仲間になる上に実は女忍者(くの一)という設定。
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ただ本作のシステム上、清海と伊佐で兵種被りを起こすのは好ましくない為、仕方がない部分はあるかもしれない。
また本作以前にも「清海は女」という解釈の講談や映画は少ないながらも存在する為、本作独自の突飛な設定というほどではない。
問題点
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HPに相当する兵力の回復には手間がかかる。
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システムの都合上宿屋は存在せず、兵力の回復は敵を説得して味方に組み入れるしか手段がないため、大損害を被った場合の立て直しが非常に面倒。
そのため、部隊の兵力がそろい物資がある程度確保できた後は戦闘自体を忌避しがちになるケースが多い。
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違う兵種を家来につけると、兵糧だけでなく一定数の武器を消費する必要があり、しかも高確率で「訓練についていけずに○人逃げ出した」となって兵力に出来る数が減少する等、デメリットが大きい。
兵力が大量に必要になる後半はすべての兵種がそれほど偏りなく出現する為、狙った兵種の敵が出現するまでレベル上げ感覚でウロウロしていた方が効率的である。
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歩行速度が遅く、これまで行ったことのある町や村に瞬間移動できる手段がないため、移動に手間がかかる。
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前者は当時のRPGでもよくある話ではあるが、後者の仕様がかなり厄介。
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加えて、ショートカットの手段も乏しいため、移動に非常に時間がかかるのが厳しい。
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前述の変動相場を利用した資金稼ぎもこの仕様のおかげで有効活用しにくいのもつらいところ。
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上記2つの仕様が一番厄介なのが全滅時のペナルティ。全滅すると各キャラに兵士が20人だけ補填され、ゲーム開始地点の上田城からの再スタートとなってしまい、立て直しが非常に面倒。
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こまめにセーブして、全滅してしまったらデータ飛び覚悟のリセットをした方が楽。
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相性の有利不利が激しい。
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兵種の相性の有利不利が生半可な兵力差では覆せないほどに影響を与える。そのくせゲーム中で確認する手段が無い。
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また相性ゲーでありながら仲間になる順番はストーリー進行で完全固定であり、序盤の順番も「幸村(侍)」→「佐助(甲賀忍者)」→「望月(甲賀忍者)」…とバランスがやや悪い。
この三人は序盤から頻繁に出る敵の「農民」や「盗賊」に揃って激烈に弱く、それらに強い四人目の「伊佐(僧兵)」が加入するまでは逃げ回るしかない。
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本作の戦闘バランスはプレイヤーが試行錯誤して自力で兵種の相性を見つけ出す事前提のバランスの節があり、一旦相性表を完成させたり攻略サイトで調べてしまうと、後は兵種の有利不利に合わせて数パターンの行動を取るだけの単純作業になりがちである。
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ただこの頃のRPGにありがちな理不尽な敵の強さやアンバラスさは徹底的に排されており、カジュアルに戦略を練りやすいのは評価点とも言える。
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敵のバリエーションが少ない。
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敵の種類は12種類と少なく、強さは部隊の兵力のみに依存、戦闘に勝利して得られるのは軍資金のみのため物足りなく感じがち。
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相性がわかってしまえば戦闘が作業化しやすいため、前述の要因と合わせて中だるみしやすい。
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ラストダンジョン(三河)で全滅して上田に戻されると三河に渡る為の船が無くなりクリア不可能になってしまうバグがある。
総評
やや粗削りで単調になりやすい側面があるとはいえ、大軍を率いて進行していくRPGは『天地を喰らう (FC)』の先駆けともいえ、当時としては斬新。
ゲームとしてもお使い中心ながら手堅くまとまっているので、少し変わった時代劇風RPGを遊びたい方にはお勧め。
移植
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現在は携帯アプリとして配信されている。
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2004年より各種携帯電話・PHS版が配信されている。
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また、2011年にはスマートフォン版(iOS,Android)も配信されている。
最終更新:2021年01月29日 14:49